添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
チェックバックの重要性
本日お届けするのは、「コンパクト・プラス・ネットワーク」のチェックバックになります。指摘を修正いただいた論文を再度投稿いただいたものをチェックバックと称してお届けしています。このチェックバックは、自分の癖や修正しきれなかった部分がどこなのか確認するために役立ちます。
この自分の癖や指摘される点を理解しないことには、合格に必要な実力が身に付きません。添削の優れといる点は、自分では発見できないこれらの点を第3者の目で見つけてもらうことにあります。よって、添削されたことをただ単に修正して終わりでは勿体ないです。
修正に合わせて、なぜ自分はこのように考え記述したのが、どうしたてミスを犯したのかなど振り返りが非常に大切です。反省なくして、成長なしです。練習論文を作成することには、大きく二つの目的があります。
一つは出題されそうな論文を合格レベルまで推敲して試験に備えること、もう一つは練習論文の作成を通じ的確で分かりやす表現手法を身に付けることです。前者は言わずもがなですが、後者は予想が必ず当たるとは限りませんので、どんな問題でも一定のパフォーマンスを発揮する能力を身に付けることが合格の可能性を高めることに直結します。
この振り返りステップは、論文の構成を習得するとともに自身の悪癖を取り除き、対応力・応用力を高めてくれます。添削後の修正が、作業にならないよう自分自身で考え行動することが大切です。
論文作成後の見直し
論文を書き始める前に骨子を作成し、全体の構成を考えることの重要性は繰り返しお伝えしています。他方で、論文を書き終えた後にも重要な作業があります。この作業をすっ飛ばすと、先に述べた対応力・応用力が身に付きづらいです。
この作業とは、「見直し(読み返し)」です。自分で書いた文章が正しく書けているか、自分で添削するのです。そうすることによって、第3者の添削と自分の添削の違いを見つけ、第3者の指摘内容も自分でチェックできるようになります。
これを行うと、自分の添削能力が格段に上がります。添削能力が上がると、記述途中でもミスに気づきやすくなるので、論文の質も上がります。この好循環を生み出す勉強方法を実践することが、合格を一気に手繰り寄せることにつながります。
論文を書き終えて終わりにしていませんか。私が受験勉強をしていた時は、最低2回は読み返していました。1回目は、ミスを見つけて修正します。2回目は、修正した点を含め再度読み返します。この時点で、自分なりに「完璧!」と思えるようにしましょう。「完璧!」と思えない出来だったら、3回目に突入です。
必ず読み返しましょう!
論文
問題
ー前文省略ー
地域構造を「コンパクト」+「ネットワーク」という考え方でつくり上げ、国全体の生産性を高めていくことにある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)「コンパクト」+「ネットワーク」を推進するにあたって, 技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1 つ挙げ, その課題の解決策を複数示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)(1)〜(3)を業務として遂行するにあたり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
課題
1.多面的な観点から課題を3つ
(1)いかにデジタル化を進めるか:効率性の観点
日本では、今まで効率性を労働時間でカバーしていたことは少なからずある①。2024年から②建設業で時間外労働の上限規制が適用される③。この影響で今後、よりいっそう④限られた時間、労働力の中でコンパクトなまちづくりを行わなければならない。効率性の観点から、いかにデジタル化を進めるかが課題⑤である。
① 効率性とは、リソースを無駄なく使うことです。これをカバーするとの表現は、違和感があります。言いたいことは、「膨大な業務を労働時間でカバー」ではありませんか。また、文末が冗長的です。→「これまでの日本では、膨大な業務を主に労働時間でカバーしてきた。」
② 2024年4月1日(2024年度)からです。
③ 過去形ですね。→「された」
④ →「一層」
