添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
働き方改革の派生
今回お届けするのは、みんな大好き「働き方改革」です。このテーマが重要であることは、これまで再三再四お伝えしてきたので、もういいですよね。とはいえ、このテーマは様々な形で派生する可能性はぜひとも認識しておいた方が良いです。
働き方改革の派生として考えられるテーマは、次のようなパターンです。
- 人手不足への対応
- 持続可能な建設業
- 建設業の処遇改善
- 生産性の向上
このようなパターンで出題されても、焦ることはありません。対応は基本同じだからです。ただし、用意した働き方改革の論文をそのまま書くのはダメですよ。ちゃんと、題意にそった形、的確な解答、変更した場合の文脈など、適切にカスタマイズすることが重要です。
問題のニュアンスがちょっと変わった場合、特に注意が必要なのが課題設定です。例えば、最後の例示にある生産性の向上といった問われ方をすると、かなりテーマが限定的になるので、課題設定は難しくなると思います。そこで、上記4つのパターンについては、あらかじめ課題設定しておくとよいでしょう。また、題意に沿った合理的な説明をした上で、用意した解決策に結び付く課題を選定すれば、一気に解決策以降が書きやすくなります。
予想が当たったら、「予想通りだー!」と浮足立たずに、冷静に問われるていることに下線を引き、骨子を作成するといった基本行動は必ず行いましょう。油断は、大きなミスにつながりますので、みなさまご注意ください。
論文
課題
(1) 働き方改革を推進するための課題
1)長時間労働の是正
厚労省の統計では、2022年の建設業の年間労働時間は1962時間である。これは、全国平均よりも約2割高い。この原因の1つとして、建設業全体に占める作業員の約4割が、週休1日しか確保できていないことが挙げられる。よって、仕組み面の観点から、長時間労働の是正が課題である。
2)多様な人材の確保
日本の生産年齢人口は減少傾向にある。建設業では、技能労働者の減少や、労働者の高齢化、若年層の確保が困難であること等が特に問題視されている。一方、老朽化インフラは増加傾向にあるため、工事件数に対する労働者の不足が想定される。よって、人材面の観点から、多様な人材の確保が課題である①。
① 人材面の観点から人材の確保では、重複しているように見えます。また、「多様な」とありますが、多様な人材の確保を必要とする背景がありません。単純に担い手の確保が課題で良いのではないでしょうか。
3)デジタル化による生産性の向上
IoT、AI、クラウド等のデジタル技術の発展が加速している。 一方、建設業は「屋外での作業、一品生産」という特性が強く、協働する関係者も多いこと等から、デジタル化が遅れており、1人当たりの労働生産性も低い。よって、効率面の観点から、デジタル化による生産性の向上が課題である。
解決策
(2) 最重要課題と解決策
建設業全体に波及しやすい仕組み面を改善することが効果的であるため、最重要課題は「長時間労働の是正」である。以下に解決策を述べる。
1)週休2日工事の拡大
①労務費等の経費補正:週休2日により工期が長くなると、機材や人材を確保するための費用が増える。このため、発注者は週休2日の確保に適した労務費や経費を予算計上する②。
② 予算計上するというより、適正な積算が必要なのではないでしょうか(予算は、この積算に基づく要求するものです)。
②技能労働者の月給制の導入:技能労働者は6割以上が日給制であり、週休2日になると収入が減少する。技能労働者が安定して働くために、雇用主は月給制を導入する③。
③ 月給制にしても、収入が下がってしまっては問題の解決になりませんよね。よって、この問題の根っこは、処遇改善にあると考えます。よって、適正な労務費・法定福利費・建退共等の改善を図るため、建設キャリアップシステムなどに言及してはいかがでしょうか。
2)適切な工期の設定
著しく短い工期は休日出勤を助長するため、発注者による短工期での発注を禁止する④。また、悪天候等による工期延長に対応できるよう、発注者は発注準備段階で作業不能日を設定したり、工期延長を認める⑤契約にしたりする。
④ 禁止まではなかなか難しいのではないでしょうか。平成29年の通達では「週休2日対応の工期設定を行っているが、実態との乖離もみられることから、国債等の活用による工期の平準化や余裕期間制度を活用するとともに、準備・後片付け期間の見直しや工期設定支援システムの活用等により、適切な工期の設定に努められたい」とあるので、適正な工期設定の具体的な行動として下線部を引用してはいかがでしょうか(その他の部分は後述してますね)。
⑤ 発注者が誰なのか分かりませんが、行政では不稼働日の考慮や不可抗力による工期延長はすでに実施済みです。また、「・・・したり」は口語調なので、「や」でつないであげると良いでしょう。
3)施工時期の平準化
①発注準備段階:施工時期は年度末に集中する傾向にある。このため、債務負担行為を活用⑥し、工事の閑散期である4~6月の施工も可能にする。また、余裕期間制度を活用し、受注者が工事の開始日や完了日を選択できるようにすることで、機材や人材を調整⑦しやすくする。
②施工時:情報共有システムASPを活用して、発注者と受注者で書類や図面、工程と進捗等を効率的に共有する⑧。
③完成後:工事実績の工程を収集し、評価を行う⑨。発注者はこれを次回の工事発注に活用したり、自治体毎に平準化の進捗や取り組み状況を見える化したりする⑩。
⑥ 債務負担行為ということであれば、公共工事だと思いますので、これを対象とした提案であることを書いた方がよいでしょう。
⑦ →「調達」
⑧ 業務の効率化でいうとその通りなのですが、見出しは「施工時期の平準化」です。この内容が、平準化なのか疑義があります。
⑨ 良い視点なのですが、どのように評価するのかといったところまで説明があるともっと良いと思います。また、評価をどのように平準化につなげるかと言った視点も説明が必要です。
⑩ 見える化の目的が良く分かりません。誰に向けて見える化するのか、その結果でどのような効果を得ようとしているのか明確にしましょう。
リスク
(3) 解決策を実行しても生じうるリスクと対策
週休2日制や工期・施工時期の適正化に伴い、業務費用⑪の増加が懸念される。これにより、自治体や企業の予算が枯渇⑫し、老朽化対策や災害対策等のインフラ整備に遅れが生じるリスクがある。
対策は、国土交通データプラットフォームのオープンデータを業務に活用し、業務の効率化と費用の抑制⑬を図ることである。例えば、3次元点群データと複数の事業者が保有する構造物や地盤の調査・数値解析データを連携する。これにより、設備の点検計画の策定を効率化できる。また、3次元の都市データと災害情報を連携する。これにより、防災情報を可視化して提供することができ、住民自身が取るべき行動を理解できるようになり、自治体職員や事業者の負担減少に繋がる⑭。
⑪ →「工費」、「工事請負費」
⑫ 枯渇はさすがに言い過ぎの感じがします。「財政状況の悪化を招き」、「財政をひっ迫させ」など少しトーンを落としましょう。
⑬ 誰の行動ですか(受注者、発注者?)。
⑭ リスクは、整備の遅れとありますので、ソフト施策を対応策として述べることは、少々ズレているように感じます。
要点・留意点
(4) 業務遂行に当たり必要となる要点と留意点
業務遂行に当たり、常に社会全体における公益を確保する視点と、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける視点を持つ必要がある。業務の各段階で、常にこれらを意識するように留意する。 以上