添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
新たに生じうるリスク
今回の気になる点シリーズは、リスクについてです。必須科目Ⅰや選択科目Ⅲでは、次のような設問項目があります。令和4年度には、これに波及効果があったのですが、令和5年度からはこれがなくなっています。おそらくは、令和6年度も同様の傾向が続くと見てよいでしょう。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
さて、肝心なリスクについてですが、良くやってしまいがちなミスは、「新たに生じうる」という問題の条件を満たさず記述してしまうことです。問題文は、部門や選択科目によってまちまちで、新たにがついてなかったり、「新たに浮かび上がってくる懸念事項」といった具合に表現が変わったりします。しかし、表現が変わっても、基本は新たに生じるものという条件を満たす必要があります。
この条件を満たす時の注意点は、もともと存在しているリスクを書いてはいけないということです。例えば、GXを進めるための解決策として、再エネ・省エネの推進を解決策で述べて、その結果、新たに発生するリスクを技術者不足とした場合、技術者不足は解決策によって引き起こされる現象ではなく、もともと抱えていた問題ということになり、的確な解答になりません。
また、さらにヤバいのが「実行しても解決できないこと」という誤った解釈をし、記述するパターンです。これをやってしまうと、自分自身で解決策を否定することになってしまいます。「提案した解決策は、当然効果があるけれども、こんな問題が新たに発生してしまうのです」といった論調にするべきです。
もう一つのパターンは、解決策に共通しておらず、一つの解決策によって生じるリスクにフィーチャーしてしまうものです。問題の冒頭には「すべての解決策を実行しても」とあるので、これまた条件を満たしていないということになります。
このように新たなリスクは、条件が多く解答が難しいです。よって、ある程度問題の種類に応じて、あらかじめ解答のイメージを持っておく必要があります。例えば、解決策がICT技術の活用であった場合、技術力の低下、セキュリティーといったことを述べようと決めておくことが肝要です。いくつか用意しておけば、どれかには当てはまるといった状況を作っておきましょう。
論文×5
本日の添削LIVEは、建設部門 都市及び地方計画の選択科目Ⅱー1をお送りします。なんと、怒涛の5本立てです。都市及び地方計画の受験者は、試験直前なので、選択科目Ⅱー1はテーマだけでも参考になるのではないでしょうか。最近は、用語の意味だけでなく、施策の比較や特徴の掘り下げなど、立体的に問われるので深い理解が必要です。今一度、用語の再確認をしてみてはいかがでしょうか。
居住環境用途誘導地区
問題:居住環境向上用途誘導地区の背景、概要、特徴、メリットを述べよ
1.背景
用途地域の第一種低層住居専用地域では、病院や小規模店舗等の建築ができない。またこれらの施設が建築可能な用途地域であっても、容積率制限が厳しく必要な床面積の確保が困難な場合がある。そのため全体の用途地域を変更せずに局所的な緩和策の導入が求められていた。
2.概要
居住環境向上用途誘導地区は、居住誘導区域内において、日用品の販売を主たる目的とする店舗や食堂又は喫茶店などの居住環境向上施設に限定して用途規制や容積率の緩和を行う。
また一方で、それ以外の建築物は従前通りの規制を適用し、居住環境向上施設を有する建築物の建築を誘導することを目的とする地域地区である。
3.特徴・メリット
居住環境向上用途誘導地区は、従前の用途地域はそのままに局所的に限定的に建物用途等を緩和できるので以下のようなメリットがある①。
・多様化する働き方や住まい方に対応したコワーキング施設の立地を誘導できる。
・小規模な病院や診療所の、医療設備の拡充や病床面積の増大等に伴う容積率の割増ができる。
・住宅地において、習い事教室、保育所等からなる複合施設の立地が誘導できる。
① 記述内容は、概要と類似しており重複気味です。また、メリットは様々例示してありますが、特徴に関する記述がないように見えます。例えば、「都市の居住者の日常生活に必要な施設を必要な場所に誘導するといった効果が、本制度の最大の特徴である。」と言った具合にこれが特徴ということを明確にしましょう。
国土計画シームレス
問題:第3次国土計画(全国計画)が国土の基本構想として示すシームレスな拠点連結国土の形成について「シームレス」の概念について説明せよ。国土の基本構想の実現にDXの推進がどのように資するか期待されるかを述べよ
1.シームレスな拠点連結型国土の形成
多様な地域の拠点への諸機能の集約化を図りつつ、デジタルを活用した場所や時間の制約を克服する多面的なネットワーク化により、様々な制約を乗り越えてシームレス(継ぎ目なく)につながり合う拠点連結型国土の形成をいう。①
