過去問から見る出題傾向 選択科目Ⅲ
【 技術士 二次試験対策 】
選択科目Ⅲの予想と対策
GWも後半戦です。もう、論文は2~3セット書き上げていますかね!?後半もピッチを落とさず、頑張っていきましょう。そんな頑張るみなさんにお届けするのは、選択科目Ⅲの傾向と予想です。選択科目は、これまでⅡー1、Ⅱー2と予想してきましたが、今回は最後のⅢになります。
選択科目Ⅲは、必須科目の問題と非常によく似ています。その違いは、要点、留意点の項目がないということです。それ以外は、「課題」、「解決策」、「新たなリスク」といった設問構成で全く同じです。設問数が少なくなっているので、技術力を示しやすい「解決策」を充実させると良いでしょう。
しかし、設問が同じだからと言って、必須科目と同じ感覚で書くと思わぬ結果を招くことがあります。なぜなら、これは選択科目だということです。何を言っているのだと叱られそうですが、つまり、必須科目が技術者としての幅広い知識を問われるのに対し、選択した専門知識をバッチリ問われるということです。
過去の投稿で「令和6年度技術士試験合否決定基準」についての記事を書きましたが、この中で紹介した評価基準である「専門的学識」を再度確認しておきましょう。
専門的学識
- 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
- 技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
注目すべきは、国の制度を応用せよとあります。つまり、技術士試験における技術力とは、国の制度を理解し応用することと言えます。この理解を前提に論文を書くことが大切です。
さらに、論文を書く上で重要なことは、情報集方法(参考文献の選択)です。選択科目Ⅱー1はキーワード学習、選択科目Ⅱー2はマニュアル類(ガイドライン、手引きなど)からの引用という形でした。他方、選択科目Ⅲは、審議会、委員会、検討会といった諮問機関における検討内容を参考にして、テーマ設定を行います。
必須科目では建設部門全般に通じるテーマをヒントに予想するわけですが、選択科目では自分の選択した科目に近いものを選択すると良いでしょう。この近いものを見極める目を養うためには、過去問を分析する必要があります。では、早速、過去問の傾向を見てみましょう。
「都市及び地方計画」の出題傾向
選択科目Ⅲもこれまでの選択科目同様に、3つのジャンルに区分することができます。区分は、以下の通りになります。ジャンルは、言葉は違いますが前回示したⅡー2のジャンルと酷似しています。この3つの中から、2つが出題されます。
- 条件付きのまちづくり
- まちづくりの再構築
- 民間ストック活用
都市及び地方計画ですから、まちづくりが問われます。そのまちづくりに際してのアプローチが異っているだけです。基本的には、国の大きな方向性は共通ですから、解決策や課題設定などは使いまわせる場合も多くあります。基本要素は、集約型の都市構造、デジタル技術の活用、官民連携といったところでしょうか。
最初の「条件付きのまちづくり」は、「○○に対応したまちづくり」といった問題形式です。注目される社会問題を踏まえ、どのようなまちづくりを進めていくかを問う問題です。
次は、まちづくりの再編です。施設や都市構造などを再編するといった問題形式です。再編が必要とされている事案を見つけてくるのが予想のポイントと言えます。
最後は、民間ストック活用です。まあ、市民協働や官民連携といった内容を含めたまちづくりですね。PFIといったゴリゴリの官民連携といったものではなく、アイデアや活力を生かすといったものや、民間施設そのものの活用といったものもありますので、ハード・ソフト両面から出題背れています。
条件付きのまちづくり
- R1→都市のスポンジ化対策としてのまちづくり
- R2→グリーンインフラを活用したまちづくり
- R3→コロナ危機に対応した都市政策
- R5→地球温暖化対策と都市の緑
条件付きのまちづくりは、ほぼ毎年出題されています。様々な社会課題や国が特に注力したい取り組みを含めたまちづくりを問う形であることが伺えます。社会問題としては、スポンジ化、コロナ、地球温暖化といったものが見て取れます。
