添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
令和6年度予算の3本柱
令和6年を迎え、新年度の国動向が気になりますよね。令和6年度における国の動向は、予算案を見ればその特徴を把握することができます。過去記事では、令和6年度予算の概算要求を踏まえ、試験問題の傾向を解説しました。
先月の国土交通大臣会見の中でも、三つの柱を強調して説明をしていました。「国民の安全・安心の確保」、「持続的な経済成長の実現」、「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」の3点です。具体的には、防災・減災、国土強靱化、GX・DXや、持続可能な観光の推進、物流や建設業における「2024年問題」への対応、住宅セーフティネット機能の強化などが挙げられいます。
このような国の動向を勘案すると、3本柱は必須科目Ⅰにそのまま出題されそうな気配です。令和5年度では、巨大地震が出題されていますので、「持続的な経済成長の実現」、「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」の二つに絞れそうです。
まちづくりGX
令和5年度の予想では、1位 観光、2位 GXと予想し盛大に外したところですが、大臣も言及しているように今年こそ注目して良いのではないでしょうか。ちょっと、予想は先取りが過ぎましたね。
その中でも注目すべきは、まちづくりGXです。「次の時代はDX・GXだ」と言われてから数年が経過し、DXはすでに必須科目として出題済みです。
満を持してGXが出題されるとの見立てです。これを裏付けるように、都市計画基本問題小委員会では、令和5年4月に「多様な価値観や社会の変化を包摂するまちづくりを目指して」と題して中間とりまとめがなされています。この内容の一丁目一番地が「まちづくりGX」です。
中間とりまとめがなされた次の都市計画基本問題小委員会では、まちづくりGXの検討状況が報告されています。この中で、緑地、森林、エネルギーといった視点で、今後の方向性を示しています。緑地はグリーンインフラ、森林は森林環境税、エネルギーは脱炭素社会と密接な関係にあり、時事的な観点でも大変関心が集まっています。
練習論文は必須のテーマと言えます。
論文
今回の論文は、令和5年度建設部門都市及び地方計画の選択科目Ⅲ「空き家」がテーマです。どのような、論文になっているのか早速見てみましょう。
課題
1 多面的な観点から取り組むべき課題とその内容を以下に記す。
(1)活性化の観点から、中心市街地の空き家をいかに活用するか①
中心市街地で空き家、空き店舗が発生し、特に商業中心地において、空き家・空き店舗が集中して増加している②。そのため、区域を絞った重点的な対策③が課題である
① タイトルと内容が異なっています。内容は、「区域を絞ること」が課題としています。
② 一文中に、「中心市街地で」、「商業中心地において」と2つの場所が示されています。中心市街地であることは、問題の条件です。また、中心市街地の中にある商業地を商業中心地と言っているのでしょうか。そうであるならば、商業中心地に空き家が集中していることを一般論として述べることに違和感があります。
③ 観点は活性化です(活性化という観点も解決策に近いので要再検討)。区域を絞ることがなぜ活性化につながるのか分かりません。
(2)発生抑制の観点から、中心市街地の空き家の発生をいかに抑えるか④
空き家は、 相続に伴って発生する⑤。その後所有者となった相続人が 活用に係る意思決定に時間を要している。結果、意向がない相続人が管理せずに空き家を放置したり、活用意向はあっても利用可能な相談先が少なく、買い手・借り手がみつからないまま放置するおそれもある⑥。そのため、 早い段階での対応が必要⑦である。
④ 観点と課題が同じになっています。また、観点は立場や見方を書くべきです。発生抑制は、解決策です。
⑤ 限定的に表現されていることに違和感があります。相続は、きっかけの一つに過ぎません。
⑥ 意思決定に時間がかかっていることの結果として、管理不全や買い手・借り手が見つからないといった現象を引き起こしているわけではありません。意思決定に時間がかかったとしても管理する人もいますし、買い手・借り手が見つからない要因は相談するところが少ないからと言っています。いずれも、問題の発生要因は、意思決定に時間がかかったこととは別にあります。
⑦ ⑥の通り、問題の要因は時間とは限らないので課題設定に違和感があります。また、タイトルと文中の課題に齟齬があります。
(3)管理の観点から中心市街地の空き家をいかに適切に管理していくか⑧
空き家を相続し、新たに管理することになった人が⑨、管理などの知識や意識が不足している⑩。しかし、所有者が適切な管理の方法や除却に係る情報を容易に入手し、相談できる環境が少ない。そのため特定空き家などの状態となる前の段階からの情報提供を行い適切に管理する必要がある⑪。
⑧ 観点と課題が同じになっています。
⑨ →「は」
⑩ 「意識」は不足するものではありません。また、新たな管理者は必ずしも、知識不足ではないと思います。よって、断定表現に違和感があります。→「管理知識の不足や管理意識が低い場合がある。」
⑪ 情報提供する人と適切に管理する人は別の人です。→「情報提供を行い、適切な管理を促す必要がある。」
また、タイトルと文中の課題に齟齬があります。
解決策