※ 添削の前に問題文が少々理解できない部分があります。まず、国土計画ではなく国土形成計画です。また、「シームレスな拠点連結国土の形成について「シームレス」の概念について説明せよ」とありますが、「ついて」が2度出てきており、基本構想を説明するのか、シームレスを説明するのか分かりません。おそらく、令和2年度の過去問を参考に作成されていると思いますので、これを参考に「シームレス」の概念に触れて基本構想を説明するという問いと捉え添削します。
① 基本構想の説明に関しては、端的によくまとまっています。前述の「シームレス」の概念に触れてという条件がある場合であっても、シームレスがデジタルを徹底的に活用して場所や時間の制約を克服するということにも触れているのでバッチリです。
2.DXが資すること②
(1)インフラ分野のDX
インフラ建設現場(調査・測量、設計、施工)の生産性が飛躍的に向上し、安全性の向上、手続き等の効率化が実現できる。
(2)道路DX
「xROAD」を加速することにより、道路管理や行政手続きの効率化・即時処理をすることができる
(3)防災・減災DX
リスク情報の充実やオープンデータ化を図ることにより地域のリスクに対する一層の理解を促進される。
スマホで作成したマイ・タイムライン等を活用したリスクコミュニケーションや個々人に向けた防災情報のプッシュ型配信により、適切な避難行動ができる。
(4)観光DX
シームレスに宿泊、交通、体験等に係る予約・決済が可能となる地域サイト構築により、旅行者の利便性向上・消費拡大が見込まれる。 以上
② 例示に示されているのはDXの効果ですが、基本構想との関係が分かりません。選択科目Ⅱ―1は、知識を問う問題なので国土形成計画にある記述内容(以下の内容)が最も正解に近いと考えます。そうなると、基本構想にあるデジタルを活用して時間と場所を克服することを述べなければなりません。概念同様、端的にまとめると良いでしょう。
「こうしたデジタル活用の特性を国土づくりに活かし、デジタルを手段として徹底活用して、リ アルの地域空間の質的な向上を図る観点から、いわば「デジタルとリアルの融合」による活力あ る国土づくりを目指し、場所と時間の制約を越え、多様な暮らし方や働き方を自由に選択できる 地域社会の形成を通じて、個人と社会全体の Well-being の向上を図る。デジタル活用は、地域経営の仕組みそのものにも大きな変化を及ぼす。デジタルの発想では、官民の様々なデータを活用するデータ連携基盤をベースとして、データやそれを解析するツールをレイヤー化(階層化)して捉えた上で、それらを柔軟に組み合わせることで、生活者・利用者が必要とするサービスに対し、分野ごと、主体ごとに課題を処理・解決することが必然的に求められる。その結果、デジタル活用によってリアルの空間とバーチャルの空間を組み合わせることによって、分野や主体の垣根を越えて課題解決のツールが一定程度共有化されるとともに、複合的な課題を効率的・効果的に解決することが可能となる。こうしたデジタル活用の効果を最大限発揮するためには、分野横断・官民連携を前提とした地域経営の仕組みに転換していく必要がある。」
滞在向上性向上区域
問題:滞在快適性向上区域で利用可能な制度を述べ、概要、特徴、メリットを説明せよ
1.利用可能な制度
(1)一体型滞在快適性等向上事業
滞在快適性向上区域内の土地所有者等が、市町村が実施する公共施設の整備又は管理に関する事業の区域に隣接又は近接する区域において、市町村が実施する事業と一体的に交流滞在空間を創出する事業である。
具体的には街路沿いの民地をオープンスペース化などである①。制度活用により固定資産税・都市計画税の減免の特例②を受けることできる。③
① オープンスペースのみでは滞在しないのではありませんか。また、「民地をオープンスペース化などである」はおかしな構文です。→「民地をオープンスペース化することなどが挙げられる」
② 免除はないので、軽減ですね。
③ 特徴に関する記述がありません。
(2)滞在快適性向上区域内の都市公園における占用許可の特例④
都市公園内の占用物件は電柱等の公共性の高いものに限定されている。しかし区域内の都市公園において、地域の催しに関する情報を提供する看板・広告塔の設置は、市町村が都市再生整備計画に位置づけて公園の占用許可を受けることができる。制度活用により地域住民の利便性の向上が図れる。⑤
④ 見出しが長いです。
⑤ 問題には、概要、特徴、メリットを述べよとありますので、明確にしましょう。
(3)普通財産の活用
市町村が都市再生整備計画に普通財産の使用に関する事項を記載することで、民間事業者等は、普通財産の安価な貸付け等を受けることができる。制度活用により、民間事業者等は、普通財産の安価に借り受けることができ⑥、市町村は、民間事業者による普通財産のある地域の環境の維持及び向上を図るための清掃等の必要な地域貢献をさせることができる。⑦ 以上
⑥ 前述に同内容は記載されており、重複しています。
⑦ ⑤と同様。
駐車場配置適正化区域
問題:駐車場配置適正化区域の背景、概要、特徴、メリットを述べよ
1.背景
