添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
人口減少と地域衰退が“待ったなし”
技術士二次試験では、社会課題を技術的視点から分析し、現実的な解決策を提示する能力が求められます。では、社会課題とは一体どのようなものなのか?これを紐解けば、何が出題されやすいのかが透けて見えます。
先日、ご紹介した「第6次社会資本整備重点計画」(紹介記事はコチラ)においては、持続可能な地域社会の形成や強靱な国土が支える力強い経済社会といった目標が掲げられています。これらを踏まえると「地域活性化×持続的成長」が試験テーマとして重要視されることがうかがえます。
もう少し、このテーマが試験問題として重要視される理由を考えてみましょう。
理由1. 社会基盤整備と地域産業は密接に結びついている
道路、河川、港湾、上下水道、ICTインフラなど、建設部門の技術は地域産業の基盤そのものです。国の資料でも、「インフラ老朽化対策と立地適正化計画の連携」「自律分散型インフラの整備」が強調されています。技術士は、これらの政策を現場で実行する立場にあるため、政策背景の理解が不可欠です。
理由2. 限られた人員・予算の中で最大効果を出す視点が求められる
財政制度分科会資料では、「限られた財政資源の中で最適投資を行う必要性」が繰り返し述べられています(最近の試験では条件化されることもあります)。というわけで技術士には、「投資効果の高い施策の選定」「多面的な課題抽出」「合理的な優先順位付け」が求められます。
理由3. 地域の持続性と倫理観が問われる
地域活性化は、単に経済効果を追うだけではなく、「地域住民の生活」「環境」「社会的弱者への配慮」など、技術士のコンピテンシーに即する観点から、持続可能性と倫理観が不可欠です。技術士試験の必須科目Ⅰでは、まさにこの「技術者倫理×社会課題解決」が問われます。
ここまで見てきたように、国の動向としては共通して次の点を強調しています。
- 人口減少により地域の衰退が加速
- 地域の稼ぐ力を高めることが日本全体の成長に不可欠
- デジタル技術を活用した新しい地域産業構造への転換が必要
- 限られた資源の中で最適投資を行う技術者の役割が大きい
これらはすべて、技術士二次試験のテーマとして極めて重要であり、実務に直結する内容です。地域活性化は「地方の問題」ではなく、「日本の未来を決める国家戦略」といえます。技術士として、このテーマを深く理解し、自分の言葉で語れるようにしておきましょう。
「地域活性化×持続的な経済成長」
ということで、本日の添削LIVEは、「地域活性化×持続的な経済成長」をお届けします。一見、建設部門と縁遠いテーマに見えますが、上記の通りがっつりインフラに結び付けて解答すればOKです。また、地域課題を解決するためには、情報技術の活用、コンパクト・プラス・ネットワーク、国土強靭化など最近の取組みを記述すればいとも簡単に書けてしまうでしょう。そんなに難しく考えず、強引に紐づけるたくましさを身につけることが、合格できる人の精神構造です。それでは、論文を見ていきましょう(問題はコチラ)。
(1)持続可能な経済成長を図るための課題
1)地方の活性化
我が国は人口・経済活動などが首都圏に集中している。南海トラフ巨大地震などの災害リスクが高まっており、災害発生時の首都圏の社会機能の影響は大きいことから地方に産業の分散立地を進めていく必要がある①。しかし、地方は人口減少・少子高齢化などにより行政サービスの維持が困難な地方もある②。したがって持続的な経済社会を構築するため③、防災の観点から地方の活性化が課題④である。
① 首都圏なので、地震の例示は首都直下地震の方が適切だと思います。「災害発生時の首都圏の社会機能の影響は大きい」は、助詞「の」が連発しており読みづらいうえ、社会機能の影響とは一体何なのかよく分かりません。さらに、全体として一文が長すぎます。もっと端的に分かりやすく表現することを意識しましょう。
② 「しかし」とありますが、逆接になっていないと思います。維持が困難だからこそ、経済機能を分散するのではありませんか。そもそもの題意は、災害時の経済維持ではなく、地方の活性化を通じて経済成長を遂げることですよ。
③ ②のとおり、題意とずれていると思います。
④ これも、地域活性化を進め持続的な経済成長を図るための課題を聞かれているのに、地方の活性化が課題では、「おいしい料理を作るための課題は」との問いに「おいしく作ることが課題です」と答えているようなものです。問題文をしっかり読んで、題意を正確に把握することに最大限の注意を払わないと、スタートからあらぬ方向へ走り出してしまいます。問題文を理解してるか、問題の条件を満たしているかをきちんとチェックするためには、骨子を作ってから論文を書くことが有効です。骨子の書き方は、本サイトに多く掲載していますので参考にしてください。
2)GXの推進
