令和8年度コンピテンシー対策
【 技術士 二次試験対策 】
筆記試験でも解答に工夫が必要
前回の記事でお知らせしたとおり、令和8年度から改訂版のコンピテンシーに対応した試験が実施されます(前回記事はコチラ)。基本的には、口頭試験の質問内容が変化することが想像されますが、筆記試験はまるで無関係と言えるのでしょうか。
まあ、無関係というわけにはいかないでしょう。なぜなら、筆記試験の内容は、専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力が問われるからです。このうち、専門知識と課題遂行能力は、コンピテンシーに直結した視点です。
さらに、今回の改訂では、問題解決が改訂されましたので、これに対応する必要があります。この問題解決能力が求められる問題は、必須科目Ⅰと選択科目Ⅲになります。問題解決能力ですから、解決策を求められる小問(2)に注意が必要ということになります。
(2) 前問(1)で抽出した技術課題のうち、最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その
技術課題に対する複数の解決策を示せ。
さらに、必須科目においては、小問(4)においては、直接的に技術者倫理について問われますので、コンピテンシーにある技術者倫理が大きく関係します。この技術者倫理も改訂されているのでこれまた注意が必要です。
(4) 前問 (1) ~ (3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の
持続性の観点から述べよ。
問題解決
- 業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
- 複合的な問題に関して,多角的な視点を考慮し,ステークホルダーの意見を取り入れながら,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。
まずは、問題解決への対応について考察していきましょう。上記の内容が、問題解決のコンピテンシーなるわけですが、変更点は太字部分になります。基本的な方向性や考えは変わっていませんが、視点や要素が追加されていることに注目です。
このような視点を踏まえた解答にすれば、得点をゲットできると考えてほぼ間違いないでしょう。さらに、これらを記述する部分は、前述の通り必須科目Ⅰや選択科目Ⅲの解決策のパラグラフに落とし込むのが良いでしょう。
具体的に言うと、解決策の一つ、あるいは解決策を進めるうえでのプロセスとして、データ・情報技術の活用、ステークホルダーの意見反映を記述するということです。これを文脈を保ちながら、自然と織り交ぜるといった表現が求められます。
前述のデータ活用は、近年の施策を記述すれば必然的に織り込まれると思いますので、そんなに苦労しないと思います。一方、ステークホルダーの意見反映は、よっぽど注意しないとスルーしてしまいそうです。また、強引に落とし込もうとすれば、飛躍した文章になってしまい、支離滅裂といった副作用も想定されます。
課題設定にもよりますが、たとえば「CIMを活用して3D都市モデルを構築し、事業効果を可視化することで、住民の理解を促進し、意見の反映を容易にする」といった解答が考えられます。新たな要素を落とし込める部分がないか、あらかじめ骨子(筋道)を検討する際によくよく戦略を練りましょう。
技術者倫理
- 業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,経済及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
- 業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守し,文化的価値を尊重すること。
- 業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
次に、技術者倫理の変更について考えてみましょう。まず最初に飛び込んでくるのは、文化が経済の項目に変化していることです。これは、文化が軽視されたわけではなく次の項目でより適切な表現で示されています。
では、経済とは一体何を書けば良いのでしょう。この倫理を記述するパートは、小問(4)の必要な要件です。よって、地域活性化や経済活動の活性化という視点を当該業務に即して記述すれば良い訳です。
スペースが足りなければ、「地域活性化」「経済活動の活性化」といったキーワードをそのまま書いてしまうのもありですが、より具体的な内容であればより得点をゲットできる可能性も高まります。今までになかった経済という視点を盛り込むことで、この受験生はしっかりと変更点を理解しているな「〇」となるわけです。
さらに、持続可能性についても変更が見られます。これまでは、「持続性の確保に努め」といった表現にとどまっていたものが、「持続可能な成果の達成を目指し」に変わっています。これは、単に頑張るだけではダメということです。
問題で言えば、持続可能性は「留意する」だけではもはや足りないです。例えば、「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」など具体性のある目標提示があると良いと思います。ちょとした表現の違いですが、生死を分ける可能性もあるので十分注意してください。
最後は、文化的価値の尊重ですが、前述の通り文化が経済に代わったので、ここに記載されたのでしょう。よって、そんなに大きな変化と考えなくても良いでしょう。これらの変更点に限らず、論文を作成するときはコンピテンシーに示されている内容を強く意識することが合格論文を作成する上で重要です。

