添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
河川砂防部門
河川砂防は風水害の頻発により、災害対策を語るうえでは欠くことのできない知見です。専門科目で災害関係が出題されれば、河川砂防の知識が必要となります。建設部門を受験する多くの人たちの勉強に役立ちます。
今回は、河川砂防知識を備える上で役立つ論文2本をお届けします。専門科目Ⅱー2ということで専門性が高い内容になりますが、どちらも災害関連なので大注目の話題と言えます。一つは、「マイタイムライン作成に係るワークショップ業務」、もう一つは「災害に強いまちづくり」です。どちらも、建設部門必携の知識と言えます。
では、河川砂防関連で最近注目されているトピックは何か見てみましょう。138回 河川整備基本方針検討小委員会(2024年5月9日開催)において、令和5年4月以降の審議を踏まえて今後の水系の検討に活かす視点が説明されいます。内容は、以下の通りです。
基本高水のピーク流量
〇計画降雨量を超過する実績降雨や基本高水のピーク流量を超過する実績洪水が発生している水系での基本高水のピーク流量の設定にあたっての留意点
〇降雨波形や流出特性等が類似する隣接水系の審議方針
〇アンサンブル予測降雨波形の更なる活用(ピーク流量が大きくなる降雨パターンの分析)
〇降雨継続時間の変更による基本高水のピーク流量への影響
計画高水流量の検討
〇流域全体を俯瞰した流量配分の検討
〇引堤や河道拡幅、遊水地等の整備(引堤、遊水地の可動堰化)
〇ダムの事前放流や再開発・放水路の拡幅等の既存施設の有効活用(ダム群の容量再編、放水路の拡幅)
〇河川の整備や管理の技術の進展等も踏まえた方策(堤防の防護を前提とした河道の徹底活用、河道の貯留効果の増大)
〇支川も含めた流域全体で計画的に安全度を向上させていくための流量配分
集水域・氾濫域における治水対策
〇農業分野との連携
〇まちづくりとの連携
河川環境・河川利用、総合土砂管理
〇河川環境の整備と保全の基本的な考え方
〇治水・環境が両立した河道掘削
〇ダム下流へのダム堆積土砂等の置き土
〇流域と連携した絶滅危惧種(アユモドキ)の生息域の保全・創出
その他
〇水害リスクの自分事化の取組
〇生物の生息・生育・繁殖の場としてもふさわしい河川整備及び流域全体としての生態系ネットワークのあり方検討会
環境・生態系の保全なども目に留まりますが、やはり気候変動に伴う発生する洪水への対応策、流域治水と言った防災減災対策が目白押しです。あらゆる角度から、防災減災対策を語れるようにした方が良さそうです。
このような国の動きを鑑みると、今回の論文はとても参考になると思いま。早速論文を見てみましょう。
論文
マイタイムライン
問題:河川分野における大雨洪水のマイタイムラインを作成するワークショップ業務
( 1 ) 収集・整理すべき資料や情報について述べよ。
( 2 ) 大雨洪水のマイタイムラインを作成するワークショップ業務の手順を述べよ。併せて、留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。
( 3 ) 業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
1. 収集・整理すべき資料や情報
(1)河川カルテ
その地域①を流れる河川カルテを収集する。堤防などの河川管理施設や河道の状況を把握する。把握した情報は、住民が洪水リスクを確認する際の参考資料として用いる。
① →「対象地域」
(2)洪水浸水想定区域図
洪水浸水想定区域図を整理する②。平面的に浸水範囲および浸水深を把握する③。河川管理施設の整備状況によって浸水状況は変わる。極力新しい計算条件の解析結果で整理する④。
② 洪水浸水想定区域図を整理するとは、どのような行動なのでしょうか。文末を「収集する」とした方が良いのではなりませんか。また、浸水想定図だけですと1つだけなので、収集としても違和感が残ります。「マイ・タイムライン検討のためのワークショップの進め方」では、用意する資料として「①浸水想定区域図、②浸水継続時間図、③家屋倒壊等氾濫想定区域図(ハザードマップに記載されている場合は不要。)」とありますので、これらを列記して「収集する」としてはいかがでしょうか。ただし、前提としては、ハザードマップの用意ですよね。
③ これも問われていることに的確に答えるために、文末を「整理する」とした方が良いでしょう。また、「平面的に」の位置についても、述部に近い方が分かりやすいと思います。→「浸水範囲および浸水深を平面的に整理する」
④ 極力と示されているものの、ワークショップ開催のために解析をするのは現実性がないように感じます。
(3)過去の災害履歴
