「二地域居住」
【 技術士 二次試験対策 】
本命を脅かす対抗馬「二地域居住」
これまでの予想は、GXと働き方改革を推し続けてきたわけですが、さすがに予想2本だけじゃあ不安すぎますよね。今も2本が本命だと考えていますが、凝り固まった思考はリスクを招きます。そこで、今回お届けする予想問題は、第3の刺客「二地域居住」をお届けます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちは様々な悪影響を被りました。一方で、怪我の功名ではありませんが、テレワークやリモートワークが急速に普及しました。これらを導入した当初は、みな抵抗を感じながら事情によりやむを得ずといった様子でしたが、今では普通に利用していますよね。
このテレワークの普及により、仕事はどこでもできるようになりました。つまり、場所という制限から解放されたと言えます。この環境が創出されたことにより、働き方に多様性がもたらされました。どこでも働けるようになりましたし、副業・兼業といった可能性も広がりました。
このような新しい価値観は、疲弊する地方都市を復活させるポテンシャルを秘めています。今年度閣議決定された新たな国土形成計画においても、「新時代に地域力をつなぐ国土」を実現するとしています。さらに、テレワークの進展による転職なき移住等の場所にとらわれない暮らし方・働き方、転職なき移住・二地域居住といった表現でその方針が具体的に示されています。
このテーマを問題としてとらえた場合、空き家対策、地域交通対策、DXの加速と情報系インフラの強化、地域交流、ソーシャルキャピタル、子育て環境の充実、官民連携事業の導入などなど施策が多岐にわたり、建設部門全体に係る問題提起が可能と考えます。
「二地域居住」は対抗馬として十分すぎるほどの要件を持っており、論文を用意する価値があると思いませんか?
予想の理由
【理由1】国土形成計画の位置づけ
私が注目するのは、前述したとおり令和5年7月28日閣議決定された国土形成計画にしっかりと位置付けられていることが要因です。国土形成計画自体も問題になりやすいのですが、やや都市計画寄りのテーマなんですよね。しかし、国土形成計画が重要な計画であることは、疑いの余地はありません。それが、令和5年度に閣議設定されているのですから、ここからの出題を警戒するのは必然です。
<国土形成計画における記載>
1.新時代に地域力をつなぐ国土 ~列島を支える新たな地域マネジメントの構築~
国土全体にわたって新時代を拓く地域力を結集し、未来へとつなぐ、「新時代に地域力をつなぐ国土」の形成を通じて、地方に活力を取り戻し、安全・安心で、個性豊かな地域を全国に広げ、未来を担う若者世代を含めて人々を惹きつける地方の魅力を高めて、地方への人の流れを創出・拡大することにより、地方の人口減少・流出の流れを変え、国土の多様性(ダイバーシティ)、包摂性(インクルージョン)、持続性(サステナビリティ)、強靱性(レジリエンス)の向上につなげ、未来に希望を持てる国土へと刷新する。
5.東京一極集中の是正/(東京一極集中の是正に向けた方向性)
①地方への人の流れの創出・拡大、新たな地方・田園回帰の定着
地方における企業立地促進のための人材育成を含めた環境整備を推進しつつ、東京に集中する企業の本社機能の地方移転等を促進するとともに、地域経済を牽引し、地方における良質な雇用の受け皿となることが期待される中堅・中小企業の成長を促進する。また、地方創生テレワークや副業・兼業による転職なき移住など、場所に縛られない暮らし方・働き方による地方への人の流れの創出・拡大を図る。
これらの取組によって、地方において、若者世代、特に女性が働きたいと思えるような、稼げる仕事、やりたいと思える仕事の創出を図る。加えて、若者世代を始めとした地方移住や二地域居住等のニーズの高まりを踏まえ、こうしたニーズに応じた積極的な採用を行う企業の採用活動を支援するとともに、若者世代や女性に開かれた魅力的な地域づくりを推進する。
【理由2】移住・二地域居住等促進専門委員会において、中間とりまとめがなされいること(令和6年1月)
