実務経験証明書の留意点
【 技術士 二次試験対策 】
受験申込書について
日本技術士会のホームページには、すでに「令和6年度 技術士 第二次試験 の実施について」と題した情報提供が行われています(該当ページはコチラ)。申し込みは、以下のとおり4月1日より受付が開始されます。この申し込みに必要となる書類の一つに「実務経験証明書」なる書類があります(7(2)参照)。
「令和6年度 技術士第二次試験の実施について」より抜粋
5.受験申込書等配布期間
令和6年3月25日(月)から4月15日(月)まで
6.受験申込受付期間
令和6年4月1日(月)から4月15日(月)まで。
受験申込書類は、公益社団法人日本技術士会宛てに、書留郵便(4月15日(月)までの消印は有効。))で提出すること。
なお、令和元年度技術士第一次試験(再試験)の合格者で、令和6年4月28日(日)をもって受験資格を満たす者にいついては、受験申込受付期間を令和6年5月8日(水)(消印有効)までとする。
7.受験申込書類
(1) 技術士第二次試験受験申込書(6ヵ月以内に撮った半身脱帽の縦4.5cm、横3.5cmの写真1枚を貼付)
(2) 実務経験証明書
(3) 上記1.(2)に掲げる要件に該当する者については、技術士法施行規則様式第2の2に定める監督者要件証明書及び第2の3に定める監督内容証明書を提出すること。
(4) 総合技術監理部門の選択科目の免除に該当する場合には、技術士第二次試験合格証の写し、技術士第二次試験合格証明書、技術士登録証の写し又は技術士登録証明書のうちいずれかを提出すること。
この実務経験証明書の記載内容には、「業務内容」、「業務内容の詳細」を記載する必要があります。業務内容は60文字以内、業務内容の詳細は720文字以内と結構なボリュームがあります。「申し込み時に書けばいいや」と悠長に構えていると痛い目に遭います。
私も、悠長に構えていた人の一人で、先輩技術士にダメ出しをたくさんいただき、申し込み期限のギリギリまで修正していた記憶があります。焦って取り組むと良い内容が書けなくなるととともに、申し込みもギリギリになると不測の事態に対応できなくなります。
やはり余裕を持って準備することが大切です。
業務内容の書き方
様式
上の図のように、実務経験証明書には、これまで携わった業務の略歴を書く場所があります。これは、PDF化されたアウトプットになります。実際は、エクセルシートの入力欄に記載しPDF化した上で印刷したものを提出といった流れになります。
地位・職名と従事期間
業務内容は時系列ごと(古い順)に書きますが、従事期間は空白の5年間といったことが無いよう、切れ目なく書きましょう。また、地位・職名については、地位との記載もあるので、課長や係長といった職位に限らず、現場代理人、主任技術者、監理技術者といった立場でも構いません。書くべきは、責任ある立場だと考えます。
業務内容
業務内容は、設計、施工管理といった具合にシンプルに書きがちです。しかし、この内容は、口頭試験の際に用いられる資料になりますので、しっかり技術力をアピールすることが大切です。そのためには、60文字を目一杯使って書くことをお勧めします。
道路設計とだけ書くのではなく、どんなに難しい設計だったのかをしっかりアピールするということです。例えば、「急こう配の細街路において、沿道家屋の高さに配慮した上で、道路縦断の緩和と滑り止め舗装を施す道路改良工事の設計(54文字)」といった難しさを詳細に説明することが大切です。
上の図の上から3つ目と4つ目をみてみましょう。おなじ設計施工管理でも、淡白な3つ目より、詳細に説明した4つ目の方が技術力がありそうに見えますよね。また、口頭試験においても質問しやすく、試験官の印象も良くなると思います。
業務内容の詳細
様式
提出物のアウトプットは、上の図のようになります。前述のとおり720文字とボリュームたっぷりです。20行以内であれば改行もできるので、見出しをつけて分かりやすく書くことができます。ここで書く内容を確認しましょう。ヒントは、記述欄の上に書いてあります。
当該業務での立場、役割、成果等とあります。例示っぽい表現ですが、①立場、②役割、③成果は必ず書くようにしましょう。これらは、先に述べた見出しに設定するとよいでしょう。
①立場
まず書くべきは、業務上の自分の立場です。この立場を記載するにあたっての留意点は、リーダーシップを示す表現にすることです。繰り返しになりますが、この内容は口頭試験の資料になります。つまり、口頭試験の評価項目に合わせて記載すれば、高評価につながる可能性があります。よって、口頭試験の評価項目のひとつである「リーダーシップ」をアピールすることが大切になるわけです。
では、リーダーシップをアピールする表現とは、一体どのような表現なのでしょうか。それは、責任のある立場であったことを書くということです。例えば、「工事担当者として」との表現はただの担当者かぁとなりますが、受注者であれば「現場代理人」、「主任技術者」、「監理技術者」、下っ端で経験が少ない人は、「コンクリートの品質管理を担う立場」といった具合に詳細に記載すると良いでしょう。
発注者の場合は、「監督員」、「主任」、「係長」、「課長」といった具合に工事監督責任者としての立場や職位でも良いでしょう。ただし、職位の場合は、その職位に与えられた工事監督上の立場も添えると良いでしょう。例えば、「工事の総括責任者として」といった表現が考えられます。
コンサル業務なども工事と同様に、設計や計画業務での立場を具体的に書くと良いでしょう。
②役割
役割は、何をしたのかということを書くのですが、書くべきことを明確にするために文末を「・・・役割があった。」と言った表現にすると良いでしょう。