都市機能の集約を図る都市機能誘導区域の主要部は、高齢者を含む来訪者が安心して快適に移動できる空間であることが必要である。しかし医療施設や商業施設等の集積に伴い、自動車流入の集中し、多数の高齢者、買い物客等の往来が予想され、駐車場へ向かう自動車と歩行者との交錯による事故発生リスクが生じる。
そのため、歩行者の移動上の利便性及び安全性の向上を図ることが求められていた。①
① 記述内容に指摘はないのですが、文章全体のバランスが悪いです。背景はもっと端的に述べ、概要に厚みを持たせると良いでしょう。
2.概要
立地適正化計画の都市機能誘導区域内に駐車場配置適正化区域を設定し、路外駐車場の配置の適正化と附置義務駐車施設の集約化を図る。②
② 区域の説明をするのではありませんか。「都市再生特別措置法に基づく駐車場の配置適正化に関する手引き」には、次のように定義されていますので、適切に要約すると良いでしょう。この概要を踏まえ、背景も再構築し内容の重複を避けましょう。
ア 駐車場配置適正化区域の定義
駐車場配置適正化区域とは、都市機能誘導区域内であって、医療施設、 福祉施設、商業施設等の誘導・集積に伴い、自動車の流入が増加し、高齢 者や買い物客等の往来の増加が予測され、駐車場へ向かう自動車と歩行者 との交錯を生じる恐れが高いエリアとして、立地適正化計画に設定する区域となります。駐車場配置適正化区域は、都市機能誘導区域内であれば設定可能です。ただし、附置義務駐車施設を集約するためには、駐車場法第20条に基づく附置義務条例が定められる必要があり、附置義務条例は以下の地区・地 域に限って定めることができることに留意する必要があります。
3.特徴 メリット
(1)路外駐車場配置の制限
都市機能誘導区域内で路外駐車場が多くなると、歩行者の移動上の利便性や安全が低下する。そのため、歩行者の回遊動線を阻害する場所に駐車場の出入口を設置しないことや、道路から個々の駐車マスへの直接の出入庫ができないよう出入口の集約を行うこと等を定めることができる。
(2)集約駐車施設の位置・規模の設定
各建築物の敷地内への駐車施設の附置義務に代えて、集約駐車施設への附置義務とする条例の制定が可能である。③ 以上
③ 特徴・メリットというより、駐車場の適正配置手法が述べられているように見えます。題意に沿った解答が望まれます。同手引きには、駐車場の配置適正化を推進することの意義が、以下のようにまとめられていますので、参考しながら再検討した方が良いでしょう。
・歩行者交通が集中する区域の周辺に、集約駐車施設を配置することにより、区域内における歩行者と自動車の輻輳の軽減を図ることが可能となります。
・駐車場の出入口による歩道の分断箇所の減少により、安全・快適な歩行環境の創出が可能となります。
・自動車交通の減少により、バス等の公共交通機関の運行の円滑化が図られます。
・連続する街並みの形成及び土地の有効利用が図られます。
立地誘導促進施設協定
問題:立地誘導促進施設協定制度の背景、概要、特徴、メリットを述べよ
1.背景
空き地、空き家等の低未利用土地の発生は、地域活力の低下を招く①。一方で地域のコミュニニティ団体にとって、自分たちの活動拠点や、必要な身の回りの公共空間の整備が求められていた②。
① 活力低下を招いたという現状しかなく、その結果何を必要とされるのかといった記述がなく、記載の意図が理解できません。
② 「地域コミュニティ団体にとって、・・・整備が求められていた」となっています。求めているのは誰で、地域コミュニティ団体にとってはどこにつながるのか読み取れません。
2.概要
立地誘導促進施設協定は、地域コミュニティによって、身の回りの公共的な施設等を整備、管理していくための協定制度である③。
例えば居住者、来訪者又は滞在者の利便増進に寄与するレクリエーション用に供する広場の整備、管理があげられる。
協定の内容は、立地誘導促進施設協定区域内の土地の所有者及び借地権等を有する者が、地域に必要なものを一体的に整備、管理するための費用負担等の役割分担等を定める。
協定の締結は、協定区域内の土地の所有者及び借地権等を有する者の全員の合意を得る必要がある。④
③ 「協定は、・・・協定制度である」になっています。ねじれてますね。
④ Ⅱ―1は、例示よりも制度の内容を漏れなく書く必要があります。概要は次の通りです。
下の二つの記述がないですね。
3.特徴・メリット
立地誘導促進施設協定は、市町村長の認可を受けることにより承継効が生じることが特徴であるため、相続による通路等の滅失を回避するなど、立地誘導促進施設を安定的に使用することができるメリットがある。
また協定の対象となる施設は法令で限定されていないため幅広い施設の活用が可能である。⑤ 以上
⑥ メリットと特徴が混在しています。どれが、特徴でどれがメリットなのか明確にしましょう。記述内容を整理すると、特徴は継承効、幅広い施設に活用が可能ですかね。メリットは、次の通り立場によって様々です。誰が、どのようなメリットを受けるのか整理し、述べると良いでしょう。