添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
論文作成前の準備を怠らない
みなさんは、練習論文を書く時どのような手順で書き始めますか?いきなり書き始める人、情報を収集して戦略を考えてから書き始める人、様々だと思います。論文を書き始める前には、当然、準備が必要です。この準備についても、初めて書く人と、何枚も論文を書いている人では、その内容も異なります。
初めて書く人は、本サイトのメソッドにもありますように、STEP0としてロールモデルを探すことから始めましょう。初動のフェーズでは、良くできたお手本を真似ることから始めます。書道と同じ要領です。文の構成や、それぞれの項目のバランスなどは、真似ることで習得できます。まず、この基礎ができていないと、内容云々に至らないのです。
本サイトは、私が建設部門であることから、建設分野の論文が多く偏りがあります。そこで、誰でも使用できるひな型もご用意してありますので、受験したい部門の情報が少ない人は、このひな型を活用することをお勧めしています(ひな型を紹介しているページはコチラ)。
何枚も論文を書いているベテランは、もう基礎が身についているので、何を書くのかしっかり戦略を立ててから書き始めると良いと思います。本日投稿の論文にもありますが、出来上がったものを修正するのは結構な手間がかかるので、書き始める前の構想、つまり論文の骨子作成が、極めて重要となります(骨子の作成方法を紹介しているページはコチラ)。論文の良し悪しや、論文の完成スピードは、この骨子の出来上がりに左右されます。
練習論文の完成度に妥協しない
練習論文は、書いて終わりではありません。何度も申し上げていますが、書いた論文が合格レベルにないといくら論文を用意しても合格できません。そこで重要なのが、添削というステップです。この添削を経ることによって、練習論文を合格レベルまで引き上げることができます。
特に、建設部門の人は、本サイトで紹介している予想問題や、重要トピックなどを参考にして、より多くの完成論文を手にすることで、試験の 難易度 が下がると思います。本サイトでも予想は、これから力を入れていく予定ですが、100%的中させることは不可能です。
絶対に今年は受かりたいと願っている人は、完成論文に加えちょっとした問題の変化にも柔軟に対応できる応用力を身につける必要があります。この応用力の身につけ方は、残念ながら人それぞれです。これは、人によって悪癖が異なることが要因です。悪癖は、自分で発見しづらく、添削で指摘されないと気づけないという厄介なものです。
この悪癖を直すことや、どんな状況でも一定水準を書き上げる力を身につけるためには、やはり添削を繰り返すしかありません。添削で指摘された箇所をただ読むのではなく、どうしてこのようなことになったのか、論文を書いていたときの状況や思考プロセスを思い出し、改善しないといけません。
すなわち、技術士 二次試験対策は、PDCAを何回も行うことにつきます。Plan(骨子作成)→Do(論文作成)→Check(添削)→Action(論文修正)→Plan(骨子作成②)・・・と続きます。伸び悩んでいる人や、何度も同じミスを繰り返している人は、Action(改善行動)がうまくいっていません。
この改善行動は、論文の指摘事項を直す作業ではありません。同じミスを本番でしないようにするための戦略を考える行動です。この自分自身で考えることで、本番においての対応力が上がります。このような行動は、実社会でも大いに役立ちます。
何でミスしたかを自分でしっかり考えないと、成長しませんよね。ミスは最大の学びの機会です。このチャンスを逃すことなく、有効に活用することをお忘れなきように!
