添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
i-Construction 2.0
出ました~2.0シリーズ!第2フェーズに入ったプロジェクトは、みな「2.0」が付きますねぇ。国は、流行でも作ろうとしているのですかね。自治体でも計画の見直しを行ったら、「改訂版」ではなく「○○計画2.0」と記載するようになりそうです。
さて、今回2.0シリーズに仲間入りするのは「i-Construction」です。現場の生産性を向上させる救世主ですね。数多の問題の解決策として役に立ちますから要チェックです。関心ごとは、何より何が変わったのかという点です。
これまでの「i-Construction」はICTの活用による支援でしたが、これを一層進化させて「i-Construction2.0」、自動化・省人化、建設現場のオートメーション化を進めるということだそうです。「i-Construction2.0」には、次の三つの柱が示されています。
- 施工のオートメーション化
- データ連携のオートメーション化
- 施工管理のオートメーション化
工事の仕様を決める発注者に関しても、自動化技術を活用する施工工事の実施や技術開発に向けた産学官の連携も推進することとしています。これにより、2040年度までに少なくとも省人化3割、生産性1.5倍に向上させることにより、「給与」が良い、「休暇」がとれ、「希望」が持てる、新3Kの建設現場を実現するそうです。
実現すれば、施工管理がメチャクチャ楽になりそうです。しかし、デジタル技術の習得が必須になるので、おじさんたちにとっては苦行を強いられることでしょう。今後、土木技術者は、力学関係の知識や材料工学などの基礎技術に加え、情報工学を身に付けないと建設業に従事できない時代がすぐそこまで来ています。新3Kを享受するのも、楽ではなさそうです・・・
具体的な取り組み
i-Construction2.0では、具体的にどのような取り組みをかかげているのでしょうか。実際、「i-Construction 2.0~建設現場のオートメーション化~」の目次を見てみましょう(資料はコチラ)。
(1)施工のオートメーション化
1) 建設現場の自動施工の環境整備
2) 遠隔施工技術の普及促進
3) 施工データ集約・活用のための基盤整備
4) ICT 施工の原則化
(2)データ連携のオートメーション化(デジタル化・ペーパーレス化)
1) BIM/CIM による建設生産プロセス全体のデータの連携
2) 3次元モデルの標準化と契約図書としての活用に向けた取組
3) デジタルツインの活用による現場作業の効率化
4) 施工データの活用の効率化
5) データ活用による書類の削減
(3)施工管理のオートメーション化(リモート化・オフサイト化)
1) リモート監督検査
2) ロボットによるリモート検査
3) 高速ネットワークの整備
4) プレキャストの活用
5) ドローンや AI などの先進技術の積極的な活用
必須科目Ⅰで出題の可能性が高い、働き方改革や生産性向上など持続可能な建設業を達成するための課題がわんさかあります。あらゆる解決策の特効薬となることは疑いようがない中、これだけまとまっている資料は他にないのではないでしょうか。
デジタル化の解決策を記述するときは、是非参考にしましょう。
論文
問題文
近年の水災害は激甚化・頻発化が顕著である。こうした中、施設能力を超過する洪水が発生することを前提に、氾濫に備える水防災意識社会の再構築を進めてきたところである。今後、この取り組みをさらに一歩進め、気候変動の影響や社会状況の変化などを踏まえ、あらゆる関係者が協働して流域全体で治水対策を進めていく必要がある。 この流域治水を推進するためには、従来のハード整備に加え、都市計画制度の活用などソフト施策の両側面から対策を講じていかなければならない。この
ような状況を考慮したうえで、河川砂防及び海岸・海洋関する問題として以下の問いに答えよ。
( 1 ) 流域全体であらゆる関係者が協働して、総合的かつ多層的な水害対策を行うに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3 つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
