添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
引き算の美学
最近、多くの添削をしている中、気になることがあります。みなさんは、私と違ってとても良い人たちなので、丁寧にたくさんのことを読み手に伝えたいのだと思います。それ自体は、とても良いことなのですが、こと技術士論文においてはもろ手を挙げて賛同するわけにはいきません。
論文の書き始めのころは、3枚も書けない…と思っていた人も、今となっては書きたいことが規定の文字数に収まらないといった悩みに変わっていると思います。そんな、限られたスペースで言いたいことを漏れなく伝えることは非常に難しいと言えます。
当たり前ですが、すべてを伝えることはできないので、取捨選択を強いられることになります。この取捨選択を間違えると、冗長的な文章になったり、逆に説明不足になったりします。まさに、この選択が論文の完成度に直結するスキルと言えます。
今日は、冗長的な方を考えてみましょう。これは、テクニックのページにもありますが、よくある指摘として重複表現があります。単純なもので言えば、「頭痛が痛い」です。これは、同じ感じが連続したら要注意なので、比較的早期に改善できます。
厄介なのが文をよく読んでみると、「これがなくても意味伝わるんじゃない」と言われる重複です。これは自分で見つけるのは結構難しいです。例えば、「私自身も非常に多くこのミスを繰り返しました。」といった表現です。一見して合っているような気がします。
何が重複しているかというと、繰り返していると言っているので「非常に多くの」はなくても良いですよね。つまり、「繰り返し」と「多くの」が重複しています。なくても良いものは「書かない」が鉄則です。しかし、これも1センテンスの中の問題なので、重大な問題にはならないでしょう。
この結局同じこと言っているという現象は、何も一文中のみに発生する現象ではないのです。課題のパラグラフで、必要性→結論の流れにおいて、よくこの重複が見られます。例えば、「人手不足を解消するためには、作業の効率化が必要である。よって、効率化の観点から、デジタル技術を活用した人手不足解消が課題」といったパターンです。
これは、重複を強調して書いているので、同じような言葉が繰り返されており、分かりやすいと思います。例えば、効率化が必要と言っているのに効率化の観点って…、また人手不足の解消って言っているのに人手不足の解消が課題って…同じことばっかり書いてるじゃんと思われてしまいます。
異なる表現で書くことはもちろん、結論に向かってどんどん絞り込んでいく感じが望まれます。観点は必要性を総括したもの、観点と課題の関係は【観点】>【課題】とすることなどが留意点となります。例えば、「デジタル技術の観点から新技術の導入が課題」との表現は観点と課題が逆になっていますよね。
また、「生産性の観点から、作業の効率化が課題」といった表現は、微妙なのですが私はNGと考えます。これは生産性≒効率化と考えるためです。このように微妙な感じになると判断が付きにくいと思いますが、課題と観点を書く際には、【観点】>【課題】の関係になっているか必ず確認しましょう。
このように重複は、解答スペースを無駄に消費するだけでなく。同じことを何度も説明しちゃうコミュニケーション能力が低い人と判断されてしまいます。まさに、百害あって一利なしです。無駄な言葉は1語として書かないという意識を強く持ちましょう。
論文
本日の添削LIVEは、論文投稿者による予想問題になります(問題文はコチラ)。私も地方創生は、予算の柱になっていますし、重要なトピックと考えています。また、問題の完成度も高く、みなさんもチャレンジすべき良問といえます。そんなすばらしい問題を解いた論文も、本日完成を迎えています。ぜひ、ご参考に!それでは早速論文を見ていきましょう。
1.多面的な観点と課題
(1)いかにスマートシティを推進するか
近年、東京への一極集中化に伴う地方都市の過疎化により地方の労働力が低下しつある。これにより、公共サービスの提供やインフラ管理等が行き届かないことが懸念される。限られた労働力で地方都市を維持するには、近年急速に発展するデジタル技術を活用し、効率的に都市を運営する必要がある。よって、持続性の観点からスマートシティの推進が課題である。
(2)いかに交通空白を解消するか
高齢化が顕著な地方では、日常生活を送るための移動手段として公共交通が不可欠である。しかし、利用者の減少を背景に、公共交通事業者の採算が確保できず、路線廃止や運航サービスの低下を招いている。そのため、公共交通手段を持たない地域に対し、生活に必要な移動手段を提供する必要がある。よって、くらしの観点から、交通空白の解消が課題である。
(3)いかに良好な都市環境を形成するか。
地方部では人口減少に伴う開発需要の低下等により低未利用地の拡大が進行している。これにより、経済活動の縮小やインフラ維持コストの増加を招く等、住民生活に悪影響を及ぼす。そのため、都市の緑化や歩きやすい移動空間を創出し、遊休資産や既存ストックの活用を促すことが重要である。よって、土地利用の観点から良好な都市環境の形成が課題である。
2.最も重要な課題と解決策
都市運営の効率化は、建設業界における共通課題であるため「いかにスマートシティを推進するか」を最重要課題とし、以下に解決策を述べる。
(1)ドローン航路
移動が困難な中山間地域でも安定した物資輸送を実現するため、ドローン航路を整備する。整備にあたり、河川上空等を航路とし落下被害リスクを最小限にする。併せて、陸空のモビリティが荷物の積替を行う拠点としてターミナル2.0を整備する。これらにより、災害救援物資の輸送迅速化やアクセス困難な送配電設備のインフラ点検等、分野横断的な活用も期待できる。
(2)IoTの活用
働き手や担い手が減少する中でも地域の安全を確保するため、IoTを活用した防災対策を行う。例えば、水路や河川に水位計を設置して水流を監視し、センサから得られるデータを収集することで、河川の氾濫を予測する。センサからの通信については、光ファイバー網を整備した上でLPWAを用いることで、低電力で長距離かつ広範囲の通信を可能とする。
(3)3D都市モデル
高さ情報を持つ3D都市モデルを活用し、効果的に災害リスクを把握する。例えば、洪水や津波等の災害をシミュレーションにより、建物単位で被害を予想する。建物の高さや構造材(鉄筋・木造など)の属性データを解析し、避難経路の最適化や避難可能施設の検討を行い、より緻密で精度の高い防災計画を作成する。
3.新たなリスクと対応策
システムの複数化により、セキュリティ対策が多層化され、システム毎にアップデートが必要になるなど管理が煩雑になりうる。また、大地震によるデータセンターの破損など、データ喪失のリスクも生じる。
対応策として、多層防御のセキュリティ対策ツールを導入する。例えば、エンドポイントセキュリティの統合管理を行い、脅威の検知・防御を強化する。データセンターについては、耐震・免振化を推進し、データや機器を安全に保管・運用できる体制とする
4.必要な要件と留意点
技術者倫理の観点
DX化に際しては、公衆の安全・健康・福利を最優先とすることが要件である。情報技術の活用にあたり、関連法令やガイドラインを遵守する。工期やコストを優先するあまり不完全なシステムを構築し、公衆に不利益をもたらすことがないよう留意する。
社会の持続性の観点
環境の保全を最優先とすることが要件である。DX化にあたり、再エネ電力を推進するなど、温室効果ガスの排出を抑制する。また、留意点は、電力消費量を算出・可視化し、省エネや節電対策を強化することで、CN社会の構築に貢献することである。 以上