添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
大事なお知らせ
GWも終わり、いよいよ筆記試験の開始が迫ってきました。残り2か月、悔いの残らないよう、全力を振り絞って合格を目指しましょう。これまでの頑張りを無駄にしないよう、どんなに忙しくとも継続的に勉強することを忘れないようにしましょう(忙しい時は30分でもOK)。
そんなみなさんの頑張りとともに、私も添削にいそしんでいるわけですが、どうにも能力が追い付かず、論文は溜まる一方になっています。そうなると、添削を依頼していただいている方にも迷惑をかけてしまうので、一旦、新規依頼を停止いたします(5/10現在、ECサイトではSOLD OUTになっています)。
投稿を希望されている方は、大変申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください。現在抱えている添削完了の目途が立ったら再開します。ご不便をおかけして恐縮です。また、添削をお待ちいただいている方、急いでいると思いますが、今瞬くお時間をいただければと思います。
さて、そんな添削を行うに当って、最近、気になっているのが、選択科目Ⅲの記述についてです。これについては、これまで何度も申し上げてきているのですが、試験が近づいてきたので、もう一回言っておきますね。
必須科目と選択科目Ⅲは、出題形式がとても似てますよね。しかし、解答も同じように作成すると、選択科目Ⅲは失敗します。必須科目は幅広い知識、選択科目Ⅲは深い知識が求められます。この違いを強烈に意識してください。
これを言うとみんさん、解決策は結構意識して専門用語バンバンに書いてくれます。しかし、最大の落とし穴は、課題においても専門的視点が求められるということです。ここをしっかりと注意しないと、一般的な社会課題を述べてしまいがちです。
さらに、解決策においても、専門用語をたくさん並べる人が多いことも気になります。ただ、専門用語を並べるだけですと、説明不足になってしまい技術士のコンピテンシーにあるコミュニケーション能力が不足との烙印が押されてしまいます。
解決策の記述に当たっては、技術力=具体性ということを肝に銘じ、事例や具体的な説明をするよう心掛けましょう。必須科目では「こんなことも知っている」とのアピールに対して、選択科目Ⅲの場合は「こんなにも知っている」がアピールになります。よって、具体的説明が、より重要になると言えます。
「鋼構造・コンクリート分野におけるCO2削減」初稿
本日の添削LIVEは、令和6年度 建設部門 鋼構造及びコンクリート 「鋼構造・コンクリート分野におけるCO2削減」をお届けします。選択科目Ⅲは、専門知識が備わっているかをどれだけアピールできるかがカギです。CO2削減は注目のGXですし、建設部門の人であれば誰しもがコンクリートを使いますよね。ということで、みなさんにとっても貴重な情報源と言えます。それでは、早速論文を見ていきましょう。
1.CO2削減を推進する上での課題
(1) CO2排出基準の設定
コンクリート構造物の現行設計基準では構造安全性や耐久性等を要求性能として規定しているが、CO2排出量を制限していない。そのため、設計段階でCO2を減らすことができずに構造物の製作・施工時に日本建設業連合会の調べによると年間400万t以上のCO2が排出されている①。よって、設計の観点②からCO2排出基準の設定が課題である。
① 「・・・できずに・・・施工時に・・・」と「に」という助詞が連続しています。また、基準がないことが、排出のすべての要因であるかのような表現に違和感があります。CO2の排出量を具体的に説明するより、基準がないことによる悪影響を具体的に示すべきではないでしょうか。
② ルールを決めようという内容なので、「設計の観点」というより「制度面の観点」の方がより的確な表現になると思います。
(2) CO2排出量の現状把握
国土交通省調査(2022年)によると建設会社のCO2排出量の実態把握率は20%未満と低い。燃料使用量や資材運搬時のCO2排出量を統合的に管理するシステムが未整備であり、サプライチェーン全体でのデータ収集ができていない③。よって、CO2削減に向けて原因分析や対策検討を実施するため④、情報の観点から正確なCO2排出量の現状把握⑤が課題である。