人口減少などにより国内の経済市場は縮小傾向であることから今後は海外の経済市場を獲得する必要があるが、国際競争力は低下しつつある⑤。一方、気候変動に対応するため2050年カーボンニュートラルに向けた取組が各業界で進められている。脱炭素技術を通じ、国際競争力を強化するため⑥、経済成長の観点⑦からGXの推進が課題⑦である。
⑤ 一文が長いです。文が長いと、主語述語がおかしくなったり、読みづらかったりと良いことはありません。内容が変わる段階で一回分を切り、必要に応じて接続詞で結びましょう。例えば、「人口減少などにより、国内の経済市場は縮小傾向である。このことから、今後は海外の経済市場を獲得する必要がある。しかし、国際競争力は低下しつつある」といった具合になります。このような整理を進めることで、問題点も見えてきます。このケースで言うと、最後の一文、「国際競争力は低下しつつある」という考えに根拠や理由が示さていないことに気が付くことができると思います。とにかく、文は短くです。
⑥ 脱炭素技術と国際競争力の強化がどのような関係にあるのか分かりません。2つの話題の関係性を説明しないまま、このような主張をされても、脈絡がなく説得力に欠けています。
⑦ これは題意です。地域活性化を進め持続的な経済成長を図るための課題ですから、経済成長の観点を持つことは当然であり、適切な観点とは言えないと思います。
⑦ GXを推進することがなぜ国際競争力の強化につながるのでしょうか。GXとは、温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立を目指す社会変革の取り組みを指します。よって、前述にある「脱炭素技術を通じ、国際競争力を強化(≒経済成長)するため」という内容と重複していませんか。目的と行動が同じになっているように見えます。さらに、題意である地方活性化について、何も触れられておらず、問題の条件を満たしていません。
3)ネイチャーポジティブの推進
持続的な社会構築のため、カーボンニュートラル達成に向けた取組が各国で進められている。CO2吸収や防災効果がある自然環境の増加は急務である⑧。また自然資源は社会・産業などすべての土台になるもの⑨であり、環境保全に伴う再生可能エネルギーや脱炭素技術など新しい産業・雇用が生まれる効果もある⑩。これらのことから今ある⑪自然環境を保全し、回復させていくことが重要であるため、資源の観点からネイチャーポジティブの推進が課題⑫である。
⑧ 社会的に急務であることは否定しませんが、地域活性化を進め持続的な経済成長を図るうえで急務であることを説明しないと、なぜこの問題点を指摘しているのか分かりません。また、カーボンニュートラルの話を前段でしているので、CO2吸収は分かりますが、防災効果の話は脈絡がありません。
⑨ すべての土台になるとはどういうことでしょう。分かりづらい表現です。
⑩ なぜこの効果が発生するのか仕組みを書かないとなぜなのか分かりません。
⑪ 保全なので「今ある」ものであることは明確です。不要。
⑫ 課題の目的が、カーボンニュートラルに見えます。何度も言いますが、地域活性化を進め持続的な経済成長を図るための課題を聞かれています。論点がずれています。論文を作成した後は、論点がずれていないか自分自身で確認することを習慣化しましょう。セルフチェックできないと、本番において修正機能が働かず、論点がすれたら一発アウトになってしまいます。このセルフチェック能力は、合格するための必須事項となりますので身につけられるよう練習しましょう。
(2)最も重要な課題と解決策
国土全体の活力を高めるには地方の活性化は必須であると考え⑬、最も重要な課題に地域の活性化⑭を挙げる。以下に解決策を述べる。
⑬ 繰り返しになりますが、問題は地域活性化を進め持続的な経済成長を図るための課題を聞いています。必須であることは当然ですし、他の課題も当然地方の活性化を図るためのものになります(この論文は題意を外しているのでそうなっていませんが)。よって、選択の理由になっていません。
⑭ 記載の課題は「地方の活性化」です。
1)全国回廊ネットワークの形成
人口や経済・産業を分散させるため全国回廊ネットワーク⑭を形成する。リニア新幹線の早期開通を図り、移動時間の短縮により産業・観光を活性化させ地方の魅力を向上させる。高速道路においては県境のミッシングリンクを解消させ都市間の移動性を高め⑮、災害リスクのリダンダンシーを確保する⑯。
⑭ →「全国的な回廊ネットワーク」
⑮ なぜ県境に限定するのですか。また、なぜ使役の動詞(解消させる)にしているのですか(誰にさせるのか)。都市間の移動性も少し分かりづらいですかね。具体的な効果にすると伝わりやすいと思います。→「高規格幹線道等の未整備区間の整備を推進し、都市間移動の速達性を高め」
⑯ なぜ災害の話に言及しているのでしょうか。地方の活性化や経済成長との関係を示す必要があります。
2)二地域居住の推進
