添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
添削から見える攻略ポイント
筆記試験前後は、最も文章構成力を求められる必須科目Ⅰや選択科目Ⅲを中心に投稿を紹介してきましたが、次なるハードル選択科目Ⅱー2の解法ポイントを説明したいと思います。今回の投稿論文「施工計画の条件変更」(令和6年建設部門鋼構造及びコンクリート選択科目Ⅱ-2-1 問題はコチラ)から見えるポイントを整理してみました。
1 設問の本質を正しく捉えましょう
この設問では「条件変更に伴う構造安全性の再検討」が求められています。つまり、変更された条件が構造物にどのような影響を与えるのか、それに対してどのように安全性を確保するかを論じることが重要です。条件変更そのものを目的化してしまうと、論点がずれてしまいますので注意が必要です。
2 条件変更の背景を明確にしましょう
条件変更は、業務の途中で合理的に発生したものである必要があります。例えば、発注者からの要請や現場条件の変化など、背景が明確であれば論述に説得力が生まれます。また、変更内容は一貫して論文全体に反映させることが大切です。途中で論点がぶれてしまうと、読み手に混乱を与えてしまいます。
3 調査・検討事項は技術的視点で整理しましょう
調査や検討といった言葉は、目的と手段を明確に区別して使うようにしましょう。構造安全性に関わる技術的な要素(応力、たわみ、耐震性、品質管理など)に焦点を当て、なぜそれを調べるのか、どう活用するのかを丁寧に説明すると良いです。専門科目の技術的な視点をしっかり盛り込むことが評価につながります。
4 業務手順と工夫点は論理的に構成しましょう
業務手順は、調査→解析→施工計画→安全評価といった流れで整理すると、読み手にとって理解しやすくなります。工夫点については、標準的な方法との差異や、より高い安全性・効率性を実現するための具体的な取り組みを示すと効果的です。「なぜその工夫が必要なのか」という理由づけも忘れずに添えてください。
5 用語と表現は統一し、丁寧に仕上げましょう
論文では、用語の統一がとても大切です。「工期短縮」と「工程短縮」、「延伸」と「増大」など、意味が同じであれば表現を揃えることで、読みやすさと信頼性が高まります。また、冗長な表現や重複は避け、簡潔で論理的な文章を心がけましょう。
6 技術士としての視点を忘れずに
技術士は、社会的要請に応えながら、技術的合理性と安全性を両立させる役割を担っています。論文では、そうした姿勢を示すことが重要です。設問との整合性を常に意識しながら、論述全体が「構造安全性の再検討」という目的に向かっているかを確認してみてください。
「施工計画の条件変更」初稿
1.調査、検討すべき事項
対象構造物を片持張出架設工法で架設するプレストレストコンクリート(PC)橋とし、現地状況は周交通量の多い国道が存在し、工事の社会的影響度が高い①。条件変更点は交通規制による影響を最小化した工期短縮化②である。以下に調査・検討すべき事項を示す。
① 国道はどこに存在しているのでしょうか。対象構造物は国道の橋梁なのか、対象構造物に近接、接しているのかといった情報が必要ではないでしょうか。
② 交通規制の影響を小さくするという目的は、設計時点で検討すべき事項であって、業務が進む過程で発生する条件変更として違和感があります。業務過程なので、例えば「PC桁の製作には不測の時間を要することが判明した」といった条件変更を設定し、その対応策として工期短縮を図るというストーリーなどが考えられます。
(1)架設ブロック長の最適化と構造解析: クリティカルとなる架設期間短縮に向け、過去の類似橋梁を調査する③。ブロック長延伸による④施工時応力、たわみ、支点反力の変化を3次元FEM解析で検討⑤し、限界状態設計に基づき構造安全性を評価⑥する。
③ 類似橋梁の何を調査するのでしょうか。調査項目を明確にしましょう。また、工期短縮の検討ステップがないまま、架設期間を短縮といった結果が前提となっていることも違和感があります。
