添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
道路も脱炭素の時代へ
令和7年10月、国土交通省が発表した「道路脱炭素化基本方針」(報道発表はコチラ)は、これからの道路政策の方向性を示す重要な文書です。これまで道路といえば、舗装や渋滞、交通安全といったテーマが中心でしたが、今や「環境貢献」という新たな使命を担う時代に突入しています。
地球温暖化の進行により、自然災害の激甚化・頻発化が懸念されております。こうした状況を受けて、我が国全体の温暖化対策が強化される中、道路分野も例外ではありません。実際、国内のCO₂排出量の約18%が道路に起因しており、道路施策の見直しと強化が急務となっております。
「道路が環境に影響を与えるなんて意外」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、道路は建設・管理・利用のすべての段階でエネルギーを消費しており、脱炭素化の余地が大きい分野なのです。この方針では、2013年度比で以下のような段階的な削減目標が設定されています(ヒエッ)。
- 2030年度:46%削減
- 2035年度:60%削減
- 2040年度:73%削減
- 2050年度:カーボンニュートラル!
道路の建設から維持管理、利用に至るまで、CO₂排出を抑えるための施策が網羅されています。主な施策は以下の通りです。
- LED照明の導入(省エネと安全性の両立)
- 低炭素材料の開発・導入(アスファルトも環境配慮型に)
- 太陽光発電設備の設置(道路空間が発電所に)
- EV急速充電器の整備(道の駅がエネルギーハブに)
- 自転車利用の促進(ペダルで地球を救う)
- ダブル連結トラックの導入(物流効率化とCO₂削減)
- 渋滞対策の推進(「ゾーン30プラス」など)
これらは「重点プロジェクト」として、今後5年間で集中的に推進される予定です。コスト縮減や地域活性化の副次的効果も期待されており、まさに一石三鳥の施策群といえるでしょう。試験対策トピックとしても重点化です。
そのほかにも、新技術を踏まえた取り組みとして、低炭素アスファルト、ペロブスカイト太陽電池、走行中給電などの新技術の導入も推進されます。また、ネイチャーポジティブ(生態系保全)やサーキュラーエコノミー(資源循環)との調和も図られ、環境政策全体との連携が意識されています。
この方針は、都市計画、交通工学、環境工学、インフラマネジメントなど複数分野にまたがる内容を含んでおり、技術士試験での出題可能性は高いと考えられます。特に以下の点は要チェックです。
- Scope1・2・3の定義と削減目標
- ライフサイクル全体でのCO₂削減施策
- 地方公共団体の役割と目標設定
- 新技術の導入と実証実験
- 計画策定・報告・フォローアップの制度設計
この方針を通じて見えてくるのは、道路が単なる移動のためのインフラではなく、エネルギー、環境、地域社会をつなぐ「未来のプラットフォーム」になろうとしているということです。道路が発電し、充電し、人を動かし、地域を活性化する──そんな未来が、もうすぐそこまで来ています。
働き方改革 初稿
本日の添削LIVEは建設部門の必須科目Ⅰ「働き方改革」です。課題と解決策の関係性や、論理展開の一貫性などを指摘しています。また、技術士の論文では、具体性や技術的根拠を明示することが大切です。みなさんも、これらに留意してより良い論文を目指しましょう。それでは早速論文を見ていきましょう。
(1) 働き方改革を推進するための課題
1)i-Constructionの深化(技術の観点)
建設業界では、生産性の向上を目指してi-Constructionを推進し、ICT施工による作業時間の短縮等、一定の効果を挙げてきた。一方で、現状の取組のみでは生産性の向上は頭打ちである①。さらに、時間外労働規制に対応しつつ、近年の自然災害の激甚化や急増する老朽化インフラに対応するためには、抜本的な省人化対策が必要である②。よって、業務の効率化・省人化に繋がる取組を加速させることが課題である③。
① なぜ頭打ちなのでしょう。効果があるとしながら、すぐさま否定しては矛盾を感じますし、一貫性がありません。理由や現状の問題点を記述すべきでしょう。
② 題意は働き方改革の推進ですよ。目的が維持管理や防災になっています。論点がずれていますね。
③ 観点は、見出しだけでなく文中にも記載しましょう。さらに、その見出しの課題と文中の課題も不整合です。
2)適正な工期設定(労働時間の観点)
建設業は全産業平均と比べて総労働時間が長く、週休2日が確保できていない場合が多い。この原因の一つに工期設定があり、著しく短い工期の場合は長時間労働が不可避になる④。この状況から、第三次・担い手3法において、工期ダンピング対策の強化を目的とした条文が規定されたところである。よって、改正建設業法に則った適正な工期設定が課題である⑤。
④ 総労働時間が長いことの原因を説明しているのに、その結果として長時間労働が不可避では同じことを何度も説明しています。単純に原因を説明すれば良いのではないでしょうか。→「これは、著しく短い工期設定が原因の一つとなっている。」
⑤ 法が整備されているのであれば、課題解決しているように見えます。不適切な工期設定は、もはや法令違反であり、これを遵守するのは法治国家である以上当たり前です。
3)適正な労務費の確保(賃金の観点)
近年、建設資材価格の高騰が続いている。また、建設工事においては、材料費の削減よりも労務費の削減の方が容易である⑥。こうした状況から、技能労働者の賃金の原資が十分に確保されていない⑦。労働者に十分な賃金が支払われない場合、労働者は生計を立てるために追加の労働を強いられる⑧。よって、適正な労務費を確保した請負代金の決定⑨が課題である。
