添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
専門分野の論文1式をお届けです
復元論文は、たくさんのご投稿をいただいておりますが、非公開案件が多いことなどもあり、専門分野の情報提供がなかなかできずにおりました。そこに来て今回の投稿は、建設部門都市及び地方計画とドストライクな専門分野になります。
今回の試験問題は、難しい傾向にありみなさん苦戦を強いられたと思います。そんな中、少しでも多くの論文を目にすることにより、ご自身の注意すべき点や間違いやすいポイントなどが見えてくると思います。これらは、自分自身の気づきによって改善することが、点数を伸ばすことに直接つながります。
さて、都市計画の分野においては、国土形成計画の策定、立地適正化計画制度が導入されて10年という節目といった具合に、話題は盛沢山でした。そのような状況の中、必須科目で国土形成計画が出題されるなど驚きの問題設定でしたが、今年は昨年できなかった立地適正化計画あたりが再び注目されるのではないでしょうか。
令和6年10月には、立地適正化計画の実効性の向上に向けたあり方検討会 とりまとめ(案)として、持続可能な都市構造の実現のための『立適+(プラス)』が発表されています(報道発表はコチラ)。これだけ環境が整えば、都市及び地方計画の問題の一端を担う可能性は高いと言えます。
今回投稿の論文でも立地適正化計画の視点が含まれています。都市及び地方計画において、立地適正化計画の知識は不可欠なので、一度深堀りをしてみてはいかがでしょうか。立地適正化計画に限らず、この時期は知識を広げることに注力すると良いと思います。
それでは、早速論文を見ていきましょう!
論文
必須科目Ⅰー2 復旧復興におけるDX
1.多面的な観点と課題
(1)いかに施工情報をアーカイブズ化するか
大規模災害により、公共施設等でも甚大な被害が発している。財政状況が厳しい自治体では、インフラ情報が紙媒体により管理され、被災により消失し復旧の妨げとなる場合がある。災害発生後に迅速な復旧を行うためには、インフラ情報をデジタル化し、活用できる体制を構築することが重要である。よって、技術面の観点①から施工情報②のアーカイブズ化が課題である。
① 技術面と言っても間違いではないですが、紙だと消失してしまうと言っているので、冗長性やリダンダンシーの観点の方がより的確な表現になると思います。
② 施工情報に限定する必要はないと思います。前述にあるように、インフラ情報でよいのではないでしょうか。
(2)いかに産官学の連携を推進するか
人口減少等の影響により地方自治体の技術系職員数は減少傾向にある。こうした中、大規模災害発生時に迅速な復旧を図るには、従来の手法に捉われず、産学が開発する様々な新技術を積極的に取り入れていく必要がある③。そのため、新技術の開発・導入を促進する上で、関係者間の協力が不可欠である。よって、体制面の観点から、産官学の連携が課題である。
③ 自治体の技術職員が少なくなると、どうして新技術の導入が必要になるのでしょうか。この関係が分かるように、従来の手法とは何か、新技術が何なのかといった抽象的な部分をもう少し説明する必要があると思います。例えば、「生産性を向上させる新技術」といった具合になります。
(3)いかに入札制度の適正化を図るか
従来の入札制度では、ICT技術等の新技術に対する評価尺度が十分に整備されていないため、日常的にDX技術が活用されにくい④。被災後の効率的な復旧を図るためにはICT技術等積極的な活用が重要であり、このような新技術を適切に評価し、日頃から導入のハードルを下げることが重要である⑤。よって、制度面の観点から、入札制度⑥の見直しが課題である。
④ 「入札制度では、・・・DX技術が活用されにくい」となっており、主語述語が少しおかしいですね。また、日常的という表現も文脈からすると違和感があります。普及拡大の障害といったニュアンスですかね。→「従来の入札制度は、ICT技術等が適切に評価されないため、DX普及拡大の障害となっている。」
⑤ 「重要であり、・・・重要である」と繰り返し表現が気になります。また、前項の修正をした場合、適切な評価も繰り返しになってしまうので、全体的な構成を見直した方が良いですね。→「被災後の効率的な復旧を図るためにはICT技術等を積極的に活用することが重要である。しかし、従来の入札制度は、ICT技術等が適切に評価されないため、DX普及拡大の障害となっている。ICT技術等を積極的に導入できるように、設計・積算・入札の仕組みを見直す必要がある。」
⑥ 前項の通り、入札だけでなく設計・積算プロセスも入れた方がより効果的にICT導入が可能になると思います。→「入札制度等」
2.最も重要な課題とその理由
迅速な復旧は人命に直結するため⑦「施工情報をアーカイブズ化するか」を最重要課題に選定し、以下に解決策を述べる。
⑦ この理由は、すべての課題に当てはまるのではありませんか。この場合は、例えば「情報の喪失は、復旧そのものを難しくするため」などが考えられます。
(1)計画・設計フェーズ
①3D都市モデル
被災からの復興計画を効率的・効果的に実施するため、PLATEAUの活用を推進する。自治体が有する都市計画基礎情報から、地形や楮物⑧の情報等を事前にインプットしておくことで、被災時でも迅速な状況把握を行う⑨。さらに、復興に向けた計画においては、被災経験を基⑩に様々な災害条件でシミュレートを行うことで、強靭な都市づくりの検討⑪をスムーズに進める。このように、都市情報を事前集積し、見える化することで、地元との円滑な合意形成⑫も得られやすくなる。
⑧ →「構造物」?