論文
今回の投稿論文は、令和5年度電気電子部門の「開発するうえで重要な『手法』」をテーマにした論文です。チェックバックの2回目になります。どのような改善がなされているのか早速、論文をみてみましょう。
問題文
大規模かつ複合的なシステムで広く用いられている仮想化、レイヤ化、モジュール化、ソフトウェア化、などは、効率的に開発するうえで重要な『手法』である。一方でこのような『手法』は、入出力情報をもとにハードウェア技術の理解なしに組み合わせているため、統合されたシステムの全体の振る舞いが把握しにくくなっている。例えば、技術者が入力と出力しか把握しないことで、それまで実施確認していた事項がおろそかになり、エンジニアリング業務を遂行するうえでの障害になっていると考えられる。上記の状況から、電気電子分野における影響を踏まえ、今後どのように克服してい発展させていけばよいか、解決策と将来像について道筋を示すことが求められる。以下の設問に技術面で解答せよ。(人事、政策などは含まない。)
(1)電気電子分野の技術者としての立場で上記『手法』を活用する際に生じる3つの課題を多面的な観点から抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。(※)
(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する解決策を3つ、電気電子部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(2)で示した解決策の実施において、技術者としての倫理、社会の持続可能性を踏まえて必要な要件を題意に即して述べよ。
課題
1.手法を活用する際に生じる課題
1.1手法とハードウェアの整合性向上
現状、世に出回る製品が、手法とハードウェア技術の整合性がなく市場に流通している場合がある①。例えば、手法の入出力情報に対し、ハードウェア技術の挙動の整合がとれていないと想定外の挙動を起こすことに繋がる②。その結果③、実際の使用段階において機器が想定外の挙動(ロボット暴走、回転機器脱輪、等)により、人間に危害を加える可能性がある④。
そのため、安全の観点から手法とハードウェア技術の整合性向上が課題である。⑤
① 「世に出回る製品」とあるので、「市場に流通している」は重複しています。また、整合(性)といったワードが頻出しているので、課題の主張が何度も繰り返されているような印象を受けます。→「市場に流通している製品は、手法とハードウェアの組み合わせが不適切なものがある。」
② 「例えば」は例示を示す接続詞です。この文では、整合性がないとどのような結果になるかといった説明文になっています。→「組み合わせが不適切な製品は、想定外の挙動を起こすことに繋がる。」
③ 「その結果」以降の文が例示です。→「例えば」
④ この部分は例示なので、具体例にスポットライトをあてましょう。→「ロボット暴走や回転機脱輪など機器が想定外の挙動を示し、人間に危害を加える可能性がある。」
⑤ まとめると
→「 現状、市場に流通している製品は、手法とハードウェアの組み合わせが不適切なものがある。 組み合わせが不適切な製品は、想定外の挙動を起こすことに繋がる。例えば、ロボット暴走や回転機脱輪など機器が想定外の挙動を示し、人間に危害を加える可能性がある。
そのため、安全の観点から、手法とハードウェア技術の整合性向上が課題である。」
1.2明確な機能定義に基づくシステム設計
システム完成直線⑥に手直しが発生すると、システム完成が遅れ社会に大きな影響をもたらす⑦。システム設計の当初段階において、必要な機能・目的・納期スケジュールを関係者で明確に設定しておく必要がある⑧。
そのため、納期管理⑨の観点から明確な機能定義に基づくシステム設計が課題である。
⑥ →直前
⑦ 完成が遅れるのは当たり前ですね。大きな影響が抽象的で何を表しているのか良く分かりません。直前の手直しによって発生する弊害を書くべきです。例えば、「初期段階での手直しに比べ、時間、コスト、労力といったリソースが大幅に消費される。(また、社会が得られる便益も先送りされることから、機会損失といった影響が懸念される。)」といった具合になります(カッコ書きは蛇足気味)。
⑧ 必要性についてもう少し説明すべきです。また、課題の表現に近いので、少し説明も工夫した方が良いですね。例えば、問題文にある大規模かつ複合的なシステムというワードを用いて、「大規模かつ複合的なシステムは分業作業となるため、関係者が多く最終段階で障害を起こす可能性が高い。よって、システム設計の初期段階において、必要な機能・目的・納期を関係者間で共有することが重要である。」
⑨ 納期に限らないので、「マネジメントの観点」ですかね。
1.3最新技術を応用したシステム開発
陳腐化した技術を用いてシステム開発を行うと、動作速度面やセキュリテイ面において問題が生じることがある。よって、システム設計において常に世の中の最新技術を導入可能か検討することが大切である⑩。
そのため、技術の観点から実績のある最新技術を積極的に応用するシステム開発が課題⑪である。
⑩ システム開発とシステム設計は、意図して使い分けていますか。「世の中の」は不要。