⑤ 背景の中では、効率化の必要性には触れられているものの、デジタル化に関する記述がないので唐突感があります。文の流れとしては、「労働力不足」→「効率化が必要」→「効率化にはデジタル技術の活用が重要」→「デジタル化が課題」としてはいかがでしょうか。
(2)いかに人材育成をするか:人材面の観点
日本の建設産業の就業者数は1997年の685万人に対して現在は480万人程度であり、ピークから約3割減少している。また、技能労働者のうち約3割が60歳以上であり、10年以内に大半が引退を迎える。このため、技術の伝承が困難⑦である。このような状況で人材面の観点から、いかにまちづくりを行う人材育成をするかが課題である⑧。
⑦ 労働者が減ることや退職者が増加することは書いてありますが、伝承が困難であることが伺える内容がありません。また、伝承ではなく技術継承ですかね。高い技術を持つ技能者が退職すること、その技術の担い手がいないことなどを説明しましょう。また、これらの技能者は、現場の施工技術がイメージされますが、まちづくりにおける技術承継といわれるとピンときません。
⑧ 表現が分かりづらいです。→「よって、人材面の観点から、いかにまちづくりを行う人材を育成するかが課題である」
(3)いかに官民連携を進めるか:費用対効果の観点
日本の建設投資額は1992年の84兆円に対して現在は60兆円程度であり、ピークから約3割減少している。地方自治体ではより逼迫しており⑨、社会資本への投資が難しくなっている。コンパクトなまちづくりには新技術の活用が必要であり⑩、導入には費用がかかる⑪。費用対効果を向上させるには⑫、民間企業のノウハウやアイディアの活用が有効である。コスト削減および高い効果の発現が求められるなかで、いかにして官民連携を促進するかが課題である⑬。
⑨ 何が逼迫しているのですか。また、逼迫していない自治体もいると思います。→「地方自治体の多くは財政状況が逼迫しており」
⑩ なぜ新技術の活用が必要なのですか。前段で説明がなく、因果関係が不明です。社会資本への投資が必要と言っているので、ここでもまちづくりには都市基盤整備が不可欠とすれば良いのではないでしょうか。
⑪ 単にコストがかかるは当たり前すぎるので、文脈を通すためにも費用対効果の話をするべきと考えます。→「コンパクトなまちづくりを進めるに当たっては、都市基盤整備は不可欠であり、限られた予算の中で最大限の効果を得ることが重要である。この費用対効果・・・」
⑫ →「向上させるためには」
⑬ 観点がありません。また、見出しの観点は解決策に近いので、単純にコスト面の観点で良いのではないでしょうか。→「よって、コスト面の観点から、いかに官民連携を促進するかが課題である」
解決策
2.最も重要な課題と複数の解決策
最も重要と考える課題:いかにデジタル化を進めるかである。なぜなら、効率性を高めることは長期的な目線で見たときに費用および人のリソースを適切に配分でき、最も効果的であると考えるためである⑭。以下に解決策を示す。
⑭ 最も重要な課題の選定理由が、最も効果的だからでは説明になっていません。また、前段の内容もデジタル化を進める必要性を説明しているのであって、選定理由とは言えません。デジタル化は、まちづくりだけでなく様々な分野にも応用できるなどとしてはいかがでしょうか。また、この項目はスペースを最小限にするとよいでしょう(解決策にスペースを配分すべき)。→「デジタル技術はまちづくりだけでなく様々な分野にも応用できるため、「いかにデジタル化を進めるか」を最も重要な課題に選定し、以下に解決策を示す。」
(1)移動の効率化を図るため、MaaSを導入する。⑮
MaaSは、各旅行者のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスである⑯。例えば、今までは自ら個々の交通手段を細かく調べていた。これをスマートフォンのアプリを用いて出発地から目的地までの移動手段を検索や予約、決済までを一括して行うことができる⑰。
⑮ 見出しは、どんな内容が書いてあるかを示すものです。端的に表しましょう。→「MaaSの導入」
⑯ 解決策は、やること(行動)を書くべきです。言葉の説明になっています。また、なぜ旅行者に限定しているのですか。→「複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせて、検索・予約・決済等を一括で行うことができるMaaSを導入する。」