⑨ →「被災時でも迅速に状況を把握することができる。」
構文的には上記の通りですが、それ以前に事前に構造物の情報を入力しておいても、被災状況を把握することはできないと思います。どのように活用して、現況把握に役立てるのかを書く必要があります。
⑩ 水害であれば想定最大規模降雨、地震であれば最大震度などがインプットデータとして理解できますが、被災経験を基にとはどういうデータなのかよく分からないです。
⑪ 文の冒頭では、復興に向けた計画とありますが、ここでは強靭なまちづくりとあり、復興の話からそれているように感じます。
⑫ 何を合意形成するのですか。また、合意は得るものですが、合意形成は得るものではないです。図りやすいですかね。
②BIM/CIM
インフラ構造物等の大規模破損時に迅速な復旧を行うため⑬、BIM/SIM⑭を活用する。例えば高架橋では、破損時の状態⑮が確認しづらい場合がある。そこで、UAVを用いて点群データを取得しモデリングを行う⑯。高低差や施工位置を同時に可視化することで、迅速な復旧を実現⑰するとともに、インフラ情報の電子化によって⑱復旧後の維持管理も容易にする。
⑬ 構文がおかしいですね。→「大きく破損したインフラ等を迅速に復旧するため」
⑭ →「CIM」
⑮ →「破損の状態」
⑯ 具体例としていますが、BIM/CIMの説明というより、UAVの説明になっているように感じます。また、構造物は壊れていると思いますが、どのような目的で何をモデリングするのでしょうか。
⑰ 可視化することと迅速な復旧の実現が直接結びつきません。理由を述べないと読み手は理解できません。
⑱ 電子化との表現ですと、幅が広すぎます。BIMなので、「3次元モデリングによって」といった表現になるのではないでしょうか。
(2)施工フェーズ
i-Constructionを導入し、復旧に要する作業時間を短縮する。例えば道路復旧工では⑲、地上型レーザーによりスキャニングを行い、復旧を要する路盤材の数量や舗装面積及び工事費用を自動算出する。施工においては、施工機械をTSにより機械位置を追尾しつつ施工した後⑳、3Dデータから出来形管理を行う。
⑲ 最初は設計積算の話なので、施工フェーズではなく設計フェーズなのではとの疑問が生じます。よって、「施工計画の立案においては」としてはいかがでしょうか。
⑳ 見出しが施工フェーズであることから、場合分けはもっと詳細に区分した方が良いと思います。よって、出来形管理とあるので「施工管理においては」とした方がより分かりやすい表現になると思います。また、「施工については」とあるにもかかわらず、「施工した後」との表現に違和感があります。→「TSで施工機械を追尾することにより」
(3)維持管理フェーズ。
(オープンデータ化の必要性について言及)
また、集積された点群データ等のオープンデータ化を図り、研究・開発を促進するため、インフラデータプラットフォームを構築する㉑。
㉑ 復旧・復興との関係を明記した方が良いですね。
3.新たなリスクと対応策
ICT技術に頼り仕組みを理解せずに現場が完成することで、若手技術者の技術力が低下するリスクがある。対応策として、熟練技術者とのOJT教育やECI方式により社外技術者と意見交換を行うことで、技術力の向上を図る。
4.必要な要件と留意点
業務にあたっては、常に社会全体における公益を確保する観点と、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける観点を持つ必要がある。業務の各段階で常にこれらを意識するよう留意する。 以上
選択科目Ⅱー1ー1 PFI事業の特徴
(1)PFI事業と従来型の公共事業の比較と特調
近年、人口減少等の影響により、厳しい財政状況にある地方自治体も存在する。こうした中、従来型の公共事業では、ライフサイクルコストの管理が厳しくなり、施設やサービスの縮小のリスクが生じている①。また、公園や公民館等複数の公共施設が隣接するような地域において、従来型の公共事業では別々の行政部局によって管理されるが、PFI事業の活用により1つの事業者が一体的に管理できる②。民間の資金やノウハウを活用することで、公共施設に付加価値を創出できる③。このように、単に施設管理する点と、地域の利便に資する施設を具備し一体的に運営する点が異なる④。