その地区⑤で発生した災害の情報について⑥収集する。地区内で被害が大きい地点を把握し、降雨特性や地形特性など、その要因分析に用いる⑦。
⑤ ①と同様。また、意図が無ければ、「地域」、「地区」は統一しましょう。違いは、範囲(地域>地区)です。
⑥ →「を」
⑦ 主語は、住民ですか、行政ですか、業務を実施している人ですか。ワークショップの開催のための情報収集、整理なので、主語が省略されている場合、主語は業務を実施している人と解釈されます。そうなると、業務をを実施している人が要因分析するとなると、防災対策検討業務のように見えます。
(4)地域防災計画や警戒避難体制
地域防災計画などの上位計画⑧や避難警戒体制を収集する。マイ・タイムラインの上位計画として用いる⑨。
⑧ 何に対しての上位なのですか。計画策定業務ではないので、上も下もありません。関連計画ですかね。
⑨ 上位計画は、⑧のとおりです。また、上位計画として用いるとは、どのように使うのか良く分かりません。
2 . 業務を進める手順と留意点、工夫点⑩
⑩ 「マイ・タイムライン検討のためのワークショップの進め方」では、以下の手順が示されています。これらをベースに記述すると良いでしょう。
(1)関連計画の整理
地域防災計画および作成済の市町村タイムライン、警戒避難体制など、上位計画を把握する⑪。既存の計画と整合を図りつつ、河川特性や地域特性を考慮することで相乗効果を発揮できるよう工夫する⑫。
⑪ これは、収集・整理の項目で述べるべきですね。ここでの表現は、単純に「前述の情報収集・整理を行う」で良いと思います。
⑫ ここは、関連計画の整理における工夫点を書くのですよ。何と何の効果を高め合うのか分かりませんし、どのような工夫なのかも理解できません。
(2)住んでいる地区の洪水リスクを認識してもらう
過去の災害情報と洪水浸水想定区域図から、住民各々の水害リスクについて説明する⑬。居住地の近くで起こった場合について一緒に考え⑭、よりリアルにリスクを認識できるように工夫する。
⑬ ワークショップの規模は分かりませんが、リスクは人それぞれです。その一人一人のリスクについて説明できるのでしょうか。それぞれのリスクは、自ら考えてもらうものであり、説明はタイトルにあるように地区の洪水リスクではありませんか。
⑭ ⑬のとおり自ら考えるものと思います。ただし、「マイ・タイムライン検討のためのワークショップの進め方」では、「他者と意見交換をすることにより、一人では気づかなかった「避難の備えやタイミング」「避難場所の選定や逃げ方」を知り得ることができる。このため、ワークショップ方式による検討の場合には、居住環境や洪水リスクが比較的似ている住民を同じテーブルにするなどの意見交換を活発にさせるような工夫が望ましい。」とあります。記載の工夫点は、実現性の観点(時間や人的問題がありますね)から疑義がありますので、一緒に考えるのではなく議論を促す方が良いと考えます。
(3)避難方法の共有
リスク情報を踏まえ、避難方法について話し合う⑮。災害時は水平避難で避難所への避難が考えられる。しかし、低平地では浸水継続時間が長時間にわたり、避難中の被災も考えられるため垂直避難も視野に入れることに留意する⑯。
⑮ ⑬のとおり自ら考えるものと思います。⑭のとおり、話し合うのは自ら考えさせた後の次のステップだと思います。
⑯ 参加者に考えてもらう際の留意点です。ここで書くべきは、業務上の留意点です。以下は、「マイ・タイムライン検討のためのワークショップの進め方」に記載されている避難方法の検討ステップです。
以下、抜粋。
■段階的なマイ・タイムラインの検討
当面マイ・タイムラインの検討は以下のような段階で進めていくことを推奨する。
【ステージ1】:現行の洪水ハザードマップを活用し、大河川を基本として、標準的なシナリオに対し、自らの標準的な防災行動を考える過程を通じて、自らの避難行動をとりまとめる。
【ステージ2】:ステージ1で取りまとめた大河川を基本とした標準的な防災行動を基に、中小河川氾濫や内水被害も対象とし、更に平日や休日などの時間軸を考慮し、自身の防災行動をより実践的に自ら考える。
【ステージ3】:土砂災害などの降雨により一連で発生する他の災害に対して、防災行動を考える。
多くの住民は洪水リスクに対する認識が必ずしも高くなく、洪水災害の発生過程や被害様相をイメージできていないのが現状であるため、当面は、【ステージ1】を主眼に広めていくこととし、ここでは、【ステージ1】に関して記述する。なお、【ステージ1】の検討結果を基に、【ステージ2】・【ステージ3】の検討を住民一人ひとりが自ら考え進めていくことを促すことが必要である。
(4)タイムラインの有効性の共有
