コンピテンシー改訂で何が変わり、どう準備すべきか
【 技術士 二次試験対策 】
なぜ建設部門の口頭試験は「技術者倫理」で差がつくのか
建設部門は「公共性・安全性・合理性・技術的妥当性」が最重要
建設部門は、社会基盤を扱うため、技術者の判断が直接「人命・財産・社会機能」に影響します。 そのため、技術士法が定める公益の確保(第1条)を最優先に行動できるかが、他部門以上に厳しく問われます。
建設部門の技術者は、日常的に次のような倫理的ジレンマに直面します。
- 工期短縮 vs 安全性
- コスト削減 vs 品質確保
- 発注者の意向 vs 公益
- 住民合意 vs 技術的合理性
- 環境保全 vs 経済性
これらは、単なる「良心」ではなく、技術者倫理としての判断力が求められる場面です。
口頭試験では「倫理」が独立した評価項目
口頭試験の評価項目は、
- コミュニケーション
- リーダーシップ
- 評価
- マネジメント
- 技術者倫理
- 継続研さん
の6つで構成され、技術者倫理は独立した必須項目として最も重要な視点と言えます。
つまり、 倫理で1問ミスすると評価が急降下します。
試験委員が最も重視するのは「行動指針」
倫理の質問で落ちる受験生の多くは、条文を丸暗記して答えます。
しかし試験委員が見たいのは、 「あなたは実務で倫理的ジレンマに直面したとき、どう判断し、どう行動する技術者なのか」 という“行動指針”です。
建設部門は、現場判断・設計判断・安全判断が多いため、倫理観の有無が技術者としての適格性に直結します。
令和8年度コンピテンシー改訂で倫理評価はどう変わるか
2026年度から適用される新コンピテンシーでは、技術者倫理の評価視点が大きく変わりました。 技術士会のホームページでは、「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)に関する質問」が掲載されており、これがめちゃくちゃ役立ちますので、まずはこれを読んでみることをお勧めします(掲載ページはコチラ)。
特に次の3点が重要です。
「社会・経済・環境」への影響を総合的に判断する
従来は「社会・文化・環境」でしたが、改訂後は「社会・経済・環境」に変更されました。
これは、
- ESG(環境・社会・ガバナンス)
- SDGs(持続可能な開発目標) の潮流を反映したものです。
建設部門では、
- コスト(経済)
- 社会受容性(社会)
- 環境負荷(環境) の三側面を統合して判断する倫理観が求められます。
「次世代にわたる持続可能な成果の達成」
従来の「持続性の確保」から、 「持続可能な成果の達成」 へと表現が強化されました。
これは、単なる「維持」ではなく、 社会に持続的な価値を生み出す技術者であること を求めるものです。
建設部門では、
- 長寿命化
- 予防保全
- LCC最適化
- レジリエンス向上 などが倫理的責務として位置づけられます。
「文化的価値の尊重」が追加
新コンピテンシーでは、 文化的価値の尊重 が技術者倫理に追加されました。
建設部門は、
- 景観
- 文化財
- 地域固有の歴史
- 住民の生活文化 に直接影響するため、文化的価値を尊重する姿勢が求められます。
建設部門特有の倫理リスク
建設部門は、他部門よりも倫理リスクが多く、試験委員が深掘りしやすい領域です。
安全性に関する判断
- 地盤の不確実性
- 地下水位変動
- 側方流動・液状化
- 老朽化構造物の安全性
- 施工時の第三者災害リスク
これらは、技術者倫理の中心テーマです。
コスト・工期と公益の対立
建設現場では、 「コスト削減」「工期短縮」 の圧力が常に存在します。
しかし技術士は、 公益(安全・環境・社会)を最優先する義務 があります。
この対立をどう扱ったかが、口頭試験で必ず問われます。
住民合意・ステークホルダー調整
コンピテンシー改訂で、 多角的視点・ステークホルダーの意見反映 が明文化されました。
建設部門では、
- 住民
- 発注者
- 環境団体
- 事業者 など多様な利害関係者が存在するため、倫理的配慮が不可欠です。
DX・データ活用に伴う新しい倫理課題
改訂コンピテンシーでは、 データ・情報技術の活用 が必須要件となりました。
建設DXでは、
- AI判定の誤差
- センシングデータの欠測
- モデルの適用範囲
- データ品質のばらつき など、新しい倫理リスクが生まれています。
これらを理解しているかが、試験委員の評価ポイントになります。
口頭試験で使える「技術者倫理の黄金回答テンプレート」
ここでは、実際の口頭試験でそのまま使える回答テンプレートを紹介します。 試験委員が最も評価しやすい構造になっています。
結論(どのような倫理的ジレンマか)
「私は〇〇業務において、 『企業の利益(コスト・工期)』と『公益(安全・環境・社会)』が対立するジレンマ に直面しました。」
葛藤の具体化
「具体的には、調査の結果〇〇のリスクが判明し、当初計画のまま進めると安全性に懸念が残る状況でした。 しかし対策には追加コストと工期延長が必要で、発注者の意向と公益が対立しました。」
技術士としての判断と行動
「私は技術士法第1条の『公益の確保』を最優先し、リスクを定量化したデータを提示し、 安全性を確保しつつコスト影響を最小化する代替案 を策定して発注者へ説明しました。」
結果と教訓
「結果として代替案が採用され、安全性と経済性の両立が実現しました。 この経験から、技術者倫理とは、データに基づきステークホルダーと協働し、 社会・経済・環境の三側面を統合して判断する姿勢 であると学びました。」
建設部門の口頭試験で「技術者倫理」が問われる理由
建設部門は、
- 公共性
- 安全性
- 合理性
- 技術的妥当性 を扱うため、技術者の判断が社会に直接影響します。
そのため、試験委員は次の3点を必ず確認します。
① あなたは“公益最優先”で判断できる技術者か?