③ CO2排出量が把握されていないことを問題視しているのだと思いますが、サプライチェーンだと供給までの視点になっています。廃棄プロセスまで入れるべきと考えます。よって、ライフサイクルアセスメントといった表現が望まれます。また、2つの文は、同じようなことを述べています。どちらか一方で良いと思います。さらに、把握できない要因をシステムがないからとしていますが、これも原因を一つにしてしまっていることに違和感があります。
④ 課題のパラグラフでは、現況→問題点→必要性→結論の順で書くことをお勧めしています。これが絶対というわけではありませんが、この部分は前段で必要性として示してはいかがでしょうか。
⑤ データはこれまでのもの(過去のもの)でも参考になると思いますので、現状との表現より、前述にあるように実態把握とした方が良いと思います(統一する意味でも修正しましょう)。
(3)コンクリート構造物の長寿命化
従来の事後保全型維持管理では、損傷した構造物の解体・新設に伴い大量のCO2が発生する⑥。また、解体材の運搬・処分時のCO2排出も問題となる⑦。そのため、損傷が重大化する前にこまめに補修して構造物寿命を伸ばしCO2排出量を削減する⑧。よって、維持管理の観点から、コンクリート構造物の長寿命化が課題である。
⑥ 事後保全だとなぜ解体・新設のCO2排出につながるのかよく分かりません。予防保全であっても、いつかは解体・新設が必要になります。解体・新設には大量のCO2が排出されるため、作ったら長く使うべきということが主張であり、事後保全がダメなのは長く使えないからです。順序だてた説明が求められます。
⑦ 解体に伴う排出なのになぜこれを特だししているのか意図が分かりません。
⑧ この表現では解決策に見えます。必要性として述べてはいかがでしょうか。
2.重要な課題選定と解決策
コンクリート構造物の長寿命化はCO2削減とLCC低減の両立が可能と考え、以下に解決策を述べる⑨。
⑨ 問われていることを明確に解答しましょう。→「CO2削減とLCC低減の両立が可能であるため、「コンクリート構造物の長寿命化」を最重要課題に選定し、以下に解決策を述べる」
(1)性能設計の推進
コンクリート構造物の長寿命化を実現するため、仕様規定型から性能照査型設計への転換を図る⑩。具体的には⑪、IoTセンサーによる飛来塩分量の常時モニタリングを実施し、得られたビッグデータをディープラーニングで解析することで塩害劣化予測を行う。これにより、環境作用に応じた水結合材比とかぶり厚を設定する。なお、AI診断の精度向上のため、コンクリート診断士による非破壊検査結果を併用する。
⑩ 「長寿命化を実現するため」という目的を示していますが、課題が長寿命化なのですから当たり前です。もう一歩踏み込んだ目的を記述すべきでしょう。また、長寿命化の手段として、なぜ性能照査型設計の転換なのか理解できません。しかも、課題では、「維持管理の観点」としていますが、設計手法の話になっていませんか。課題に対する解決策になっていないと思います。
⑪ 「具体的には」とありますが、記述の内容はICT技術の活用になっており、性能照査型設計への転換を図るための説明になっていません。このパラグラフは、すべて見直した方が良いでしょう。
(2)材料面における長寿命化の推進
コンクリート構造物の長寿命化を図るため⑫、環境条件⑬に応じた材料を使う。塩害や凍害等の劣化因子が厳しい環境下では、普通セメントでは耐用年数を満足できず、早期劣化のリスクがある。そこで、補修アクセスが困難な構造物に対し、炭酸カルシウム析出型の自己治癒コンクリートを採用する⑭。これにより、微細ひび割れが発生しても結晶生成による自己シーリング効果で止水性が確保され、鉄筋腐食等を抑制する。
⑫ これも同じですね。「長寿命化を図るため」という目的を示していますが、課題が長寿命化なのですから当たり前です。
⑬ もう少し具体的に書かないと何が言いたいのか分かりません。条件の例示をいくつか述べるなどの表現が望まれます。