① 導入の背景は、問われていません。
② PFIの方が言った管理しやすいといったことはあるかもしれませんが、従来型でも使用に定めれば一体管理は可能です、単純に縦割りといった行政における体制の問題に過ぎないのではありませんか。施設の一体化というより、設計、建設、維持管理、運営といった業務の一体化が特徴ではないでしょうか。
③ これが正にPFIの特徴なのですが、従来型との比較が欲しいところです。
④ 地域の利便に資する施設があるかないかは関係ないと思います。従来型とPFIの違いと主な特徴は、次の表のとおりです(国交省HP資料より)。
②PFI事業により期待される効果
例えば、都市公園では、Park-PFIによる管理があげられる⑤。都市公園内に、カフェ等の収益施設を設置することで、人々の生活や利便に資する空間が創出できる。また、得られた収益の一部を維持管理にあてることで、ライフサイクルコストの縮減といった効果も期待できる。さらに、都市公園法の特例を活用して保育所を設置することで、子育て環境と調和した環境を形成できる。
このように、民間活力の導入を行うことで、こどもまんなかまちづくりに寄与する都市環境を構築できるなどの効果が期待できる。 以上
⑤ 問題には、PFI法に基づいて実施されるとあります。Park-PFIは、記載にもあるように都市公園法に基づく事業であり、問題のいうPFI事業ではありません。よって、すべての内容は問題の条件を満たしていません。
選択科目Ⅱー2ー1 小規模な土地区画整理事業
1. 調査、検討すべき事項とその内容
(1)都市の現状調査
国勢調査等から、人口や世帯構成、年齢の偏在状況などを把握する①。自治体の都市計画基礎情報等から、地理状況や都市の立地状況を確認する②。
① 地方都市全体なのか、対象地区なのか調査対象範囲がよく分かりません。
② 都市の立地状況とは何を指しているのでしょうか。また、問題には「小規模な土地区画整理事業の特徴に留意し」とありますので、この事業実施においてなぜこの調査なのかもよく分かりません。事業の特徴に留意するのであれば、事業の目的は敷地の集約化や共同化なのですから、都市計画基礎調査のデータを調査するのであれば、土地利用状況や都市施設等を把握すべきと考えます。
(2)上位・関連計画の調査
自治体の総合計画や都市マスタープランから、都市の目指す方針を把握する。また、立地適正化計画等の関連計画から、市街地整備に関する施策を確認する③。実施済みの施策については、成果をとりまとめ、実施に至らなかった施策については、その要因を抽出し、課題を抽出する④。
③ 立地適正化計画なのですから、市街地整備というより都市機能の誘導方針などを確認するのではありませんか。
④ 表現が課題抽出になっています。問われていることは、調査・検討事項のどちらかです。例えば、立地的化計画の内容を調査し誘導すべき都市機能を確認するとともに、本事業で当該都市機能を誘導できるか検討するといった具合になるのではないでしょうか。
(3)権利関係の把握
事業の対象となりうるエリアにおける、空き家や空き地等の権利者を確認する。また、住宅部局において空き家バンクが構築されている場合は、持ち主等を把握する。さらに、登記情報等から、所有者不明土地の有無を確認し、権利関係の把握を行う⑤。
⑤ 手段が具体的になっていますが、最初の文と同じ内容が繰り返し述べられています。区画整理ですから、権利関係とともに地権者意向の把握が必要ではないでしょうか。
2.業務を進める手順と留意点、工夫点
①課題の整理
前述の調査結果を基に、課題を整理⑥する。整理にあたっては、地図上に課題点をプロットする等の見えるかを行い、議論がしやすくなるよう工夫する⑦。
⑥ ここでいう課題とは、地域の課題ですか、区画整理を進める上での課題ですか。
