添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
地震大国日本を守る
令和6年1月1日に発生した能登半島地震から、すでに2年が経過しました。しかし、復旧・復興は依然として道半ばであり、住まいの再建が困難な世帯は令和7年末時点でなお3,055戸に上ります。巨大地震からの復旧には長い時間を要し、被災者の負担は想像をはるかに超えるものがあります。
地震災害における死因の多くは圧死であり、その主因は旧耐震基準で建てられた建物の倒壊と考えられています。このことからも、民間建築物の耐震化を一層促進する必要があります。しかし、民有施設は所有者の経済状況に左右されるため、耐震化は一朝一夕には進みません。
耐震化促進策としてまず想起されるのは補助金などの公的支援ですが、技術者として検討すべき制度設計はそれだけではありません。近年の技術士試験でも「投入できる人員や予算に限りがあることを前提に」と条件付けされることが多く、補助金頼みの解答では説得力に欠けます。
私たち技術者には、専門分野ごとに多様なアプローチが可能です。低コスト工法の開発・普及、環境対策と耐震化を組み合わせたシナジー創出、インパクト投資による技術開発支援など、取り組める領域は幅広く存在します。災害対策を常に意識し、日々の業務に落とし込めないか知恵を絞る姿勢こそが重要です。
これらの思考は、技術士試験対策にも直結します。国がどのような施策を進めているのか、自分の専門分野ではどのような取り組みが可能かといった知見を広げることが不可欠です。特に技術士試験では、独自の発想よりも「国の方針を踏まえた回答」が求められる点に留意しましょう。
複合災害×GI
本日の添削LIVEでは、能登半島地震の復旧が進む中で発生した奥能登豪雨という“複合災害”を、どのように対策していくべきかをテーマに扱います。これに対し、グリーンインフラの視点からアプローチするという、非常に高度な問題設定です。限られた条件下で課題を整理し、実効性のある施策を提案することが求められます。複合災害への理解を深めたい方、技術士試験で応用力を磨きたい方にとって、大いに学びのある内容です。果敢に挑戦した論文ですので、ぜひご一読ください(問題はコチラ)。
1.多面的な課題とその観点
(1)防災・減災機能の強化
複数の災害が同時に発生すると、被害の複雑化、広範囲への影響が懸念①される。また、交通網やライフラインが複数の災害で同時に被害を受けると、救助・復旧活動が困難になり、被災者への影響が長期化する問題②がある。対策としては、複合災害への自然の多面的な機能強化対策が重要である③。よって、機能面の観点から、防災・減災機能の強化が課題④である。
① 被害の複雑化とはどういうことでしょうか。また、このような複合災害の特徴は、問題に書かれています。
② これも①と同じです。「複合災害は、被害の激化のみならず、広域化、長期化が懸念される」とありますから、このような記述は問題をなぞっているだけに見えます。
③ ここは、課題を書くパートであり、対策を書くところではありません。また、「対策としては、・・・対策が重要」とねじれており、「複合災害への自然の多面的な機能強化対策」との表現も何が言いたいことなのかよく分かりません。端的に表現しましょう。
④ 機能面の観点がどのような観点なのか分かりづらいうえ、機能面の観点から機能強化では同じことが繰り返し述べられているように見えます。観点は、課題のジャンルといったイメージで書くと良いでしょう。また、何を機能強化するのかも分からず、総論として防災減災対策をするでは解答にならないのではないでしょうか。これでは、「おいしく料理を作るための課題は」と聞かれているのに「おいしく作ることが課題です」と答えているようなものです。
(2)官民学連携の促進
