添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
グリーン社会小委員会の資料が良い!
先般、令和7年度リアル予想問題第3弾をお届けしたところです。第3弾のテーマは、「カーボンニュートラル×分野横断」です(予想問題第3弾はコチラ)。カーボンニュートラルは、一分野がどんなに努力しても達成できる目標ではありません。
それぞれの分野が必死になって取り組んでも、達成できるか否かといった挑戦的な目標です。よって、各分野が連動してシナジー効果を発揮しなければならないというわけです。この分野横断を語るうえで、当然ですが専門分野の知識だけでは足りず幅広い知識が必要になります。
では、どうすれば良いのかということを考えると、答えはすぐに出てきます。良い資料を発見し、知識を得るという行動をとれば良いのです。そこで、良い資料がありましたので、みなさんに紹介しようと思います。
国には、様々な審議会・委員会が存在しています。これらの委員会の議題は、そのまま問題になってもおかしくない最近注目の社会問題を取り扱っています。このような審議会・委員会の中にカーボンニュートラルを中心とした議論を行っている「グリーン社会小委員会」なるものがあります。
さらに、国土交通省の環境分野での施策・プロジェクトのとりまとめに向けた調査審議を行うため、社会資本整備審議会環境部会・交通政策審議会交通体系分科会環境部会グリーン社会小委員会が合同で会議を催しています。もうこの段階で、分野横断的な体制になっていますよね。
注目した資料は、これらの会議資料のうち、第4回合同会議の「資料2 これまでのご議論の整理」です(資料はコチラ)。この中には、各部門の取組みが紹介されており、カーボンニュートラルの知識を備えるにはうってつけです。紹介されている取り組みは、運輸分野、くらし・まちづくり・インフラ分野、再生エネルギーに区分されています。
さらに、運輸分野だけでも、自動車部門、船舶部門、鉄道部門、空港部門、物流部門と多岐にわたっています。それぞれの分野でどんなことが行われているのか一目瞭然です。さらに、全分野の課題も提起されているので、課題の検討にも役立ちます。

予想問題第3弾を解いてみようと思った方は、論文を書く時にこの資料を参考にするとスラスラかけるのではないでしょうか。参考にしてみてください。カーボンニュートラルの知識が、格段にレベルアップすること請け合いです。
論文
本日の添削LIVEは、令和4年度 建設部門 必須科目Ⅰ「CO2削減・吸収」をお届けします。過去にも、カーボンニュートラルに関する出題があります。今回の記事ととても親和性のある内容になっています。さらに、チェックバックと完成論文を一挙に公開しますので、大変参考になると思います(初稿はコチラ)。それでは、早速論文を見ていきましょう。
「CO2削減・吸収」【チェックバック①】
(1)CO2削減・吸収量増加のための課題
1)省エネの促進と再エネの拡大
日本の電源構成は、約75%が火力発電である。火力発電は、化石燃料の燃焼時に大量のCO2を排出する。このため、エネルギー消費を抑制する取組が必要である①。よって、エネルギーの観点②から、CO2排出量を削減するために、省エネの促進と再エネの拡大が課題である。
① 結論は、省エネと再エネなのですが、背景には省エネの必要性しかありません。再エネの必要性についても言及しましょう。→「エネルギー消費を抑制する取組と、化石燃料に依存しないエネルギー供給が必要である」
② 観点と課題がやや重複気味に感じます。「電力需給の観点」としてはいかがでしょうか。
2)グリーンインフラの整備
現在の森林等によるCO2吸収量は約50百万トンである。この数値は、10年前よりも約10百万トン減少している。このため、CO2の吸収源を確保する必要がある。よって、自然との共生の観点③から、CO2の吸収源を確保するため、森林、農地、都市の緑化、ブルーカーボン等のグリーンインフラの整備が課題④である。
③ 共生ですから、人間の営みにより自然環境が損なわれている結果として、吸収量が落ちているという説明も背景で欲しいところです。
④ 「CO2の吸収源を確保するため」とありますが、この目的は前述の必要性ですでに説明済みです。また、整備の例示がたくさんあり総花的に見えます。加えて、整備というより保全創出の方が内容に即しているのではないでしょうか。これはトレンドにのって、30by30の実現を課題にしてはどうでしょう。言いたいことがすんなりまとまり技術力もお披露目できると思います。
3)電気自動車に対応した交通システムの構築
