技術士としての適格性
【 技術士 二次試験対策 】
口頭試験の試問事項
口頭試験対策って具体的に何をすればいいのかということを考える時、何を出題されるのかを理解しておくことが重要です。技術士 第二次試験実施大綱では、以下の通り口頭試験の試問事項と配点が示されています。
口頭試験の試問ジャンルは、大きく分けて2つです。実務能力は、実務経験証明書や復元論文などから問われることが多いです。この内容は、別の機会に解説していきましょう。今回は、後段の適格性について考えてみます。
適格性は、「技術者倫理」と「継続研さん」に細分されています。技術者倫理は、技術士法や技術士倫理綱領の記載事項を暗記することから始めます。暗記物なので、試験直前までにしっかりと憶えておけばOKです。今の時期に行うタスクを解説していきます。
技術者倫理とは?
もう答えから見ていきましょう。適格性とは、法(3義務2責務)+綱領(10項目)と言って良いと考えます。まずは、3義務2責務についてですが、これは技術士法第44条から第47条の2までの内容になります。端的に述べると以下の項目になります。
<3義務>
① 信用失墜行為の禁止
② 守秘義務
③ 名称表示の場合の義務
<2責務>
① 公益確保の責務
② 資質向上の責務
一方の倫理綱領は、10項目と法に比べたくさんの項目があります。さらに、この倫理綱領は昨年度に変更されていますので、最新の情報をチェックしましょう(「技術士倫理綱領への手引き」が示されています)。具体的な項目は、以下のとおりです。
- 安全・健康・福利の優先
- 持続可能な社会の実現
- 信用の保持
- 有能性の重視
- 真実性の確保
- 公正かつ誠実な履行
- 秘密情報の保護
- 法令等の遵守
- 相互の尊重
- 継続研鑽と人材育成
これらの詳細解説は、過去記事で行っていますのでそちらもチェックしてみてください(過去記事は、コチラ)。今の時期は、項目を暗記するより、これらの内容を深く理解することが重要です。筆記試験の合格を信じて、各項目はどのような意図で定められたのかを学びましょう。
また、具体的な問われ方は、口頭試験FAQを参考にするとイメージしやすいと思いますので、一緒に確認していただければ効果的に学ぶことができます(FAQはコチラ)。また、倫理の質問で悩ましいのが、FAQの質問12にあるような事例を問われるパターンです。このような時事に関する問いは、準備しておかないと回答に詰まってしまいます。
公益確保がされなかった事例
質問12 公益確保がされなかった事例をあげてください。
回答12 1級建築士による構造偽装、旭化成建材の杭データの改ざん、東洋タイヤの免振ゴム偽装問題などが挙げられます。
私が口頭試験を受ける時に準備した内容は、姉歯事件や旭化成建材などです。実際、私が担当していた工事では旭化成建材の杭が使用されており、データ改ざんがないかたくさんの時間をかけてチェックした経験がありました。このため、少々古い事例でしたがその影響をリアルに説明できると考え準備しました。
このように、話題性が小さいものであっても、自分の経験に基づくものであれば、それを回答するべきです。経験が無いという人は、なるべく直近の話題が良いですね。最近の話題を披露できれば、アンテナを高くして行動できる人物という評価を得ることができます。
最近の事件としては、「自動車メーカー等による型式指定に係る不正行為」がありますよね。近年では、大きな問題として国土交通省の報道発表も頻繁に行われていました。また、「自動車の型式指定に係る不正行為の防止に向けた検討会」なるものまで、発足していますので事態は深刻です。
このような事例に目を通しておき、なぜこのようなことが起きたのか、防止するためにはどのような行動が必要なのか、自分自身に当てはめて注意する点はないかといった具合に掘り下げてみると良いでしょう。まさに、この時期だからこそできる情報収集、勉強方法だと思います。
公益確保に反する行為の強制
もう一つだけ、時事問題に関する話題に触れておきましょう。問題の例としては、以下の通りです。このようなケースを想定して、あなたの行動を具体的に尋ねてきます。最近のニュースとともに考えてみましょう。
質問5 もし、上司から公益確保に反することを要求された場合はどうしますか?
回答5 技術者の最優先事項は公益確保です。立場がさらに上の上司などに相談の上、説得を試みます。それでも応じてもらえない場合は、職員課や法務課など他セクションと相談し、公益を確保します。
この質問に対しては、最も強力な最終手段には触れられていません。上記のような手段に訴えても解決できない場合には、公益通報という制度があります。公益通報制度とは、企業などの事業者による一定の違法行為を、労働者・退職後1年以内の退職者・役員が、不正の目的でなく、組織内の通報窓口、権限を有する行政機関や報道機関などに通報することをいいます(詳細は消費者庁のページをチェック)。
この公益通報制度というと兵庫県知事のパワハラの疑いなどを告発する文書をめぐるニュースが思い浮かびます。県が告発文書を作成した元局長を公益通報の保護対象としなかったことから、問題が大きくなっています。このように公益通報制度が適正に運用されなければ、技術者を含め不正に目をつぶってしまう人が多くなってしまうのは明らかです。
パワハラ問題も重要ではありますが、公益の確保を揺るがす本件は、公益確保を堅持しなければならない技術士にとっては、関心の高いニュースと言えます。このような視点で、このニュースを語れれば、口頭試験でも評価されると考えます。
事例の重要性
筆記試験対策において、技術力=具体例ということを再三再四述べてきました。例えば、必須科目において解決策述べる時は、具体例を書きましょうと何度も指摘させていただきました。口頭試験においても、これらの考えは同じだと言えます。
技術者倫理においては、上記のような例示を挙げさせていただきましたが、倫理以外でも実務経験の例、あるいは災害を防止するための対策を問われ、施策や方法論を述べても、それらに対する「事例を知っていますか」といった追撃を受けることが良くあります。
口頭試験対策は、オリジナルのFAQを作ることにつきますが、回答を作成する際には抽象的な事柄に留まらず、具体例を述べられるように準備しておくことが大切です。ガイドラインやに示されている事例や、審議会で議論されている内容に関する先進事例などをチェックすると良いでしょう。
勉強は、実際に筆記試験の合格通知を手にしないと身が入らないと思いますが、このような事例やニュースに目を通すことは関心を持って取り組めると思います。ぜひ、このソワソワ期間でやれることをやりましょう。