近年、自然の減少やCO2の増加⑤が原因と考えられる異常気象が頻発している。この異常気象に関連する水害の頻発化、猛暑により、災害時において避難者の熱中症等の健康被害など様々な悪影響⑥を及ぼしている。対策として⑦、関係機関による緑化の推進や新技術の活用など分野横断的な取り組みが必要である。よって、体制面の観点から、官民学連携の促進が課題⑧である。
⑤ レベル感の違うものが並列になっています。自然の減少はCO2の増加要因であり、CO2の増加で地球温暖化、この温暖化で異常気象が発生という仕組みです。自然の減少と並列の関係にあるのは、化石燃料の使用などが考えられます。
⑥ 等、など、様々と同じような表現が繰り返されています。端的な表現を心掛けましょう。
⑦ ③と同じ。
⑧ 前段では分野横断の必要性を述べているにもかかわらず、官民学連携が課題になっています。横断的取り組みと官民学連携を同一視していませんか。一方は異なる分野、一方は異なる団体となっており不整合です。
(3)森林管理の担い手確保
森林はCO2の吸収や土砂災害の防止機能を有しており、国土管理上⑨重要な役割を果たしている。しかし、人口減少・少子高齢化を背景とした森林保全の担い手不足により、適切な管理ができず重要な機能が損なわれつつある。このような状況の中、森林の保全に精通した人材の確保が急務である⑩。よって、人材面の観点から森林管理の担い手確保が課題である。
⑨ 国土管理とするよりも、題意は複合災害の防止ですから、この役割・効果を明記すべきではないでしょうか。
⑩ 「しかし」以降、課題を含め同じことを何度も説明しているように見えます。例えば、①森林には災害防止機能あり→②しかし森林が荒廃・減少→③森林保全活動の促進が必要→④人材確保といった文章構成が考えられます。
2.最も重要な課題と解決策
グリーンインフラ(以下、GI)による防災・減災機能の強化は人命被害を最小限にす一番の手段とと考えるため⑪、「防災・減災機能の強化」を最も重要な課題に選定し、解決策を示す。
⑪ →「・・・する一番の手段と考えるため」
題意は複合災害対策の推進なのですから、どの課題も人命被害に通じています。なぜ最小限になるのか、なぜ一番の手段なのかといったことを記述しないと、「重要」の言い換えにすぎません。
(1)グリーンインフラによる「いのちまち」創出
甚大化する自然災害に対し、安全・安心な暮らしの確保とリスクを最小化するため⑫、自然環境を活かし生活基盤を整備する⑬。整備にあたっては、森林地帯がもつ土砂流出効果を活用するとともに、情報基盤の構築、気候変動予測のダウンスケーリング、リモートセンシング技術開発等を行う⑭。衛星観測データから将来の予測シミュレーションで河川増水を予測し、避難を促す⑮。降雨の変化傾向について解析技術革新の基盤をつくり⑯、気候変動適応策により、複合災害から身を守る。
⑫ これを防災・減災対策というのではありませんか。目的は、もっと踏み込んで書かないと当たり前になってしまいます。
⑬ 「生活基盤」とは、人々が安定した生活を送るために不可欠な基礎となる要素、施設、または設備のことを指します。具体的には、電気、ガス、水道、交通機関、通信網、公共施設などです。この生活基盤を整備するにあたって、自然環境を生かすとは一体どのようなことなのでしょうか。
⑭ 何が言いたいのか全く分かりません。意図の分からない例示が、総花的に書かれており、自然環境がどのように生かされているのか、そもそも何を整備するのか不明確で、支離滅裂に見えます。
⑮ これもなぜ衛星の話やシミュレーションの話をしているのですか。自然環境はどこへ行ってしまったのですか。
⑯ 生活基盤が解析技術基盤になっていますね。主張に移管性もなければ、結局何が言いたいのかもさっぱり分かりません。一度、考えを整理しましょう。
(2)「首都圏グリーンインフラ戦略計画」
首都直下地震が30 年以内に起こる確率は、70%程度と予想され、台風・豪雨・地震等の複合災害が生じる可能性は高い⑰。高密住居、都市型水害に対し⑱、首都圏での対策⑲を行う。具体的には、役所⑳・住民が協働により、公共施設、道路の透水性の改良、住宅地の間地の緑化を行い、地域全体で雨水を受け止める構造へ転換させる㉑。GIマップ㉒を災害時シミュレーション分析に活用し㉓、都市型水害の緩和効果を図る㉔。また、水循環の回復㉕は、生物多様性の回復にも大きく寄与し、都市気象㉖の緩和の波及効果が期待できる。
