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技術士 二次試験対策 建設部門 令和6年度必須科目 Ⅰ   予想問題 「働き方改革」

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【 技術士 二次試験対策 】

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新3K

私のスマホには、Yahooニューズのガジェットがホーム画面に配置されています。そんなスマホに目をやると、『岸田首相、建設業を「新3Kに」』との記事が飛び込んできました。そうなると、気になって仕方がありませんから、早速ポチっとしてみました。

岸田首相は、建設業界の賃上げ関する意見交換会の場で、新3Kについて発言しました。新3Kとは、給料がよく、休暇が取れ、希望が持てる産業だそうです。これは、これから達成すべきスローガンのようなものです。すなわち、現状は、このスローガンの真逆にあるということです。

なんとも悲しい現実です。速やかに新3Kを実現してほしいものです。特に、最後の「希望が持てる」というフレーズが気になります。現状は、希望がないが社会の評価なんですね。岸田首相も言っていますが、エッセンシャルワーカーなのに世間の目はなぜか冷たいです。処遇もそうですが、一生懸命働く作業員の社会的地位も上げてほしいです。

この新3Kが社会に浸透するかはともかく、社会問題として注目されているのは間違いありません。そうなれば、建設業の労働力不足、働き方改革といったテーマは、さらに出題の可能性が高まったと言えます。逆に出題されないとなると、それはそれですごいという感じですらあります。

生産性を高める新技術

建設業は慢性的な人手不足であり、さらに新3Kに掲げられている休暇がとれるといった状況にするためには、飛躍的に生産性を高める必要があります。では、この生産性を高めるための新技術とは、どのようなものがあるのでしょうか。

国土交通省では、令和5年8月9日(水)に建設施工における現場作業者支援のDXに関するWGを開催しています。この中で議論されている内容が、近未来的でとてもおもしろいです。同WGでは、「建設現場における生産性向上を目的に、人間拡張技術である下記3技術を建設現場等で戦略的に活用することで、現場作業員の身体負荷の軽減、視覚の補助、点検・巡視作業の効率化を実現」することを目指しています。

【人間拡張技術】

〇パワーアシストスーツ(PAS)
・パワーアシストスーツの利用により、人力作業における身体的負担を軽減する
〇XR技術(視覚拡張技術)
・XRによる視覚の補助により、若手技術者に不足している経験や技能を補い、作業を支援する
〇ドローン技術
・長時間飛行ドローンの実用化により、災害時の現場確認や平時の巡視活動を代替する

この具体的な人間拡張技術が興味深いです。まさに、ドラえもんの秘密道具土木版の様相を呈しています。ドローンは人は飛ばせませんが、カメラが付いているので飛行時の目線を取得することが可能ですので、まさにタケコプターと言えます。あとは、どこでもドアがあればなぁとぼんやり考えていましたが、遠隔臨場といった技術はどこでもドアに近い性質を持っています。

ドラえもんが誕生するのは2112年9月3日ですので、あと90年近く先になりますが秘密道具の実現化は着々と進んでいますね。国が推し進めている秘密道具ロボット・AI技術は、AI開発支援プラットフォームや、特定高度情報通信技術活用システムの普及などもあります。これらの情報は、国交省のHPにまとめられているので、一読をお勧めします(国交省のHPはコチラ)。

論文

今回投稿いただいた論文は、大人気の「働き方改革」です。前述に示した新技術が所狭しと提案されています。それでは、早速論文を見ていきましょう。

問題

Ⅰ-1 平成31年4月施行の改正労働基準法により、令和6年4月から建設業においても罰則付き時間外労働上限規制の適用がされたところである。さらに、令和元年6月成立の新・担い手3法では、著しく短い工期による請負契約の締結の禁止が規定され、令和2年7月に中央建設業審議会において「工期に関する基準」が作成・勧告されている。このように、時間外労働規制等に適切に対応しつつ、適正な請負代金・工期が確保された請負契約の下で、適切に建設工事が実施される環境づくりが欠かせない。
 また、建設業が持続的に発展していくためには、担い手の処遇改善や働き方改革の取組を推進していくことで、新規入職を促進し、将来の担い手の確保・育成を図っていく必要がある。さらに、働き方改革を推進していくと同時に、物的・人的両側面での生産性の向上を図っていくことは建設業界全体の発展にとって不可欠である。
 他産業と比較しても働きやすく、また、魅力的な勤務環境づくりを果たし、建設業の持続的な発展を実現するため、以下の問いに答えよ。

