添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
それでは、本日も添削LIVE(過去の添削論文はコチラ)を行ってまいります。ご依頼いただいた論文が、たくさんたまっているのでドンドン公開していきますね。
新しく挑戦する方や、試験結果を分析したい方は、本サイトの添削LIVEをご活用いただければ幸いですが、何としても自分で自分の評価をしたいと思う人も多いと思います。どうしても自己評価は、客観性が失われますので、誰かに見てもらうことをお勧めしますが、どうしてもという方には以下のとおり、チェックしてみてください。
Point1:題意に沿っているか
Point2:主語述語の関係がおかしくなっていないか
Point3:重複表現になっていないか
Point4:小見出し(項目タイトル)と内容があっているか
Point5:全体をとおして矛盾はないか
ピンとこない方は、投稿をお待ちしております・・・
また、テクニックのページでも一部視点を紹介しているので、良かったら見てみてください。
さて、今回の投稿は、令和5年度選択科目Ⅲのインフラメンテナンスです。第2フェーズということで、これまでの取り組みに加え、新たな要素を論文の中にビルトインできるかが肝要です。例えば、維持管理データのオープン化、AI技術の活用などがありますが、これらが例示できてると良い結果になるのではないでしょうか。
それでは、投稿論文をみてみましょう。
(1)第2フェーズにおける課題
①課題:インフラメンテナンス2.0の推進①
技術改革②の観点から、現状では建設業の各施工段階においてアナログデータが利用されており、分析や評価を行うには扱いにくい問題点がある。具体的には、アナログデータからデジタルデータへの移行を行い、課題分析しやすい環境を整備することである③。業務改善を行い業務の効率化をすることができる④。インフラメンテナンス2.0の推進が課題⑤でである。
① 問題は、第2フェーズのインフラメンテナンスを推進するための課題であるにもかかわらず、インフラメンテンス2.0(第二フェーズ)の推進を課題にしては解答になっていません。これは、「車の運転で注意することは何ですか?」と聞かれて、「注意して運転することです」と答えているようなものです。
② 技術改革は、解決策に近いですね。課題がデジタル化の場合は、技術面の観点とかですかね。また、文の構成がおかしいですね。「技術革新の観点から、・・・問題点がある」になっています。文意からするに、技術革新が理由となって、問題があるわけではないですよね。課題の項目は、①背景→②観点→③課題の順で書くと良いですよ。
③ この部分は、解決策になっています。この項目は、課題を書くところですので、なるべく課題の背景や、課題として取り扱う理由(根拠)の記載に留めましょう。課題項目で解決策まで書いてしまうと、評価者にここは「課題を書くところなのになぁ」と思われてしまうことはもちろん、重要な課題として取り上げた場合、書くことが限定的になったり、重複したりといった問題が生じるので、良いことなしです。
④ 主張が2つ出てきています。「デジタル化」なのか「業務改善」なのかどちらなのでしょうか。どちらかに絞るべきです。絞ったうえで、それに即した背景・観点としましょう。
⑤ ①や④のとおり、課題は「デジタル化」か「業務改善」になると思います。どちらも、後述の課題と重複しているので課題が3つ用意できていないと判断されてしまいます。
②課題:働き方改革の推進
人材確保⑥の観点から、現状の建設業界には、女性や高齢者、外国人といった多様な労働者が働きやすい環境が整備されていないことにより労働者層が限定されてしまい、新規入職者を確保できないことが問題である⑦。少子高齢化により労働者が減少している状況では、多様な労働者を確保できないことが問題である⑧。そのため、働き方改革の推進が課題である。
⑥ 人材確保まで書いてしまうと観点ではなく、解決策に近いですね。この場合は、人材面とかですかね。観点の記載は、結構難しいです。見方や立場を表すものなので、例示のように○○面と書くとミスが抑えられます(すべてに「面」を付けられるとは限らないですが・・・)。
⑦ 文が長いです。技術士論文で一番初めに意識すべきことは、「文を短くする」です。まず、文頭の観点ですが、「から」と記載されているので理由を意味する内容になります。人材確保が理由で、新規入職者が確保できないわけではないですよね。このように、文が長いと文の前半と後半で内容がねじれてしまったり、主語述語の関係がおかしくなったりとミスを誘発します。例えば、文を短くすると、「現状の建設業界は、女性や高齢者、外国人といった多様な労働者が働きやすい環境が整備されていない。このことから、労働者層が限定されてしまい、新規入職者を確保できない。」といったようになります。文を短くするにあたっては、接続詞を用いると良いでしょう。
⑧ 「問題である」が連続しています。どちらも労働者が確保できないという問題なので、重複表現になっています。どちらか一方で良いと思います。
③課題:建設DXの推進
業務効率化⑨の観点から、現状の建設作業工程は人海戦術で取り組むことが多く、全ての業務に多くの人工が必要となっている⑩ことがある。業務が効率化されていない⑪ことが問題である。建設DXの推進をし、ドローンやIT建設重機の利用をすることで、例えば測量において従来はアリダードやトランシットを用いて手作業で行っていたものをドローンで3次元測量することができる⑫。建設DXの推進が課題である。