運輸部門のCO2排出量は、日本のCO2排出量の約20%を占める。このうち、約85%が自動車によるものである。自動車からのCO2排出量が多い原因の1つとして、EV等の化石燃料を使用しない自動車の普及率が5%程度と低いことが挙げられる。よって、交通の観点から、CO2排出量を削減するために、電気自動車に対応した交通システムの構築が課題⑤である。
⑤ 交通システムの構築がなぜ普及につながるのかよく分かりません。システムではなく、充電スタンドの充実など都市基盤が必要なのではありませんか。背景において交通システム環境が不十分であることにより普及していないという仕組みを記載する必要があります(都市基盤であっても同様)。
(2)最重要課題と解決策
最重要課題は、「省エネの促進と再エネの拡大」である。理由は、エネルギー部門のCO2排出量は全産業の中で約40%と最も高く、他の課題よりも効果が大きいと考えたからである。以下に解決策を示す。
1) ZEHの普及促進
住宅のエネルギー収支をゼロ以下にするために、省エネと創エネを実現できるZEHの普及を促進する。
ZEHの普及を促進するために、制度面では、住宅の省エネ基準の段階的な引き上げを行う。導入の支援面では、ZEH水準の住宅の購入に際し、補助金を設ける⑥。技術面では、新築とリフォームの両面に適用しやすい省エネ性能に優れた建材・工法を開発する⑦。建材・工法の適用に際しては、住宅の形状や方位により必要な断熱性能が異なることに留意し、過剰断熱によるコスト高を防ぐ最適設計を行う⑧。
⑥ これは両方とも制度ではありませんか。また、補助金はZEH導入のインセンティブになることは理解できますが、基準を引き上げるとなぜZEHが普及するのか分かりません。
⑦ エネルギー使用効率が上がることは分かりますが、これもなぜ普及に関連するのかよく分かりません。技術があるからといって、「じゃあZEHにするか」とはならないと思います。省エネ性能に優れた建材を開発することで、LCCコストが従来住宅と同等といったようなロジックを示さないと読み手の共感を得ることはできません。
⑧ ZEHの普及を促進するという目的との関連性が希薄であり、記述の意図がつかめません。解決策は、具体例が欲しいところです。先進事例を把握し、解決策の具体化を試みましょう。
2)道路インフラを活用した再エネの導入
⑨高速道路の料金所の上屋、中央分離帯、暫定2車線区間の未利用地等の道路空間を活用し、太陽光発電を行う。また、太陽光パネルをアスファルト舗装の上に敷き詰める路面型太陽光発電を導入する。発電した電気は、エネルギーの損失を最小限にするため、EVの充電や蓄電、道路の照明等、太陽光パネルの近傍で利用する。
⑨ 提案の理由がほしいです。また、なぜ道路分野なのかといった部分にも言及すると説得力が高まります。例えば「身近なインフラである道路分野において、クリーンエネルギーへの転換を図ることで再エネ導入の拡大と国民の機運を醸成する。具体的には、高速道路の・・・」
3)カーボンニュートラルポート(CNP)の整備
⑩燃焼時にCO2を排出しない次世代エネルギーである水素やアンモニアを受け入れるための港湾(CNP)の整備を行う⑪。例えば、洋上風力発電や太陽光発電で発電した電気を電気分解⑫し、水素やアンモニアを製造するプラントを整備する。また、海外から輸入する水素やアンモニアを安全に積み込み、貯蔵する施設を整備する。その他、水素やアンモニアを、火力発電所や製鉄所に運搬するためのパイプラインを整備する。
⑩ 道路と同様、なぜ港湾なのかといった記述があると良いと思います。例えば、「国際物流の拠点となる港湾において」といった表現が考えられます。
⑪ 見出しですでに略語化されています。→「CNP整備を行う」
⑫ 電気を電気分解するのですか。電気分解に必要な電力をまかなうために再エネ電源を活用するのですよね。
(3)新たに生じうるリスクと対応策
1)分散型電源の増加による電力品質の不安定化
解決策を実行することにより、太陽光等の分散型電源の割合が増える。分散型電源は、供給量が天候に左右されるため、電力の供給が安定せず、電気の品質が不安定になるリスクがある⑬。対策は、調整力の高い揚水発電⑭の活用である。揚水発電を活用するためには、夜間の余剰電力が必要になるため、原子力発電所の再稼働⑮に向けた安全対策も併せて行う。
⑬ 同じようなことを言っていますね。どちらかで良いでしょう。
⑭ 揚水電力も基本的には降水量をはじめとした天候の影響を受けるのではありませんか。
⑮ これが安全にできれば、再エネの議論にならないと思います。ここは、安直に提案するのはリスキーだと感じます。分散型電源の不安定さは、マネジメントで克服するという考え方が、最近の見解ではないでしょうか。そうなると、VPPやDR(ちょっと電気っぽいので、単にエネルギーマネジメントでも良いでしょう)といった提案が考えられます。