( 2 ) 前問( 1 ) で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1 つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 ) 前問( 2 ) で示したすべての解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について延べよ。
課題
1.多面的な観点から課題と内容
(1)いかに事前防災を加速化させるか
①気温上昇を2℃に抑えるシナリオでも2040年頃には、雨量が約1.1倍、流量が約1.2倍になると試算されている。このため、現行の河川整備計画が完了したとしても治水安全度は目減りすることになる。現行計画と同じ完了時期までに、降雨量等の増加を考慮して見直した治水計画の安全度を達成するには②、様々な手法を活用した集中的な整備が重要である③。よって、強靱化の観点から、事前防災の加速化が課題④である。
① いきなり気温上昇の話題になっているので、「地球温暖化の影響は、」を追記してはいかがでしょうか。
② 分かりづらいです。端的に「このような状況の中、計画の治水安全度を達成するためには、」としてはいかがでしょうか。
③ 様々な手法を活用した集中的な整備が抽象的で何を述べたいのか良く分かりません。また、ここで記述すべきは、整備手法ではなく事前防災の必要性・重要性ではありませんか。後述の結論と文脈が通っていません。
④ ③の通り、なぜ強靭化なのか、なぜ事前防災なのか、前段で説明がなされていません。
(2)いかに役割分担を明確化するか
全国各水系で流域治水プロジェクト2.0が検討され、水害リスクの増加に対応する新たな目標が設定されている。この目標を達成するため、流域内の関係者それぞれに求められる対策が概ね洗い出されてきており、着々と実施されている。しかし、対策を推進していくにあたっては、関係者が多く、誰がどこまで対策を実施すればよいか役割が不明確な状況である⑤。よって、責任分界点の観点から、関係者間の役割分担の明確化が課題⑥である。
⑤ 前段では、関係者に求められる対策が洗い出されていると言っているにも関わらず、ここでは役割(対策範囲)が不明確と言っており矛盾しているように見えます。
⑥ 責任分界点と役割分担は、ほぼ同じ意味で捉えられます。この場合は、体制面の観点とかですかね。
(3)いかにリスクコミュニケーションを促進するか
広大な流域で流域治水を進めていくに当たり⑦、リスクコミュニケーションが不足していては、治水対策への理解や円滑な実施が難しい⑧。このため、PLATEAUやデジタルツイン等を活用し、災害リスク情報を充実化させ住民や企業等の危機感を醸成する⑨とともに、治水対策の効果を明確にすることが重要である⑩。よって、仕組み面の観点から、上流下流を含むあらゆる関係者でのリスクコミュニケーションが課題⑪である。
⑦ 細かい話ですが、「あたり」、「当たり」はどちらかに統一しましょう。
⑧ 「治水対策への理解」は「難しい」にかかっているので、「治水対策への理解が難しい」と読んでしまいます。「治水対策への理解を得ること」が正しい表現ではないでしょうか。さらに、「・・・進めていくにあたり、・・・実施が難しい」といった構文も違和感があります。→「広大な流域で、治水対策への理解を得ることや円滑に事業を実施するためには、関係者間のリスクコミュニケーションが不可欠である」
⑨ リスク情報を充実化との表現は違和感があります。シンプルな修正は「リスク情報の充実」となりますが、PLATEAUやデジタルツインという例示をするならば「可視化」がふさわしいのではないでしょうか。また、危機感を醸成するのは、いかがなものでしょう。治水対策への理解を促す、連携強化を図るといったポジティブな行動を表現しましょう。
⑩ ⑨のとおり可視化と表現した場合、この部分は重複します。整理すると、「このため、PLATEAUやデジタルツイン等を活用し治水対策の効果を可視化することで、治水への理解促進や関係者間の連携強化を図ることが重要である」といった感じになります。ただし、解決策みたいになっているので、前段の手段までは記述の必要はないと考えます。
⑪ これも観点は、体制面だと思います。仕組み面の観点とするなら、もっと仕組みに関する問題点に言及すべきです。例えば、リスクコミュニケーションを図ることで得られるインセンティブがない、支援制度がない、連携を促す環境が不十分などといった仕組みを問題提起しないと、なぜ仕組みなのという疑問が生まれてしまいます。