突発的に発生する地震災害を比較対象に、時々刻々と発生する洪水災害との発生過程の相違点を説明する。発生過程が時々刻々であることから、タイムラインを作成することが有効なことを伝える。
(5)マイ・タイムラインの作成
前述までの説明から自身の状況を踏まえ、マイ・タイムラインを作成する⑰。ブラッシュアップのため、他者と意見交換をする等の⑱工夫をする。
⑰ 作成するのは住民です。→「作成してもらう」、「作成させる」
⑱ →「できよう」
3 . 業務を効率的・効果的に進めるための調整方策
先行事例を持つ自治体と意見交換を行い、効率的に業務を進める⑲。住民に向けては、「防災行動を考える」ことは堅苦しい・難しいというイメージが先行するため、専門用語をなるべく使わない等の配慮をして分かりやすい説明をすることで効果的に進める。 以上。
⑲ 書くことは、関係者との調整方策です。先進事例を持つ自治体との意見交換は、調整とは言えないと思います。
災害に強いまちづくり
問題:あなたが災害に強いまちづくりを行うための計画策定を担当することになった場合を想定して、以下の問いに答えよ。
(1)計画策定着手に当たって、収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、その目的や内容について説明せよ。
(2)計画を策定する手順について延べよ。併せて計画策定に関し、留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。
(3)計画をより効果的なものとするための関係者との調整方策について述べよ。
1.収集・整理すべき資料や情報、その内容、目的
(1)災害ハザード情報
地域の災害履歴を確認するため、災害記録誌や聞き取り調査により、災害の種類、被害状況、頻度等に関する資料や情報を収集・整理する。また、行政が把握する災害想定として、ハザードマップ(洪水、土砂災害、津波等)や法令指定(土砂災害警戒区域等)の資料や情報を収集・整理する。
(2)人的特性、地域の特性
地域の災害危険や防災課題を分析、抽出するため、人口、将来人口、高齢化率等、人的特性の情報を収集・整理する。また、地形や地形の変化、集落の形成変化、道路網・幅員、公園等オープンスペース等、地域特性についての情報を収集・整理①する。
① 地域特性というと、地域ごとに異なる街並みや文化などの特徴といったニュアンスが強いので。ここでは「地理空間情報を収集・整理」ですかね。
(3)各種計画
まちの将来像やまちづくりの方針検討のため、災害に強いまちづくりや防災・減災に関する既存計画および施策を収集・整理する。併せて、インフラ、流域治水、医療、福祉、産業等他部局の計画や過去の関連施策の情報も収集・整理する。
2.計画策定の手順と留意点、工夫点
(1)現状把握
1.で収集した資料・情報を基に、現状を把握する。
(2)解決すべき課題の抽出
地域全体で想定される災害種別と人口・地域特性を重ね合わせ、地区レベルで起こりうる被害状況を検討し、解決すべき課題を抽出する。抽出した課題を分かりやすくするため、「課題図」に整理して可視化する工夫を行う。なお、将来的に災害リスクが高まる恐れがある地区も把握することに留意する。②
② 課題検討の中に含まれているのかもしれませんが、「災害リスクの評価」を明確に表現すると良いでしょう(「水災害リスクを踏まえた 防災まちづくりのガイドライン」の水災害リスクを踏まえた防災まちづくりの検討の流れを参照)。
(3)方針の検討
2.(2)で抽出した課題を踏まえ、まちの将来像と課題を解決するためのまちづくりの方針について検討する。検討にあたっては、防災・減災を明確に意識し、想定される様々な災害に対して被害を最小化する観点から対応方針を検討する。なお、被災しても早期回復ができる「事前復興」の観点からも検討することに留意する。
(4)方策の検討
ハード対策とフト対策を組み合わせて、まちの将来像の実現にむけて③実施する具体的な方策を検討する。検討にあたっては、整備期間や整備効果の発現時期を考慮し、短期対策と中期対策を組み合わせた対策とする。併せて、実施する対策の目標値を設定する。
③ →「向けて」
3.関係者との調整方策
最新の行政の取組みや他の施策に関する助言を得るため、自治体のまちづくり部局や治水部局等あ④の関係者と早期から相談しながら進める。また、地域の住民や事業者には、アンケートやワークショップで意見を徴収することが必要である⑤。⑥ 以上
④ 削除。
⑤ 必要性を示すより、やること(方策)として表現した方が良いでしょう。→「徴収する」
⑥ さらに良くするという視点でみると、調整方策なので関係者協議では「客観的なデータに基づき協議」、住民調整は「一方的な説明ではなく双方向かつ具体的なに調整」といった具合に具体性を持たせると良いでしょう。