添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
選択科目Ⅲの書き方②
お正月は、皆様はいかがお過ごしですか。受験生は正月休みなし!と言い放ってしまったので、私がゆっくりしていては示しがつきません。そこで、私も、添削に奮闘しつつも、とある資料づくりに励んでいます。
とある資料とは、今年から我が社の技術士を育成するための講師を任されたため、この講習に用いるものになります。まだまだ途中ですが、講習会はそろそろ始めないといけないので、めちゃくちゃ焦っています。
この中の資料の一部をご紹介したいと思います。前回の続きになります「選択科目Ⅲの書き方」に関する情報です。前回は、「技術士第二次試験受験申込み案内」から、選択科目Ⅲの解放を分析しました(前回記事はコチラ)。案内には、次の記述がありましたよね。
【出題内容】
社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象として、「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い、多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して、その遂行方策について提示できるかを問う。
これを要約すると、求められている要件は以下の3つになります。
① 専門科目の観点をもつ課題
② 多様な視点による問題解決手法
③ ②の遂行方策
今回は、これらを具体的に見ていきましょう。
① 専門科目の観点をもつ課題
課題の提案は、専門科目に関することに限定されます。
例えば、選択科目が道路であるにもかかわらず、防災減災テーマで治水という課題を述べてもダメということです(必須科目ではOK)。
② 多様な視点による問題解決手法
解決策の提案は、様々な視点で述べないとダメです。
例えば、今回の投稿の例で言うと交通政策の視点からだけで解決策を書いてもダメということです。緑化行政や、都市構造といった視点を用いて、多角的に解決しなければいけません。
③ ②の遂行方策
方策ですから、具体的な政策・制度を述べる必要があります。
例えば、今回の投稿の例で言うと旅行者の受け入れと生活の質を確保するために、「地区計画で遊戯施設や宿泊施設を制限するとともに、居住環境向上用途誘導地区を定め生活利便施設を誘導する」といった具合に最新制度を織り交ぜて述べる必要があります。
選択科目Ⅲが苦手な人、ぜひ実践してみてください!得点爆上がりです↑
論文
今回の添削LIVEは、 建設部門 選択科目Ⅲ「オーバーツーリズム対策」のチェックバック2回目になります。上記の内容を意識すると何だか難しく感じてしまいますよね。必須科目Ⅰの感覚が残っていると、得点することが難しくなります。気持ちを切り替えて、専門家としての技術力を見せつけてやりましょう。それでは、論文をみていきましょう。
1.多面的な課題
(1) いかに観光需要をマネジメントするか
従来の多くの地域では①、必要とされるインフラの量が定住人口をベースに設計されており、観光客の人数が見込まれていない②。観光客数が一定水準を超えるとキャパシティが超過し、環境破壊や交通渋滞等に繋がる③。そのため、自治体や民間事業者等の地域に関わる主体によって観光のマネジメントを図り、観光客を分散化させることが重要である④。よって、持続可能性の観点から、観光需要のマネジメントが課題⑤である。
① 「従来の多くの地域」との表現は、過去に多くあった地域と読めてしまい、現在には多くないとも読めてしまいます。従来の設計が言いたいことなのでしょう。そうであるなら、ここでの「従来の」は不要。
② 一文中で、主語がコロコロ変わってしまっています。この文の主語は、「地域では」だと思います。→「多くの地域では、定住人口をベースに必要とされるインフラの量を設計しており、観光客の人数を見込んでいない」
③ キャパシティが超過するのではなく、定住人口と交流人口がインフラのキャパシティを超えるのではありませんか。また、交通渋滞が発生するのは理解できますが、環境破壊が発生する仕組みが理解できません。インフラの量が不足することに起因する問題点を提起しましょう。
④ 前文との関係が希薄であり、なぜこの実施主体なのか、何のマネジメントなのか、なぜインフラの整備ではなく分散化をいう手段なのかといったことが全く分かりません。これらを説明する背景(供給ではなく需要に着目した背景)を書きましょう。
⑤ ④と同じです。なぜ持続可能性なのか、なぜ観光需要マネジメントなのか提案の理由が不明です。
(2)いかにルールを順守する環境づくりを行うか
国際社会ではSDGsに対する理解が進み、人種や文化等の違いに寄らない多様な観光活動が行われている⑥。一方で、観光に関するルールが十分に理解されず、外国人旅行客の迷惑行動に発展する事例が増加しつつある。そのため、外国人旅行客のマナーを向上させる取組が重要である。よって、多様性の観点から、誰もがルールを順守する環境づくりが課題⑦である。
⑥ 「寄らない」は「依らない」だと思いますが、平仮名で良いと思います。また、文化の違いによらない多様な観光活動との表現が分かりづらいです。「よらない」ではなく「対応した」、「観光活動」ではなく「観光造成」としてはいかがでしょうか。
⑦ 「技術士第二次試験受験申込み案内」には、『「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い』とあります。今さらですが、専門性に欠ける課題提起だと思います(必須科目なら全く問題ないのですが、選択科目ⅢなのでNG)。例えば、都市構造の観点、都市環境の観点、土地利用の観点、地方創生の観点などなど、専門分野に特化した観点からの課題設定が望まれます。
(3)いかに省人化して取り組むか