⑭ 問題とその対応がいささか不整合のように感じます。早期劣化を問題視しているのに、それへの対応が自己治癒となっています。自己治癒を採用する理由は、補修のためのアクセス困難だからですよね。早期劣化を問題視するなら、劣化を遅らせる手段をとるのが先決ではありませんか。または、目的をメンテナンス性の向上としてしまうのも一つの方法です。
(2)施工面における長寿命化の推進
近年、レベル2地震動に対する耐震性能確保のため、せん断補強筋が過密化し、内部振動機の有効半径150mm以内での配置が困難となり、豆板等の初期欠陥リスクが増大している⑮。そこで、BIM/CIMによる3次元配筋干渉チェックと粒子法による流動解析を実施する⑯。フロントローディングにより、配筋の最適化やスランプフロー45cm以上の高流動コンクリートを採用し、材料分離抵抗性と充填性を確保する。
⑮ ここは解決策を書くパラグラフなので、新たな現況や問題点を示すことに違和感があります。さらに、長寿命化の課題に対し、なぜこの話題に言及しているのかも理解できません。
⑯ これは設計の話ですよね。⑮と同様、維持管理の観点から長寿命化という課題設定しているにも関わらず、設計の話になるのでしょうか。その関係性を示さないことには、論点がずれているように見えます。
3.新たに生じるリスクとその対策
(1)日本全体でのカーボンニュートラル(CN)未達成
建設段階におけるCO2排出量(SCOPE1~3)割合は全産業の約1割であり、他産業や運輸部門が多くなっている。他産業がCN未達成の場合、2050年に日本全体のCNが達成できないリスクがある⑰。
その対策として、コンクリート部門以外の建設部門や運輸・製造との連携を図る。具体的には、施策の実施状況や効果、課題等について、毎年度、部門毎に点検・公表する。進捗管理を行いつつ効果的な施策の優先付けや世界技術動向も注視し、連携強化を図る。
⑰ 解決策に関連してないですし、新たなリスクでもありません。そもそも、現状を説明していますが、解決策に関連して生じる問題なので、現状を説明していること自体に違和感があります。また、仮定した条件により発動するリスク設定にも違和感があります。見直しましょう。
(2)中小企業のCN未対応
CN政策は2050年達成に向けて年々強化される可能性があり、企業がCO2削減施策を実施する必要がある。しかし、建設業界は、従業員が4人以下の企業が約7割と中小企業が多いため、人的・財政的不足により中小企業が対応できないリスクがある⑱。
その対策として、中小企業向けの支援制度を拡充する。具体的には、低炭素型建機の導入支援や、環境配慮型の入札評価制度の整備で支援する。また、業界団体による技術支援体制を構築する。 以上
⑱ ⑰と同様。
「鋼構造・コンクリート分野におけるCO2削減」チェックバック①
1.CO2削減を推進する上での課題
(1) CO2排出量基準の整備
コンクリート構造物の現行設計基準では構造安全性や耐久性等を要求性能として規定している。しかし、CO2排出量の基準がないので、環境負荷の少ない構造物の製作が困難となっている①。そのため、設計者がCO2排出量を考慮した材料・工法を選定できる基準が必要②である。よって、制度面の観点からCO2排出量基準の整備が課題である。③
① CO2排出量の基準は結論なので、ここでそれを書いてしまうこと何度も同じ話をしているように見えます。前述では、要求性能としているので、環境性能程度の記述が良いと思います。また、基準がないことまでが現況説明だと思います。→「・・・要求性能として規定しているが、環境性能に関する基準は定められていない。そのため、・・・」
② 結論は、CO2の排出量基準なんですよね。これは選定するための基準になっていますので、似て非なるものだと思います。また、構成は、現況→問題点→必要性→結論を意識されていてよくなっています。しかし、問題点、必要性の整理が十分と言えません。例えば、このケースの場合、次のような表現、構成が考えられます。※カッコ内は構成を示すもので、実際の記述に必要なものではありません。
→「・・・基準は定められていない(現況)。そのため、安全性や経済性の確保に偏重し、CO2削減等が設計に反映されない(問題点)。カーボンニュートラルの実現にあたっては、安全性、経済性、環境性能のバランスが取れた設計が不可欠である(必要性)。よって、・・・課題である(結論)。」
