添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
リアル予想
本日お届けするのは、 建設部門 都市及び地方計画 令和6年度 選択科目Ⅲ 予想問題 「適正な土地利用及び管理の確保」になります。「国土調査のあり方に関する検討小委員会 報告書」(令和6年3月29日 国土審議会土地政策分科会企画部会 国土調査のあり方に関する検討小委員会)や、土地基本方針(案)第57回(2024年4月16日)国土審議会土地政策分科会企画部会などが示されています。また、令和6年4月から相続登記が義務化されるなど、所有者不明土地の解消をすべく積極的な動向が見られます。まさに、注目の時事問題です。
これらの時事問題に着目し、投稿論文が寄せられています。リアル予想問題とそん色のない鋭い問題設定、論文も完成度が高いため、完成まで一気に見ていきたいと思います。必見の論文です。ぜひチェックして見てください。
問題
令和5年7月に閣議決定された第三次国土形成計画(全国計画)・第六次国土利用計画(全国計画)においては、国土の管理水準の悪化及び地域社会の衰退等の懸念に対し、国土の荒廃の防止や地域の持続性確保につながる土地の有効利用・転換の推進の重要性が示された。加えて、激甚化・頻発化する災害や生物多様性の損失のリスクに対しては、安全・安心な国土づくりや自然資本の保全・拡大を進めることとされている。
このため、管理不全による外部不経済の発生防止や地域の状況に応じた適正な利用及び管理に取り組んでいく必要がある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)適正な土地の利用及び管理の確保を図るための措置を推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
論文①
課題
1.多面的な課題
(1) いかに地域特性に応じた土地利用を図るか
近年、人口動態や社会経済の変化に加え、激甚化・頻発化する災害や生物多様性の損失等、国土に対する様々なリスクへの対応が求められている。そのため、国土の荒廃防止や地域の持続性確保に繋がる適正な土地の管理が重要である①。よって、適正化の観点から、地域特性に応じた土地利用が課題である②。
① これは問題の背景ですね。課題が問題にかなり近いのでこのような背景になったのだと推測されます。問題は「適正な土地の利用を図るための課題」であるのに対し、「地域特性に応じた土地利用を図ること」が課題と設定されています。つまり、課題の肝は、「地域特性に応じた」という部分です。背景は、この必要性に言及する必要があります。
② 解決策を見てみると地域の魅力を高める方法が述べられています。この論文の流れを勘案すると、地域特性に応じたというよりも、適正な土地利用や管理を促すためには地域の魅力を高めることが課題といった論調にした方が、筋道が通ると思います。空地・空き家が増加(現状)→地域活力の低下が影響(問題点)→地域価値を創造し、かつ維持し続ける必要あり(必要性)→持続可能性の観点から地域の魅力を高めることが課題(結論)
(2)いかに不動産流通を活性化させるか
人口減少により、住宅ストック数は世帯数を上回っている。管理不全に陥った空き屋等は、周辺地域に悪影響をもたらすため③、空き屋を流動化させ既存ストックの有効利用を図ること④が重要である。よって、土地取引の観点から不動産流通の活性化が課題である。
③ 適正な土地利用と管理が題意です。目的が都市環境の向上のように見えます。→「周辺の住環境を悪化させ、不動産の価値低下や流通の硬直化を招く」
④ 言葉は違いますが、これも題意にかなり近いです。既存ストックの活用つまり適正な土地利用が重要であることは言わずもがなです。目的が手段として記述されているのが問題だと思います。→「このため、国土の健全な発展と国民の資産を守るために、不動産を流動化させる取り組みが求められている。」
(3)いかに所有者情報を確保するか
相続登記や住所等の変更登記が行われず、所有者不明の土地が発生し、有効利用が出来ない場合がある⑤。従って、計画的な地籍調査やデジタル化による情報連携等、不動産登記情報の最新化⑥が重要である。よって、制度面の観点から所有者情報の確保が課題である。
⑤ 相続登記については、法改正されています。よって、現状として令和6年4月1日より相続登記の義務化に触れ、知識をお披露目すると良いでしょう。また、不明土地が有効利用できないことは説明不要だと思いますので、まだいっぱい不明土地はあるよといった論調にしてはいかがでしょうか。→「令和6年4月1日より相続登記が義務化された。これは、所有者不明土地の発生抑制・解消を図る取り組みの一つであるが、依然として所有者が特定できない土地等は多く存在している。従って、・・・」
⑥ 最新化というより、「適正な更新」ではないでしょうか。
