口頭試験当日の流れと注意点
【 技術士 二次試験対策 】
流れと心得
技術士二次試験の口頭試験――それは、筆記試験を突破した者だけに与えられる、まさに最後の関門です。当日は、緊張のあまり思わぬ失敗を招いてしまうこともあります。だからこそ、事前に当日の流れを把握しておくことが肝心です。技術士にふさわしい態度や礼節をイメージし、心の準備を整えることで、リスクを最小限に抑えることができます。
面接官は、みなさんの技術的知見と倫理観を、穏やかな口調ながらも鋭い視点で見極めてきます。まるで、水面の静けさに潜む、鋭利な刃のような眼差しです。さて、そんな一日をどう乗り切るか――本日は、口頭試験当日の流れと注意すべきポイントをご紹介します。
会場到着:早すぎず、遅すぎず
まずは、会場への到着。試験案内には「○時までに受付を済ませること」と書かれていますが、ここでの鉄則は「余裕を持って到着すること」。ただし、あまりに早く着きすぎると、待合室での緊張が長引き、心拍数が無駄に上昇します。理想は、受付開始の15〜30分前。会場の雰囲気に慣れ、トイレの場所を確認し、軽く深呼吸する時間を確保しましょう。
服装は、スーツが基本。技術士は「技術者であり、紳士淑女であれ」と言われる職業です。ネクタイの柄で個性を出すのは構いませんが、奇抜すぎると「技術的冒険者」と誤解されるかもしれませんので、無難な選択をしてくださいね。
受付と待機:静かな戦場
受付では、受験票と身分証明書を提示します。ここでの注意点は、「受験票を忘れないこと」。これ、意外と忘れる人がいます。財布、スマホ、受験票――これらの持ち物は、前夜のうちにカバンに入れておきましょう。
受付後は、控室で待機。周囲には、同じく緊張した面持ちの受験者たち。ここでの過ごし方は人それぞれですが、参考書を開いて最後の確認をする人、目を閉じてイメージトレーニングに励む人、無言で天井を見つめる人など、まるでダイバシティ―の博覧会です。
みなさんは、自分のスタイルで構いません。ただし、周囲に迷惑をかけないこと。大声で独り言を言ったり、スマホで動画を見たりするのはNGです。周囲への心遣いは、技術士以前の問題ですよね。
試験室へ:いざ、面接官の前へ
順番が来ると、面接官または係員に呼ばれて試験室へ。ここからが本番です。ドアを開けると、そこには3人程度の面接官が待ち構えています。彼らは、あなたの敵ではありません。むしろ、あなたの技術的能力と倫理観を「確認」する役割を担っています。つまり、あなたが本当に技術士にふさわしいかを見極める「最終審査員」です。
まずは、着席前の挨拶。「よろしくお願いいたします」と一礼し、椅子に座る。ここでのポイントは、「落ち着いて、丁寧に」。椅子に座るときにガタガタ音を立てたり、荷物を床にドサッと置いたりすると、印象が少しだけマイナスになります。
質問内容:技術・倫理・業務遂行能力
口頭試験の質問は、大きく分けて以下の3つの領域に分類されます。
- 技術的能力に関する質問
- 技術士としての倫理観・社会的責任に関する質問
- 業務遂行能力に関する質問
たとえば、「あなたが筆記試験で書いた業務内容について、もう少し詳しく説明してください」といった質問が来ます。ここでの注意点は、「筆記試験の内容と矛盾しないこと」。記述した内容を忘れてしまい、違うことを言ってしまうと、「この人、実務経験に一貫性がないな」と思われてしまいます。
また、「技術士として、社会にどう貢献したいですか?」という、やや抽象的な質問もあります。ここでは、理想論だけでなく、具体的な行動や姿勢を交えて答えると好印象です。「AI技術を活用して、地域の防災力を高めたい」といった具合に。
倫理観に関する質問では、「不正を目撃した場合、どう対応しますか?」などが定番。ここでは、「技術士倫理綱領」に基づいた回答が求められます。正義感を前面に出しつつ、冷静な対応を示すことが肝要です。
試験時間と終了:意外とあっという間
口頭試験の所要時間は、概ね20分程度。緊張していると長く感じるかもしれませんが、終わってみると「もう終わり?」という感覚になることも。泣きの10分に突入するケースも少なくありません(泣きの10分に関する記事はコチラ)。これは、合格水準に達していない人を救うべく設けられた時間と言ってよいでしょう。
最後に「以上で終了です。お疲れさまでした」と言われたら、立ち上がって「ありがとうございました」と一礼し、退出します。ここでのポイントは、「最後まで丁寧に」。ドアを閉めるまでが口頭試験です。
注意すべき点:細部に宿る魔物
さて、ここまでの流れを踏まえたうえで、注意すべき点をいくつか挙げておきましょう。
- 筆記試験の内容をしっかり復習しておくこと(特に業務内容)
- 技術士法、技術士倫理綱領、コンピテンシーを読み込んでおくこと
- 試験官の質問には、簡潔かつ論理的に答えること
- 緊張しても、沈黙しないこと(考える時間は必要ですが、長すぎると印象が悪くなります)
- 試験官の表情に一喜一憂しないこと(彼らは無表情が基本です)
そして何より、「あなた自身の言葉で語ること」。テンプレート的な回答は、すぐに見抜かれます。自分の経験、自分の考え、自分の志――それを、誠実に伝えることが、技術士としての第一歩です。
最後に:口頭試験は「対話」である
口頭試験は、単なる質疑応答ではありません。それは、技術士としての資質を見極める「対話の場」です。面接官は、あなたの敵ではなく、未来の同僚かもしれません。だからこそ、あなたの言葉に耳を傾け、あなたの志に共感したいと思っているのです。
緊張はするでしょう。でも、それは当然のこと。むしろ、緊張しない人のほうが珍しい。大切なのは、その緊張を「誠実さ」に変えること。あなたの技術と志が、言葉に乗って届くように、心を込めて話してください。
そして、試験が終わったら――自分を褒めてあげましょう。あなたは、技術士という高みを目指して、最後の一歩を踏み出したのですから。

