添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
略語について
技術士 試験の論文を書く際に悩まされるのが、スペースが足りないことです。「えっ!?足りないじゃなくて、原稿用紙を埋められないよ」という人も多いかと思いますが、そんな人は厳しいですが必要な知識が足りていません…
まず、技術士試験に合格できる知識量を備えることが前提です。この前提を満たすと、今度は書くことがいっぱいありすぎて、定められた原稿用紙に収まらないという悩みが生じます。この悩みを解決するためには、端的に表現するテクニックを身に着ける必要があります。
そのテクニックの中で、最も取り組みやすいのが略語の活用です。例えば、「交通需要マネジメント」という用語を繰り返し用いる必要がある場合、正式名称を何度も使うとそれだけでスペースを消費してしまいます。
「交通需要マネジメント」は、全部で10文字(マス)を消費します。 交通需要マネジメントは、Transportation Demand Management (トランスポーテーション・デマンド・マネジメント)の頭文字「TDM」という略称が国際的に用いられています。
このように長ったらしい専門用語には、大抵「略語」が用意されています。上記の例でいえば略語は「TDM」となり、たったの3文字で済んでしまいます。技術士 論文においても、これを使わない手はありません。
しかし、いきなり略語を使うのは、ルール違反です。評価者(読み手)がいくらその筋の専門家であっても、技術士のコンピテンシーにはコミュニケーション能力が問われていますので、万人に通じる表現が必要になります。
よって、一番最初に記すときは正式名称を書き、それ以降では略語を用いるといった使い方をしましょう。例えば、「渋滞解消には、交通需要マネジメント(TDM)が有効である。TDMは、・・・」といった具合になります。
この例示は、スペースのない技術士論文なので、このような表現としていますが、正式には(会社などでは)『交通需要マネジメント(以下、「TDM」という)」といった表現が望まれます。また、PDCAサイクルなど社会に浸透しているであろう略語は、そのまま使い始めても良いと思います。
社会に浸透しているか否かは判断が難しいところですが、一つの判断基準としては、白書で略語がそのまま使われているものは、論文でも使用して問題ないでしょう。これは、時代によって一般化されているか否かは異なりますので注意が必要です。
論文
本日の投稿論文は、建設部門の必須科目Ⅰ「災害復旧におけるDX」完成版をお届けします(以前の添削はコチラ)。もともと、一定水準を満たす論文ですが、より分かりやすい流麗な文章に推敲されました。端的な表現は、上記の略語のように一朝一夕に備わるものではなく、日ごろからの練習でしか身につかないものがほとんどです。時間が必要な要素ですので、みなさんも早めの対策を!
1.多面的な観点と課題
(1)いかにインフラ情報をアーカイブズ化するか
大規模災害では、公共施設等でも被害が甚大化している。一部の自治体では、インフラ情報が紙媒体により管理され、被災により消失し復旧の妨げとなる場合がある。被災からの復旧を迅速に行うには、インフラ情報をデジタル化し、活用できる体制の構築が重要である。よって、リダンダンシーの観点から、インフラ情報のアーカイブズ化が課題である。
(2)いかに産官学の連携を推進するか
人口減少等の影響により地方自治体の技術系職員数は減少傾向にある。災害発生後の復旧を迅速化するには、業務の生産性を向上させる必要がある。生産性の向上には現場の課題に即したDXの活用が不可欠であり、この技術開発に当たっては現場従事者と技術開発者が一体となって進めることが重要である。よって、体制面の観点から、産官学の連携が課題である。
(3)いかに入札制度の適正化を図るか
被災後の効率的な復旧を図るためにはICT技術等を積極的に活用することが重要である。しかし、従来の入札制度は、ICT技術等が適切に評価されず、DX普及拡大の障害となっている。これらを積極的に導入するため、設計・積算・入札の仕組みを見直す必要がある。よって、制度面の観点から、入札制度等の見直しが課題である。
2.最も重要な課題とその理由
情報の喪失は、復旧そのものを難しくするため、「インフラ情報をアーカイブズ化するか」を最重要課題に選定し、以下に解決策を述べる。
(1)計画・設計フェーズ
①3D都市モデル
多角的な視点による復興計画を検討するため、3D都市モデル(PLATEAU)の活用を推進する。例えば、都市計画基礎情報から地形や構造物の情報等を事前にインプットし、被災による地形の立体的変化を把握できるようにする。また、浸水状況を3D都市モデル化し、建物の高さや浸水位面の把握を容易にすることで、都市全体の災害リスクの視覚性を向上させる。さらに、このような特徴を持つ3D都市モデルは、防災インフラの整備等に要する地元との合意形成の円滑化にも寄与する。
②BIM/CIM
大きく破損したインフラ等を迅速に復旧するため、BIM/CIMを活用する。例えば高架橋では、破損の状態が確認しづらい場合がある。そこで、UAVを用いて点群データを取得しモデリングする。このモデリングにより、高低差や施工位置を同時に可視化し破損個所を把握することで迅速な工法の検討が可能となる。さらに、3次元の設計情報がデータとして保存されるため、復旧後の維持管理も容易となる。
(2)施工フェーズ
i-Constructionを導入し、復旧に要する作業時間を短縮する。例え施工計画の立案においては、地上型レーザーによりスキャニングを行い、復旧を要する路盤材の数量や舗装面積及び工事費用を自動算出する。施工管理においては、TSで施工機械を追尾することにより、3Dデータから出来形管理を行う。
(3)維持管理フェーズ。
取得した3次元データは、国土交通データプラットフォームに登録する。これにより、産官学民の連携を図り、分野横断的な都市の強靭性の評価やインフラの事前予防対策等を推進する。また、オープンデータ化により、類似した被災が想定されるような地形条件を有する自治体の対策検討に活用することもできる。
3.新たなリスクと対応策
ICT技術に頼り仕組みを理解せずに現場が完成することで、若手技術者の技術力が低下するリスクがある。対応策として、熟練技術者とのOJT教育やECI方式により社外技術者と意見交換を行うことで、技術力の向上を図る。
4.必要な要件と留意点
業務にあたっては、常に社会全体における公益を確保する観点と、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける観点を持つ必要がある。業務の各段階で常にこれらを意識するよう留意する。 以上