2 最も重要と考える課題は、集約型都市構造を進めるうえでも中心市街地の活性化を図ることは重要⑫であることから(1)の「活性化の観点から、中心市街地の空き家をいかに活用するか」を最重要課題として以下に解決策を記す。
⑫ 集約型都市構造を進めることと活性化がどのような関係にあるのか分かりません。よって、読み手はなぜ重要なのか理解できません。
解決策1 空き家等活用促進区域の指定
・中心市街地などの一定の地域に空き家等が集中している⑬一方で⑭、中心市街地の空き家の利活用を促進したいため⑮、市町村が空き家等対策計画に空き家の建て替えや用途転換の促進を図ることのできる空き家等活用促進区域⑯を指定する。⑰
⑬ 課題では、中心商業地に集中していると言っています。不整合ではないでしょうか。
⑭ 逆説的な使い方に見えますが、後述は逆接になっていません。一方での使い方に違和感があります。話題の切り替えとして用いているのであれば、そもそも前述部分は、問題の前提条件ですので必要ないと思います。
⑮ →「促進するため」
⑯ 構文がおかしいです。「計画に・・・図ることができる」になっています。
⑰ 一文が長すぎています。これにより、文全体がねじれています。話題が変わる部分で文をきりましょう。具体的には、「空き家等は、一定の区域に集中して発生する。空き家活用を促進するため、当該区域を空き家等活用促進区域に指定する。指定に当たっては、空き家等対策計画を策定し、建て替えや用途転換の促進を図る。」としてはいかがでしょうか。
解決策2 空き家等活用促進指針の策定
・中心市街地などの空き家の建て替えや用途転換を進めるため、市町村が空き家等対策計画に空き家等活用促進指針を定める⑱。具体的には、古民家をはじめとする空き家等のカフェ、物販店舗、交流拠点施設といった地域活性化に資する施設への用途変更や、居住人口の維持のための細街路に敷地が接する住宅の建替え等を空き家所有者に促す⑲。
⑱ 解決策1と同じ内容になっています。
⑲ 具体例を挙げることは、とても良いと思います。しかし、指針の策定が解決策であるにもかかわらず、本具体策は、空き家等活用促進区域の緩和効果の例になっています。この具体例を述べるのであれば、緩和策を書く必要があります。
※もっと多面的に解決策を書くべきです。例)コモンズ協定、市民緑地認定制度、立地適正化計画の都市機能誘導区域の設定など低未利用地対策を参考にすると良いでしょう。
解決策3 空き家等管理活用支援法人の活用
・所有者が空き家の活用や管理の方法、除却に係る情報を容易に入手し、相談できる環境が少ないため、空き家の活用・管理に係る相談や所有者と活用希望者のマッチング等を行う主体が活動しやすい環境を整備する必要がある。そのため、市区町村が、空き家の活用や管理に積極的に取り組むNPO法人、社団法人等を空き家等管理活用支援法人に指定する。⑳
⑳ 文が長いです。その影響で、主語述語がおかしいです。「所有者が・・・整備する必要がある。」になっています。行動主体が変わるときは、文を切りましょう。また、解決策はやることなので、「必要がある」といった必要性を述べるのではなく「・・・する。」といったやることを中心に書きましょう。
例えば、「所有者が空き家の活用や管理の方法、除却に係る情報を容易に入手し、相談できる環境が少ない。このため、空き家の活用・管理に係る相談や所有者と活用希望者のマッチング等を行う仕組みを構築する。具体的には、市町村が、空き家の活用や管理に積極的に取り組むNPO法人、社団法人等を空き家等管理活用支援法人に指定し、空き家対策の活動環境を整備する。」といった具合になります。
新たな懸念事項
3新に発生する懸念事項をその対応策をいか㉑に記す
(1)用途地域における環境を害するおそれ
用途地域内において活性化を行うため用途不適格の建築物を誘導するため㉒、市街地環境に変化が生じ、既存の近隣建築物で営まれている諸活動に支障となり、活性化につながらないおそれがある㉓
懸念事項(1)に対する対応
市街地環境に影響を及ぼす発生要因を分析し、周辺影響として配慮すべき項目を踏まえ、発生要因に応じた環境改善措置を検討する㉔。
㉑ →「以下」
㉒ 「ため」が一文中に2回使われています。→「・・・建築物が誘導される。このため・・・」
㉓ 句点がありません。また、これでは、自ら提案した空き家等活用促進区域を自らで否定しているようなものです。新たに発生するというより、解決策に内在しているリスクと考えます。
㉔ このような事態にならないように検討すべきタイミングは、計画策定時点であるべきと考えます。
(2)防災に対する脆弱性発生するおそれ
空き家活用促進指針で、接道義務を満たしていない場合でも建築審査会の同意で対応できるため、地区全体のインフラの整備改善が行われずに、防災の脆弱性が発生することも考えられる。㉕
㉕ 摂動要件の緩和は、安全確保等を前提にしています。よって、安全性に懸念がある状態で緩和がされている設定には違和感があります。そもそも、解決策で接道要件の緩和について、触れられていないので、唐突感があります。
懸念事項(2)に対する対応
地区計画を定め、地区施設として道路を計画することにより㉖防災に対する対策を行う。
避難路となる道路沿いの建築物の不燃化を進める。
地区における避難訓練を実施し、地域防災力の向上を図る。 以上
㉖ 道路整備を必要とするのであれば、安全性に問題があるので緩和すべきでないですし、道路整備を前提とするなら緩和の意味はありません。