添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
選択科目Ⅱにおける作文上の注意点③
選択科目Ⅱー2は、専門科目における業務内容や手順を問われます。普段行っている業務に類するものであれば、とても書きやすいサービス問題的な存在です。しかし、問われる内容は、その内容や手順がガイドライン等で定められているものが大多数です。
つまり、Ⅱー1と同様、このガイドライン等の内容を知らないと得点が難しくなります。他方、問題の条件に合ったシチュエーションを自分で設定できるケースもあります。このケースであれば、さらに答えやすくなります。
しかし、自由度が増すと何を書いたら良いかといった迷いが生じるものです。条件が多いと自由を求め、自由が与えられるとテーマを求めるという、何とも悲しい人間の性ですね。というわけで、やはり何をどのくらい書いた方が良いのかという尺度は感覚として持っておきたいです。
ガイドラインなどに定めがある場合は、手順の多寡で文量は変わるのであくまで目安としてとらえていただければと思います。目安は、次の通りです。
- 調査・検討事項・・・・2/3ページ
- 手順・・・・・・・・・1ページ
- 調整方策・・・・・・・1/3ページ
書いた人は分かると思いますが、全部書こうとするととても2枚には収まりません。すべて端的に表現することを心掛け、聞かれたこと以外は答えないというスタンスも時に必要になると思います。また、調査と手順の内容は同じになる場合もありますので、「前述の調査を行う」といった具合にスペースの省エネ化を図りましょう。
また、工夫点・留意点は、すべての手順で書く必要はありません。ここぞという場面で、ポイントを示すことが肝要です。これで何とか、必要事項を書ききりましょう。逆に手順が少ない場合は、工夫点・留意点をモリモリ書くと良いでしょう。
最後の調整方策は、調整の相手方ごとに書くと良いと思います。必要に応じて、調整対象を小見出しにすることも手ですね。また、よくあるパターンとしては、調整方策ではなく、調整事項や調整のタイミングを書いてしまうケースが散見されますので特に注意です。
例えば、「〇〇(関係者)と早期に△△(協議事項)を協議する」という感じです。聞かれているのは、調整の方策(方法)なので、「3次元都市モデルを用いて分かりやすく説明する」、「客観的データに基づいて説明する」、「双方向の意見交換ができるようにワークショップを開催する」などが求めている解答だと考えます。
選択科目Ⅱー2は、点数の稼ぎどころです。確実に得点を積み上げましょう!
論文
本日の添削LIVEは、令和4年度 建設部門 道路 選択科目Ⅱー2「地すべり性地山の切土」をお届けします。これぞ土木といった問題です。このような設計は多くの人の命に係わる極めて重要な業務です。試験の問題に限らず漏れなく、適切に業務を遂行しなければなりません。そういう意味で言うと、添削する側も身の引き締まる思いがします。それでは、いつにも増してしっかりと見ていきたいと思います。
1 調査・検討すべき事項とその内容
(1)隣接区間の地質調査結果の再調査
4車線の完成断面による大規模なすべり面を想定するため、隣接区間の過去の地質調査結果を再調査する①。
① 調査結果を再調査とはどのような行動ですか。調査はすでに実施されているのですから、再検討ですかね。そうであったとしても、設計区間における地質調査は実施すると思います。そのうえで、隣接工区の調査結果を検討する目的は何なのかを明確にすべきです。
(2)施行中の地山の挙動把握調査
切土掘削中②の地山の挙動を監視するため、トータルステーションを用いた動態観測を行う。観測はデジタル技術を活用し、24時間体制の監視とする。
② これは施工段階での話です。問われているのは、計画・設計段階です。
(3)周辺地域の地下水位の変動調査
供用開始後のすべり面の位置を推定するため、モニタリング井戸を設置し、雨季・乾季により、地下水位の変動を把握する③。