④ これも同様にブロック長延伸ありきであることに違和感があります。このような、論述展開をしたい場合は、最初の設定であらかじめブロック長の延伸を変更条件にすべきでしょう。
⑤ 調査・検討すべき事項を聞かれているので、手段まで書く必要はないと思います(手順で書くべき)。
⑥ 安全性を確保するための調査・検討事項ですから、不要です。また、手段については⑤と同様。
(2)架設時安全性の検討:ブロック長増大に伴う移動作業車の偏荷重増加に対し⑦、架設時安定性を再検討する。機材が大型化するため、耐風・耐震対策に留意し、支持梁やアンカーの補強などの安全対策を検討する⑧。
⑦ 「増大に伴う」というより、「増大するため」ではないでしょうか。また、前述は、「延伸」でここでは「増大」となっています。荷重の話なので、ブロックの死荷重が増えるという意味で意図的に変えているのですかね。意図がないなら統一し、あるならブロック長の増大ではなく、ブロック荷重の増大とすべきでしょう。
⑧ 「・・・対策に留意し・・・対策を検討・・・」との表現に違和感があります。耐風・耐震対策が安全対策そのものなのではありませんか。→「機材の大型化に対応するため、支持梁やアンカーの補強など耐風・耐震対策を検討する」
(3)品質管理計画の検討:工程短縮に対応するため、高強度コンクリート(50N/mm²以上)の早期強度発現性、養生期間の短縮化を検討する。温度ひび割れ抑制のため、ひび割れ指数1.0以上とする配合計画に留意する⑨。
⑨ これは留意点なので、手順で書きましょう。
2.業務手順と留意、工夫を要する点
(1)条件変更に伴う影響範囲の特定:条件変更の構造安全性への影響を施工段階別に整理する。例えば、張出架設時はブロック長増加によるクリープ・乾燥収縮増大がプレストレス損失と耐荷力低下を招くため、実測データのCEB-FIPモデルによるクリープ予測に基づき、次ブロックのキャンバーを逐次修正し、工夫する⑩。
⑩ 例示なのか、工夫点なのか判然としません。聞かれていることは、工夫点ですから、「例えば」は不要です。例示ではなく、設定した状況に即して記載すれば良いと思います。
→「工夫点としては、・・・修正する」
ただし、この修正をしたとしても、内容的に問題があります。これは、施工段階別に整理する際の工夫点ではなく、施工段階の一つの影響を示しているものにすぎません。接続詞にあるとおり例示になっています。整理する上での工夫点・留意点を書きましょう。
(3)施工計画の最適化:構造解析結果に基づき、クリティカルパスを見直した工程短縮化を図る⑭施工計画を策定する。プレキャスト部材の活用、大型架設機械の導入、多軸移動台車の利用など、効率的な施工方法を工夫する⑮。VR・AR技術を活用した施工シミュレーションを行い、干渉チェックや作業効率の向上に留意する⑯。⑰
⑭ 構造解析は、工期短縮を図ることを目的とするのではなく、安全を確保するために実施するのではありませんか。
⑮ 「施工方法を工夫する」といった表現に違和感があります。また、工期短縮は、ブロック長の変更を持って行うと言っているにも関わらず、ここで数多の手段を明示することを工夫点とすることも、一貫性に欠けているように感じます。
⑯ これこそ工夫点ではありませんか。
⑰ ステップが少ないように感じます。一般論として考えた場合でも、調査→構造解析→施工方法(仮設含む)→安全・品質・コストの検討→施工計画の変更といったステップが考えられます。また、前項の調査・検討がどのステップで行われるのかについても判然としません。
3.関係者との調整方策
(1)3者会議の開催:発注者、設計者、施工者の利害関係者⑱に対して、計画変更による問題点を共有するため、定期的な会議を設ける。これにより、情報の透明性が確保され、迅速な意思決定や問題解決が可能⑲となる。
⑱ 利害関係者という表現が気になります。工事目的物の品質確保に関係する人たちではありませんか。