⑰ ここは解決策を書くところなので、災害の予想や可能性を示すのではなく、その災害に対し設定した課題である防災・減災機能の強化を行うための方法を書きましょう。さらに、首都直下地震と災害を限定していることも違和感があります。一般化された複合災害に対する解決策であるべきです。
⑱ 高密住宅とは何ですか。高気密住宅にも見えますし、密集市街地にも見えます。紛れのない正しい表現に努めましょう。また、地震の話をしていたのに、都市水害の話題に急に変わっているように見えます。さらに、なぜ地震対策はせずに水害対策なのだろうという疑問も生じます。論点が不明確です。
⑲ ⑱と同様、特定地域のみの解決策が解答としてふさわしいか疑義があります。
⑳ →「自治体」または「行政」
㉑ 公共施設は緑化を行うのでしょうか。間に道路の話題が入っており、公共施設で何をするのか判然としません。雨水を受け止める構造とは何が言いたいのかもよく分かりません。また、道路の透水性の改良も分かりづらい表現ですし、そもそも透水性舗装を住民と協働で行えるのかという疑義もあります。思いついたことを思いついたまま書いても伝わらないです。思考とは整理することです。きちんと整理してから記述しましょう。
㉒ これは何ですか。
㉓ これも何の説明もなく、何をシミュレーションするのかよく分かりません。当然ながら、何を目的とし、どのように活用するのかも分かりません。
㉔ この場合の効果は図るものでなく、測定するものです。
㉕ 水循環の説明がありません。
㉖ これは何ですか。
(3)沿岸低平地の「多重防御グリーンインフラ」
東日本大震災のように、沿岸低平地は津波発生時の影響が大きく、堤防が決壊すると住宅や道路への影響が大きく、災害後の復旧・復興に多大な時間と労力が生じる㉗。地震・津波・高潮等の巨大災害㉘に対しレジリエントに対応可能な多重防御を推進する。具体的には、堤防・海岸林・潟湖・水路等の自然立地㉙を活用し津波や洪水の勢いを減じるなど防災・減災の効果がある㉚。また、砂浜や防潮林を整備し、生物の生息・生育や字クリエーション㉛や地域住民の憩いの場となり、地域の活性化を促進する㉜。
㉗ ⑰と同様、津波の説明をするのではなく、津波に対する防災・減災機能の強化を図る方法を書きましょう。
㉘ 結局災害全般の話になっています。なぜ津波の話をしたのか意図が分かりません。
㉙ 「自然立地」とは、地形、気候、水資源、植生などの自然環境を基盤として、土地利用を計画する考え方です。堤防や水路は自然ではありません。
㉚ 主語がありません。
㉛ →「リクリエーション」
㉜ なぜ地域活性化の話をしているのでしょうか。
3.新たに生じうるリスクと対応策
上記の解決策には多大な設備投資が必要㉝となるため、資金調達ができずグリーンインフラ化が遅延・停滞するリスク㉞が生じる。対応策として、ESG投資の普及促進があげられる。ESG投資は環境という社会的インパクトが投資家に評価されるため、環境に寄与する設備投資に対して資金調達が容易となる㉟。
㉝ 上記の解決策の中でいう設備投資が何なのか判然としません。
㉞ グリーンインフラ化とは何ですか。グリーンインフラとは、自然環境が有する多様な機能を社会の様々な課題解決に活用しようとする考え方です。用語は正しく理解したうえ用いましょう。また、資金調達も誰の資金なのかもよく分かりません。
㉟ ESG投資の説明をするのではなく、どうやって普及促進するのかを書きましょう。
4.業務遂行上必要となる要点・留意点
業務にあたっては、常に社会全体における公益を確保する観点と、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける観点を持つ必要がある。業務の各段階で常にこれらを意識するよう留意する。 -以上-