③ 選択科目Ⅲは、「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力を問われています。上記の修正をしても、「基準の整備」といった課題提起は、専門性といった視点が弱いと思います。
(2) CO2排出量の実態把握
コンクリート構造物のCO2排出量に関するライフサイクルアセスメントは国土交通省調査によると20%未満と低く不十分である④。その要因として、排出量算定手法の未確立や、関係者間でのデータ共有システムの不備等が挙げられる⑤。そのため、ライフサイクル全体のCO2削減に向けた対策立案・実施に向けた実情を把握する必要である⑥。よって、情報管理の観点からCO2排出量の実態把握が課題である。⑦
④ ライフサイクルアセスメントとは、製品等に対する環境影響評価の手法です。つまり、「手法は20%未満と不十分」という構文になっています。何が20%なのか分かりません。
⑤ 要因として書いていますが、CO2排出量の実態把握手法(課題)の解決策を例示しているように見えます。現状を書いた後は、問題点を指摘すると良いでしょう。
⑥ 「・・・向けた・・・向けた」と連続しています。課題は実態把握なのですから、後述部分は不要です。実態把握ができていないから、対策が講じられないといった問題を記述すると良いでしょう。
⑦ ③と同様。
(3)コンクリート構造物の長寿命化
コンクリート構造物の解体・新設には大量のCO2が排出される。構造物を長期間供用することでライフサイクルCO2を低減できるが、現状の維持管理では予防保全の実施が不十分であり、早期の更新を余儀なくされるケースが多い。そのため、損傷が重大化する前にこまめに補修して構造物寿命を伸ばしCO2排出量を削減する必要がある⑧。よって、維持管理の観点から、コンクリート構造物の長寿命化が課題である。
⑧ 現況、問題点、必要性といった構成要素をきちんと整理しましょう。事後保全が主流(現状)→ライフサイクルでCO2排出量が増える(問題点)→予防保全が重要(必要性)→結論といった整理になるのではないでしょうか。情報を集めたら、構文に従って整理することが大切です。慣れないうちは、キーワードで流れを作ってから書き始めると良いでしょう。
2.重要な課題選定と解決策
「コンクリート構造物の長寿命化」はCO2削減とLCC低減の両立が可能であるため、最重要課題に選定し、以下に解決策を述べる。
(1)予防保全型維持管理システムの構築
コンクリリート⑨構造物の点検作業省力化による維持管理コスト削減を図るため⑩、予防保全型維持管理システムを構築する。IoTセンサーによる構造物の常時モニタリングを実施し、変状の早期検知を行う。具体的には、⑪加速度センサーによる振動特性の把握、電気化学的手法による鉄筋腐食モニタリング、画像解析によるひび割れ検出を行う。得られたデータをAIで分析し、劣化予測の精度向上を図る⑫。なお、なお、⑬AIは学習したデータを基に行動するため、学習していない事例に誤った診断をする恐れがある。そのため、新たな事例は専門家知見を併用し精度向上を図る。
⑨ →「コンクリート」
⑩ CO2排出量削減のための長寿命化が課題であるにもかかわらず、省力化やコスト削減が目的になっています。長寿命化するための解決策となるような表現にしましょう。→「予防保全の普及拡大を図るため、コンクリート構造物の点検作業の省力化とコスト削減を図る。具体的には、・・・」
⑪ ⑩の修正をした場合は、「例えば」などの接続詞を用いると良いでしょう。
⑫ 精度向上云々より、AIで何を行うのかをまず書きましょう。点検の省力化として、センシング技術による点検データ取得、取得データを用いてAIで劣化診断という流れを説明した方が良いでしょう。そのうえで、個別具体の例をしっかり説明しましょう。その例も、手法を総花的に列記するのではなく、一つの例を詳細に説明すべきです。
⑬ →「なお」
(2)自己治癒コンクリートの採用
