白書から見る出題傾向
【 技術士 二次試験対策 】
国土交通白書を分析
今年もやります。国土交通白書(白書はコチラ)の頻出用語分析!昨年は、TOP100をお届けしましたが、今回はもう少し分析を加えてみようと思います(前回の記事はコチラ)。今回も前回と同様に一般的な用語(令和、実施、整備など)を除いたものです。フィルタリングに多少主観が入っていますが、予想問題の参考になるデータだと考えます。
国土交通省白書に記載されている16466の用語を対象に出題関連キーワードを抽出しています。今回は、TOP100にこだわらず10回以上用いられているものをすべて抽出しました。さらに、以下のカテゴリーに区分し、それぞれの特徴を分析していきます。
- 環境
- 交通
- デジタル
- 労働・産業
- 災害
- 管理
- インフラ
- その他
カテゴリーの割合
カテゴリー | デジタル | 災害 | 交通 | 労働・産業 | インフラ | 環境 | 管理 | その他 |
掲載回数 | 46 | 28 | 27 | 26 | 11 | 10 | 6 | 30 |
白書に多く記述されているのが、デジタル関係ということが分かります。全体の1/4を占めています。これは、特集記事である第Ⅰ部において「デジタル化で変わる暮らしと社会」がテーマになっていることが原因と考えます。
あとは、災害、交通、労働・産業といったカテゴリーが15%程度と横並びになっています。災害は、令和5年度に出題されていますので、交通、労働・産業といったところがきな臭いですね。加えて、インフラ、環境と続きますが、インフラは施設そのものになるので無視して良さそうです。
よって、デジタル、災害、交通、労働・産業、環境について、詳細に見ていきたいと思います。
デジタル
デジタル分野の頻出上位は、デジタル化、デジタル技術といったカテゴリーに類似した汎用語であったため、これらを除外しています。1位は、仮想空間です。これは、この後出てくるメタバースやデジタルツインといった技術により生み出される非現実世界です。これは、政府(内閣府)が進めるSociety 5.0が背景にありそうです。
そのあとに続くのが、AI、スマートシティ、ドローンといった新技術や先進的な取り組みに関する用語が並んでいます。さらに、仮想空間を実現させるための3D都市モデル、PLATEAU、地理空間情報なども目立ちます。さらに、後半にはBIM/CIM、VR、AR、ビッグデータと詳細な手法などが登場してきます。
災害
災害トップは、土砂災害です。これは、熱海で起きた土砂災害に対応する形で取り扱いが増加していると思います。その他は、災害の種類といった一般的な用語が続いています。後段には、流域(治水)、水循環といった用語が一般用語に交じって出てくることに注目です。
災害関係は、風水害(R3)、地震(R5)と出題背れているので、次の話題は土砂災害、流域治水対策といった分野に注視が必要と考えます。ただし、土砂災害は令和5年度の都市及び地方計画の選択科目で、水害は前述の通り令和3年度の必須科目で出題されました。よって、最近の動向を踏まえると、ネイチャーポジティブ、NbS、グリーンインフラといった取り組み(まちづくりGX)の効果して、用いることが想定されます。
交通
交通分野は様々な交通モードが頻出する中、トップは自動運転です。これも、第1部においてデジタル化が特殊されたことが要因と推測されます。自動運転に代表される次世代モビリティは、グリーンスローモビリティやライドシェアといった取り組みに注目が集まっています。
また、交通でデジタル化と言えば、MaaSですよね。最後の方には、バス関連のワードが出てきますが、地方のバス路線の経営は、本当に厳しい状況です。MaaSが、この状況を打開するサービスになるか、新たなモビリティサービスとの共存はどうなるのかといった動向も注目です。
ただし、令和元年度以降、交通そのものが問題になったことはありません。やはり、交通は必須科目として取り扱うのにジャンルが狭すぎるのでしょうね。環境に寄与する交通サービス、あるいは2024問題に絡めて公共交通の維持といった取り扱いになるのではないでしょうか。
労働・産業
次は、労働・産業分野です。堂々の第1位にランクインしたのは、生産性の向上です。これは、働き方改革の実現や、建設業の労働者不足への対応といった課題を解決する考え方ですね。まあ、これもデジタル化といったテーマが作用しているとはいえ、重要キーワードと言って間違いないでしょう。
この労働者不足は、人手不足といった直接的なものから、2024年問題を背景とした長時間労働、労働環境といった用語が続出しています。これらの対応として、トップの生産性向上のほかに、省人化、高度化効率化といった用語も頻出しています。
うーん、もう労働者不足関連は出ますね!?
後は、労働者不足問題の間隙を縫って、観光関連がチラホラといった具合です。二地域居住という動きも活発化しているので、観光産業に囚われない新しい形の交流人口増加といった視点が望まれます。ここら辺も、次善候補として論文は用意した方が良さそうですね。
環境
最後は、環境です。ネイチャーポジティブや脱炭素化の活発化などを背景にもっと言及されるのかと思いきや、白書ではあまり振るわないと言った状況です。これは、前回の白書(2022)においては、気候変動が大いに語られた反動なのでしょうか。まちづくりGX推しの私としては、ちょっと不安要素ですね。
そのような中でも、上位にランクインしているのが省エネです。省エネ施策は、トップランナー機器を使うと言った単純なものより、ZEB/ZEH、BEMSなどのエネルギーマネジメン、スマートコミュニティといった取り組みを説明できるようにしておきましょう。
また、後半にはエネルギーといったキーワードが出てきます。これは、脱炭素社会を実現するため、化石燃料由来のエネルギー確保から再生可能エネルギーへのシフトが示唆されているのではないでしょうか。
過去問と白書の因果関係
2023白書の分析いかがでしたかね。用語の使用頻度は、第Ⅰ部の特集にどうしても引っ張られてしまいます。では、この第Ⅰ部の特集は、実際出題されているのか確認してみましょう。
2019白書 新しい時代に応える国土交通政策
(ICT、省エネ、Society5.0、豊かな生活空間)
↓
2020必須科目: 担い手確保(労働・産業)、インフラメンテナンス(管理)
2020白書 社会と暮らしのデザイン改革~国土交通省20年目の挑戦~
(災害、インフラメンテナンス、移動手段確保、海外活力、新技術活用)
↓
2021必須科目: 循環型社会(環境)、風水害(災害)
2021白書 危機を乗り越え豊かな未来へ
(コロナ、災害、多様化、DX、地球温暖化)
↓
2022必須科目: DX(デジタル)、カーボンニュートラル(環境)
2022白書 気候変動とわたしたちの暮らし
(災害、脱炭素、再エネ)
↓
2023必須科目: 巨大地震(災害)、インフラメンテナンス(管理)
2023白書 デジタル化で変わる暮らしと社会
(デジタル化)
↓
2024必須科目: ???
このように、前年度白書の特集と出題に強い相関関係はなさそうですが、過去2年くらいさかのぼってトレンドを見極める必要がありそうです。この傾向に直近の出題の状況を踏まえれば、どんな問題を設定すればよいかはなんとなく見えてきますよね。
今後も予想問題に関する考察は続けていきますので、ぜひ引き続き注視いただければと思います。