⑦ 誰と誰が何を議論するのですか。これが分からないと見える化の必要性が理解できません。
②目指すべき都市の方針の検討
整理された課題及び上位・関連計画を踏まえ、目指すべき都市の方針⑧を設定する。
⑧ 区画整理の計画で都市の方針は大々的すぎます。都市の方針は、都市マスなどの上位計画に示されるものです。本事業で定めるべき方針は、公共施設整備方針、移転に関する方針、必要に応じて誘導施設の方針などが考えられます。
③対象区域の設定⑨
都市⑩区画整理事業の対象となる区域を設定する。設定にあたっては、既存の道路や都市施設の立地状況に⑪考慮し、機能⑫が損なわれないよう留意する。
⑨ エリアが決まらないと⑧で指摘した事業方針は決められないと思います。よって、方針の前にエリア設定が来るのではないでしょうか。
⑩ →「土地」
⑪ →「を」
⑫ 区画整理を行ってよくなる公共機能はあると思いますが、失われる機能とはいったいどのような機能でしょうか。
④施策の立案及び実施主体の設定
前述に設定した都市像⑬を基に、土地区画整理事業の手法や実施主体を設定する⑭。敷地整序型土地区画整理事業⑮等、様々な手法を柔軟に組み合わせることで公共減歩の縮減や柔軟な地区界を設定する等の工夫を行う⑯。また、民間事業者による開発の機運が高まっている場合には、一体的な整備を検討する等、地域の実情に寄り添った⑰事業となるよう工夫する。
⑬ 前述では、都市像を設定していない(都市の方針)ですし、都市の方針も⑧のとおり設定することに疑義があります。
⑭ 小規模な土地区画整理には、敷地整序型土地区画整理事業や任意の申出換地による集約といった手法があり、さらに支援制度も様々です。よって、調査検討事項には、これらの検討を記述すべきだと思います。
⑮ 組み合わせの例示になっていないと思います。
⑯ 手法を組み合わせることで、なぜ減歩が小さくなったり、柔軟な地区堺が設定(←これ自体も何がいいたいのか分かりません)できたりするのか分かりません。
⑰ →「合わせた」
⑤達成状況の評価資料の設定及びスケジュールの設定
土地区画整理事業の実施による達成状況の設定⑱や実施に至るまでのスケジュールを設定する。達成状況の設定にあたっては、アウトプット指標だけでなく、交通量等のアウトカム指標も設ける等の工夫を行う。
⑱ 事業の目的は、敷地の集約再編ですから、区画整理が完了すれば達成できるのではありませんか。区画整理によって地域課題を解決するのであれば、そのことについて述べないと何を達成したいのか分かりません。
3.調整方策
関係者との調整は、客観的な情報に基づき実施する。
小規模な土地区画整理事業では、都市計画決定を必要としないことから、住民に対しては、ヒアリングやアンケート、WSを通じて意見交換を行う等、きめ細やかな対話の場を設ける等し、調整する⑲。 以上
⑲ 「等」は「意見交換を行う等」すでに用いているので不要だと思います。→「設け調整する」
選択科目Ⅲー1 オーバーツーリズム対策
1.多面的な課題
(1) いかに地域一体の観光地づくりを推進するか
コロナ禍を経て、国内外の観光需要は増加しつつある。観光客の増加に伴い、エリア内の渋滞発生や住環境悪化等の影響が出てきており、行政だけでは対応しきれいない状況下にある①。そのため、地域内の様々なステークホルダーによって観光客の分散化を図る等、持続的な地域活性化に繋げていくことが求められる②。よって、体制面の観点から地域一体の観光地づくり③が課題である。
① 行政だけでは対応しきれないとありますが、なぜそのように考えたのでしょうか。この考えに至った背景で記述しないと読み手は共感できません。問題を解決するためのハード整備なら行政対応ですが、おそらく需要のコントロールを想定されているのではないでしょうか。そうであるなら、行政で対応しきれないというより、「ハード対策だけでは限界だから、需要調整が必要」といった背景により、観光業を担う事業者や住民と一体となって取り組むといった建付けにすればよいのではないでしょうか。
