添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
建設業は本当に人手不足…
最近、公共事業で多く入札不調が発生しています。その原因は、積算基準が市場価格と乖離し、入札価格と設計価格が合わないことや、単に人手不足で入札参加を見送ったり、辞退したりといったことが挙げられます。最近の物価高騰のスピードは異常ですから、物価高騰の波が収まれば解決するでしょう。
しかし、人手不足については、そうはいきません。生産年齢人口は将来にわたって減り続けるわけですから、もっと深刻な事態になっていくと考えられます。この状況は、建設業に限った話ではなく、社会問題と言えます。その中でも建設業は、他産業より賃金が低く、就労時間も長いため、担い手の確保が困難です。
本当に人気がありません…建設業というだけで社会の落伍者のような目で見る人さえいます(悲しい)。このような事態を受けて、国では「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」令和6年6月14日に公布し、建設業が「地域の守り手」の役割を果たしていけるよう取り組んでいます。
そうは言っても、時間外労働規制も発動し、労働力不足に拍車がかかっています。これに対応しつつ、処遇改善、働き方改革、生産性向上を図り、持続可能な建設業を実現する必要があります。我々が持っている「死ぬまで働け!死んでも働け!」的な建設業界は遠い過去のものになっています。
原価割れ契約の禁止、資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止、適正な労務費等の確保などは当たり前に行うべきことですし、今までまかり通ていたこと自体が憂慮すべきことです。これらへの対応は、異常だったものが普通になるだけなので、これをもって万全と考えていては”甘い”と断罪されてしまいそうです。
また、いくら建設業の魅力を高めたとて、全体のパイは変わらないのですから、他の業界から人を奪ってくるだけです。日本の経済全体で見れば、抜本的な解決になっておらす、成長していくのか疑問です。そんな中、みんなを幸せにする手段があります!
それは、生産性の向上です。数々の問題や解答に登場する生産性向上は、まさに起死回生の救世主になるものです。これらの技術の先頭に立てば、日本経済は不死鳥のようによみがえり、希望溢れる建設業が爆誕すると考えられます。
もちろん、これを実現するためには、ICTやAIといったデジタル技術の導入が不可欠です。そうなると、建設技術者もこれらのスキルをバッチリ身につけなければなりません。知らないことは、怖かったり、億劫だったりしますが、恐れずバンバン新しいことに挑戦しましょう。
将来は、今やっている仕事の倍こなす現実があるかもしれません。今から、その将来をイメージし、自分の能力を倍増、いや3倍増にする方法を考えつくしましょう。生産性は、ただ漫然と過ごしていても上がりません。我々技術者が率先して、生産性を高まった人材となりましょう。
論文
本日の添削LIVEは、投稿者による予想問題「適切な建設工事に向けた環境づくり」をお届けします。これは、前述に記載したは働き方改革に通じる問題となっており、人手不足が顕著な昨今、注目されるテーマの一つと言えます。すでに添削した論文ではありますが、今回は堂々完成(指摘はありますがてにをはです)を迎えております(前回の記事はコチラ)。問題文は、前回の記事に掲載してあるので、みなさん一度確認してから、読んでいただけると良いと思います。それでは早速論文を見ていきましょう。
1.適切に建設工事が実施される環境づくり推進の課題
1.1 次世代への教育訓練
建設業従事者の37%は55歳以上であり、29歳以下の若手人材は12%と少ない。熟練者の大量退職によりその技術が失われ、建設工事の品質が低下する可能性がある。このため、熟練者の技術を次世代の担い手に継承させることが求められている。よって、人材の観点から次世代への教育訓練が課題である。
1.2発注方式の改善
国発注工事の入札の不調不落は平均で10%程度発生しており、事業の遅れに繋がっている。入札者は資材価格上昇等に備えた予備的経費を見積りに計上する一方で、発注者はその詳細を把握するすべが無い。これにより、両者の価格が乖離することが不調不落の要因の1つである。このため、適切な予備的経費を予定価格に反映できる発注方式が求められている①。よって、仕組み面の観点から、発注方式の改善②が課題である。
① 予備的経費は一つの要因にすぎないので、これのみを焦点化することに違和感があります。見積もりと予定価格の乖離をなくすことが求められているのではありませんか。主従が逆になっているように見えます。