(1)建設業の働き方改革を推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。

課題

1.多面的な観点と課題
(1)デジタル技術の活用
 建設業では、高齢化が進行し、近い将来高齢者の大量離職が見込まれている。このため、建設業の魅力向上を図り担い手確保への取組を強化することが重要である。このことから、急速に進展するデジタル技術を取り込み、担い手不足を補う方策を講じていく必要がある。よって、生産性の観点から、いかにデジタル技術を活用するかが課題である。


① 高齢化の進行は、建設業に限った話ではありません。少し、順番を変えましょう。→「近年の高齢化の進行によって、建設業においても近い将来高齢者の大量離職が見込まれている。」

② 1)高齢者の大量離職→2)魅力を高めて担い手確保が重要→3)デジタル技術を取り込んで担い手不足を補う方策が必要 の流れになっていますが、2)→3)の流れがおかしいですね。これは、2)と3)の主張がどちらも「担い手確保」になっており、重複しています。また、2)は建設業の魅力を高めて人を集めるとなっており、目的と手段がマッチしています。一方、3)はデジタル技術の取り込みがなぜ、担い手不足を補う方策につながるのか分かりません。さらに、結論は、生産性(1人当たりの仕事量)を高めて人手不足を解消し、その手段としてデジタル技術の活用が課題としています。つまり、人をたくさん集めて労働力不足に対応(量的対応)するのではなく、こなせる仕事の量を増やして労働力不足に対応(質的対応)し、その延長線上で(業務量が減るので)労働環境の改善につなげようという主張にすべきですね。今回のテーマは、働き方改革なので、担い手の確保ではなく労働環境の改善についてもっと説明すべきです。よって、この部分は、生産性の向上がなぜ労働環境の改善につながるのかといった説明に変える必要がありますね。例えば、「取り組みにあたっては、急速に進展するデジタル技術を活用し、業務を効率化することで労働環境の改善につなげていく必要がある。」という感じでいかがでしょうか。


(2)工期の適正化
 建設工事において、適正工期が設定されない場合、長時間労働が不可避となる等、技能労働者の就労環境の悪化が懸念される。また、建設生産物の施工品質や安全面にも影響が生じる可能性があるさらに、労働者の週休2日や事業者の罰則付き時間外労働規制への対応が急務である。よって、契約面の観点から、建設プロセス全体での工期の適正化が課題である。


③ 働き方改革なので、論点がぼやけないように品質確保は説明しない方が良いですね。むしろ技能労働者の安全確保を焦点化した方が、文脈がつながりより良くなると思います。→「また、不適切な工期設定は、労働災害を誘発する可能性もある。」

④ 現状しか述べられていないので、この結果どうなっているのかを述べる必要がありますね。→「さらに、労働者の週休二日制の実現や罰則付き時間外労働規制への対応が急務である中、適切な工期設定が強く求められている。」

⑤ 契約の話が一切出てきていないので、唐突感があります。工期の適正化は、「契約条件にする(契約制度)」、「罰則を設ける(法制度)」といった制度設計になりますので、大きな見方で「制度面の観点」としてはいかがでしょうか。

⑥ 建設プロセス全体とは一体何を指しているのでしょうか。計画―設計―施工―管理といったプロセスであるならば、背景で全く触れられていないので、読み手は理解できません。また、課題は工程ではなく工期(工事期間)なので不整合です。


(3)働きやすい職場環境の創出

我が国の生産年齢人口は、少子高齢化に伴い、1995年をピークに減少傾向である。一方、女性や高齢者(65歳以上) の就業率の上昇により、全就業者数は増加傾向である。今後、女性や高齢者、外国人労働者も含めた就業者の多様化が進むことが想定される。よって、労働環境の観点から、いかに働きやすい職場環境を創出するかが課題である。


