添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
デジタル技術を活用したストック活用論文を徹底解剖
今回の添削LIVEは、以前お届けした「デジタル技術を活用したストック活用」が苦労の末、ようやく完成を迎えております(前回の記事はコチラ)。良くできた論文なので、力説しながら、出題者の意図・論理構成・高得点答案の書き方を完全解説 していきます。
技術士第二次試験の論文は、単なる文章力ではなく、「技術者としての思考の深さ」が問われます。だからこそ、多くの受験生が悩みます。
「どこまで具体的に書けばいいのか」
「抽象的と言われるけれど、どう直せばいいのか」
「出題者は何を評価しているのか」
こうした悩みは、誰もが通る道です。
しかし安心してください。論文には“型”があります。そして今回取り上げる答案は、その“型”を理解するうえで極めて価値の高い教材です。
この記事では、あなたが合格答案を書くために必要なすべてを体系的に解説します。
読み終える頃には、論文の見え方が変わり、「自分にも書ける」という実感が湧いてくるはずです。
この答案の「すばらしさ」
まず、この答案が持つ強みを整理します。
受験生の皆さんが「こう書けば評価されるのか」と理解できるポイントが詰まっています。
① 課題の選定が明確で、論文全体の軸がぶれない
答案では冒頭で、「いかに高度化の仕組みをつくるか」を最も重要な課題に選定し…と宣言しています。技術士論文では、課題の選定=論文の軸です。ここが曖昧だと、どれだけ文章が上手でも評価されません。
この答案は、自治体格差という社会的背景、DXの必要性を踏まえて課題を選んでおり、非常に論理的です。
② 解決策が「巡回・監視・データ管理」の3本柱で整理されている
この構成は秀逸です。なぜなら、インフラ維持管理の業務プロセスを 上流から下流まで網羅しているからです。
・巡回(現場の情報収集)
・監視(リアルタイムの異常検知)
・データ管理(統合・分析)
この3つを押さえることで、論文に「体系性」が生まれます。
③ 実務に根ざした具体例が豊富
例えば、
「住民が損傷を撮影し、位置情報と共に行政へ通報できる仕組み」
これは実際に多くの自治体で導入されている仕組みで、読んだ瞬間に「現場を知っている」と伝わります。技術士論文では、具体例の有無が合否を左右します。
この答案はその点で非常に優れています。
④ リスクと留意点まで踏み込んでいる
技術士として最も大切なのは、
「技術の限界を理解し、安全を守る姿勢」です。
答案では、
「システム依存により技術者の判断機会が減少し、若手の技術力が低下する」
とリスクを指摘し、さらに
「現地確認に基づくデータ検証を定期的に行う」
と対策まで書いています。
これは技術士としての成熟度を示す重要な記述です。
参考にすべき「論理構成」
この答案は、技術士論文の模範とも言える構成を持っています。
あなたが論文を書く際にも、そのまま使える“型”です。
① 多面的な課題整理(問1)
問1では、情報管理の非効率、専門人材不足、積算基準の未整備という3つの課題を提示しています。
特に以下の記述は、出題者が求める「現状把握」として非常に良い例です。
「施設情報が紙や個別ファイルに分散し、検索に時間を要している」
「自治体ではデータ分析やAI活用に必要な専門人材が不足している」
「ICT活用に必要な費目が積算体系に整理されていない」
このように、
現状 → 問題点 → なぜ課題なのか
の流れが明確です。
② 最重要課題の選定(問2)
問2では、3つの課題のうち、「いかに高度化の仕組みをつくるか」を最重要課題に選んでいます。
さらに、
「自治体の格差是正につながるため」
と社会的意義を示している点が高評価です。
③ 解決策の提示(問2)
解決策は以下の3つに整理されています。
・巡回業務のDX
・監視業務のDX
・データ管理のDX
この構成は、現場 → 監視 → データ統合 という流れで、インフラ維持管理の全体像をカバーしています。
④ 新たなリスクと対策(問3)
DXの負の側面として、
「技術者の判断機会が減少し、技術力が低下する」
という本質的なリスクを挙げています。
⑤ 必要な要件と留意点(問4)
最後に、
・技術者倫理
・社会の持続性
・個人情報保護
・ベンダーロックイン回避
など、DXに不可欠な視点を網羅しています。
出題者が求めている記述とは何か
この答案を分析すると、出題者の意図が手に取るように分かります。
① 「課題の本質」を理解しているか