今年注目される社会問題を考えれば、予想は立てやすいといえます。では、今年注目の社会問題とは一体何かを考えていましょう。まず最初に思い浮かぶのは、2024年問題に起因する労働力の確保問題ですよね。さらに建設業に限らず、担い手不足は地方都市では深刻化しおり地方の再生が急務でです。
一方、国が力を入れている取組みとしては、グリーンインフラが新たなフェーズに突入したこと、森林環境譲与税の賦課といった背景も注目すべきですね。つまり、必須科目でも紹介したGXがキーワードですね。でも、R5で出題されているのが、気になりますね。
まちづくりの再編
- R1→公共交通の持続的経営を踏まえた都市構造再編
- R4→駅まち空間の再構築
- R5→空き家対策
まちづくりの再編は、令和元年以降鳴りを潜めていましたが、最近出題される傾向が見えますね。人口減少の影響が色濃く顕在化している状況を踏まえると、まちづくりにおける再編も待ったなしと言えます。
最近のトレンドは、施設にスポットライトを当てていますね。また、過去問の傾向として交通関連が3つの内2つと過半を占めています。公共交通はリデザインをキーワードに議論が活発化していますので、注目度は高いです。
また、引き続き重要なテーマは環境です。令和5年度に温暖化が出題されていますが、形を変えて出題されてもおかしくないですね。ここでも、注目はGX関連ですよね。
また、傾向からは読み取れないのですが、昨今頻発化している地震災害は問題策定する上で無視できない社会問題と言えます。さらに、昨年必須科目で巨大地震が出題されたことを考えると、必須科目で災害関連は出しづらいです。そこで、選択科目Ⅲで災害関連が出る可能性が急速に高まります。
民間ストック活用
- R2→コミュニティ組織と連携した空閑地などの活用
- R3→都市公園内の文化施設活用(官民連携)
- R4→分譲マンション・住宅団地の持続可能な再生
最後は民間ストック活用ですが、大別すると土地利用と施設利用といった具合に分けられます。近年は、施設利用が多く出題されています。今年は、どちらが出題されるのでしょうか。前項の再編に区分しましたが、空き家も民間ストックの活用といえます。そうなると、施設利用は一周したかなと考えています。
よって、次なるテーマは土地利用ではと考えています。では、土地利用といっても、抽象的ですので何に注目していいか分かりませんよね。審議会の議論や社会問題を踏まえ、絞り込みます。
まず共通して、土地利用もまたGXを意識すべきでしょう。加えて、社会問題からのアプローチは、相続登記の義務化が2024年4月1日から実施されたことに着目し所有者不明土地といった対策が求められます。
また、市民協働という視点で言えば、令和2年度にコミュニティ組織との連携が出題されていますので、地域活力や住民参加といったアプローチも押さえておいた方が良さそうです。
選択科目Ⅲ R6予想問題
選択科目Ⅲの予想は、「過去問傾向」×「社会問題」というロジックで考察してみました。大きいテーマ設定に見えて、都市及び地方計画の専門的知識を問えるといったスタイルになりますね。社会問題の捉え方は、審議会、委員会等で議論がなされているかを判断材料にしています。
予想のポイント確認していきましょう。
<条件付きのまちづくり>
①二地域居住を可能にするまちづくり
→移住・二地域居住等促進専門委員会 中間とりまとめ(2024年1月9日)が公表されており、疲弊する地域の活性化にも貢献
②デジタル技術を活用したまちづくり
→人口減少・労働力不足を補う技術として注目度抜群、必須科目の働き方改革等と合わせて重要なテーマ
③ネイチャーポジティブを実現するまちづくり
→GX化を進める国の取り組に合致、昨年度地球温暖化が出題されていることを踏まえつつ、世界的に求められているネイチャーポジティブを予想
<まちづくりの再編>
①カーボンニュートラルの実現を踏まえた都市再生
→これもGX化の一環、省エネ・再エネ・エネマネといった取り組みをまちづくりとして行うものであり、デジタル田園国家都市構想、スマートグリッド、CEMSといったトピックが注目
②流域治水対策の推進
→昨今頻発化する地震を出題したいところですが、再編というジャンルを踏まえると流域治水が適切か、ネイチャーポジティブ的な要素もあり社会要請にマッチ
③公共交通のリデザイン
→交通は出題傾向も強く、地域の公共交通リ・デザイン実現会議でとりまとめ骨子(案)が提出済み、コンパクトプラスネットを実現するためにも重要な要素、さらに昨今ライドシェアなど社会的注目度も高い