建設業界・行政の不正事例と倫理的思考法
【 技術士 二次試験対策 】
富山市の国勢調査水増し問題から学ぶ
2026年10月3日(土)午前10時過ぎ、富山県警が富山市役所を家宅捜索しました。容疑は、2025年国勢調査の人口を水増しして国に報告した統計法違反です。この問題が公表され、一般に明らかになったのは同年9月29日。
その内容は、行政統計の世界ではにわかに信じがたいものでした。調査員が「居住実態なし」と判断して二重線を引いた世帯リストを、市職員が意図的に消しゴムで消していたのです。行政統計が「消しゴムで増える」というのは、漫画なら微笑ましいワンシーンですが、現実世界では都市計画の根幹が揺らぎます。
水増しされた人口は少なくとも2000人以上。余分に受け取っていた地方交付税は数億円規模に達する可能性があるとされています。もちろん、職員個人の悪意だけで説明できる話ではありません。
むしろ、
「数字を正しく扱う仕組みが弱かった」
という構造的な問題が背景にあると考えるべきでしょう。
技術士二次試験の口頭試験では、こうした不正事例について、
「何が起きたのか」
「なぜ起きたのか」
「どう防ぐべきか」
「技術士としてどう考えるか」
を論理的に語る力が求められます。
そこで本記事では、富山市の事件を導入に、建設業界・行政の不正事例を施工・計画・設計・積算・維持管理という技術士の主要分野ごとに整理し、口頭試験でそのまま使える形で解説していきます。
■【施工分野】安全・品質・現場管理の不正は“現場の空気”に潜む
◆S社:安全書類の形式化
- 事件の説明
S社の複数現場で、実施していない安全確認に「済」記載を指示していた事例が公表されました。
安全書類が“安全を証明する書類”ではなく、“安全を演じる書類”になってしまったわけです。 - なぜ起きたか
下請け構造の歪み
現場の形式主義
安全文化の分断
書類作成が目的化
- 今後どうすべきか
現場巡視の強化
デジタル安全管理
下請けとの安全文化共有
書類より行動を重視する仕組み
- 技術士の思考
技術士は「安全書類の正しさ」ではなく、安全行動が確実に実施される仕組みを設計する立場です。 - 口頭試験での答え方
S社の安全書類形式化は、下請け構造の歪みと形式主義が原因です。技術士としては、現場巡視の強化、デジタル管理、行動重視の安全文化構築が必要と考えます。
◆T社:コンクリート強度試験データ改ざん
- 事件の説明
基準未達を隠すために試験結果を書き換えていた事例です。
「数字を整える前に、コンクリートを整えてほしい」という声が聞こえてきそうな不正です。 - なぜ起きたか
工程管理の弱さ
試験体制の属人化
品質保証の形骸化
プレッシャーによる判断の歪み
- 今後どうすべきか
試験の外部委託
データ自動記録
工程設計の見直し
人手介入の排除
- 技術士の思考
技術士は、「品質は検査で作るものではなく工程で作るもの」という原則を守る必要があります。 - 口頭試験での答え方
T社のデータ改ざんは、工程設計の弱さが原因です。技術士としては、試験の外部委託、データ自動記録、工程管理の強化が必要と考えます。
◆K社:鉄筋量の過少申告
- 事件の説明
鉄筋は“見えない安全装置”です。
その数量をごまかすことは、安全をごまかすことに直結します。 - なぜ起きたか
数量管理の属人化
記録の紙ベース運用
現場と設計の乖離
- 今後どうすべきか
電子記録化
二重チェック
設計との連携強化
- 技術士の思考
技術士は、数量管理=安全管理という視点を持つ必要があります。 - 口頭試験での答え方
K社の鉄筋量過少申告は、数量管理の属人化が原因です。技術士としては、電子記録化と二重チェックが必要と考えます。
■【計画分野】工程・調達・労務管理の不正は“見えないところ”で起きる
◆富山市:国勢調査人口水増し
- 事件の説明
調査員が「居住実態なし」と判断して二重線を引いた世帯リストを、市職員が消しゴムで消して“復活”させていたことが判明しました。行政統計が“消しゴムで増える”というのは、現実世界では都市計画の根幹を揺るがします。 - なぜ起きたか
数字管理の属人化
チェック体制の弱さ
組織文化(忖度・形式主義)
データガバナンスの欠如
- 今後どうすべきか
二重チェック体制
データ管理の標準化
属人的運用の排除
行政内部の透明性向上
- 技術士の思考
技術士は「数字の正しさ」よりも、数字が正しく扱われる仕組みを守る役割です。 - 口頭試験での答え方
富山市の人口水増し問題は、データ管理の仕組みが弱かったことが原因です。技術士としては、データガバナンスの強化、二重チェック体制、属人的運用の排除が必要と考えます。
◆K社:労働時間の不正申告
- 事件の説明
残業時間を少なく見せるために勤怠データを操作していた事例です。
「働き方改革をしているように見せる改革」が行われていたわけです。 - なぜ起きたか