⑦ 労働環境の観点から職場環境が課題となっており、観点と課題が重複しています。この場合は、「多様性の観点」または「包摂性の観点」といった具合にしてはいかがでしょうか。また、課題も労働者の属性に囚われないといったニュアンスが大事なので「誰もが」を追記すると良いでしょう。→「多様性の観点から、誰もが働きやすい労働環境の創出が課題」
文脈的にはこれで良いのですが、問題文には「魅力的な勤務環境づくりを果たし、建設業の持続的な発展を実現するため」とありますので、この課題は題意そのものになっています。つまり、「職場環境を良くするためには、どうしたらいいですか」と聞かれているのに、「職場環境を良くすることです」と答えているようなものです。別の課題を設定しましょう。
※ 問題に対して的確に解答するためには、論文を書き始める前に骨子を作成すると良いですよ。本番で有効なのはもちろんですが、練習から取り組んだ方が身に付きやすいです。この骨子の段階で、論点がズレていないか、今回のように問題と同じになっていないか、あらかじめチェックすることが致命的なミスの防止につながります。

解決策

2.最重要課題と解決策
 政府によるデジタル化の推進状況を鑑み、(1) デジタル技術の活用を最重要課題として選定し、以下に解決策を述べる。

⑧ 「政府がやっているから」を理由にしては、あまりにも主体性に欠けています。デジタル技術は今後さらに発展する可能性を秘めているから(ポテンシャルがあるから)といった具合に、政府が推進している意図を書いた方が良いですね。

(1)BIM/CIMの導入
 建設プロセス全体での業務効率化のため、BIM/CIMを導入する。例えば、3次元モデルで複数の設計案を作成し、最適な事業計画を検討する。地元説明会等で、3次元モデルを用いた説明により関係者との理解が促進される。その結果、合意形成が迅速化する


⑨ →「建設プロセス全体の業務効率化を図るため」

⑩ 肝心の効率化の説明が少なく(あまり具体的でない)、おまけの合意形成迅速化に力点が置かれています。また、設計段階のみの例示であり、建設プロセス全体の例示になっていません。建設プロセス全体を例示するとなると膨大な説明になってしまうので、少し具体を述べる記述にした方が良いでしょう。→「具体的には、BIM/CIMを用いることで、数量、部材、性能、価格、施工期間等の情報を計画・設計段階から施工・管理といったライフサイクル全体で蓄積し、これらのデータを活用することにより業務効率化を図る。さらに、3次元モデル化により、災害シミュレーションの検討や関係者との合意形成の迅速化といった波及効果も期待できる※。

  • 問題に波及効果を問う項目がない場合に記載。あった場合は、「さらに」以降は不要。

(2)i-construction(ICT施工)の促進
 ICTによる工事全体の効率化を図るため、ICT施工(STAGEⅡ)を促進する。現在実施中のICTによる作業効率化から次段階へ進展させる。例えば、施工現場の人の行動履歴や建設機械の稼働情報等をデジタルツイン上で再現し、リアルタイムな工程を改善する。


⑪ 述べたいことが整理されていない印象を受けます。やることは、ICT施工のステージ2を促進することですよね。後述にある作業効率化から全体の効率化へ移行すべきとの考えが、ステージ2への移行なのではありませんか。そうなると、同じことを繰り返し述べているように見えます。→「現在実施中のICTによる作業効率化から工事全体の効率化へと進展させるため、ICT施工(STAGEⅡ)の導入を促進する。

⑫ →「リアルタイムに」


(3)ロボットによる機械化の導入
 単位当たりの生産に必要な労働力を削減するためロボットによる機械化を導入する。例えば、住宅建設等の作業のうち、鉄筋の結束や溶接、左官作業といった人手を多く伴う作業をロボットにより代替する。これにより、作業時間の短縮や省人化を図る


⑬ 「単位あたり」とは何が言いたいのでしょうか。mとか㎡あたりの労務量を減らすということですかね。ちょっと分かりづらいですし、単位当たりにする意図も伝わりません。単純に「建設現場の省人化(省力化)を図るため」で良いと思います。