解決策
2.最も重要な課題と解決策
土地の適正利用は、災害発生時において被害の抑制等、人命の安全保障⑦にも繋がる。よって、「いかに地域特性に応じた土地利用を図るか」を最も重要な課題に設定し、以下に解決策を述べる。
⑦ 安全保障は、一般に軍事的な対処です。→「安全確保」
(1)都市のコンパクト化
合理的な土地利用を促進するため、都市のコンパクト化を推進する。具体的には、立地適正化計画を策定し、都市機能誘導区域を定めた上で特定用途誘導地区を指定する。容積率及び用途制限の緩和により、誘導施設の立地を促進する⑧。また、集約された都市機能へのアクセシビリティを確保するため、地域公共交通計画を策定し、拠点間を結ぶように公共交通ネットワークを再構築する。市街地の拡散を抑制しつつ利便性の高い都市構造を構築し、土地利用を促進していく。
⑧ 見出しは、都市のコンパクト化です。立地適正化計画の策定、良く分かります。都市機能誘導区域の設定、これも分かります。特定用途誘導地区の指定、これが良く分かりません。この制度は、地域が「どうしてもホテルがほしい!」といったケースで用いられる手法なので、コンパクト化と無関係ではありませんが、少し目的が異なっているように感じます。もっと、王道の居住誘導で良いのではないでしょうか。
(2)土地の有効・高度利用⑨
①居心地が良く歩きたくなる空間
居心地の良い空間を創出し、都市の魅力を向上させる。例えば公開空地では、エントランス空間のギャラリー化やピロティ空間を創出し、屋内外で一体感のある空間を形成⑩する。こうした土地の高度利用⑪により、快適性や利便性⑫を向上させて、都市の競争力⑬を強化していくことで、適正な土地利用を確保していく。⑭
⑨ 高度利用と言われてしまうと、地域地区の高度利用地区をイメージしてしまいます。内容からするに「都市環境の改善」ですかね。
⑩ ちょっと位置関係が良く分からなく、一体化のイメージが湧きません。エントランス空間は屋内なのですかね?そうなると、都市空間と言えるのか疑義があります。また、ギャラリーとピロティ―空間との関連性も良く分かりません。ピロティ―はホワイエみたいに使うということですかね?このような空間形成と居心地の良さとの関係性も良く分からないです。説明不足です。
⑪ 都市計画運用指針では、「土地の高度利用とは、土地を効率的に利用し、良好な市街地環境を形成すること」とあります。このような空間形成を高度利用と呼んでよいのか疑義があります。
⑫ 例示では、利便性に触れられていないですね。
⑬ 競争力とは、魅力と同義ですかね。何と競争しているのかも、なぜ競争力が必要なのかも分かりません。
⑭ 「歩きたくなる」といった部分が触れられていません。
②まちづくりGXの推進
土地の適正な管理や⑮、環境に配慮した土地の有効・高度利用を推進するため、まちづくりGXの取組を推進する⑯。例えば、道路空間ではバイオスウェルを具備した歩道を整備する。また、低未利用地では空閑地をクラインガルテンとして活用する等、グリーンインフラのビルトインを推進する。このように、都市の農地保全や緑地活用⑰により、良好な生活環境の形成といった相乗効果も期待⑱できる。
⑮ これは全体の目的です。まちづくりGXに特化した目的でない場合は不要です。
⑯ 「推進するため、・・・推進する」となっており、推進が連続しています。→「に取り組む。」
⑰ このケースは、保全ではなく創出ではありませんか。
⑱ 良好な生活環境の形成は、魅力(価値)の向上に含まれるので、修正する場合は不要です。
(3)都市アセットの活用
①土地利用の転換・再生⑲
少子高齢化に伴い、住宅団地では空き室等が増加している。そのため、多世代が安心して暮らせるような多機能化を図る⑳。例えば、空き家等をコワーキングスペースに転換し、テレワーク等が行えるようにする。職住近接環境を整備することで、子育て世代の呼び込みや移住を促し、団地再生を推進していく㉑。
⑲ 内容をみると、「団地再生」ですね。
⑳ 最初に、やることを明確にしましょう。多世代が暮らせるといった内容は具体例なので、まずは団地再生をやるんだということをビシッと述べましょう。→「公営住宅などは供給過多となっていることから、有効活用を図るための住宅団地の再生を推進する。」
㉑ 団地再生を推進することは、⑳の修正により記述しているので、「移住を促進する」としてはいかがでしょうか。
②官民連携
廃校等の小規模な遊休不動産を有効活用するため、スモールコンセッションを導入する。例えば、廃校の教室スペースを小規模事業者に提供し、宿泊施設として運営することで地域活性化を図る。地域資源の魅力を活かす㉒ことで、エリア価値を向上させていく。
㉒ 廃校が地域資源の魅力と主張するのはいかがなものでしょうか。→「地域の潜在的な資源を活かす」
リスク
3.新たなリスクと対応策