③ 地すべり防止技術指針及び同解説では、「すべり面の判定は、ボーリング調査と機器(パイプ歪計、孔内傾斜計、縦型伸縮計、多層移動量計、クリープウェル等)による計測等の結果を用いて総合的に行う。」とあります。地下水調査は、「斜面の安定解析や対策工の検討の基礎資料を得ることを目的に、地すべり地への地下水の供給経路、地すべり地内における地下水の分布・流動傾向、すべり面に作用する間隙水圧等を調査する。」とあり目的が異なっていると思います。
(4)対策工法の検討
工期内完成④や追加工事⑤の額を評価軸として、排土案、グラウンドアンカー案、抑止杭案、またはそれらを組み合わせた工法を検討し、コスト、工期面から⑥最適な案を検討する。
④ 工法により工期は異なります。あらかじめ工期が設定されている状況に違和感があります。単に、工期で良いのではないでしょうか。
⑤ 追加工事との表現も違和感があります。何を追加するのか、そもそも当初設計なので追加分を組み込めばよいのではありませんか。単に、コストや費用で良いのではないでしょうか。
⑥ 最初の一文目で、評価軸の話をしています。重複表現であるため、不要です。
2 業務を進める手順(留意点、工夫点)
(1)調査
隣接する工区の地質図を基に⑦4車線完成形における地質の階層を調査する。
この時、地下水位の変動の幅や地層の傾斜により大規模なすべり面を想定することに留意する⑧。
⑦ 設計区間でボーリングすればよいのではありませんか。なぜ隣接工区の地質図を用いるのですか。
⑧ 地すべり面を想定するのは、留意事項ではなく必須事項ではありませんか。また、地下数位については、③の通りです。さらに、調査の留意点としても疑義があります。
(2)分析
地質調査や地下水位の変動を考慮し、切土施工中と共用開始後の完成形におけるすべり面を分析する⑨。
この時、詳細なすべり面を把握するため広域的な分析が可能となるボアホールカメラの活用⑩など、追加する調査方法に工夫する⑪。
⑨ 地すべり面は、変わらないのではありませんか。分析内容がよく分かりません。分析すべきことは、地すべり運動ブロック、地すべり断面図、地すべりの機構解析など他にたくさんあるのではありませんか。
⑩ ボアホールカメラは、主としてボーリング孔内の状況を観察するためのカメラです。なぜ、広域的な分析が可能になるのですか。
⑪ 追加する際の工夫なのか、調査方法の工夫なのかどちらとも取れます。そもそも、構文がおかしく、何を工夫するのか全く分かりません。
(3)検討
分析結果より対策工法を検討する。この時、工期内完成や増加するコストを明示して比較検討表を作成⑫し、発注者と協議を行うことに留意する⑬。
⑫ これはすでに記述済みなので不要。「前述の工法比較を行う」で良いと思います。
⑬ 協議を行うことに留意するとは、協議を忘れるなよという意味ですか。そうであるなら、技術的な留意点ではないですね。
(4)計画
資器材の入手のしやすさ、施工のしやすさを考慮して対策工法の施工手順を計画⑭する。この時、用地境界に留意する。
⑭ 施行の手順だけでなく、地すべり防止計画、地すべり防止施設配置計画、工事に際しての安全対策といった地すべりに必要な計画を明記する必要があると思います。選択科目なのですから、技術的な記載を心掛けないと得点できませんよ。
3 関係者との調整方策
(1)工事関係者⑮
地震時に液状化を発生する中間砂層など、地質や地盤が保有するリスクを書面にて共有を図る。
(2)道路利用者
工事中の通行規制や暫定線形等を事前に工事看板や、メディアを活用して告知し、確実な注意喚起する⑯。
(3)法面管理者
法面が民地の時は、地権者と工法や追加用地買収費などについて協議する。その際、イメージしやすい資料⑰を作成する。法面が国有地の場合は、形状変更等について、予め施設管理者と書面にて協議⑱を行う。
以上
⑮ 問われているのは「業務を効率的、効果的に進めるための調整」です。工事関係者は、本業務のどこに登場するのですか。
⑯ これも施工前の行動であり、本業務ステップに該当しないと思います。
⑰ 抽象的です。具体的に書きましょう。
⑱ 効率的、効果的に進めるための調整なのか分かりません。