地方への人の流れを促進させ、地方の活性化を図るため⑰二地域居住を推進する。空き家の利用促進のため空き家バンクを活用する。SNS⑱で空き家バンク制度の周知を図る。併せて購入・改修費用の補助金制度の情報提供を実施し認知度を高め⑲、移住⑳のきっかけづくりをする。
⑰ 地方の活性化を図るための解決策なので、この目的は当たり前です。
⑱ なぜSNSなのですか。
⑲ 補助金制度があることを前提とした提案に違和感があります。また、「投入できる人員や予算に限りがあることを前提に」と問題にはあるので、補助金の提案はあまり好ましくありません。
⑳ 二地域居住ではないのですか。いつの間にか移住になっています。
3)生活地域圏の形成
地方の行政サービスを持続的に提供していくため、市町村界にとらわれない地域生活圏を形成㉑する。交通においては利用者の需要に基づき、運行ルートや配車を決定し高齢者を含む様々な人の交通の便を向上させ、地域移動を活性化させる㉒。またDXを活用し、ドローン物流や自動運転を普及させ、すべての人が住みやすいよう生活サービスの効率化を図る㉓。市町村界をまたいだ地域生活圏を形成した場合は㉔群マネを活用し、自治体の発注手続きの簡素化や維持管理の迅速化㉕を図る。
㉑ 行政サービスを持続的に提供することと、市町村堺に捉われないこととどのような関係があるのか分かりません。また、地域生活圏とはいかなるものなのかもよく分かりません。
㉒ 行政サービスの提供としていますが、公共交通は一般に交通事業者が提供するサービスではありませんか。コミュニティバスのような行政が運航主体となる交通サービスを指しているのでしょうか。そうであるなら、その旨を書かないと行政サービスなのか判断できません。また、地域移動ではなく、地域間移動ですかね。そうであるなら、なぜ地域間が移動の活性化が必要なのか書くべきです。それもとも高齢者等の外出機会の創出を述べているのでしょうか。いずれにしても、まぎれのある表現は控えるべきでしょう。
㉓ 地域生活圏の形成がよく分からないので指摘しづらいのですが、これらの対策は地域生活圏の形成に関することなのですか。それとも全く別の話をしているのでしょうか。とにかく、話が拡散しており、何が論点なのかが不明確です。一貫性のある提案が望まれます。
㉔ 市町村界にとらわれない地域生活圏を形成するとあるにもかかわらず、「市町村界をまたいだ場合」と仮定されているのでしょうか。またぐことは前提ではないのですか。
㉕ なぜ維持管理の話をしているのでしょう。㉓と同様、支離滅裂に見えます。
(3)新たに生じるリスクと解決策
新たに生じるリスクとして地域の拠点化に伴い、災害時の被害が局所的に集中すること㉖が挙げられる。
解決策として、移住者は地域の特性に精通していないことが多いため、ハザードマップを作成、公表する㉗。津波、浸水、土砂災害などの複合的ハザードマップを作成する㉘。また想定を上回る降雨のほか中短期降雨の多段階浸水ハザードマップを作成する㉙。公表においては紙媒体のほかSNSを活用した電子媒体を公表し、災害時に持ち運べるようにする㉚。
㉖ まず地域の拠点が何かわかりません。そのため、被害が局所的になる理由も分かりません。さらに、「局所的に集中」は重複表現です。
㉗ 被害が集中していようと拡散していようとハザードマップの作製は必要だと考えます。また、被害が集中するというリスクなのに、「移住者は地域の特性に精通していないことが多いため」とハザードマップを作る目的がリスクに対応していません。
㉘ なぜですか。手段を示す場合、その目的、理由を添えましょう。
㉙ なぜですか。
㉚ 電子媒体の公表になぜSNSを活用するのですか。持ち運ぶことが理由であるなら、SNSである必要もありませんし、さらに言えば電子媒体である必要すらありません。対応策は、全体的に説明不足であり、総花的で浅薄です。
(4)業務遂行にあたり必要となる要件
技術者としての倫理の観点から必要な要件は、計画段階から公衆の安全や利益を最優先することである。計画・設計の際に、データの改ざんや不正をしないよう留意㉛する。
社会の持続性の観点から必要な要件は、地方の文化や歴史を守っていくことである㉜。地方活性化に伴うインフラ整備の際には自然環境に配慮することに留意する。 以上
㉛ 当たり前です。留意点としてふさわしくありません。そんなことに注意を払わなければならない人物なのかと思われてしまいます。
㉜ 技術士倫理綱領における「持続可能な社会の実現」は次の通りです。
(1)技術士は、持続可能な社会の実現に向けて解決すべき環境・経済・社会の諸課題に積極的に取り組む。
(2)技術士は、業務の履行が環境・経済・社会に与える負の影響を可能な限り低減する。
よって、文化や歴史を守るという行動は、おそらく(2)に該当すると思いますが、負の影響を明確にしたうえで、それを防ぐという記述が求められます。よって、単に守るではなく、上記の取組みにより発生する負の影響を明確にすると説得力が増すと思います。