→ コスト・工期・発注者意向よりも、公衆の安全・環境・社会を優先できるか。
② あなたは“倫理的ジレンマ”を理解し、行動できるか?
→ 現場で起きる対立(安全 vs 工期、環境 vs 経済性)をどう扱うか。
③ あなたの判断は“技術的妥当性”に裏付けられているか?
→ 感情論ではなく、データ・調査・技術原理に基づく判断か。
この3点を見抜くために、倫理の質問が多くなるわけです。
「何を聞いているか」ではなく「何を見ているか」が重要
以下では、建設部門の口頭試験で頻出する質問を取り上げ、 試験委員が何を評価しているのか=着眼点 を解説します。
「技術者倫理とは何ですか?」
着眼点:あなたの倫理観は“行動原理”として機能しているか
試験委員は、次の点を見ています。
- 技術士法第1条(公益確保)を理解しているか
- 倫理を“理念”ではなく“行動指針”として語れるか
- 社会・経済・環境の三側面を統合して判断できるか
- DX・多様性・持続可能性など、2026年度の新コンピテンシーを反映しているか
つまり、 「倫理=安全第一です」では不合格レベル です。
倫理は「どう行動するか」を語れないと評価されません。
「倫理的ジレンマを経験したことはありますか?」
着眼点:あなたは“対立構造”を理解し、合理的に解決できるか
建設部門のジレンマは必ず「対立構造」で発生します。
例:
- 安全 vs 工期
- 環境 vs 経済性
- 発注者意向 vs 公益
- 住民合意 vs 技術的合理性
試験委員は、次の点を見ています。
- ジレンマを“対立構造”として説明できるか
- 技術的根拠(調査・データ・原理)に基づいて判断したか
- 公益最優先の行動が取れているか
- ステークホルダー調整を行っているか
- 結果と教訓を論理的に説明できるか
つまり、 「悩みましたが安全を優先しました」では弱い です。
「発注者の意向と公益が対立した場合、どう判断しますか?」
着眼点:あなたは“技術士としての独立性”を持っているか
建設部門で最も多い倫理リスクは、 発注者の意向と公益の対立 です。
試験委員は、次の点を見ています。
- 発注者の意向に流されない独立性があるか
- リスクを定量化し、技術的妥当性を説明できるか
- 代替案を提示できるか(技術士の必須能力)
- 合意形成のプロセスを理解しているか
つまり、 「発注者に従います」は即不合格 です。
「安全性を確保するために、あなたが行った判断は?」
着眼点:安全性を“技術的に説明できるか”
建設部門は安全が最重要ですが、 試験委員は「安全第一です」では評価しません。
見ているのは、
- 安全性をどう評価したか(調査・解析・基準)
- リスクをどう定量化したか
- 技術的根拠に基づく判断か
- 代替案を提示できるか
- 第三者災害をどう防いだか
つまり、 安全性=技術的妥当性の説明ができるか が評価ポイントです。
「DXやデータ活用に伴う倫理的課題は?」
着眼点:2026年度コンピテンシー改訂を理解しているか
新コンピテンシーでは、 DX・データ活用の倫理リスク が明確に評価対象になりました。
試験委員は、次の点を見ています。
- AI判定の誤差・限界を理解しているか
- センシングデータの欠測・品質を考慮しているか
- モデルの適用範囲を説明できるか
- データの透明性・説明責任を理解しているか
つまり、 「DXは便利です」では不合格 です。
「多様性・文化的価値をどう尊重していますか?」
着眼点:新コンピテンシーの“文化的価値”を理解しているか
2026年度改訂で追加された評価視点です。
試験委員は、
- 景観
- 文化財
- 地域固有の生活文化
- 住民の価値観 を尊重する姿勢があるかを見ています。
つまり、 「住民説明をしました」では弱い です。
文化的価値を技術的に扱えるかが評価されます。
技術者倫理の質問は「あなたの判断力」を見ている
建設部門の口頭試験で倫理が重視される理由は、 あなたの判断が社会に直接影響するから です。
試験委員が見ている着眼点は次の5つです。
- 公益最優先の判断ができるか
- 対立構造を理解し、合理的に解決できるか
- 技術的妥当性に基づく判断か
- ステークホルダー調整ができるか
- DX・多様性・持続可能性を踏まえた倫理観を持っているか
この着眼点を理解して回答すれば、 どんな倫理質問にも論理的に対応できます。