解決策
2.最も重要な課題と解決策
対策効果が相対的に高い、1.いかに事前防災を加速化させるかを最も重要な課題として、以下に解決策を示す。
(1)ハイブリッドダムの促進
気候変動への適応に対応するため、洪水調節と水力発電の両機能を強化したハイブリッドダムの取組みを推進する。具体的には、雨量やダムへの流入量を予測し、雨が降らない予測の場合は、貯水位を上昇させ、水力発電の発電容量を増強する。一方、まとまった降雨による洪水が予想される場合は、事前放流を行い、洪水前に貯水位を低下させ治水容量を増大させる。このように天候に応じて貯水量を柔軟に変動させ高度な運用を行う⑫。これにより、民間や地方自治体におけるダム周辺での遊休地等の活用や発生した電力を用いた地域振興を実施する⑬。
⑫ 高度な運用の具体的な行動が、天候に応じて貯水量を柔軟に変動させることではありませんか。どちらか一方にすべきです。→「ダムの運用を高度化する」または「天候に応じて貯水量を柔軟に変動させる」
⑬ ダム運用を高度化することと遊休地の活用、地域振興がつながりません。なぜ、遊休地を活用するのか、ダムの電力でなぜ地域振興が図られるのかが分かりません。
(2)安全なまちづくり
災害からの被害対象を減らすため、災害ハザードエリアへの規制、移転促進、立地適正化計画の強化など安全なまちづくりのための対策を講じる。具体的には、土砂災害警戒特別区域等の災害レッドゾーンにおける自己の業務用施設(病院、ホテル等)の開発を原則禁止する⑭。また、市街化調整区域の災害イエローゾーンにおける住宅等の開発許可を厳格化する⑮。さらに、立地適正化計画の居住誘導区域から災害レッドゾーンを原則除外し、災害レッドゾーンからの移転を促進する。移転にあたっては、防災集団移転促進事業等を有効に活用し、事前防災のまちづくりを実施する。⑯
⑭ すでに法改正がされていますので、解決策と言えるか疑義があります。
⑮ ⑭と同様。解決策は、立地適正化計画を策定することなのではないでしょうか。
⑯ 述べていることは正しいのですが、選択科目Ⅲなので河川砂防及び海岸・海洋の技術をアピールする解決策としていかがなものでしょうか(まちづくりの視点なので都市及び地方計画寄りの解答になってしまっています)。
(3)粘り強い河川堤防の整備
越水が生じた場合でも、避難するための時間の確保や浸水面積の減少に伴う被害軽減⑰を図るため、粘り強い河川堤防の整備を促進する。具体的な構造は⑱、表面被覆型(断面拡幅型を含む)と自立型(自立式特殊堤を含む)に分類される。表面被覆型は、土堤法面にコンクリートブロック、天端にアスファルト等の被覆材料を設置することで耐久性を向上させる。一方、自立型は、堤防の内部構造を工夫したもので、鋼矢板やコンクリート擁壁を使用した構造で、越水時にも自立して耐久性を発揮する⑳。㉑
⑰ 浸水面積の減少で被害が軽減することは理解できるので、この部分は不要です。
⑲ 文脈をつなげるため「粘り強い構造は」としてはいかがでしょうか。
⑳ 「・・・で、・・・で」と繰り返されています。また、ここは解決策なので、構造を説明するというより、やりことを書きましょう。「堤防の内部に鋼矢板やコンクリート擁壁を設置し、越水時においても自立可能な構造とする。」
㉑ 全体が構造の説明になっていますので、課題解決の行動を書くようにしましょう。また、分類した構造の適用場面なども説明すると良いでしょう。
新たなリスク
3.新たなリスクと対策
流域治水は、流域全体のあらゆる関係者が協働して実施するが、ステークホルダーの交替等により関係者間の協力・連携体制が崩壊するリスクが発生する㉒。この対応策としては、実施された対策をモニタリングし定期的に評価する仕組みを構築する。モニタリングと評価を通じ協力体制を維持㉓する。 以上
㉒ これは、流域治水対策が抱える問題であり、解決策に共通する新たなリスクなのか疑義があります。例えば、強靭化することで(安心してしまうことで)避難意識の低下というリスク、解決策はマイタイムラインの作成支援、リスクの可視化などが考えられます。
㉓ ステークホルダーの交替によって発生するリスクであるにもかかわらず、モニタリングと評価で解決できるとの主張に違和感があります。交替リスクには、後継者育成や属人化の防止などではないでしょうか。