【理由3】国の令和6年度予算の「基本的な考え」において、デジタル田園都市国家構想の実現等による「新しい資本主義」の加速と明記されています(国の令和6年度予算)。間接的な表現ですが、予算の概要にはデジタル田園都市国家構想の実現のカテゴリーにしっかり位置付けられています。さらに、コラムは、1ページをびっしり使って説明しています。
※ 令和6年度予算では、 以下の項目を3本柱としています。
・国民の安全・安心の確保
・持続的な経済成長の実現
・個性をいかした地域づくりと分散型国づくり ←二地域居住はコレ
リアル予想問題2024
令和6年度技術士第二次試験問題 [建設部門]
9 建設部門【必須科目Ⅰ】
Ⅰ 次の2問題(Ⅰ-1,Ⅰ-2)のうち1問題を選び回答せよ。(解答問題番号を明記し、答案用紙3枚を用いてまとめよ。)
Ⅰ-1 新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、急速にテレワークが普及した。東京の企業に勤めたまま地方に移住しテレワークを行う「転職なき移住」など、個人個人の価値観に応じた暮らし方・働き方の選択可能性を高め、住む場所に縛られない新たな暮 らし方・働き方が浸透してきている。
このような変化を捉えて地方への人の流れを生み、地域の担い手の確保や消費等の需要創出、新たなビジネスや後継者の確保、雇用創出、関係人口の創出・拡大等に繋げていく必要がある。また、多様なライフスタイルの実現は、ウェルビーイングの向上、新たな暮らし方、新たな働き方の実現、 新たな学びの機会の創出といった効果も期待される。
分散型国づくりや持続可能な地域活性化を実現するため、二地域居住は極めて有効な手段である。このことを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)二地域居住を推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。
問題の留意点
それでは、問題の読み方を解説していきます。本番と同じという訳にはいきませんが、注意するポイントさえ分かってしまえば、あとは同じですからね。
留意点①
問題文には、テレワークという具体的な手段が提示されています。このテレワークを実現するための社会資本整備や仕組み・制度といった記述が求められていることが伺えます。
留意点②
さらに読み進めると、地方への人の流れを生みとありますので、二地域居住とセットで地域活性化策を論じる必要があります。
留意点③
留意点②と同様、多様なライフスタイルを実現するための対応についても記述すると良いでしょう。
留意点④
(1)~(4)の問題項目の直前にある1~2行には、必ず条件や解答の目的が示されています。今回のケースでいうと、「分散型国づくりや持続可能な地域活性化を実現するため」の部分がそれに当たります。表現としては、「○○のため」、「○○を踏まえ」といった箇所は必ずチェックし、解答に反映しましょう。
留意点⑤(再掲)
言わずもがなですが、(1)の「○○に当たり」が題意です。これに関する課題や解決策となるよう論文作成します。この題意は、書き進めるうちに見失ってしまうので、書いている途中においても、時折確認することをお勧めします。※論点ズレを起こさないように頭に叩き込んでください
留意点⑥(再掲)
「最も重要と考える」とありますので、考えた理由を添えるとより良い解答になります。この時の理由は、3つの課題の相対評価とすべきです。例えば、3つの中で最も安価、最も効果が高い、最も迅速に対応可能などが挙げられます。また、この理由は短くすることが肝心です(理由の根拠は解決策を読めば分かるはずといったスタンスでOK)。
留意点⑦(再掲)
ここも良く間違えてしまうトラップです。解決策を実行しても生じうるリスクとあるので、初めから想定されるリスクや、解決策がうまくいかなかった場合のリスクなどは解答になりません。解決策の弊害、副作用といった視点で新たなリスクを設定する必要があります。
参考とすべき資料
- 国土審議会・推進部会・移住・二地域居住等促進専門委員会 中間とりまとめ(2024年1月9日)
- 第三次国土形成計画(全国計画)(令和5年7月28日閣議決定)