⑥ なぜ容易なのですか。一般化された共通認識事項ではないので、理由を書くべきです。むしろ人手不足の最中、安い賃金で労働力が確保できるとも思えません。
⑦ これも賃金の原資が確保できなければ、職人の確保ができないだけではないでしょうか。
⑧ 不適切な賃金が問題視すればよく、追加の労働を選択するかは労働者の判断ですし、重要な論点でもありません。蛇足に見えます。
⑨ 請負代金というより、発注価格の適正化が問題なのではありませんか。また、請負代金の決定を課題としていますが、誰がどのように決定するのかも分かりません。さらに、このような制度や構造が課題としていながら、背景(前段)で説明されているのは、建設資材の高騰です。なぜこの結論にいたったのかよく分かりません。
(2) 最重要課題と解決策
「i-Constructionの深化」が最も重要な課題と考える。なぜなら、建設業の大命題である社会資本の整備・維持管理の推進に繋がるからである。
1)施工のオートメーション化
AI技術を活用することで、一人当たりの生産能力向上と建設現場の省人化を図る⑩。各種センサーを設置し現場の情報⑪を読み取った上で、AIを活用して施工計画を自動的に作成する⑫。さらに、自動運転重機を活用し、少数のITパイロットが多数の建設機械の動作を管理する⑬。
⑩ 見出しには、施工のオートメーション化とありますが、AIが解決策のように見えます。また、i-Constructionの深化が課題であるにも関わらず、生産能力向上と建設現場の省人化が解決策というのも釈然としません。これらは、i-Constructionの深化がもたらす効果であって、i-Constructionの深化を実現するための手段ではないですよね。
⑪ 現場の情報とは何ですか。具体的に書きましょう。
⑫ 後述には、施工管理のオートメーションとあります。施工計画は、施工管理の一部ではないしょうか。
⑬ i-Constructionの深化が、課題に書いていないのでそもそも分からないのですが、深化させることが課題なのですよね。これは、深化した結果ではないでしょうか。
2)データ連携のオートメーション化
調査から維持管理までの建設生産プロセス全体をデジタル化し、必要な情報に素早くアクセスできる仕組みを構築する。建設生産プロセスにおいて多量に作成、取得されるデータを、3次元モデルや点群データ、GIS等に関連付けたBIM/CIMを活用する⑭。これにより、関係者間の情報共有をスムーズに行うことができる⑮。
⑭ どう活用するのですか。手法を示すだけでなく、具体的な行動や事例を示すべきです。
⑮ なぜ情報共有がスムーズになるのか書かないと理解できません。結果だけでなく、仕組みを説明しましょう。また、データ連携のオートメーション化と見出しにありますが、データの連携とは何か、何がオートメーション化されるのか全く分かりません。
3)施工管理のオートメーション化
監督・検査等の施工管理に関わるあらゆる場面で新技術⑯を活用する。具体的には、検査の場面で遠隔臨場⑰を適用する。また、配筋の出来形確認等において画像解析による計測技術⑱を適用する。これらにより、監督員が現場に赴く時間を省略することができる⑲。
⑯ さすがに抽象的過ぎます。後述に具体例がありますが、あらゆる場面といえるのか疑義があります。また、新技術という表現も、もう少し踏みこんだ記述とすべきです。新技術だけでは範囲が広すぎて、何とでも言えます(データ連携のオートメーション化で新技術、施工のオートメーション化で新技術といった具合に何にでも適用できますから、何も提案していないのとほぼ一緒です)。
⑰ 遠隔臨場が技術なのか疑義がります。遠隔臨場自体は行動であり、技術ではないと思います(技術ならウェアブルカメラやリモートシステムなどでは)。また、遠隔臨場は、結構普及しているイメージがあり、「新」なのかといったことも疑問です。
⑱ ⑬と同様。
(3) 解決策を実行しても生じうるリスクとその対策
1)生じうるリスク
・技術継承の停滞
昨今の就業者の高齢化の影響で、熟練就業者の大量離職が見込まれる⑲。一方で、デジタル技術で業務を効率化することで、現技技術のノウハウや地域特性に対する知恵等が継承されないリスクが生じる⑳。対応策として、熟練技能者の作業状況を動画記録したり、ノウハウや経験を聞き取る㉑ことで、暗黙知を形式知化する。
⑲ これを記述している意図が分かりません。熟練者の退職は、解決策の実行と何ら関係ないです。
⑳ 現技技術は現場技術の間違いですかね。また、地域特性に対する知恵とは何なのか分かりません。
㉑ 一般論であり、技術的な視点に欠けているように見えます。
・情報漏洩、サイバー攻撃
解決策の実行にはデジタル技術の全面的な活用が必要である。遠隔システム等では、大量のデータがネットワーク上でやり取りされる。その結果、情報漏洩やサイバー攻撃㉒のリスクが生じる。対応策として、暗号化やアクセス制限等のセキュリティ対策の徹底や、従業員等へのデジタルリテラシー教育をする。これにより、業界全体でセキュリティの脆弱性を除去㉓する。
㉒ サイバー攻撃は原因で、情報漏洩は結果(影響)ではありませんか。横並びになっていることに違和感があります。
㉓ セキュリティとは、データやシステム、通信経路などを保護し、機密漏洩や改ざんなどの危険を排除することです。重複表現になっています。
(4) 技術者倫理と社会の持続性に関する留意点
技術者倫理に関しては、公衆の安全と健康及び福利を最優先に考慮する㉔。生産性の向上を求めるがあまり、要求品質を損なわないよう留意する。
社会の持続性に関しては、環境や生態系への影響を最小限に抑えることに配慮し、低環境負荷の技術を積極的に採用する等、将来世代にわたって持続可能な選択をする㉕。㉖
㉔ 問われていることは考慮事項ではなく、要点・留意点です。
㉕ これも同じですね。何が要点で何が留意点なのか判然としません。
㉖ 論文の最後には、「以上」を書きましょう。