観光業は、サービスを人的労働によって生み出す労働集約型産業であるにもかかわらず、人手不足が顕著である。生産年齢人口が減少を迎える中、さらなる人手不足が懸念されることに加え、オーバーツーリズム対策にも多くの労働力が必要である。よって、人材面の観点から省人化の推進が課題⑧である。
⑧ 今さら感たっぷりで恐縮ですが、この課題も⑦と同じです。
2.最も重要な課題と解決策
地域の安全、健康及び福利に直結するため「いかに観光需要をマネジメントするか」を最重要課題に選定し、以下に解決策を述べる。
(1)移動のマネジメント
①ウォーカブルシティの推進
街路空間を再構築し、歩行や公共交通機関を活用して移動できる環境を整備する⑨。具体的には、滞在快適性等向上区⑩を設定し、自治体の公共施設整備⑪と併せて民地のオープンスペースやピロティを創出する⑫。移動には⑬、LRTを導入し電停のバリアフリー化を行うことで、歩行空間と一体的な空間⑭を整備する。このように、WEDOなまち中⑮を創出することで、過度なマイカー利用を削減させるとともに、生活に伴う交通需要の緩和にも貢献できる⑯。
⑨ 街路空間の再構築と、歩行や公共交通機関の活用(←これは何なのか不明)と手段が二つ示されていますが、どちらが言いたいことなのでしょうか(両方の場合は構文がおかしいです)。また、歩行や交通機関を活用して移動できる環境はすでにあります。言いたいことは、歩行空間を快適にして、移動手段として徒歩や公共交通を選択してもらえるようにすることではありませんか。
⑩ →「滞在快適性等向上区域」
⑪ 抽象的です。最初に街路空間の再構築とあるので、どのように再構築するのかを書くべきです。例えば、街路を拡幅して広場化する事業といった内容が想定されます。
⑫ これも、もう少し具体的に記述した方が分かりやすくなると思います。例えば、「沿道店舗のオープンスペース提供、建築物のオープン化(ガラス張り化、ピロティ化等)による賑わい創出」など
⑬ 「移動には」としてしまうと「徒歩は?」となってしまいます。ここは、「中距離輸送手段として」とか「公共交通機関の一つとして」といった表現が適切なのではありませんか。
⑭ 一体的とありますが、歩行空間と何が一体化されるのですか。電停のことを言いているのでしょうか、それとも軌道も含めてLRT関連施設全体を言っているのでしょうか。また、なぜ一体化するのですか(電停の場合待ちスペースが必要で、これが歩行空間になるのでしょうか)。
⑮ これはさすがに唐突です。せいぜい、居心地が良く歩きたくなる空間くらいにしておかないと説明不足に感じます(WEDOを共通認識とすることに違和感があります)。
⑯ 波及効果のように見えますが、これは本来の目的ではありませんか。
②TDMの推進
ピーク時間帯での観光客の集中を回避するため、MaaSを導入し、観光施設の利用券と公共交通の乗車券がセットになったパスを発行する⑰。予約時には、公共交通事業者と施設管理者の協力のもと、各観光施設の混雑状況をリアルタイムで表示することで⑱、観光客の時間的・空間的な⑲分散化を図る。
⑰ なぜMaaSの導入やセット販売が集中を回避することにつながるのですか。目的と手段がミスマッチに見えます。
⑱ MaaSやセット販売はどこへいってしまったのですか。結局、混雑状況を表示することのみで良いという結論に見えます。
⑲ いきなり空間的分散がでていますが、空間的な分散手法が示されていません。
(2)立地のマネジメント
地域毎のまちづくり制度を活用し、宿泊客の集中を防ぐ⑳。例えば、都市計画法に基づく地区計画により1部屋あたりの最低面積を設定し、狭小な宿泊施設の立地を制限する㉑。また、建築基準法に基づく建築協定区域を設定により建築物の用途制限を行い、無秩序な宿泊施設の開発を抑制する。
⑳ 地域毎のまちづくり制度との表現では、抽象的で何をするのか分かりません(例示ですと建物の立地や居室の制限なので建築物の制限に係る制度を活用ですかね)。また、宿泊客の集中を防ぐというより、宿泊施設の供給量をコントロールするのではありませんか。
㉑ 狭小な宿泊施設がダメな理由が分かりません。
(3)地域主体によるマネジメント
DMOを中心として㉒観光地域づくりを行うことで、分散型の観光地を創出する㉓。例えば、空き家が増加する限界集落において、古民家を活用した宿泊施設の運営を行う。集落生活のブランディングと伴に耕作放棄地の解消や里山の再生を行うことで、観光活動と共存した集落再生を実現させる。このようなコンテンツ開発によって、旅行先の分散化が期待できる他、新たな観光スタイルの価値観を創出することができる㉔。
㉒ →「DMOが中心となって」
㉓ 「DMO=分散化が図られる」では説得力に欠けます。DMOが中心となる→全体の統制が図られる→分散化可能というロジックを丁寧に説明しましょう。解決策は、目的→やること→具体例が良いですよ。ここでの「やること」は、DMOの設置ですかね。
㉔ DMOじゃなきゃできないことですか。DMO設置との関連性が不明です。DMOが存在すことによる効用を具体的に示さないと支離滅裂に見えます。
3.新たなリスクと対応策
観光需要の適正化により地域の魅力や価値が高まることで、郊外地等では㉕開発圧力が高まる。そのことによるスプロール化現象の発生等、自然生態系への悪影響が懸念される㉖。㉗対応策として、特別緑地保全地区制度を活用する。一定の建築行為や宅地の造成等の土地の形質変更を制限することで、現状凍結的に地区を保全する。また、地区の指定によって優遇税制措置が適用される他、管理協定制度を併用することによって土地所有者の負担を軽減することができる。このことによって、豊かな緑を将来に継承することができ、健全な生活環境や景観を維持することが可能となる。以上
㉕ →「の」
㉖ 郊外地での開発圧力が高まると言っているので、スプロール化現象は少しくどいような印象を受けます。スプロール化が言いたいのであれば、開発圧力に変えて述べると良いでしょう。それよりも、特緑の話をしているので、ストレートに樹林地の開発が懸念でよいのではないでしょうか。
㉗ 要改行。