② 目的が変わってしまっているような印象を受けます。あくまで、オーバーツーリズムを解消することが目的です(持続可能性はその先にある効果)。
③ 需要をマネジメントして観光客の分散をという記述に対し、その結論が観光地づくりでは支離滅裂に見えます。文意を踏まえると「地域と行政が一体となり観光需要をマネジメントするための取り組みが課題」といった具合になるのではないでしょうか。
(2)いかにインバウンドに対応するか
国際社会において、SDGsの考え方が浸透しており、人種、文化、宗教等の違いに寄らない多様な観光活動が行われている。一方で、地域固有の地元ルールや観光に関する案内が十分に理解されないために、外国人旅行客の迷惑行動に発展する事例が増加しつつある。そのため、外国人旅行客が安心して旅行ができる環境つくりが求められる④。よって、多様性の観点から、インバウンドへの対応が課題⑤である。
④ 背景の話と結論がちぐはぐです。背景では、外国人観光客の迷惑行動に言及しているにもかかわらず、結論は外国人の安心安全の確保では、迷惑行為をする人を守るということですか。問題点をどのように捉え、何がしたいのか全く分かりません。背景にある問題を解決したいのであれば、外国人旅行客のマナー向上といった取り組みが求められるのではないでしょうか。安心安全を確保するのは外国人ではなく、地域住民といった関係性になります。
⑤ インバウンドの対応は広すぎますね。もう少し背景に即した課題の方が良いと思います。例えば、「誰もが地元ルールを順守する環境づくり」といった具合になります。
(3)いかに省人化して取り組むか
これまでの観光業は、サービスを人的労働によって生み出す労働集約型産業である。しかし、生産年齢人口の減少を迎える中、限られた人材で取り組むためには、観光のDX化が求められている⑥。よって、人材面の観点から省人化の推進が課題である。
⑥ 問われているのは、持続可能な観光業とするための課題ではありませんよ(前項の課題設定もこの傾向があります)。オーバーツーリズムを解消するための課題を設定してください。省人化を課題とするなら、オーバーツーリズム対策に多くの人的リソースが必要といった背景を述べるべきでしょう。
2.最も重要な課題と解決策
地域活性化は、同時に地方創生も達成できるため⑦「いかに地域一体の観光地づくりを推進するか」を最重要課題に選定し、以下に解決策を述べる。
⑦ オーバーツーリズムが生じているということは、望ましい形でないにせよ活性化(交流人口が増加)している状態ではないでしょうか。行動と効果が合っていないように感じます。理由に迷った場合、倫理綱領で優先されている公益の確保を用いると便利ですよ。例えば、「地域の安全、健康及び福利に直結するため」といった具合になります。
(1) 集約型都市構造の構築
効率的に観光できる都市環境を構築することで、渋滞発生等を抑制する⑧。具体的には、立地適正化計画を策定した上で、都市機能誘導区域を設定する。さらに、地域公共交通計画を策定し、集約された都市施設間を結ぶように公共交通網を再構築する⑨。公共交通を利用した移動を実現することで、過度なマイカー利用を抑制⑩し、渋滞の発生を抑制する。加えて、MaaSを導入し、目的地となりうる施設までの移動から決裁までの手続きをシームレスにする⑪。また、予約時には各観光施設の混雑状況をリアルタイムで表示することで、移動の分散化を図る⑫。
⑧ 「効率的に観光できる」とは誰のどのような行動なのか分からず、さらにその都市環境とはどのような状態を指しているのか理解できません。このため、なぜこれで渋滞発生が抑制されるのかも理解できません。もっとわかりやすい表現とすべきです。
⑨ ⑧が理解できないので、なぜ都市機能の誘導なのか、公共交通の再構築なのかも理解できません。さらに言えば、課題にある「地域一体」はどこへ行ってしまったのでしょう。体制面が観点なのですから、地域一体という視点に言及することは不可欠なのではないでしょうか。
⑩ オーバーツーリズムの解消なのですから、マイカー利用の抑制は解決策としてずれてるように感じます。
