添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
コンパクト・プラス・ネットワークに関する最近の動向
昨年度、コンパクト・プラス・ネットワークの取組をさらに実効的なものとする上で、立地適正化計画制度に求められる必要な取組を検討することを目的に、「立地適正化計画の実効性の向上に向けたあり方検討会」が設置されています(検討会資料はコチラ)。
立地適正化計画の推進をはじめとしたこれまでの取組状況の施策評価・課題分析などが議論されています。立地適正化計画は、新たなステージにステップアップするために準備が進められています。本委員会のとりまとめは令和6年6月~ 7月頃を予定していますので、これらの議論が出題される可能性は時期的に言って少ないと予想されます。
令和5年度においては、都市及び地方計画の選択科目で防災指針が出題されています。重要な取り組みであることは疑いようがありませんが、立地適正化計画は問題として出尽くした感があります。そこで注目されるのは、「ネットワーク」の部分ではないかと考えています。
地域公共交通計画
コンパクトな拠点をつなぐ役割を担っているのがネットワークです。このネットワークを形成するための計画として、地域公共交通計画があります。地域公共交通計画は、「地域にとって望ましい地域旅客運送サービスの姿」を明らかにする「マスタープラン」としての役割を果たすものです。
この計画は、立地適正化計画とセットで策定することで、コンパクト・プラス・ネットワークが形成されます。立地適正化計画の問題が頭打ちになる中、残された問題はネットワーク、つまり「地域公共交通計画」というわけです。
また、ライドシェア、公共交通のリデザインなどが注目されており、出題を後押する背景となっています。これだけ出題の環境が整えば、盤石といえなくもないですが、一つ気がかりなのは交通は専門分野が道路よりなので、都市及び地方計画の出題としてどうかといった懸念材料があります。
まあ、エスパーではないので、不安要素のない予想などありません。単純な話、可能性があるものは論文を書けばよいのです。また、多くの可能性を拾うためには、キーワード学習などにも力を入れると良いでしょう。
選択科目Ⅱー2の傾向
選択科目Ⅱー2は、業務手順を問われます。最初に「調査・検討事項」、次に「手順」、最後に「関係者の調整」といった設問となります。普段の業務に当てはめれば、ある程度検討事項や手順などは記載できてしまいます。
しかし、出題されるものは、一般論だけでは合格レベルに至らないと考えます。出題されるものは、法定計画の策定であったり、ガイドライン・手引きが定められていたりとルールが明確なものがほとんどです。なぜなら、公平な採点をするためには、一定のルールが必要だからです。
そのことを理解していれば、選択科目Ⅱー2の予想を立てるのも若干楽になります。さらに、解答するうえでは、極力、ガイドラインや手順に従って書くと良いでしょう。オリジナル要素は不要です。どれを引用するかのみに注意すれば良く、基本はパクりです。
また、法定手続きがあるものは、法律に記載されているステップは漏れなく書く必要があります。よって、法定計画などは特に注意が必要です。今回、投稿いただいている地域公共交通計画も法定計画なので、必要ステップをしっかりと記述することが大切になります。
論文
問題:人口減少と高齢化の進む地方都市Aにおいて、コンパクトなまちづくりを進めるため、既に立地適正化計画を策定している。一方、当該都市では鉄道・バス等の公共交通は整備されているものの、車への依存度が高く、公共交通の利用者は減少している。そのため、公共交通ネットワークの改善を目的に、地域公共交通のマスタープランとしての地域公共交通計画を策定することとなった。
そこで、当該地域公共交通計画案を作成する業務を担当責任者として進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。
(1)地域公共交通計画を作成する際に、あらかじめ調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)上記の調査・検討に基づき、地域公共交通計画を作成する業務手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)効率的、効果的な業務遂行のために調査が必要となる関係者を列挙し、それぞれの関係者との連携・調整について述べよ。