地域の魅力が向上することで、開発圧力が高まる。そのことによるスプロール化現象の発生等、自然生態系への悪影響が懸念される。
対応策として、居住調整区域を設定する。自然生態系を保全すべき区域に制限を設けることにより㉓、市街地が無秩序に拡散していくことを防止する。さらに、立地適正化計画の実行力が高まり、将来のインフラ投資の抑制といった波及効果も生じる。 以上
㉒ 好みかもしれませんが、少し読みづらいです。→「設け」
論文②【完成】
課題
1.多面的な課題
(1) いかに地域の魅力を高めるか
世帯数の減少や高齢単身世帯の増加等を背景に、空き家等が増加している。今後、更なる高齢化の進行によって、地域コミュニティ衰退への影響が懸念されている。そのため、地域資源を活用した①アイデア等により、地域価値を創造し、かつ維持し続けることが求められる。よって、持続可能性の観点から、地域の魅力を高めることが課題である。
① 地域資源が前述で語られていないので、みんなで協力してというニュアンスに替えてしまいましょう。→「あらゆる関係者の」
(2)いかに不動産流通を活性化させるか
人口減少により、住宅ストック数は世帯数を上回っている。管理不全に陥った空き屋等は周辺の住環境を悪化させ、不動産価値の低下や流通の硬直化を招く。このようなことから、国土の健全な発展と国民の資産を守るため、不動産を流動化させる取り組みが求められている。よって、土地取引の観点から不動産流通の活性化が課題である。
(3)いかに所有者情報を確保するか
令和6年4月1日より、相続登記が義務化された。これは、所有者不明土地の発生抑制・解消を図る取り組みの一つであるが、依然として所有者が特定できない土地等は多く存在している。従って、計画的な地籍調査やデジタル化による情報連携等、不動産登記情報の適正な更新が重要である。よって、制度面の観点から所有者情報の確保②が課題である。
② 情報なので、「把握」の方が良いと思います。
解決策
2.最も重要な課題と解決策
地域の魅力向上は同時に地方創生も達成できるため、「いかに地域特性に応じた土地利用を図るか」を最も重要な課題に設定し、以下に解決策を述べる。
(1)都市のコンパクト化
合理的な土地利用を促進するため、都市のコンパクト化を推進する。具体的には、立地適正化計画を策定し居住誘導区域を設定する。また、集約された居住エリアへのアクセシビリティを確保するため、地域公共交通計画を策定し、拠点間を結ぶ公共交通ネットワークを再構築する。市街地の拡散を抑制しつつ利便性の高い都市構造を構築し、土地利用を促進していく。
(2)都市環境の改善
①居心地が良く歩きたくなる空間
居心地の良い都市空間を創出し、都市の魅力を向上させる。例えば、道路占用許可の特例を活用し、道路空間を利用してオープンカフェを展開することで、まちの回遊性・にぎわいを高める。また、道路区域内に看板等を設置し、広告料によって良好な景観の形成や風致の維持に役立てる③。こうした取り組みを通じて、持続的な都市環境を構築していく。
③ 看板を設置する人と、維持に役立てる人は異なりますよね。誰が何をするのか(主語を明確化)、主語を統一するかしましょう。→「道路区域内に看板等の設置を許可し、得られた広告収入によって良好な景観の形成や風致の維持に役立てる」
②まちづくりGXの推進
環境に配慮した土地の有効・高度利用を推進するため、まちづくりGXに取り組む。例えば、道路空間ではバイオスウェルを具備した歩道を整備する。また、低未利用地では空閑地をクラインガルテンとして活用する等、グリーンインフラのビルトインを推進する。このように、都市空間における農地を創出していく④
④ まとめの文なので、バイオウェルも含め記述した方がよいでしょう。→「このような都市緑化のシナジー効果により、社会問題の解決と地域価値の創出を図る。」
(3)都市アセットの活用
①団地の再生
公営住宅団地等では、供給過多となっていることから、有効活用を図るために住宅団地の再生を推進する。例えば、空き家等⑤をコワーキングスペースに転換しテレワーク等が行えるようにする。職住近接環境を整備することで、子育て世代の呼び込みや移住を促進する。
⑤ 住宅団地なので、「空き部屋」ですね。
②官民連携
廃校等の小規模な遊休不動産を有効活用するため、スモールコンセッションを導入する。例えば、廃校の教室スペースを小規模事業者に提供し、宿泊施設として運営することで地域活性化を図る。地域の潜在的な資源を活かすことで、エリア価値を向上させていく。
リスク
3.新たなリスクと対応策
地域の魅力が向上することで、開発圧力が高まる。そのことによるスプロール化現象の発生等、自然生態系への悪影響が懸念される。
対応策として、居住調整区域を設定する。自然生態系を保全すべき区域に制限を設け、市街地が無秩序に拡散していくことを防止する。さらに、立地適正化計画の実行力が高まり、将来のインフラ投資の抑制といった波及効果も生じる。 以上