→「入札者は資材価格上昇等に備えた予備的経費を見積りに計上するが、発注者の予定価格にこのような経費は計上されないことから、不調不落の要因の1つとなっている。このことから、受発注者間の価格乖離を解消する取り組みが求められている。」
② 価格の話をしているので、積算の話題にも触れておいた方が良いと思います。
→「市場に即した積算手法を含めた発注方式の改善」
1.3 建設工事のDX化
建設業の時間外労働規制の開始に伴い、従来のように労働集約型・長時間労働で工期に間に合わせる働き方はできなくなった。建設業の労働生産性は過去20年で1.1倍程度の成長に留まっており、現状のままではインフラ整備の遅れが懸念される。このため、デジタル技術を活用した資本集約型の働き方に切り替え、生産性を向上することが求められている③。よって、生産性の観点から、建設工事のDX化が課題である。
③ このパラグラフに「生産性」が何度も登場するので、ここでは「デジタル技術を活用した資本集約型の働き方に切り替える必要がある」としてはいかがでしょうか。
2.最重要課題と解決策
私はDXによる生産性の向上が最重要課題と考えた。理由は、DXツールは急速に普及しており、早期の課題解決が可能なためである。以下に解決策を述べる。
2.1 BIM/CIMの活用
フロントローディングを実現し施工時の仕様変更を最小化するために、BIM/CIMを導入する。施工段階での修正設計を生じさせないために、設計時に3Dモデルを活用した鉄筋の干渉やクリアランスのチェックを行う④。⑤関係者間の意思決定を迅速化するために、3Dモデルに時間軸を加えた4Dモデルを作成し、施工上の課題を可視化する。⑥事故発生による工事の停止を防止するために⑦、施工現場をAR空間に再現したデジタルツインを構築し、作業員に危険箇所を教育する。
④ 具体の説明に入っているので、「具体的には」といった接続詞を入れると良いでしょう。また、表現が冗長的です。
→「具体的には、RC構造物を検討に当たり、3Dモデルを活用して鉄筋の干渉やクリアランスのチェックを行うことで、施工段階での修正設計を抑制する。」
⑤ 文脈を明確化するために、接続詞を入れましょう。
→「また、」
⑥ ⑤と同様。
→「さらに、」
⑦ 教育の目的は、工事停止を防止するという目的でなく、事故を防ぐことが一義的な目的ではありませんか。ただし、これを目的にすると少し論点がずれるので、効率的なといった文言を添え、生産性の向上に資する取り組みであることを示唆すると良いでしょう。
→「さらに、労働災害を防止するため、・・・構築し、効果的かつ効率的なKY活動を実施する」
2.2 施工のオートメーション化
土工の生産性を向上するために、施工をオートメーション化する。具体的には、LiDARやGNSSセンサにより取得された現地⑧データを元に、建設機械の運転制御や緊急停止を自律的に行う技術を導入する。⑨従来はオペレータの五感⑩により判断していた操作を、環境認識機能を有したAIで代替することで自律化を実現する。
⑧ 現地データではどのようなデータなのか分かりません。
→「地形」
⑨ →「導入に当たっては、」
⑩ →「感覚」
2.3 新技術の活用による施工管理の省人化
施工管理に必要な人員を減らすために、新技術⑪を活用する。例えば、従来は3人がかりで計測・記録していた配筋検査を、カメラ画像解析で代替する。配筋をステレオ撮影して鉄筋径やピッチを自動計測する技術であり⑫、1名での対応が可能になる。
⑪ 新技術では、さすがに抽象的です。
→「画像解析技術」
⑫ 効果を説明しているので、要因として書いた方が良いでしょう。
→「できるため」
3.新たに生じうるリスクと対策
3.1 新たなリスク
DXにあたっては民間のクラウド等の共通基盤を使用している。民間のクラウドサービスに障害が発生すると、工事の遅延や事故が発生するリスクがある。
3.2 対策
複数のクラウドにシステムを導入し、障害発生時には切り替えることでリダンダンシーを確保する。また、BCPを策定し、安全面に関わる重要業務はアナログ手法で対応できるようにマニュアル整備を行うとともに、定期的な⑬訓練を実施する。
⑬ →「に」
4.業務遂行に必要な要点・留意点
技術者倫理の観点からは、公衆の安全、健康及び福利を最優先に業務を遂行することが必要な要点である。留意点として、生産性の向上を目指すあまり、安全性を犠牲にすることがないように、組織内や社外関係者への教育を徹底する。
社会の持続可能性の観点からは、環境、経済及び社会に及ぼす負の影響の最小化が必要な要点である。留意点として、建設機械にGX建機を採用し、CO2排出量削減に努める。また、生産性向上により得られた利益は人や社会に還元し、地域経済の発展に努める。以上
とても良く修正されています。この構文が身に付けば、一定水準の論文をいつでも、どのようなパターンでも書くことができると思います。すばらしい。