添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
周年のあれこれ
予想をするうえで、時事問題を抑えることは非常に重要です。先日、いよいよ令和7年度のリアル予想問題を公開したところですが、能登半島地震後の豪雨災害に着目しました。このように、時事問題を軸に予想を立てていくことが肝要です。
時事と言えば、このような社会問題や審議会・委員会で話し合われている事項などが思い浮かびます。このような事柄に加え、令和5年度建設部門では関東大震災100年という周年の事柄にスポットライトを当てた問題が出題されています。
これを踏まえ、近年の周年事項をチェックしていきましょう。まずは災害です。関東大震災に続き、令和7年は「阪神・淡路大震災から30年」を迎える年になります。神戸市ではこの30年間に、震災の経験や教訓を未来へ継承する取り組みを大切にしながら、新たなテクノロジーの活用を積極的に進め、ハード・ソフトの両面から災害に強い「レジリエントな都市」へと成長したとしています。
さらに、災害への対策においては、先の予想問題でも提案しましたとおり、グリーンインフラの活用への期待が高まっています。令和5年に「都市公園制度制定150周年」を迎えました。最近は、都市緑地法が改正され、令和6年12月には国が緑の基本方針を定めるなど新たな動きも見られます。
さらに、都市及び地方計画を専門としている私が注目するのは、「⽴地適正化計画制度創設10年周年」です。これまで全国747都市で立地適正化計画の策定が進められています。国では、取組みの裾野拡⼤や⾼質化に向けた検討が進められ、令和6年12⽉には「⽴適+(プラス )」が公表されました。
都市及び地方計画の観点からもう一つ、令和6年は「土地区画整理法制定70周年」です。令和6年度の都市及び地方計画において、選択科目Ⅱー2で「小規模な土地区画整理事業」が出題されています。うーん、やはり周年事項は出題率高めですね。
論文
今回お届けする添削LIVEは、建設部門 選択科目Ⅲ「オーバーツーリズム対策」のチェックバック3回目になります(前回の投稿はコチラ)。前回の論文から、だいぶ手が加えられています。大刷新して論点整理がされつつあります。このような、勇気を持ってテコ入れすることも時に大事ですよね。それでは、推敲された論文を見てみましょう。
1.多面的な課題
(1) いかに多極連携型の都市を構築するか
観光客が集中する都市では、既存のインフラ機能の利用が増大することで受容量が圧迫されてきており①、住民生活に悪影響が生じている。そのため、土地利用の最適化により観光需要の分散化を図り、地域全体の負荷を軽減することが重要である②。よって、都市構造の観点から、多極ネットワーク型コンパクトシティの構築が課題である。
① 最後の部分は「生じている」と断定しているので、ここも徐々にというニュアンスは持たせなくてよいのではないでしょうか。→「・・・され」
② 結論である多極ネットワーク型コンパクトシティの特徴を述べるべきでしょう。また、分散化は一つの手段なので、もっと総括的な表現が良いでしょう。例えば、「都市の魅力を保ちながら都市全体の効率性を高め、生活と観光の質を維持・向上させることが求められている」などが考えられます。
(2)いかにルールを順守する環境づくりを行うか
国際社会ではSDGsに対する理解が進み、人種や文化等の違いに対応した多様な観光造成が行われている。一方で、観光に関するルールが十分に理解されず、外国人旅行客の迷惑行動に発展する事例が増加しつつある。そのため、外国人旅行客のマナーを向上させる取組が重要である。よって、都市環境の観点から、誰もがルールを順守する環境づくりが課題である。
(3)いかに観光危機管理対策を行うか
近年、気象災害の激甚化や巨大地震の切迫化が懸念されている③。土地勘のない観光客が過度に集中する中で発生④した場合、大量の災害時救援者が生じてしまう可能性がある⑤。そのため、観光と防災の機能を複合的に有する施設整備等、バランスがとれたまちづくりが重要である⑥。よって、都市防災の観点から、観光危機管理対策の推進が課題⑦である。
③ 懸念事項とするより、現状として述べた方が良いでしょう。→「・・・巨大地震が切迫している」
④ →「災害が発生」
⑤ 救援者の発生というより、単純に被害で良いのではないでしょうか。また、文末が冗長的であり、これこそが懸念事項ではありませんか。→「・・・多大な被害が危惧される」