(4)業務遂行の要点・留意点
技術者倫理の観点から必要になる要点は、社会全体における公益を確保する視点と、安全・健康・福利の優先である。社会持続性の観点から必要になる要点は、環境・経済・社会における負の影響を低減し、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける視点を持つことである。業務遂行の各段階で、常にこれらを意識するように留意する。 以上
「CO2削減・吸収」【完成】
(1)CO2削減・吸収量増加のための課題
1)省エネの促進と再エネの拡大
日本の電源構成は、約75%が火力発電である。火力発電は、化石燃料の燃焼時に大量のCO2を排出する。このため、電力消費を抑制する取組や、化石燃料に依存しない電力供給が必要である。よって、電力需給の観点から、省エネの促進と再エネの拡大が課題である。
2)30by30の実現
現在の森林等によるCO2吸収量は約50百万トンであり、CO2排出量に対して約5%と少ない。これは、CO2吸収源である森林が人間活動により減少したことや、植林を行う担い手の不足により高齢化人工林が増加したこと等が原因である。このため、都市緑化や植林等を通じて、CO2吸収源を増加させる必要がある。よって、自然との共生の観点から、30by30の実現が課題である。
3)電気自動車(EV)に対応したインフラの整備
日本のCO2排出量の約15%が、自動車によるものである。このCO2排出量を削減する方法として、EVの普及がある。しかし、現状のEVの普及率は、5%程度と低い。EVが普及しない原因として、山間部を中心とした地方の充電スタンド不足や、都市部での充電渋滞の発生等が挙げられる。よって、交通の観点から、EVに対応したインフラの整備が課題である。
(2)最重要課題と解決策
最重要課題は、「省エネの促進と再エネの拡大」である。理由は、エネルギー部門のCO2排出量は全産業の中で約40%と最も高く、他の課題よりも効果が大きいと考えたからである。以下に解決策を示す。
1) ZEHの普及促進
住宅のエネルギー収支をゼロ以下にするために、省エネと創エネを実現できるZEHの普及を促進する。
ZEHの普及策として、ZEH水準の住宅の購入者に補助金を交付するなど支援制度を設ける。技術面では、新築とリフォームの両面に適用しやすい断熱性能に優れた建材を開発する。断熱性能の向上により、室温の変動が少なくなり、快適性が向上するとともに、光熱費を抑制しZEH導入のインセンティブとする。
2)道路インフラを活用した再エネの導入
道路の日常管理におけるエネルギー消費量は、約8割が電力使用によるものである。これを再エネで賄う。具体的には、高速道路の料金所の上屋、中央分離帯、暫定2車線区間の未利用地等の道路空間を活用し、太陽光発電を行う。また、太陽光パネルをアスファルト舗装の上に敷き詰める路面型太陽光発電を導入する。発電した電気は、エネルギーの損失を最小限にするため、EVの充電や蓄電、道路の照明等、太陽光パネルの近傍で利用する。
3)カーボンニュートラルポート(CNP)の整備
国際物流の拠点である港湾において、燃焼時にCO2を排出しない次世代エネルギーである水素やアンモニアを受け入れるためのCNPの整備を行う。例えば、洋上風力発電や太陽光発電で発電した電気で水を電気分解し、水素を製造するプラントを整備する。また、海外から輸入する水素やアンモニアを安全に積み込み、貯蔵する施設を整備する。その他、水素やアンモニアを、火力発電所や製鉄所に運搬するためのパイプラインを整備する。
(3)新たに生じうるリスクと対応策
1)分散型電源の増加による電力品質の不安定化
解決策を実行することにより、太陽光等の分散型電源の割合が増える。分散型電源は、供給量が天候に左右されるため、電気の品質が不安定になるリスクがある。対策は、調整力の高い揚水発電や蓄電池の活用、電力の広域運用による調整、CEMSやFEMS等のエネルギーマネジメントシステムの活用である。
(4)業務遂行の要点・留意点
技術者倫理の観点から必要になる要点は、社会全体における公益を確保する視点と、安全・健康・福利の優先である。社会持続性の観点から必要になる要点は、環境・経済・社会における負の影響を低減し、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける視点を持つことである。業務遂行の各段階で、常にこれらを意識するように留意する。 以上