⑨ これも②、⑥と同じですね。業務効率化は解決策になっています。この場合、生産性の観点ですかね。また、他の課題と同様に、構文がおかしいです。
⑩ 「建設作業工程」はどのような意味で使用されているのでしょうか。建設作業の全体を表しているのであれば、後述の「すべての業務に多くの人工が必要となっている」と同じことを言っています。
⑪ 問いは、メンテナンス(管理)に関することなどで、業務という一括りでなく管理に特化した記述が必要になります。例えば、「特に老朽化が進む既存インフラの管理に関しては、その業務量が膨大となる」など効率化を進めていくべきインフラメンテンナンスの背景を示すべきです。
⑫ この部分は解決策になっています。③と同様。
(2)最も重要な課題と解決策
①建設DXが最も重要な課題である。理由としては、建設DXの推進は、業務効率化につながる事項であり、施工品質の向上にもつながるから⑬である。
⑬ 建設DXの効果を列記したに過ぎず、重要と考えた理由になっていないように見えます。この例で言うと「波及効果がある」ですかね。その他にも「実現が容易」、「速やかに効果が発現する」など相対的な評価(他の二つの課題に比べて優れているところ)が理由としてふさわしいのではないでしょうか。
②ドローンやIT建設重機の活用
ドローンによる3次元測量を活用することで、測量の制度が高くなると共に作業の簡便さにより丁寧な測量⑭作業が可能になる。インフラメンテナンスにおいてはインフラの事前点検⑮をドローンで行うことで点検個所数を増やし精度の高い検査とすることができる⑯。
⑭ 作業が簡便であることと丁寧な測量との因果関係が不明です。また、丁寧な測量が抽象的で、どんな効果なのか判然としません。また、課題はDXによる作業の効率化なので、簡便さを具体的に説明し、省力化に繋がることを説明する必要があります。
⑮ 「事前」が気になります。何に対する事前なのでしょうか。
⑯ 前段と言っていることが同じのように見えます。ただ、メンテナンスに必要な作業内容が異なる(測量か点検かの違い)だけではありませんか。
③ナレッジマネジメントの推進⑰
建設業において高齢化した技術者が大量に離職するタイミングが迫っているが、高齢世代の有する重要技術が若い世代の技術者に継承されていないことが問題であるが、これらの技術をナレッジマネジメント化し、様々なタイミングで学習することで技術継承することができる⑱。
⑰ 課題は、建設DXの推進なのでは?ナレッジマネジメントでは、経営管理手法になってしまいます。解決策として、相応しくありません。
⑱ 文が長いです。「・・・迫っているが、・・・問題であるが、・・・」一文中に逆接が連続して使用されています。
④BIM/CIMの活用
建設プロジェクトの事前検討段階や設計段階において⑲BIMやCIMの活用を行う。設計上の不整合を回避することができると共に、早期の段階で施工業者を設計に参加させることで設計業務のフロントローディングを行うことができる⑳。業務の平準化㉑を行ううえでも有効である。
⑲ インフラメンテナンス(管理段階)のDXについて説明すべきであり、事前検討段階や設計段階の内容のみでは論点がズレています。
⑳ 基本は、⑲のとおり論点ズレしています。BIMを解決策にするなら、例えば「計画・設計段階でBIMを活用し、メンテンナンスやライフサイクルコストの検討を容易にする」などインフラメンテナンスを焦点化してください。
㉑ ここでいう業務が何を指しているのか不明です。また、なぜ平準化されるのかも分かりません。
(3)新たに生じうるリスクと対策
①リスク:IT技術者の不足
建設DXを高度に㉒推進すると建設業全体でIT技術者が不足するリスクがある。
㉒ 「高度に」とありますが、高度である場合のみ発生するリスクのように見えます。ここでは、高度であるかは関係なく、「DXが進めばIT技術者が不足する」で良いと思います。
②対策:他の職域からの採用
建設業で不足しているIT技術者を建設業でシェアしようとすると限界がある。例えばIT業界からIT技術者を募集すること㉓でIT技術者の不足に対応することができる。
㉓ 募集するとありますが、IT業界から引き抜くということですか。タイトルにも採用とあるので、雇用の話なんですかね。これができれば、そもそもIT技術者の不足という問題提起がおかしくなります。
③OJT、OffJTの推進
IT技術者を育成するためにOJTやOffJTの実施をする㉔。研修を実施することでIT技術者の育成をするのみならず、ITリテラシーの低い技術者に対する技術研修ともなる。
㉔ 「・・・の実施をする。」→「・・・を実施する。」
(4)必要となる要点・留意点
①倫理の観点
公衆の安全が最重要である。建設コストを優先することにより、取得したデータを改ざんして安全性を犠牲にしたりしてはならない。㉕
㉕ 問題には、これまで説明してきた内容を遂行するにあたっての留意点を書けとなっています。説明内容に沿った事柄であるともっと良いと思います
②社会の持続性の観点
社会の持続可能性㉖のために環境の保全が最優先されるべき㉗である。また、低炭素社会の実現に寄与するために再生可能エネルギーの積極的利用や自家用車を削減して公共交通を促進する等の取組が必要である㉘。
㉖ 「社会の持続可能性のために」→「持続可能な社会を構築するために」
㉗ 最優先は、少々言い過ぎに感じます。また、倫理では安全が最重要と述べており、矛盾します。「常に意識する」くらいで良いのではないでしょうか。
㉘ 例示の唐突感が否めません。㉕のとおり、説明してきた内容を遂行するにあたっての留意点を書くべきです。