⑥ まちづくりの例が施設整備というのは腑に落ちません(まちづくりは面、施設整備は点)。また、「観光と防災の機能を複合的に有する施設整備」や「バランスがとれたまちづくり」が何なのかよく分かりません。都市及び地方計画の視点で観光地における防災対策を示唆する必要があります。例えば、観光施設の適正立地(ハザードエリアからの移転や立地抑制)、一時避難地や帰宅困難者の受け入れ施設の適正配置などが考えられます。
⑦ ⑥を踏まえると、観光危機管理対策(観光客への情報発信、避難誘 導・安全確保、帰宅困難者対策)というより、観光地における防災まちづくりが課題といった具合にした方がより都市及び地方計画的な表現になると思います。
2.最も重要な課題と解決策
地域の安全、健康及び福利に直結するため⑧「 いかに多極連携型の都市を構築するか」を最重要課題に設定し、以下に解決策を述べる。
⑧ 防災を入れたことにより、この理由は双方の課題に当てはまってしまいます。ここは、理由を複合的なものに組み替え、多極連携型の都市にしか当てはまらないようにしましょう。例えば、「地域の安全、観光の質の向上、持続可能性と多面的な効果を発揮するため」といった具合にたくさん並べて限定しちゃいましょう。
(1)立地誘導
適正な土地利用の推進により、観光客の集中を抑制する⑨。具体的には、立地適正化計画を策定し、都市機能誘導区域を設定することで、都市機能や観光施設を誘導する。加えて、宿泊施設の過剰供給を抑制するため、都市計画法に基づく地区計画により1部屋あたりの最低面積を設定し、狭小な宿泊施設の立地を制限する。併せて、駐車場配置適正化区域を設定し、自動車交通の少ない場所に集約駐車施設を設置することで、中心市街地への自動車の流入を抑制する。
⑨ 見出しは、立地誘導です。適正な土地利用と立地誘導は異なるものですよ。見出しが正ならば、「観光施設の立地を誘導することにより」となるのではないでしょうか。また、細かい話ですが、ここはやることを書くところなので、目的→やることの順で書いた方が、解決策が明確化すると思います。→「観光客の集中を抑制するため、観光施設等の立地を誘導する」
(2)ウォーカブルな拠点形成
街路空間を再構築することで歩行空間を快適にし、移動手段として徒歩や公共交通を選択しやすい環境を整備する⑩。具体的には、立地適正化計画を策定した上で、滞在快適性等向上区域を設定する。街路空間の広場化と併せて、沿道店舗のオープンスペースの提供や建築物のピロティ化等のオープン化により賑わいを創出する。また、中距離移動手段としては、LRTを導入し、電停のバリアフリー化を行う⑪。⑫公共交通と連携した移動しやすい環境を整備⑬することで、特定の観光地への過度な観光客の集中を抑制する。
⑩ 解決策しかないので、目的があると良いですね。快適な滞在空間の形成、歩きたくなるなる空間形成、地域活性の促進などがウォーカブルの目的ですかね。
⑪ →「中距離移動手段としてLRTを導入し、電停においてはバリアフリー化を徹底する」
⑫ 「このように」を追記。
⑬ この表現ですと都市環境の観点に見えますので、「拠点を形成」としてはいかがでしょうか。
(3)ネットワーク⑭
立地適正化計画と連動して地域公共交通計画を策定し、各拠点を結ぶように公共交通網を再構築する⑮。⑯住民に対しては、公共交通マップの作成・配布や通勤・通学時の利用啓発等、MMを通じて利便性を認識させることで公共交通へのモーダルシフトを促す。また、旅行者に対しては、観光型MaaSを導入する。AIレコメンド機能を活用し、ユーザーの行動履歴等から最適な観光地の提案や、交通サービスとセットとなったデジタルパスの購入を可能とすることで、観光周遊を促す。さらに、リアルタイムで混雑状況を表示することで、ユーザーが時間や場所を選択しながら効率良く移動できるようにする。
⑭ 内容からするにネットワークだけでなく、このネットワークを利用した交通需要マネジメントが主な提案になっています。よって、見出しを「ネットワークとTDM」としてはどうでしょうか。
⑮ これも目的がほしいところです。目的は観光地における交通渋滞の発生抑制とかですかね。
⑯ 「この公共交通網を効果的に活用するため、」を追記してはどうでしょうか。
3.新たなリスクと対応策
観光需要の適正化により地域の魅力や価値が高まることで、郊外地の開発圧力が高まる。そのことによる植樹林の開発等、自然生態系への悪影響が懸念される。
対応策として、特別緑地保全地区制度を活用する。一定の建築行為や宅地の造成等の土地の形質変更を制限することで、現状凍結的に地区を保全する。また、地区の指定によって優遇税制措置が適用される他、管理協定制度を併用することによって土地所有者の負担を軽減することができる。このことによって、豊かな緑を将来に継承することができ、健全な生活環境や景観を維持することが可能となる。 以上