添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
最近寄せられた質問
最近、気になる質問をいただきました。それは、必須科目Ⅰや選択科目Ⅲで問われる「(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1 つ挙げ, その課題の解決策を複数示せ。」の書き方に関することです。
最も重要な課題を選定する場合、選定理由を添えた方が良いという指摘をさせていただいています。実は、私が勉強を始めた当初は、理由など記述していませんでした。なぜなら、聞かれていないからです。
しかし、添削をお願いした先輩技術士から、選択理由を書くと良いとのアドバイスをいただき、補記するようになりました。ただ漫然とアドバイスを受け入れたのではなく、そのアドバイスに共感できたからです。なぜ、共感できたのかというと、技術士のコンピテンシーが関係しています。
技術士のコンピテンシーの一つである「問題解決」は、次の内容が示されています。
- 複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。
このように、「影響の重要度を考慮した上で」とあるので、選択理由を書くことに共感できたのです。ただし、問題にないので加点を取りに行くという感覚です。なかなか理由が思いつかなく、時間がかかってしまうようであれば、最悪理由なしという選択もあり得ます。
理由をかくべき理由はご理解いただけたと思います。では、理由はどのような内容を書くべきなのでしょうか。最も重要な課題とあるので、3つの課題の相対評価であるべきと考えます。あるいは、波及効果があるといったスペシャルな理由も良いですよね。
波及効果は、令和5年に問われなくなったので、途中で説明するのもアリです。また、コンピテンシーの話になりますが、「評価」という項目があり以下の内容が示されています。
- 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
波及効果が理由として最適なのは、このコンピテンシーを満たすからです。
しかし、最も重要なと言われているので、「最も効果的だから」といった理由は重要の言い換えに過ぎないと考え、指摘させていただくケースがあります。しかし、私の論文や完成論文には、この理由としているケースもあり、指摘と矛盾してしまっています。
これは、この理由設定が結構やっかいで、ここで時間を費やすなら、効果的だからでも減点にはならないだろうという考えを持っているからです。しかし、これが、読者や投稿者に混乱を与えてしまっているようです。
私自身もあまり深堀してこなかったのが、いけませんでしたね。猛省中です・・・そこで、今回は必殺技を考えてきました。ヒントは、技術士倫理綱領にありました。
(安全・健康・福利の優先)
1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先する。
(1)技術士は、業務において、公衆の安全、健康及び福利を守ることを最優先に対処する。
優先すべきこと(最も重要なこと)は、すでに決まっているのです。そうです、倫理綱領本文の最初に出てくる公衆の「安全」、「健康」、「福利」のどれかを理由とすれば良いのです。例えば、『公衆の安全を守るため「・・・・」を最も重要な課題に選定する』といった具合に記述すればいいのです。
3つのうちのどれかには引っ掛かるでしょう。めちゃくちゃ汎用性が高いです。良かったら使ってみてください。
論文
今回の論文は、「広域にわたるインフラメンテナンス」になります。上記の内容も指摘しております。令和5年度に出題されていますが、選択科目Ⅲの可能性もありますし、変化してストック効果を高めるといった問題も想定されます。依然、注目度が高い本テーマ、早速論文を見ていきましょう。
問題
毎年繰り返される自然災害を通じて、インフラが機能することの重要性を国民が認識してきており、今後ともインフラが十分にその機能を果たせるよう総力戦で取り組んでいくことが求められている。
(1)広域にわたる地域インフラのメンテナンスを実施するために, 技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1 つ挙げ, その課題の解決策を複数示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)(1)〜(3)を業務として遂行するにあたり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ
課題
1.地域インフラメンテナンス実施の課題