内容については、業務内容の留意点と同様、ただ単に「○○を設計する役割があった」、「○○の工事管理を行う役割があった」とせずに難しさを端的に表すと良いでしょう(ここで詳細に難しさを説明すると役割という論点がぼやけてしまいます)。
よって、その業務の難しさの説明を1つに抑えて書き表します。例えば、住宅街における狭隘道路の施工管理といった具合です。難しさの詳細は、あとで具体的に述べると良いでしょう。
課題
次のトピックは、③成果になります。しかし、いきなり成果を書いては、720文字を埋めるのは難しいです。そこで、成果という結果を導くためのストーリーを構成する必要があります。どんな難しい構成を書くのかと不安になる必要はありません。
これは、これまで書いてきた論文と同じ要領で書けばOKです。論文の構成とは、課題→解決策→成果の順で書きます。必須科目Ⅰや選択科目Ⅲの構成と同じですよね。見出しは、そのまま「課題」、「解決策」、「成果」としましょう。
まずは、課題です。業務上どのような課題があったのか思い出しましょう。工事や設計であれば現場条件、計画であれば地域課題などが想定されます。苦労した思いをぶちまけましょう。それが技術力アピールであり、小さなことでも良いのです。その課題にどう取り組んで、何を考えたのかといったプロセスが重要になります。
また、何を問題と捉えているのかといった視点は、技術士のコンピテンシーにある「問題解決」に通じています。問題の要因を抽出し分析ができるかといった能力を見られます。本質的な問題でない事柄を設定しないように注意しましょう。
例えば、設計業務において、安全性を軽視しコスト削減のみを課題とするなどが挙げられます。しかし、安全を犠牲にしてコスト削減を図ると書く人はいません。注意すべきは、コスト削減の裏で安全や品質を結局犠牲にしているのではないかという疑問を抱かせない表現にすることです。具体的には「コスト削減のため、夜間工事を極力減らす必要がある」といった課題設定です。一見良さそうですが、安全や交通に配慮し夜間工事を設定するのであって、コストを目的に減らすと言った考えは不適切と判断される可能性があります。
課題の裏に隠された不適切性に注意しましょう。
解決策
解決策の留意点は、課題と同様です。解決策の背景って結局○○を犠牲にしただけ、ミスを是正しただけ、本質的な解決策になっていないといった見えにくい不適切性をいかに発見できるかがカギになります。これを自分でみつけるのって大変なんですよね。
解決策の記述における最大のポイントは、技術力をアピールしやすいということです。こんな考えで、こんな工夫やあんな工夫を行ったという具合にたたみかけましょう。このとき、工夫の数でゴリ押ししないことです。4個も5個も書いたら、一つ一つの説得性に欠け、ペラペラな説明になりがちです。
この技術力アピールがしやすいという特徴を最大限活用するため、この解決策にスペースを割きましょう。そうです、論文の構成と同じなんです。解決策は、やったことをただ書くのではなく、どうしてその方法を選択したのかといった理由とともに書くと良いでしょう。
技術力をアピールする際に意識することは、口頭試験の評価項目です。口頭試験の評価項目は、コミュニケーション、リーダーシップ、評価、マネジメントがあります。リーダーシップは立場で説明済みですし、評価は成果のパートで説明すると良いでしょう。よって、解決策で意識すべきコンピテンシーは、「コミュニケーション」と「マネジメント」になります。
住民、関係者、上司などとどんな調整を行ったのか、ヒト、モノ、カネといったリソースをどのように配分したのかといった視点を考えとともに示せれば、口頭試験での質問を誘導することができます。このため、想定問答が作りやすく口頭試験対策が楽になります。
③成果
成果での記載事項は、求められた内容が実現できたのかということを書きます。つまり、②役割の役割を果たせたかということになります。表現としては、「○○することで、△△することができた。」という具合に方法と成果を分かりやすく示しましょう。
このときに注意するのは、「評価」という視点です。これは、技術士のコンピテンシーを満たしているかといことです。評価というコンピテンシーは「業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。」と定められています。
重要なポイントは、この改善に資するというところです。これを成果のパートで追記しておくバッチリです。例えば、「○○することで、△△することができた。また、これらの成果を他の業務にも活用することができた。」という感じで書くと良いと思います。
コンピテンシーと口頭試験の評価項目
実務経験証明書の留意点は、技術士のコンピテンシーを意識することに収斂されます。さらに、口頭試験の資料になることを踏まえれば、前述の通りコミュニケーション、リーダーシップ、評価、マネジメントが特に重要と言えます。
簡単に言ってしまいましたが、これを実践し文章にするのは大変です。また、課題や解決策を書く時の注意点として、「見えにくい不適切性を発見せよ」とのタスクを紹介しましたが、これを自分で発見するのは至難の業です。
論文の添削同様、第3者(技術士が望まれます)にチェックしてもらうことをお勧めします。お近くに技術士がいないという方は、本サイトでもチェックしますので、BASEでのサービスをお求めいただくことをご検討ください。なお、「業務内容」・「業務内容の詳細」以外は空欄でOKです。あるいは、ワードに直接記載したものでも構いません。当然ですが、個人情報が含まれる場合が往々にしてありますので、サイト非公開となりますのでご安心ください。
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