長時間労働の常態化
工程の無理な設定
労務管理の属人化
- 今後どうすべきか
勤怠自動記録
工程適正化
労務負荷の見える化
- 技術士の思考
技術士は、労務管理=安全管理という視点を持つ必要があります。 - 口頭試験での答え方
K社の労働時間不正は、工程の無理と労務管理の属人化が原因です。技術士としては、勤怠自動記録と工程適正化が必要と考えます。
◆N社:材料費の不当転嫁
- 事件の説明
材料費高騰分を下請けに一方的に転嫁していた事例です。
「材料費は上がったけど、うちの利益は下げたくない」という本音が透けて見える構造です。 - なぜ起きたか
下請け構造の優越性
原価管理の不透明性
契約の不均衡
- 今後どうすべきか
契約透明化
原価共有
下請けとの対話強化
- 技術士の思考
技術士は、公正な契約関係=品質と安全の前提という視点を持つ必要があります。 - 口頭試験での答え方
N社の不当転嫁は、契約の不透明性が原因です。技術士としては、契約透明化と原価共有が必要と考えます。
■【設計分野】成果物の真正性は“技術士の信用そのもの”
◆国交省:コンサル登録の虚偽申請
- 事件の説明
実績を偽って登録申請したコンサル会社が複数摘発されました。
「実績は盛るものではなく積むもの」という基本が忘れられていたわけです。 - なぜ起きたか
実績証跡の管理不足
競争環境の過熱
属人的判断
- 今後どうすべきか
証跡管理の標準化
外部監査
実績の透明化
- 技術士の思考
技術士は、成果物の真正性=信用の源泉という視点を持つ必要があります。 - 口頭試験での答え方
虚偽申請は、実績管理の仕組み不足が原因です。技術士としては、証跡管理と外部監査が必要と考えます。
◆自治体:設計委託の入札情報漏えい
- 事件の説明
入札情報を特定業者に漏えいしていた事例です。
「公平な競争が、なぜか毎回同じ業者に勝ち続ける」という不思議な現象が起きていました。 - なぜ起きたか
情報管理の弱さ
属人的運用
公共調達の透明性不足
- 今後どうすべきか
電子入札強化
情報管理の標準化
監査体制の整備
- 技術士の思考
技術士は、公平性=公共性の根幹という視点を持つ必要があります。 - 口頭試験での答え方
入札情報漏えいは、情報管理の弱さが原因です。技術士としては、電子入札強化と監査体制整備が必要と考えます。
■【積算分野】契約・原価・競争性の不正は“公共性の根幹”を揺るがす
◆O社・K社・S社:リニア談合
- 事件の説明
複数ゼネコンが談合していた事例です。
「競争しているように見せる競争」が行われていたわけです。 - なぜ起きたか
業界構造の閉鎖性
競争原理の欠如
入札プロセスの不透明性
- 今後どうすべきか
入札透明化
第三者監視
電子入札の徹底
- 技術士の思考
技術士は、競争性=品質とコストの健全性という視点を持つ必要があります。 - 口頭試験での答え方
談合は、競争原理の欠如が原因です。技術士としては、入札透明化と第三者監視が必要と考えます。
■【維持管理分野】点検・監督・記録の不正は“安全の最後の砦”を崩す
◆国交省地方整備局:工事監督職員の収賄
- 事件の説明
工事監督職員が業者から接待・金品を受領していた事例です。
「監督する側が監督される側に寄り添いすぎた」状態です。 - なぜ起きたか
監督業務の属人化
接待文化の残存
監査体制の弱さ
- 今後どうすべきか
複数担当制
接待禁止の徹底
監査強化
- 技術士の思考
技術士は、監督の公平性=安全の最後の砦という視点を持つ必要があります。 - 口頭試験での答え方
収賄は、監督業務の属人化が原因です。技術士としては、複数担当制と監査強化が必要と考えます。
■技術士は「不正を防ぐ仕組み」を設計する存在
富山市の人口水増し問題に象徴されるように、不正は個人の悪意ではなく、属人的運用・文化の歪み・チェック体制の弱さといった“仕組みの欠陥”から生まれます。
技術士二次試験の口頭試験で求められているのは、この構造を正確に把握し、なぜ防げなかったのかを論理的に説明し、再発防止策を制度・工程・データ管理の仕組みとして設計できるかという「技術士としての視座」です。
施工・計画・設計・積算・維持管理の各分野で起きた不正事例を、事実→原因→再発防止→技術士の思考→口頭試験での答え方という流れで語れるようになることは、単なる試験対策ではなく、技術士が社会の公共性を守るために必要な“構造化された倫理思考”そのものです。
技術士は不正を非難する人ではなく、不正を防ぐ仕組みを設計する人──この視点を持って事例を語るとき、あなたの言葉は技術士としての言葉となり、面接官が「この人は技術士として信頼できる」と判断する決定的な瞬間を生みます。
技術士としての視座・言葉・倫理・構造化思考を不正事例を通じて磨くことこそが、口頭試験合格への最短ルートです。