単なる「ICT活用」ではなく、
・情報の分散
・人材不足
・制度未整備
という構造的な問題を指摘している点が評価されます。
② 「実務に基づく具体性」があるか
出題者は抽象論を嫌います。
この答案では、
「住民が損傷を撮影し通報できる仕組み」
「加速度センサで堤防の変状を検知」
など、実務で使われる技術を挙げています。
③ 「技術士としての責任」を理解しているか
問3・問4で示される倫理観は、技術士試験で最も重視されます。
「現地確認に基づくデータ検証」
「公衆の安全・健康・福祉を最優先」
これらは技術士法に直結する内容であり、出題者が最も評価する部分です。
【完成】 デジタル技術を活用したストック活用
1.多面的な観点と課題
(1)いかに高度化の仕組みをつくるか
小規模自治体等では、施設情報が紙や個別ファイルなどに分散して管理されている。これにより必要な情報の検索に時間を要しており、生産性に悪影響を及ぼしている。そのため、施設情報を統合管理し損傷等を把握できるDX基盤の整備が必要である。よって、効率性の観点から、維持管理業務をデジタル技術により高度化し、実務運用可能な仕組みづくりが課題である。
(2)いかに産官学と連携するか
自治体ではデータ分析やAI活用に必要な専門人材が不足し、蓄積したデータを十分に活かせていない。このため、大学の分析技術や民間企業の実装力を取り込み、産学と連携してデータ利活用を進める必要がある。よって、体制面の観点から、維持管理データの分析・活用を三者で担う産官学連携の構築が課題である。
(3)いかに適切な積算基準を整備するか
維持工事の多くは発注規模が小さい。小規模な維持工事では、ICT活用に必要な費目が積算体系に整理されておらず、受発注者が必要経費を算出できない。ICT導入を進めるには、これらICT関連費目を整理し、小規模工事でも算出できるようにする必要がある。よって、制度面の観点から、ICT活用に対応した積算基準の整備が課題である。
2.最も重要な課題と解決策
自治体の格差是正に繋がるため「いかに高度化の仕組みをつくるか」を最も重要な課題に選定し、以下に解決策を述べる。
(1) 巡回業務のDX
職員不足に伴う損傷発見の遅れを防ぐため、住民がインフラ損傷を通報できる仕組みを構築する。例えば、住民が道路等の損傷を発見した場合、状況を撮影し位置情報と共にアプリを通じて行政へ通報できる仕組みを導入する。通報があった位置情報を基にデジタル地図に損傷個所をプロットし、職員の確認履歴を一元的管理すると共に、補修優先度も検討できるようにする。
(2) 監視業務のDX
目視確認に頼らず豪雨時の越水・浸水などの危険情報を速やかに収集し、行政・警察・企業等の関係機関と共有できる仕組みを構築する。例えば、加速度センサにより堤防や電柱下部の変状を検知し、道路冠水や地盤緩みなど広範囲の変状を把握する。また、検知データはクラウド上でリアルタイムに収集・蓄積し、関係機関への提供とともに、ハザードマップ上で公開し、住民へ周知することで適切な避難行動を促す。
(3) データ管理のDX
自治体ごとに点検結果や修繕履歴が個別管理されいるため、これらを共通IDで統合し一元管理する体制を構築する。具体的には、部材毎の点検結果や修繕履歴を共通データ項目とID体系で整理し、API連携により各自治体のシステムから共通基盤へ取り込む。その上で、共通の地図情報システム上で可視化し、他自治体の補修事例も参照できるようにすることで、補修方法の検討や広域的なデータ利活用を可能とする。
3.新たなリスクとその対策
システム依存により結果のみを採用する等、技術者が自ら判断する機会が減少する。それに伴って若手技術者の技術力が低下するリスクが生じる。
対応策として、現地確認に基づくデータ検証を定期的に行う。ECI方式による社外技術者と意見交換を重ねながら損傷のメカニズムを理解する等、データ根拠を説明できようにし、技術力の維持と向上を図る。
4.必要な要件と留意点
技術者倫理の観点
DX化に際しては、公衆の安全・健康・福利を最優先とすることが要件である。情報技術の活用にあたり、個人情報保護や、セキュリティ確保を徹底する。工期やコストを優先するあまり不完全なシステムを構築し、公衆に不利益をもたらすことがないよう留意する。
社会の持続性の観点
環境負荷の低減が要件である。DX化にあたっては、電力消費量の増加に伴うCO2排出量の削減に努める。留意点は、ベンダーロックインを回避し、更新性を確保することで、長期的にエネルギー効率を高め、CN社会の構築に貢献することである。 以上

