2025必須科目Ⅰ徹底解説
【 技術士 二次試験対策 】
令和7年度試験問題がついに公開
令和7年度の筆記試験については、速報として建設部門の必須科目Ⅰをご紹介させていただきました(紹介記事はコチラ)。今般、日本技術士会のホームページにて、すべての問題が公開されました(公開ページはコチラ)。パッと見た感じですと、やはりインフラメンテナンス関係の問題が多いです。
必須科目の予想問題ランキングで、「労働力不足×維持管理」というテーマが第1位と予想しましたが、めずらしくドンピシャでした(ランキングはコチラ)。必須科目は、労働力不足で出題され、時事的に関心が高まった維持管理は、選択科目にちりばめられた感じです。
ということで、今回の試験では多くの人が予想できた問題だったと言えます。これを言い換えると、難易度低めだったのではないでしょうか。そうなると、いつもこの時期話題になるのが、試験は相対評価なのか、絶対評価なのかという議論です。
当然、採点方法を知っているわけではないので、答えはないのですが、合否決定基準には60%以上の得点とあるので、絶対評価の側面は必ずあると思います。しかし、例年10%程度の合格率を踏まえると、調整しているのではという疑惑もあります。
文句なしに60%を超えていれば合格となるわけですが、選択科目は一部B評価でも合格するケースがあるので、ここら辺で調整しているのかもしれませんね。再現論文を作成した人は、必須科目はできていないと話になりませんので、選択科目の出来に注目といったところでしょう。
今回の試験は簡単な部類に入ると思いますので、全員出来は良いはずです。相対評価で苦汁をなめる人が多くなることが心配されます。それでも、近年では8.7~10.4%と幅はありますから、相対評価があるとしても2%未満の違いです。調整と言っても若干のものだと推測されます。
いずれにせよ心配したところで、結果が変わるわけではありませんから、そんなものかと構えておきましょう。ポジティブなイメージは、現実を引き寄せますので、自分の努力を信じましょう。どうしても気になる方は、復元論文の投稿をお待ちしております。
必須科目Ⅰ「持続可能な建設業」解説
Ⅰー1 建設業は社会資本の整備・管理の主体であるとともに、災害時における「地域の守り手」として、国民生活や社会経済を支えるきわめて重要な役割を担っている。一方で、建設業就業者は厳しい就労条件を背景に依然として減少が著しく、他産業を上回る高齢化や若年層の不足が進行している。また、資材価格の高騰や令和6年4月から建設業にも適用された罰則付き時間外労働規則等に対応しつつ、適切に建設工事等が実施される環境づくりも欠かせない状況にある。
こうした背景を踏まえ、令和6年6月には、担い手3法(建設業法・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律・公共工事の品質確保の促進に関する法律)が改正されたところである。
上記の建設業を取り巻く状況を踏まえて、持続可能な建設業を実現するために、以下の問いに答えよ。
(1)我が国の社会資本の整備等の担い手・地域の守り手である建設業がその役割を果たし続けるうえで、技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。(※)
なお、本設問における「技術課題」には、建設業における構造上、制度上、管理上等の課題も含まれるものとする。
(※)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち、最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から述べよ。
リード文
建設業は社会資本の整備・管理の主体であるとともに、災害時における「地域の守り手」として、国民生活や社会経済を支えるきわめて重要な役割を担っている。
建設業の重要性を述べています。題意の背景ともいえる内容です。視点としては、「災害」、「生活」、「経済」と多岐にわたっています。解答に記す背景との重複に注しましょう。記述する背景は、これに関連した詳細情報といったイメージで書くと良いでしょう。
一方で、建設業就業者は厳しい就労条件を背景に依然として減少が著しく、他産業を上回る高齢化や若年層の不足が進行している。
今度は、建設業の問題を指摘しています。視点としては、「就労条件」、「高齢化」、「若年層の不足」といった就業に関する事項として取りまとめられています。背景と同様に課題設定に際しては、一歩踏み込んだ内容にする必要があります。
また、資材価格の高騰や令和6年4月から建設業にも適用された罰則付き時間外労働規則等に対応しつつ、適切に建設工事等が実施される環境づくりも欠かせない状況にある。
「また」とあるので、前項同様問題の指摘になっていますが、解決策の方向性も示されているので、課題に近いですね。ポイントは、「資材高騰」、「時間外労働規則」、「適切に建設工事」です。課題設定の素材は、前項も含めたくさん用意されています。
こうした背景を踏まえ、令和6年6月には、担い手3法(建設業法・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律・公共工事の品質確保の促進に関する法律)が改正されたところである。
これは、法の改正状況が示されており、法の背景となっている「働き方改革促進」、「建設業の長時間労働の是正」、「i-Constructionの推進等による生産性の向上」などを知っていれば、そのまま課題設定できます。なんとも、どストレートな問題です。
上記の建設業を取り巻く状況を踏まえて、持続可能な建設業を実現するために、以下の問いに答えよ。
最後の一文は、題意です。背景を踏まえるとこれしかないという論点です。「持続可能な建設業を実現」、これになります。特に注意が必要な点、難解な表現もなく素直な問題です。よって、高い読解力も必要としません。うーん、今回はやはり簡単な問題です…
各設問
(1)我が国の社会資本の整備等の担い手・地域の守り手である建設業がその役割を果たし続けるうえで、技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。(※)
なお、本設問における「技術課題」には、建設業における構造上、制度上、管理上等の課題も含まれるものとする。
(※)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。
最初の一文は、リード文の要旨をまとめたものになっています。「役割を果たし続ける」という表現は「持続可能」の言い換えですよね。後述部分は、いつもの表現なので特に違和感はありません。「※」も前回と同様です。観点書き忘れてはダメですよ!
今回、最大の特徴は「なお」書きです!「建設業における構造上、制度上、管理上等の課題も含まれる」という内容ですが、これらが課題に含まれることが確定しています。つまり、確実に得点できるジャンルが示されているのです。ジャンルですから、問いで言う「観点」と言い換えることもできます。
構造上であれば、多重下請け構造の弊害などが考えられます。また、制度上であれば、技能者の処遇改善やキャリアパスなどが考えられます。さらに、管理上であれば、施工管理のデジタル化などがあげられます。観点が示されており、そこから想起される課題を書けば良いので、めちゃくちゃ親切な問題です。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち、最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を示せ。
これはいつもと同じです。設問(1)で書き忘れましたが、令和7年度は単なる課題ではなく技術課題に変更されていることに注意が必要です。当然、技術課題ですから、建設部門の技術的な視点が不可欠です。また、解決策においても同様です。例えば、補助金を交付するといった安直な方法は、技術的な側面がないのでNGとなります。
(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
この内容の主旨は変わってませんが、表現が少し限定的になっていることに注意が必要です。条件をまとめると以下の通りとなります。
- 解決策に関連していること
- 新たなものであること(もともとある懸念事項はNG)
- 将来的なものであること
- 専門技術が示されていること
これらの条件をすべて満たす記述が必要です。結構、限定されるので難しいです。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から述べよ。
留意点がなーい!ということで、問題が見直されています。お決まりの文句でもOKだと思いますが、2つの観点からそれぞれの要件を業務に即して書くことが必要です。留意点がないということは、より具体的かつ詳細な要件の説明が必要ということでしょう。
いずれにせよ、技術士倫理綱領から記述内容を持ってくればOKです。業務内容に照らして、適している項目を綱領から引用すれば良いでしょう。さらに、それらを倫理、社会の持続性といった二つの観点に区分してまとめれば完璧です。
総じて、今回のこの問題は簡単です!