⑲ 情報の透明性とは、情報が誰にでも容易に見える状態、またはアクセスできる状態を指します。これは透明性ではなく、前述にあるように単に情報共有の結果ではありませんか。
(2)工程表の共有:工期短縮を確実に進めるため、バックワードスケジュールで工程表を作成しマイルストーンを設定する。工程表はクラウドで進捗状況をリアルタイム共有し、計画変更に伴う工程遅延を防止する⑳。
⑳ これは工程管理の話であり、関係者との調整方策ではないですね。
(3)地域住民への情報提供:地元住民や道路利用者に対して、進捗状況や交通規制情報を定期的に発信する。また、意見交換会を開催して懸念事項に対応することで合意形成を図り、社会的影響の最小化を図る㉑。以上
㉑ この行動が、なぜ効率的、効果的な業務進捗に関係するのか分かりません。記述においても、社会的影響の最小化を目的としてしまっていますから、論点がずれていることを宣言しているようなものです。
「施工計画の条件変更」チェックバック①
1.PC橋の施工計画変更における調査、検討事項
対象構造物は都市部の国道上に架かる片持張出工法によるPC橋である。条件変更点は発注者の工期短縮要請により①、当初計画から30日の工程短縮が必要な点である②。以下に調査・検討すべき事項を示す。
① 要請された理由を書く必要があります。理由がないと、発注者が不当な要求をしているように見えます。
② 「変更点は・・・点である。」、「工期短縮要請により・・・工程短縮が必要」との表現は重複表現ですね。また、工期短縮、工程短縮と使用している用語がゆれています。同じ意味なら、統一しないと読み手は混乱します。
(1)工程短縮対策の検討:全体工事に占める工種構成を調査③し、最も有効な工程短縮方法を検討④する。具体的には、片持架設工が主要となる過去事例の、施工方法や工事日数を調査し、工程短縮方法を検討⑤する。
③ 施工しているのですから、工種は把握しているのではありませんか。
④ 工期短縮するのですから、工期短縮方法を検討するのは当たり前です。また、工程検討に当たっては、クリティカルパスを見直すといった対応となり、どうしても施工計画よりの記述になってしまいます。これでは、鋼構造及びコンクリートといった専門技術の視点が不足してしまうのではないでしょうか。条件変更の設定があまり良くないのだと思います。
⑤ 施工しているにもかかわらず、施工方法や工事日数を今さら調べるのですか。把握していて当然の内容ですし、これを調べてなぜ工程短縮方法を検討できるのかも分かりません。計画している施工方法以外の工法を調査するということなのでしょうか。
(2)構造安全性の検討:施工方法の変更による断面力を調査⑥し、必要なPC緊張力を検討⑦する。また、片持架設中は不安定な構造状態になるため、片持部の先端たわみを調査⑧し、耐震化(レベル2地震動)を検討⑨する。
⑥ どんな施工方法になるのかも分からないのに、断面力を調査するとはどういうことなのでしょうか。
⑦ 断面力は調査で引張力は検討なのですか。必要な断面力が分かれば、あとは算出すれば良いのではありませんか。検討とは、どのような行動を指しているのでしょうか。
⑧ これも調査項目なのでしょうか。これも算出ではありませんか。
⑨ これは施工中の安定性という意味での耐震化ですか。それとも、架設後の話ですか。それ以前の問題として、変更点は工期が短くなったという条件設定しかないにもかかわらず、何をするか分からない施工方法の変更を前提とした調査・検討項目を説明すること自体、違和感しかありません。
(3)品質管理計画の検討:施工方法変更によるマスコンクリートの温度応力や充填性を調査し、ひび割れ抑制対策や打設方法を検討する⑩。また、施工時期や緊張導入強度を調査し、高強度コンクリート(50N/mm²以上)の早期強度発現性、養生期間の短縮化を検討する。