⑪ 決済(文中誤字)をシームレスにするでは、観光客の利便性向上に見えます。目的は渋滞解消なら、MaaSの効果を公共交通の促進など渋滞解消に寄与するものとすべきです。
⑫ この施策は、的を射ていると思います。あとは、⑨のとおり「地域一体」という視点を持たせるために「公共交通事業者と施設管理者の協力のもと」といった体制面に触れると良いでしょう。
(2) 観光地マネジメント
地域の多様な関係者を巻き込みつつ、柔軟なルール策定等を推進するため、DMOを組成する。地元ルールの多言語標記⑬化等に取り組むことで、インバウンドの受け入れ環境を整備する⑭。また、組成にあたっては、1次・2次産業等のノウハウ⑮も取り入れる等、あらゆる地域人材を取り込む。観光課題に対して、行政と地域との間にたって合意形成を促進することで、効果的なオーバーツーリズム対策⑯を推進する。
⑬ →「表記」
⑭ 問題はオーバーツーリズム対策なので、受け入れ環境というよりインバウンドのマナー向上に取り組むが題意に沿った解決策と考えます。ただし、これは課題の2つ目に相当するように思います。
⑮ 1次、2次産業のノウハウは、具体的に説明しないと分かりません。
⑯ このDMOが行うオーバーツーリズム対策の具体例を記述すると良いと思います。
(3)地域の魅力の最大限化
①ツーリズムの造成
地域に潜在する資源を有効活用することで、新たな観光客の流れを呼び込む。例えば、普段訪れることのできないインフラの内部等を巡るツーリズムを造成することで、観光客の分散化を図る⑰。造成にあたっては、周辺観光地やイベント等を組み合わせ、地域交流を促すことで、地域全体の魅力を向上させる⑱。
⑰ オーバーツーリズム対策なのに、なぜ新たに呼び込むのですか。悪化してしまいますので、不適切です。具体例を踏まえると、新たに呼び込むのではなく、観光客を分散させるために新たな観光資源を活用するが言いたいことですかね。よって、最初の1行目は不要ですね。また、例えばとありますが、具体性がいので例えば以降が解決策といえます。
⑱ これも目的がずれているように感じます。魅力を向上させるのではなく、周辺と協力してピーク時間帯の分散を図る、観光客が少ない平日にイベントを仕掛けるなどが対策になるのではないでしょうか。
②スモールコンセッション
地域に潜在する小規模な遊休不動産⑲を有効活用するため、スモールコンセッションを導入する。例えば、廃校等の空きスペースを小規模事業者に提供し、宿泊施設として運営することでエリア価値の向上を図る。あらたな観光地を創出し、観光客の興味関心を増進させることで、観光客の分散化を図る⑳。
⑲ コンセッションであるなら公的不動産であることを示した方が良いと思います。
⑳ 観光地を増やして分散を図るということなのですかね。これを説明しないと、観光客を増やしてなぜオーバーツーリズムを解消できるのか理解できないと思います。また、スモールコンセッションという手法をなぜ使う必要があるのかもよく分かりません。また、公共の遊休不動産を活用することは、①でいう潜在的資源を使うことと同じに見えます。
3.新たなリスクと対応策
地域の魅力が向上することで、開発圧力が高まる。そのことによるスプロール化現象の発生等、自然生態系への悪影響が懸念される。対応策として、居住調整区域を設定する㉑。自然生態系を保全すべき区域に制限を設けることにより、市街地が無秩序に拡散していくことを防止する㉒。さらに、立地適正化計画の実行力が高まり㉓、将来のインフラ投資の抑制といった波及効果も生じる。 以上
㉑ 上記の取組みで懸念されるのは、宿泊施設や集客施設の立地なら理解できますが、居住地としての魅力が高まっているわけではないので住宅と言われてもピンときません。この場合は、特別緑地保全地区など都市計画における地域地区の活用の方がふさわしいと思います。
㉒ 市街地が無秩序に拡散していくことを防止するための対策なので、この記述に必要性を感じません。
㉓ なぜ実行力が高まるのですか。説明が必要です。