⑪ 前段の背景とつながっていません。前段では、導入の可否を検討することが重要と言っているにもかかわらず、ここでは検討ではなく応用することとしています。また、実績のある最新技術との表現に違和感が覚えます。実績があるのであれば、最新と呼べるのでしょうか。実装可能なもののうちで最新であることを言いたいのですかね。さらに、「応用するシステム開発」の意味合いが良く分かりません。最新技術を応用できる制度・環境づくりを言っているのでしょうか。それとも、積極的に応用してシステム開発に臨むべきだという主張なのでしょうか。どちらの場合であっても、分かりづらい表現です。
解決策
2.最も重要と考える課題と理由
「手法とハードウェア技術の整合性向上」が、最も重要な課題と考える。なぜなら、当課題が安全の優先度が最も高いからであるからである⑫。
2.1アジャイル開発による設計サイクルの加速
手法とハードウェア技術の整合性確認を設計初期段階から⑬行うことが必要である。そこで、アジャイル開発による設計サイクルの加速化⑭を提案する。これにより、小単位で実装とテストの繰り返し開発を進めることで、設計初期段階で不具合を発見し短期間で修正することができる⑮。
その結果、アジャイル開発により、手法とハードウェア技術の整合性向上に寄与できる⑯。
⑬ アジャイル開発は、システムを小単位に区切ってPDCAを回す手法ではありませんか。初期段階から確認を行う目的と小単位ごとに確認を行っていく手法がミスマッチです。→「小単位で」
⑭ 「設計サイクルの加速化」との表現は、分かりづらいです。設計サイクルとは何かを説明しないといけません。PDCAのことですかね?そうであるならば、「そこで、PDCAサイクルを機能ごとに実施し、システム設計の迅速化と整合性を確保するアジャイル開発を導入する。」でいかがでしょいか。
⑮ 例示のケースですと効果はすでに説明してしまったので、具体的な説明や、例示などを記載すると良いと思います。解決策は、 やること(行動)→やった結果(効果)→具体例 という構成を意識して書きましょう。
⑰ 整合性向上を図るための解決策を書いているので、この結果部分は不要。
2.2VR・デジタルツイン技術による成果物の精度確認
システム構築の途中段階で成果物の完成度を確認できれば、手戻り修正頻度を減らすことができる。
そのため、設計の節目においてVR・デジタルツイン技術により成果物の妥当性ならびに問題点評価を行う。成果物をデジタル映像の世界に反映し現実世界でも不具合なく運用できるか事前に確認することで、次の設計開発のステップへ効率的に移行する⑱。これにより、設計の要所要所で不具合を除去・修正することで、手法とハードウェア技術の整合性向上へ寄与できる⑲。
⑱ この部分は、前段部分の説明と内容が重複ぎみです。具体的な説明または例を書きましょう。
⑲ ⑰同様。
2.3インターフェースの可視化
手法とハードウェア技術のインターフェース技術が、特定の人物によりブラックボックス化していると、システム変更の際の作業が属人化してしまう⑳。その結果、システム変更の長期化やコスト増加へ繋がるため手法とハードウェア技術の親和性向上に支障が生じる㉑。
そのため、インターフェース監視機能や外部コードのモデルを視覚的に表示する機能を付加することでインターフェースを可視化し、手法とハードウェア技術の整合性向上に貢献できる㉒。
⑳ インターフェースに限ったことなのですか。また、特定の人物によるブラックボックス化=属人化と考えますので、要因と結果が同じになっています。要因は「ブラックボックス化」、結果は「変更が難しい」です。→「・・・ブラックボックス化してしまうと、システム変更作業が難しくなる。」
㉑ 長期化とコスト増が、親和性に影響をもたらすのか理解できません。また、これまで整合性との表現でしたが、親和性とした意図も不明です。
㉒ ここでは、具体例を述べているのでとても良いと思います。しかし、具体例の前段で、「インターフェースの可視化をします」といった説明をしたうえで、「例えば」といった接続詞で結ぶと良いでしょう。最後の部分は、⑰同様、不要。→「よって、属人化を防ぐことため、インターフェースを可視化する。具体的には、インターフェース監視機能や外部コードのモデルを視覚的に表示する機能を付加する。」
新たなリスク
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
3.1 新たに生じうるリスク
短期間で開発し何度も確認・修正を繰り返す場合、スケジュールが流動的となり、設計工程および設計工数の増加に繋がるリスクがある㉓。
3.2それへの対策
設計チームを結成し、設計工程進捗をプロジェクト(PJ)リーダーを配置した定期的PJ会議にて確認する㉔。これにより、工程遅延を回避する㉕。
㉓ アジャイル開発で加速化といっているので、工程が増加することに違和感があります。リスクとして存在するのは理解できますので、もう少し全体マネジメントに論点を移した方が良いと思います。例えば、「・・・場合、全体のスケジュール、及びコストの管理に悪影響が生じるリスクに加え、全体の方向性を見失うリスクがある。」といった具合になります。
㉔ 「確認する」とありますが、誰が何を確認するのか分かりません。また、詰め込みすぎで、組織を作ることが解決策なのか、リーダーを置くことが解決策なのか、定期会議が解決策なのか判然としません。
㉕ ⑰同様
要件・留意点
4.業務遂行における必要な要件
4.1技術者としての倫理
公共の安全を最優先する。人命をおびやかす危険な設備を構築㉖しないように配慮する。
㉖ 問題は、「業務遂行における」ですよ。今回の業務は、システム開発ではありませんか。
4.2社会の持続可能性
手法とハードウェア技術の整合性を向上により安全な設備を構築することで、SDGs「つくる責任 つかう責任」の実現に貢献する。 以上