(1)予防保全への本格転換の加速化(維持管理)
建設業界においても①技術者不足、厳しい財政状況②は問題である③。事後保全から予防保全への転換で2048年までの30年間で維持管理費は約5割削減できる。しかし、健全性Ⅲと判定されたが補修されていない施設もある④。⑤維持管理の観点⑥から、予防保全への本格転換の加速化が課題⑦である。
① 他の業界の話に触れていないので、「も」という表現に違和感があります。→削除
② 誰の財政状況ですか。行政ですかね?そうであるならば、冒頭に「建設業界において」とあるので、行政の話をするのはおかしいですね。
③ 「問題となっている」、「問題が顕在化している」といった状況を表す表現の方が適していると思います。
※言いたいことは、「建設業界の技術者不足や、行政の厳しい財政状況は、適切な維持管理を進めるうえで大きな障害となっている。」といった内容ではないでしょうか。
④ 前段のつながりが弱く、予防保全の効果を唐突に説明されている感じがします。また、技術者不足に対応する記述がありません。問題点との関係をそれぞれ述べるべきです。→「このような状況の中、従前の事後保全から省力化やコスト縮減に効果のある予防保全への転換が急務(※加速化を課題としているので急務がよいでしょう)である。」
⑤ これから結論を言いますよという意思表示をするために、「よって」、「したがって」といった接続詞を追記しましょう。
⑥ インフラメンテナンスの課題なので、この観点ではすべてが当てはまってしまいます。維持管理の仕組みを変えるという視点だと考えますので、「仕組み面」としてはいかがでしょうか。
⑦ 「の」が連続して読みづらいですね。→「予防保全への転換を加速化させることが課題」
(2)新技術活用の管理主体連携(技術導入)
地方自治体では新技術の活用による効率化・高度化が出来ておらず⑧、老朽化の進行が進んでいる⑨。各管理者で維持管理を行っており、新技術の活用による効率化・高度化に差がある。(国・都道府県はほぼ100%だが地方自治体では40%程度しか導入されていない)⑩技術導入の観点から、新技術活用の管理主体連携が課題⑪である。
⑧ 「できていない」ですと完全否定なので(できている自治体もある)、「進んでおらず」の方が適切と考えます。
⑨ 進行が進んでいるは重複表現です。頭痛が痛いと一緒です。→「老朽化が進行している」
⑩ 「国では進んでいるけど、自治体は進んでいない」との主張は、冒頭にある「自治体では進んでいない」と同じ主張に見えます。管理主体の連携を課題とするのであれば、連携の必要性を説明しましょう。
⑩ 技術導入は新技術導入ですかね。また、観点とは見方や立場なので、新技術導入では解決策みたいになっています。連携して進めるということであれば「体制面」ですかね。
⑪ 「新技術活用の管理主体連携」が理解できません。「新技術を活用するために管理主体が連携して取り組むことが課題」が言いたいことですかね。この場合においても、管理主体と表現されると上下水、道路、下線、鉄道などの連携を思い浮かべてしまいます。しかし、背景からするに国または都道府県と地方自治体との連携なのですよね。この場合、連携とはどのような状態をいうのか判然としません。連携ですので、技術指導するとも違いますし、何をするのか分かりません。
(3)必要な広域防災機能の確保(インフラ機能)
高度成長期以降に建設されたインフラ施設の老朽化は深刻である。道路橋においては2030年時点で建設後50年経過する割合が55%を超えると予想される。しかし、小規模な地方自治体では技術者不足や資金不足のため、事後保全段階で未補修のインフラ施設が多数存在する⑫。インフラ機能の観点⑬から、必要な広域防災機能の確保が課題⑭である。
解決策
2.最も重要な課題と解決策
最も重要な課題は「必要な広域防災機能の確保」であると考える⑮。自然災害の激甚化・頻発化、小規模市町村の過疎化が進んでおり、広域エリアでインフラメンテナンスを行わなければ、地域住民の安全・安心が確保できない⑯。解決策を以下に示す。
⑮ 文末が冗長的です。→「である」または「と考える」
⑯ これは、課題の項目で書くべき内容です。ここで書くべきは、選定理由です。また、これを理由として書いているのであれば、長すぎます。例えば、『公衆の安全を守るため「・・・・」を最も重要な課題に選定する』といった具合に端的に表現しましょう。※下線部は、技術士倫理綱領に定める「技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先する。」とあるためです。
(1)エリア内の維持管理体制の構築
