自分という技術者をどう社会に提示するか
【 技術士 二次試験対策 】
回答作成の本質
前回の質問作成編に続き、今回は解答作成編です(前回はコチラ)。口頭試験の回答作成とは、単なる「正解探し」ではなく、「自分の技術者としての姿勢・価値観・責任感を言語化する作業」です。つまり、与えられた問いに対して「何を知っているか」だけでなく、「どう考え、どう行動し、どのように社会に貢献してきたか/していくか」を、自分の言葉で語ることが求められます。
そのためには、以下のような視点が重要です。
- 自分の実務経験を通じて得た学びや信念を、論理的かつ具体的に語ること
- 技術士としての倫理観や社会的責任を、自らの行動と結びつけて説明すること
- 制度や技術の知識を、単なる暗記ではなく「自分の業務にどう活かしているか」の視点で語ること
- 将来に向けた展望や成長意欲を、現実的かつ前向きに表現すること
このように、口頭試験の回答は「自分という技術者をどう社会に提示するか」というプレゼンテーションでもあります。だからこそ、準備の段階で「自分は何を大切にしてきたか」「どんな技術者でありたいか」を深く掘り下げることで、最終的に説得力ある回答につなげましょう。
回答作成の基本的な心構え
① 回答は「語る」ものであり「暗記」ではない
口頭試験は、筆記試験とは異なり、対話形式で進行します。したがって、回答は「自然な言葉で語る」ことが重要です。丸暗記した文章をそのまま話すと、棒読みになり、試験官に「本質的な理解がない」と判断される恐れがあります。
② 「技術士としての資質」を意識する
技術士口頭試験では、以下のような資質が評価されます:
- 実務能力(課題解決力、マネジメント力、リーダーシップ)
- 技術者倫理(公益確保、守秘義務、法令遵守)
- 継続研鑽(CPD活動、自己成長意欲)
- コミュニケーション能力(説明力、論理性)
これらの観点を意識して回答を構成することが重要です。
PREP法を活用する
PREPとは、以下の頭文字を取った構成法です:
- P(Point):結論を述べる
- R(Reason):理由を説明する
- E(Example):具体例を挙げる
- P(Point):再度結論で締める
この構成を用いることで、論理的かつ簡潔な回答が可能になります。
例:「なぜ技術士資格を取得しようと思ったのですか?」
私が技術士資格を目指した理由は、社会に対してより責任ある立場で貢献したいと考えたからです(P)。
技術士は、公益確保や倫理的判断が求められる立場であり、単なる技術力だけでは務まりません(R)。
実際、私は過去に地域住民との合意形成に苦労した経験があり、その際に「社会的責任を果たす技術者」の必要性を痛感しました(E)。
したがって、私は技術士として、より高い倫理観と説明責任を持って業務にあたりたいと考えています(P)。
質問のタイプ別に見る注意点
① 倫理・法令に関する質問
- 技術士法第45条(信頼失墜行為の禁止)や技術士倫理要領の10項目を正確に理解しておく。
- 実務における倫理的判断の経験を交えて語る。
注意点:
- 単なる条文の暗唱ではなく、「なぜその倫理が重要か」「どう実践しているか」を語る。
- 守秘義務や利益相反など、実際に直面したジレンマを例に挙げると説得力が増す。
② 実務経験に関する質問
- 経歴票に記載した業務内容と整合性のある回答を行う。
- 「課題→対応→成果」の流れで説明する。
注意点:
- 技術的な専門用語は必要に応じて簡潔に説明する(試験官は専門外の可能性あり)。
- チームでの役割やリーダーシップの発揮など、個人の貢献を明確にする。
③ 制度理解に関する質問
- 技術士制度の目的(技術の向上と公益の確保)を理解しておく。
- CPD(継続研鑽)や登録更新制度についても説明できるようにする。
注意点:
- 制度の説明に終始せず、「自分がどう制度を活用しているか」を語る。
- 例:「私は年に3回以上、専門分野の研修に参加し、CPD記録を継続的に更新しています。」
④ 社会的課題に関する質問
- 持続可能性、防災、地域課題、カーボンニュートラルなど、社会的テーマに対する自分の見解を持つ。
- 専門分野と社会課題をどう結びつけるかが問われる。
注意点:
- 抽象的な理想論ではなく、具体的な技術的アプローチを交えて語る。
- 例:「私の専門であるインフラ整備においては、LCC(ライフサイクルコスト)を考慮した設計が持続可能性に寄与すると考えています。」
⑤ 将来展望に関する質問
- 技術士取得後の活動計画、後進育成、地域貢献などを語る。
- 自己の成長意欲と社会的使命感を表現する。
注意点:
- 「資格取得がゴール」ではなく、「スタートである」ことを強調する。
- 例:「今後は、若手技術者の育成にも力を入れ、技術の継承と地域貢献を両立させたいと考えています。」
表現上の注意点
① 話し言葉で自然に
- 書き言葉ではなく、口頭で話すことを前提とした自然な表現を心がける。
- 長文にならず、1文1意で簡潔に。
② 主語と結論を明確に
- 「私は~と考えます」「この業務では~を重視しました」など、主語を明確にする。
- 結論を先に述べることで、試験官に伝わりやすくなる。
③ 自信と謙虚さのバランス
- 自分の経験や考えに自信を持って語る一方で、「まだ学ぶべきことがある」という姿勢も忘れない。
- 例:「この経験を通じて、技術者としての責任の重さを痛感しました。今後も継続的に学び続けたいと考えています。」
実践的な準備方法
① 想定質問と回答を50問以上用意する
- 技術士-IndexのFAQにある質問をベースに、自分の経歴や専門に即した質問を追加。
- 回答はPREP法で構成し、1問あたり1~2分で話せる長さに調整。
② 模擬面接を繰り返す
- 録音して聞き返す、同僚や家族に聞いてもらうなどして、表現や話し方を改善。
- 「分かりやすかったか」「説得力があったか」などのフィードバックを得る。
③ 表情・姿勢・声のトーンにも注意
- 技術士としての「信頼感」を与える態度が求められる。
- 姿勢を正し、落ち着いた声で、目線を合わせて話す練習をする。
よくある失敗とその対策
失敗① 回答が長すぎて要点がぼやける
対策:PREP法で1分以内にまとめる練習をする
失敗② 専門用語が多くて伝わらない
一般的な言葉に言い換える、簡潔に説明する
失敗③ 経歴と回答が一致しない
経歴票をもとに質問と回答を整合させる
失敗④ 倫理や制度の理解が浅い
技術士法・倫理要領・CPD制度を再確認する