災害関連は再頻出テーマ、今年はあやしいですよ
【 技術士 二次試験対策 】
国土強靱化の“今”が示す試験テーマの方向性
前回は、インフラメンテナンスについて解説しましたが、今回は双璧をなす災害です(前回の記事はコチラ)。第1次国土強靱化実施中期計画を素材に、令和8年度の技術士二次試験(建設部門・必須科目Ⅰ)で出題されそうな課題の“勘所”を押さえるには、まずこの計画がどんな背景で生まれ、どんな方向性を示しているのかを知る必要があります。
国土強靱化は、もはや「防災の一分野」ではなく、「国家運営の生命線」として扱われる段階に入りました。豪雨災害の激甚化、能登半島地震のような突発的な大規模地震、インフラ老朽化、資材価格の高騰、人手不足、そしてDXの遅れ。
これらが一つの大鍋に放り込まれ、ぐつぐつ煮立ってあふれ出しそうな状態といえます。そこに「中期計画」という名のレシピが登場し、「このままでは焦げつくぞ、火加減を整えろ」と言っているわけです。
国土強靱化実施中期計画は、改正国土強靱化基本法に基づき、国土強靱化基本計画の実行を中期的に整理した法定計画であり、令和7年6月に閣議決定されています。計画の策定過程では、これまでの5か年加速化対策の評価が行われ、資材価格高騰や人件費上昇を踏まえ、今後5年間で「おおむね20兆円強」の事業規模が見込まれています 。この規模感からも、国土強靱化が“国家的最優先課題”として扱われていることが分かります。
また、近年の災害の頻発・激甚化は、計画の方向性に強い影響を与えています。線状降水帯の予測精度向上、能登半島地震の被害、老朽インフラの事故などが示すように、「既存の仕組みでは守り切れない」という危機感が背景にあります 。
この文脈を踏まえると、技術士試験で問われるテーマは、単なる防災対策の羅列ではなく、「複合リスクに対して、限られた資源でどう優先順位をつけ、どう実行するか」という“経営的視点”が強くなると考えられます。
令和8年度の試験で狙われそうな論点
試験委員は、受験者が「国土強靱化の本質」を理解しているかを見極めたいはずです。その本質とは、次のような要素が絡み合った“総合戦略”です。
- 激甚化する自然災害への備え
豪雨、台風、地震、土砂災害、河川氾濫。これらが同時多発的に起こる前提での対策が求められています。 - 老朽インフラの更新とリダンダンシー確保
大口径水道管や下水道管の更新率向上、複線化などの冗長化が計画に明確に位置づけられています 。 - DXによる維持管理の高度化
人工衛星・AIによる漏水検知、ドローンによる下水道調査など、メンテナンスDXの全国標準化が目標とされています 。 - 人材不足・資材高騰への対応
施工の省力化、標準化、プレキャスト化、BIM/CIMの活用など、建設生産性の向上が不可欠です。 - 地域の自立性と官民連携
地方公共団体や民間企業の取り組みが計画の柱として扱われています 。
これらを踏まえると、試験で問われるのは「あなたなら、この複雑な状況をどう整理し、どんな課題設定をし、どんな解決策を提示するか」という“技術士としての構想力”です。
課題設定のポイントは“構造化された視点”
課題設定は、単に「災害が増えている」「インフラが古い」と述べるだけでは不十分です。むしろ、次のような“構造化された課題”が求められます。
- 背景(社会的・技術的環境の変化)
例:気候変動による災害の激甚化、人口減少による維持管理体制の弱体化、資材高騰による更新の遅れ。 - 問題の本質(構造的なボトルネック)
例:更新・補修の優先順位付けが不十分、データ活用の遅れ、自治体間の能力格差、リスクコミュニケーション不足。 - 影響(放置した場合のリスク)
例:大規模停電、断水、交通寸断、地域経済の停滞、住民の安全確保の困難化。
この3層構造を押さえると、課題設定が一気に“技術士らしい”ものになります。
解決策は万能薬ではなく“現実的な処方箋”
解決策は、壮大な理想論ではなく、「限られた資源で実行可能な現実的な施策」を提示することが重要です。国土強靱化実施中期計画の方向性を踏まえると、次のような切り口が有効です。
- リスクベースの優先順位付け
すべてを守るのではなく、被害の大きさ・発生確率・代替手段の有無などから合理的に選択する。 - DXによる維持管理の効率化
センサー、AI、ドローン、衛星データなどを活用し、点検・診断の省力化と精度向上を図る。 - リダンダンシーの確保
水道・下水道・道路・通信など、単一障害点(SPOF)をなくす方向で整備する。 - 地域主体の防災力向上
自治体・住民・企業が連携し、地域の自立性を高める。 - 建設生産性の向上
プレキャスト化、標準化、BIM/CIM、ICT施工などを組み合わせ、少ない人手で高品質な施工を実現する。 - 官民連携の強化
PPP/PFI、包括委託、共同点検など、民間の力を活用する。
これらを組み合わせて“総合的な解決策”として提示するのが技術士試験の王道です。
模範例を1つだけ
課題はこんな感じで
建設分野では、災害の激甚化やインフラ老朽化が進む一方、担い手不足により従来型の維持管理・施工体制では十分な対応が困難になっている現状がある。このため、ICT の活用が求められているにもかかわらず、データ整備の遅れや技術導入の地域差により、生産性向上や高度化が進まない問題が顕在化している。よって、建設分野全体の効率化の観点から、ICT を効果的に活用できる体制整備が課題である。
解決策はこんな感じで
建設プロジェクトの品質と意思決定の確実性を高めるため、計画・設計・施工で共通に利用できる3次元モデルの作成基準と管理ルールを整備し、情報の形式と精度を統一する。具体的には、工程段階ごとに必要な詳細度(LOD)を設定し、干渉チェックや出来形確認に必要な精度を確保することで、関係者が同じ空間情報を共有し、設計意図の誤解や手戻りを減らす。また、属性情報の必須項目を統一し、数量算出や工程管理に直接活用できるモデルとすることで、判断の迅速化と施工リスクの低減を図る。さらに、設計変更や現場修正が生じた際のモデル更新手順と責任区分を明確化し、常に最新情報を共有できる体制を構築することで、3次元データを軸とした効率的で再現性の高い事業実施を実現する。
さあ、書いてみましょう
国土強靱化は、単なる防災の話ではなく、「日本の未来をどう守るか」という壮大なテーマです。技術士試験は、その未来を担う人材を選ぶ場でもあります。中期計画の内容を踏まえつつ、自分なりの視点で課題と解決策を構築できれば、試験委員の心をつかむ答案になるはずです。
どうです、書いてみたくなりましたよね(強要)!!!