包括的民間委託を活用する⑰とともに、地域インフラ群再生戦略マネジメントによる広域的な維持管理を行う⑱。広域エリア内の地方整備局・都道府県・市町村・NEXCO・JR などインフラ管理者による広域メンテナンスの会議や組織を設置⑲し、常時・非常時の管理体制やメンテナンスルールを設定するのが有効である⑳。
⑰ 見出しは、体制の構築です。包括的民間委託は関連性がないと思います。
⑱ これは、題意そのものではありませんか。問いは「広域にわたる地域インフラのメンテナンスを実施するための課題はなんですか」と問われているのに、解決策は「広域的な維持管理を行うことです」では解答になっていません。おいしい料理を作るためのコツは何ですかと問われているのに、おいしい料理を作ることですと答えているようなものです。
⑲ 会議が設置にかかっているように見えます。順番を変えると良いと思います。→「・・・メンテナンスに係る組織を設置し、関係者会議を開催する。会議において、・・・」
⑳ 解決策は、やることを書きましょう。→「設定する」
(2)防災機能の持続可能な施設統廃合㉑
機能低下が著しい市町村管理施設を、災害発生時の避難・救援が可能となる範囲で統廃合する。「維持すべき機能、加えるべき機能、役割を果たした機能」により必要な機能を選択し㉒、市町村のメンテナンス負担を軽減することが有効と考える㉓。
㉑ 「防災機能の」はどの言葉にかかっているのでしょうか。防災機能の施設統廃合は意味するところが理解できません。
㉒ 各機能は、手段ではなく分類です。→「・・・に分類したうえで必要な機能を選択し」
㉓ 文末の表現は、⑳と同様です。また、ここで書くべき解決策は、負担を軽減することではなく、防災機能を確保することですよ。論点がズレています。
(3)DXによる㉒デジタル国土管理の実現
インフラ施設の維持管理情報はデータベース化されておらず、紙資料で保管している自治体も多い。インフラメンテナンスサイクルにより得られたビッグデータをAI等のDXを利用したデータプラットフォームを活用する㉓。オープンデータ化し、横断的に利活用する等インフラメンテナンスの高度化を目指す㉔。
㉒ DXとは、デジタル化により社会や生活の形・スタイルが変える(変わる)ことです。手段ではありません。デジタル化という意味で使っているのですかね?そうであるなら、デジタル国土管理といっているので不要です。
㉓ インフラメンテナンスサイクルとは、単なる業務サイクルではありませんか。これにより、なぜビッグデータが得られるのですか。また、DXは㉒と同様、手段ではありません(ICT技術やデジタル技術と言いたいのですか)。さらに、データプラットフォームはデータ活用基盤です。AIを利用するデータプラットフォームとはいかなるものですか。用語の理解が十分と言えません。
㉔ データの横断的利活用が高度化の例示となっていますが、利活用=高度化ではないと思います。
新たなリスク
3.新たに生じうるリスクと対策
(1)リスク
前述の対応策を実行すると、広域エリア内のインフラメンテナンスが適切に実施され、長寿命化は可能となる㉕。しかし、長寿命化すれば今後も災害を繰り返し受けるため、ダメージを蓄積する。災害によるダメージ蓄積は機能低下予測が難しく、急速に機能が低下するリスクがある。
㉕ 表現がおかしいです。→「長寿命化される」または「長寿命化することができる」
(2)対応策
国交省が主導する3次元都市モデルPLATEAU(プラトー)等を活用し、広域エリア内のデジタルツイン構築を進める。災害シミュレーションによる施設ダメージを踏まえた㉖施設更新計画の高度化を行い、必要な防災機能の確保を進める。
㉖ リスクの記述では、ダメージ蓄積は機能低下予測が難しいのではないのですか。プラトーを用いてシミュレーション可能(予測可能)であれば、リスクそのものが発生しないのではありませんか。予測が難しい前提条件と不整合になっているように感じます。
4.業務遂行上必要となる要件
(1)技術者倫理の観点:倫理の要件㉗は「公衆の安全・健康・福利を最優先」することである。留意点はICT技術等で大容量の情報を扱う場合は秘密情報保護を厳守し、情報漏洩等をせず、倫理観を持った技術者としての責任ある行動をとる㉘。
(2)社会の持続可能性の観点:要件は「地球環境、経済の保全等、将来世代にわたる持続可能な社会の実現」である㉙。グリーンインフラを導入する等、自然環境への負荷を低減し、国民の安全・安心を確保できる住みよいまちづくりを目指す㉚。 -以上-
㉗ 私も良く間違えるのですが、「要点」なんですよね。
㉘ もっと端的に表現しましょう。→「デジタル化により大容量の情報を扱うため、情報漏洩等に留意する」
㉙ 社会の持続可能性の観点から必要となる要点が、持続可能な社会の実現では解答になっていません。
㉚ 目指すべきことではなく、要点・留意点を書きましょう。