-防災指針-
【 技術士 二次試験対策】
本日は、建設部門(都市及び地方計画)選択科目Ⅱ-2「防災指針」を見ていきましょう。防災指針というと地域防災計画や国土強靭化地域計画のような防災関連計画に見えますが、泣く子も黙る「立地適正化計画」に定めるものです。立地適正化計画は、令和2年度のⅡ-2で出題されています。この時の問題のシチュエーションは、居住誘導区域の見直しでした。気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化に対応するための都市づくりを進める上で、非常に重要な取り組みといえますことから、出題の可能性は高いとみて良いでしょう。私が、受験勉強に取り組んでいるときも、防災指針の論文を作成しました。そろそろ出題されても良いころ合いなんですがねぇ・・・
「立地適正化計画作成の手引き」は、H29.4、H30.4、R2.9と改定されており、R2の改定時に「防災・減災の主流化」に向けた留意点が追加されています。留意点としては、以下の3点が示されています。
・災害リスクの分析及び評価の手法
・防災・減災対策の検討
・居住誘導区域等権利設定等促進事業の創設
基本は災害リスクの高いところに居住させない、居住しているところは誘導をかけるといった施策をコンパクトシティとセットで進めましょうということです。
居住誘導区域等権利設定等促進事業(防災移転支援事業)の記載は任意ですが、国土交通省の説明資料では「立地適正化計画の策定・変更の段階で本事業を実施することが決定していない場合でも、本事業の活用が見込まれる地域を有する市町村は、積極的に立地適正化計画に防災移転支援事業の記載を行うことが望まれます。」とありますので、論文に盛り込めばパワーワードになると思います。
また、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」、令和4年5月27日公布)が、令和5年5月26日から施行されましたので、ここら辺にスポットライトを当ててくる可能性もあります。
このように、熱海の土砂災害、頻発化する地震・豪雨などの状況を鑑みれば、防災への関心は高まるばかりです。都市及び地域計画を専門としている技術者にとって、立地適正化計画は最も重要な計画の一つであり、その中に位置づけられる防災指針は重要であることは間違いありません。
それでは、論文を見てみましょう。
【選択科目Ⅱ-2 防災指針】
①防災指針を定める上で重要な事項を2つ以上挙げ、それぞれの事項ごとに検討すべき内容について説明せよ
②業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ
③業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ
1.防災指針を定める上で重要な事項と検討内容
(1)防災まちづくりの取組方針
都市の基盤情報①を把握するため、人口、土地利用状況、都市施設、交通の整備状況等を調査する。また、洪水、土砂災害等のハザード情報と都市情報を重ね合わせることで暴露を明らかにして、解決すべき課題を抽出する。これらの情報を基に、防災まちづくりの取組方針を検討する。
① 基礎情報ですかね。
(2)流域治水との連携
近年、水災害が激甚化しており、今後も気候変動の影響により降雨量が増加し、さらに頻発化・激甚化することが懸念されている。したがって、水災害に関するハザード情報から暴露及び脆弱性を整理し、水災害リスクの軽減や回避策を検討することが重要となる②。これにより、流域治水対策と連携③した防災指針の方向性を定めていく。
② (1)の検討に含まれていませんか。
③ 流域治水との関連が説明されていません。
2.業務遂行の手順と留意点、工夫点③
①災害リスクの分析と課題の抽出
留意点:災害リスク分析を行うにあたり、地域のハザード情報を網羅的に収集し整理を行う。このとき、例えば④水害による浸水域等の想定だけでなく、災害が及ぶ時間について確認することに留意する。
工夫点:マイ・タイムライン等の作成を支援する際⑤、災害リスク分析の結果から得られた情報を住民と共有する。このように、災害に対する理解を深めるためのリスクコミュニケーションに活用する等の工夫をする。
③ 手順と工夫・留意点とあるので、手順はタイトルだけでなく内容を書きましょう。以下同様。
④ 「このとき、例えば」はどちらかにすべきと考えます。
⑤ リスクの分析と課題抽出ステップで、マイタイムラインの話をするのは違和感があります。リスク分析と課題抽出の工夫点を書くべきです。
②取組方針の検討
留意点:取組方針の検討にあたり、市町村が自ら構じる⑥施策以外に、国や県及び民間事業者等による施策との連携を検討することが重要である。そのため、他の主体による施策を防災指針に示す等、関係部局⑦との連携や調整を図ることに留意する。
工夫点:リスクの程度により抽出した課題の全てを計画期間内に解決できない場合がある。そのため、各取組方針に基づく結果を図化する等可視化⑧し、住民にわかりやすく提示して地域の理解を得る⑨よう工夫する。
⑥ 「構じる」→「講じる」
⑦ 部局との記載ですと行政組織内に見えます。ここは、関係者ですかね。
⑧ 「解決できない場合があるから、可視化する」とありますが、解決できないことと可視化することの関連が分かりません。解決できない場合、避難行動に影響がでるからなど、可視化する理由が抜けていると思います。
⑨ これも⑧と同様で、地域は何を理解するのか判然としません。この場合は、解決できない箇所を図化して、住民の避難行動に活かしてという意図ですかね。
③取組スケジュール及び目標値の検討
留意点:立地適正化計画や上位計画等の見直し時及び災害が発生した場合等において⑩、取組メニューの追加や変更等を適宜行うように留意する。
工夫点:災害リスクが高い地域の居住人口の相対的な減少等、具体的な基準値と目標値を定める。例えば、⑫地域毎のハザードマップ作成割合や防災連絡会の設立割合があげられる。このように、住民にわかりやすく取組の進捗度合いの説明を行えるよう工夫する。
⑩ 策定後の話ですね。ここでは、スケジュールや目標値を検討する上での留意点であるべきです。
⑪ すでに、居住人口の相対的な減少といった具体例をあげていますので、接続詞の「例えば」が気になります。「加えて」ではないでしょうか。
3.関係者との調整方策
関係部署や施設管理者に対しては、客観的な情報に基づいて意見交換や調整を実施する。住民に対しては一方的な情報提供だけでなく、懇談会やワークショップを通じて双方向かつ具体的に調整する。 以上
※ここまでで最も気なるのが、防災指針は立地適正化計画に定めるものなので、誘導区域や施設等の関連や、立地適正化計画の課題との整合などの説明も必要と考えます。