これらの修正をした場合においても、なぜMaaSがデジタル化促進につながるか分かりません。課題は、どうやってデジタル化を進めるのかであって、デジタル技術を用いたまちづくりではないですよ。論点がずれています。
※業務効率を図るためのデジタル化ではなく、良質なまちづくりを行うためのデジタル化とした方が解決策としては書きやすいと思います。よって、課題を見直すと良いでしょう。
⑰ 前述の説明と同じであり、例示になっていません。ここで具体を述べるのであれば、前段はもっとアウトラインのみの説明にすべきです。さらに、「を」が連続して使用されており、読みづらいです。
(2)自動運転技術の活用⑱
自動運転技術を下記のように展開する⑲ことで、コンパクトなまちづくりに寄与する⑳。
⑱ ⑯と同様、論点がずれています。
⑲ →「活用する」
⑳ →「推進する」
① 新たな移動手段の確立:移動制約者のための移動手段として用いる。完全自動化によって移動手段の多様化はもちろん、運転手の不注意による事故が減って、安全性向上の効果もある㉑。
㉑ この移動制約者の移動手段確保が、コンパクトなまちづくりにどのように貢献するのか分かりません。内容も、移動制約者の支援、移動手段の多様化、安全全の向上と多岐にわたっており、総花的で何を主張したいのか伝わりません。もっと課題に即した内容に絞って説明すると良いでしょう。
② 駐車場の集約化:自動運転車が普及すると、一般車両の需要は現在より下がると考える㉒。これによって駐車場を現在より集約できる。集約できると、限られた場所でより必要な施設を建てることができる㉓。
㉒ 一般車両とは何をさすのでしょうか。自家用自動車ですかね。そうであるならば、自動運転車が普及することで自家用車が減少する仕組みが分かりません。便利になるので、所有は増えるのではありませんか。
㉓ 主観的な考えを述べるのではなく、国の施策・制度を述べましょう。
( 3 ) スマートプランニング
個人単位の行動データをもとに、人の動きをシミュレーションし、施策実施の効果を予測した上で、施設配置や空間形成、交通施策を検討する計画手法である㉔。現状、公共施設の立地を検討する際は、人口分布や施設の立地状況から概ねの位置を計画している。これは、立地の最適性の観点で不十分である㉕。ビッグデータを活用して、様々な移動特性および施設配置や道路空間に変化させた時の滞在時間の変化を把握する。公共施設の最適な立地の検討が可能になる。無駄の無い施設配置ができるため、コンパクトなまちづくりに寄与する㉖。
㉔ 主語がありません。また、やることを書きましょう。→「個人単位の行動データをもとに、人の動きをシミュレーションし、施策実施の効果を予測した上で、施設配置や空間形成、交通施策を検討するスマートプランニングを導入する」
㉕ 課題のようになっています。ここはやることを書くところなので、不要と考えます。記述する場合でももっと端的に書きましょう。
㉖ 無駄のない施設配置ができるとなぜ、コンパクトなまちづくりになるのですか。コンパクトなまちづくりは、集約型の都市構造を構築することで公共施設も集約・再編することができます。スマートプランニングは、これら公共施設の集約再編の検討に用いることが効果的と考えます。また、都市機能の配置や都市構造を検討する際のツールとしても有効です。このような状況を説明しないと、飛躍していて読み手はその仕組みを理解できません。
新たなリスク
3.懸念事項と対応策:以下へ示す。
懸念事項:デジタル機器の不具合による障害が懸念される㉗。
対応策:冗長性を持った体制の構築を行う。例として、無停電電源装置の整備が挙げられる㉘。悪天候時等に電気が供給されないことを感知した場合、一時的に補助電源とすることで障害を最小限に抑える。
㉗ デジタル機器とは何なのか、不具合とはどのような現象なのかといったことが判然としないため、解決策に共通しているのか、新たなリスクなのかといった判断ができません。リスクが抽象的過ぎます。
㉘ 体制の話をしているのに、機器の整備ではミスマッチです。
要点・留意点
4.業務遂行にあたり必要となる要件と留意点
業務にあたっては、常に社会全体における公益を確保する観点と、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける観点を持つ必要がある。業務の各段階で常にこれらを意識するように留意する。 以上。