1.調査、検討すべき事項とその内容
(1)既存の公共交通ネットワークの調査
立地適正化計画によって設定された、居住誘導区域や都市機能誘導区域に接続されている公共交通ネットワークを調査する。調査にあたっては、実際に公共交通に乗車し乗車環境や停留所アクセスの負担、利用状況及び利用者属性を把握する。
(2)関連計画及び上位計画の把握
上位計画となる自治体の総合計画及び都市マスタープランから、対象区域の将来都市像を把握する。また、関連計画となる立地適正化計画や高齢者福祉計画等の施策をとりまとめる。
(3)既存の網形成計画・連携計画等の評価
地域公共交通計画の前進となる計画がある場合、実施された施策については、事業費や事業効果を把握する。実施されなかった施策については、その要因を抽出しとりまとめる。
2.業務を進める手順と留意点、工夫点①
① 法定計画なので、法に定められた記載事項は、手順に必ず入れましょう。法に定められた記載事項は、①基本的な方針、②計画の区域、③計画の目標、④事業実施主体、⑤達成状況の評価、⑥計画期間となります。下線の項目に不足が見られますので、簡単で良いので記載しましょう。
(1)課題の整理
鉄道駅やバス停の勢力圏と人口密度のメッシュデータを重ねあわせ、各路線沿線の人口集積状況を整理する②。この時、関係者間で議論がしやすいようネットワークを図化し見える化する工夫を行う③。公共交通事業者にデータの提供を依頼する場合は、利用目的や分析方針等の認識を双方で共有することに留意する④。
② 見出しは課題整理ですが、この部分は現況整理ではありませんか。見出しに現況分析も含め、本文中には、現況を踏まえ課題を整理するといった記載をしてはいかがでしょうか。
③ 図化と見える化が類似しています。→「ネットワーク図を作成するなど見える化するための工夫を行う。」
④ 課題整理上の留意点なのか疑義があります(現況整理ですかね)。
(2)目指すべき将来ネットワークの設定
立地適正化計画で示された将来的な都市構造や基幹的な公共交通軸を踏まえ、目指すべき公共交通ネットワークを設定する。この時、鉄道や基幹バス等の交通モードや運行本数等のサービスレベルを具体的に記載する工夫を行う⑤。また、都市機能の誘導や増進に関する施策と連携を図ることに留意する。⑥
⑤ なぜ具体的なサービスレベルを記載するのか、理由を記載すると良いと思います。
⑥ ①の通り、計画区域をの設定をここに記載すると良いでしょう。
(3)スケジュール及び目標値の設定
交通不便地域やラストワンマイルを補完するモビリティ対策等、施策の実施スケジュールや目標値を設定し、計画案をとりまとめる⑦。この時、目標運行回数や将来需要の推計、採算性がどの程度であるか等のアウトカム指標を設定⑧する工夫を行う。移動手段を単に確保するだけでなく観光振興や福祉的観点を取り入れる等、地域の実情に即した施策とすることに留意する⑨。⑩
⑦ 目標を設定して終わりではなく、目標を達成するための「施策」がないですね。項目として追加しましょう。
⑧ 目標回数は、施策の実施も目標でありアウトプットではありませんか。アウトカムというと高齢者の外出回数、公共交通利用転換による温室効果ガス削減などアウトプットの先にある目標値であるべきです。
⑨ 見出しは、スケジュールと目標です。施策は、別途項目を立てましょう。
⑩ 目標に対する評価、実施主体(施策でも可)、計画期間などを追記しましょう。
3.調整方策
(1)効率的・効果的な業務遂行のための関係者
地域住民、国、都道府県、庁内関係機関、警察、地元企業、交通事業者、観光協会、社会福祉協議会等。
(2)関係者との連携・調整について
関連する自治体や関係機関等に対しては、地域公共交通活性化協議会での客観的な情報に基づく協議を行う⑪。住民に対しては一方的な情報提供だけでなく、協議会への参画や、ワークショップやパブリックコメントを通じて、双方の意見交換を行い調整する⑫。 以上
⑪ 「関連する自治体や関係機関等に対しては」では、協議対象が分かりません。よって、法定協議会を指しているのであれば、その団体を書いた方が良いでしょう(スペースが無ければ、法に定められた団体としても良いでしょう)。客観的な情報が抽象的です。重要な部分なので例示等を記述し具体的に述べた方が良いでしょう。
⑫ 双方とありますが、誰と誰ですか。