⑩ なぜマスコンの話になっているのか理解できません。結局これも、変更する施工方法が分からないのに、その変更方法に伴う調査検討方法を説明されても、なんでこの話をしているのかすら理解できません。調査・検討項目については、これに尽きます。
2.業務手順と留意、工夫を要する点
(1)工程計画の見直し:変更工程はクリティカルパスに留意し、サイクル施工⑪となる架設作業を見直す。工夫点は、ブロック(BL)長を延長(4m→5m)し、総BL数を削減(12BL→8BL)することで短縮する⑫。架設の短縮日数は1BL、10日短縮できると考え、40日とする⑬。
⑪ サイクル施工とは、建設現場における安全衛生管理を効率的に行うための取り組みです。クリティカルパス上の作業を見直すことを言っているのですかね。よく分かりません。
⑫ これは、工夫点でなく工程短縮手法そのものではありませんか。
⑬ 工夫点なのか、留意点なのか、説明の意図すら分かりません。
(2)構造解析:BL長延長に伴う架設時応力・たわみを考慮したFEM解析を実施し、施工段階の安全性を確認する⑭。工夫点として、材料物性値(単位重量・弾性係数)は実配合の試験値を用いる。架設時応力・たわみは3次元モデルを活用し、コンター図により可視化する⑮。
⑭ 工期を短くするという条件がいつの間にかBL長延長が変更点になっているように見えます。論点と構成を再度見直す必要があります。
⑮ 説得力を高まるため、留意する理由、工夫する目的を添えた方がよいでしょう。例えば、「工夫点は、〇〇するため、・・・する」といった具合になります。
(3)安全・品質・コスト(SQC)の検討:施工コスト削減のため、変更に伴うSQCの費用対効果を整理する⑯。その際、都市部での橋梁架設であるため、労働・公衆災害といった安全性や第三者影響度に留意する。
⑯ 工期短縮とどのような関係にあるのでしょうか。費用対効果がなければ、別の方法を検討するということですか。なぜこの手順が必要なのかよく分かりません。
(4)施工計画の見直し:BL長延長に伴う作業量増加に対応するため、人員・機材計画を見直す⑱。工夫点として、BIM/CIM活用により、作業手順最適化と干渉確認を行う。また、高流動コンクリート(スランプフロー60cm)の採用により、締固め作業効率化を図る。
⑰ 見出しと異なります。手順のすべてに言えることですが、題意は「変更(工期短縮)に対す構造物の安全性を再検討する手順」です。工期短縮を図る手段でもなければ、費用対効果でもありません。同様に、「作業量増加に対応するため」ではなく、題意を踏まえると安全性の確保であるべきです。さらに「構造物の」とありますから、耐荷重性、耐震性、耐久性、地盤の安定性などへのアプローチが必要なのではありませんか。題意を外していると感じます。
3.関係者との調整方策
(1)3者体制の構築:発注者、設計者、施工者による3者会議を開催し、工程短縮に伴う課題を共有・解決する。構造解析はファストトラック方式を採用し、設計・施工の並行実施により意思決定を迅速化⑱する。
(2)情報共有システムの活用:計画変更により、反力増大に伴い支承大型化・製作長期化となる⑲。そのため、支承メーカーと最新図面や工程表をクラウド上で共有し、納期調整の効率化を図り、遅延リスクを低減⑳する。
(3)地域住民への情報提供:円滑な工事進行のため、地元住民や道路利用者に対して、進捗状況や交通規制情報を定期的に発信する。 以上
⑱ これは工期短縮の手法であって、関係者の調整方策なのか疑義があります。さらに、なぜ意思決定が迅速化されるのかも理解できません。
⑲ 計画変更とは何ですか。BL長延長のことですかね。そうであるなら、一方で工期短縮ができると言っていながら、もう一方では伸びてしまうような記述では、結局どちらなのかといった疑問が生じ読み手は混乱します。
⑳ この図面の共有という手段が調整の円滑かにどれだけの効果があるのでしょうか。メールで送るのとさほど変わらないと思いますし、この短縮で制作の長期化を回復できるのか甚だ疑問です。