⑭ これも分かりづらい表現です。「機械化を導入する」との表現は違和感があります。機械化とは、人に変わって機械を導入することです。単純に「機械化する」で良いのではないですか。また、ロボットによる機械化というと機械化をするためにロボットを用いると言った解釈もできてしまいます。ここもシンプルに、「ロボットを導入する」で良いのではないでしょうか。

⑮ これは「冒頭に労働力を削減するため」と述べているので、重複しています。削除。効果を書く場合は、特筆すべき副次効果や、波及効果を書きましょう。無ければ、無理に書く必要はありません。


(4) 高速通信規格5Gを活用した遠隔施工
 担い手の多様化や作業効率化のため、5Gを活用した遠隔操作システムを導入する。1人の作業員が建設現場まで移動せずに複数台の建設機械を操作できるため、省人化を図ることができる。また、年齢、性別、国籍を問わず、柔軟な働き方に寄与する


⑯ 解決策の目的は、デジタル化による生産性の向上です。これが解決策の目的になってしまうのは考え物です。課題設定しているのですから、生産性の向上(業務効率化)が目的であった場合、当たり前ということになります。ここで書くべき目的は、生産性の向上という根本の目的を深度化させたものを記載すべきです。前述は、BIMはプロセス全体の効率化、ICT施工は工事全体の効率化、ロボットはちょっと判然としませんが建設現場での効率化といった具合に深度化できています。建設現場での効率化であれば、目的が同じになるため(3)と合体させるべきですね。担い手の多様化が主たる論点ならば、思い切って作業効率化といった目的を削除しましょう。

⑰ 遠隔操作がデジタル化なのか疑義があります。解決策の共通項は、デジタル化というよりICT化の方が近いのではないでしょうか。課題設定を見直すか、デジタルデータを活用するプロセスが必要ですね(BIM/CIMデータの入力、出来形データの出力など)。

⑱ 効率化すると前段で言っているので、省人化を図ることができるといった説明は不要です。文の構成からいえば、この部分は具体的説明や例示のパートです。→「具体的には、1人の・・・操作する。」

⑲ このパートの軸足をどこに置くかによって表現は変わります。効率化であれば、これは波及効果になります。担い手の多様化であれば、「機械操作は、腕力やコミュニケーション能力に左右されないため」といった理由を添えた上で、「柔軟な働き方を実現する」といった具合に“やること”になるよう表現を変えましょう。


(5)UAVを活用した施設点検
 狭隘な山間部に整備された砂防・治山施設等、危険を伴う点検において、UAVを活用した施設点検を導入する。例えば、予めUAVに飛行ルートを設定し、GNSSを活用した自動飛行による点検を実施する。また、UAVでの撮影画像とAIによる画像解析を組み合わせることで施設の健全度評価を実施する。これにより、点検作業と評価時間を大幅に短縮する


⑳ 例示になっていません。どのような現場で、何を点検といった内容が必要です。対象物等を設定しないのであれば、具体的にはといった具合で詳細を説明すると良いですが、この場合でも点検内容は書いた方が良いでしょう。

㉑ この効果は、生産性向上という本来の目的に近いですね。これに加え、安全性などの副次効果も書くと良いと思います。

新たなリスク

3.新たなに生じうるリスクと対応策
 デジタル技術の活用に伴い、サイバー攻撃によるシステム破壊やデータの改ざん等の被害を受けるリスクが発生する。対応策としては、セキュリティ対策の強化が重要である。具体的には、OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ。また、ファイヤーウォールやウィルス対策、暗号化を徹底する。さらに、セキュリティへの意識向上に資する教育も重要である


㉒ 対応策なので、重要性ではなくやることを書きましょう。→「セキュリティ対策を行う。」または「セキュリティを強化する」

㉓ ㉒と同様。→「教育を行う」

要点・留意点

業務にあたっては、常に社会全体における公益を確保する観点と、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける観点を持つ必要がある。業務の各段階で常にこれらを意識するよう留意する。 
以上

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