補修アクセスが困難なコンクリート構造物に対し、炭酸カルシウム析出型の自己治癒コンクリート(ひび割れ幅0.2mm以下)を採用する⑭。これにより、⑮微細ひび割れが発生しても結晶生成による自己シーリング効果で止水性が確保され、中性化や塩化物イオン浸透を抑制する。なお、結晶生成には水分供給が必要なため、乾燥環境下での効果が限定的なことに留意する。
⑭ 他の解決策と同様に、目的→やることの順で書いた方が良いと思います。また、メンテナンス性は向上するものの、課題である長寿命化という視点が足りないように感じます。→「・・・構造物の補修頻度を下げるため、自己治癒コンクリートを採用する。また、自己治癒コンクリートはトンネルなどの止水を目的とした活用にとどまっていたが、これを床板などの構造物に応用しダメージの自己修復による長寿命化を図る」
⑮ ⑭のとおり、ここからは具体例として述べると良いでしょう。→「例えば、炭酸カルシウム析出型の自己治癒コンクリート(ひび割れ幅0.2mm以下)を用いることで、微細ひび割れ・・・」
(3)コンクリート充填性の向上
初期欠陥を防止し耐久性を確保するため、過密配筋部の確実な充填を実現する⑯。具体的には、スランプフロー55cm以上の高流動コンクリートを採用することで、内部振動機による締固め技術がなくても型枠内の充填が可能である。但し、型枠側圧増大による変形防止のため、打込み速度管理に留意する必要がある。
⑯ 耐久性が向上するので長寿命化には効果があるのかもしれませんが、課題では「維持管理の観点」としています。これは、施工上注意する点であり、維持管理の観点ではないと思います。見直した方が良いと思います。なお、本題はCO2削減なので、CO2吸収、固定技術などと長寿命化を合わせた解決策など検討してみてはいかがでしょうか。例えば、コンクリートに塗るアミン化合物などが考えられます(耐食性を高める効果で長寿命化され、さらにCO2の固定化も可といった論調)。そのほかにもあると思いますので、ぜひ調べてみてください。
3.新たに生じるリスクとその対策
(1) モニタリングシステムの不具合リスク
IoTセンサーの故障や通信障害により、劣化状態の把握が困難になるリスクがある。
対策として、異なる計測原理のセンサー⑰を組み合わせた冗長システムの構築と、定期的な校正・更新計画の策定⑱により、モニタリングの信頼性を確保する。さらに、従来の目視点検との併用により⑲、データの妥当性を検証する必要がある。
⑰ 具体的に示した方が良いですね。
⑱ 述べていることに異論はないのですが、結局点検するものの対象が構造物からセンサーに変わっただけで、省力化になるのですかね。
⑲ ここは、UAVの活用などがより良いと考えます。
(2)発注者合意が得られないリスク
自己治癒や高流動のコンクリートは初期コストが上がるため、発注者合意が得られないリスクがある。
対策として、従来工法との比較によるライフサイクルコスト評価を実施し、長期的な経済性を示す。また、CO2排出量の削減効果を定量的に算出し、カーボンニュートラルへの貢献度を明確化することで、高耐久材料採用の妥当性を説明する。 以上
「鋼構造・コンクリート分野におけるCO2削減」チェックバック②
1. CO2削減を推進する上での課題
(1) コンクリートのCO2固定化技術の確立
現在、コンクリート構造物は供用期間中にCO2を吸収・固定する特性が確認(土木学会調査:年間約2.0kg/m³)されている。しかし、固定化量の定量評価手法が未確立であるため、CO2削減に向けた技術開発が停滞している。カーボンニュートラルの実現には、CO2固定化能力を定量的に評価し、その能力を活用した材料採用が必要である。よって、材料面の観点から、コンクリートのCO2固定化技術の確立が課題である①。
① コンクリートの技術者らしい課題設定になっています。欲を言うと、固定化量がはっきり分からないからカーボンニュートラルが実現できないといった論調はやや腑に落ちない部分があります(固定化量が分かってもカーボンニュートラル自体は達成できない)。コンクリートの製造において、1m3あたり約270kgのCO2が排出されます。年間約2kgの吸収では130年以上かかってしまいますので、ライフサイクルアセスメントで言えば、カーボンニュートラルどころか大幅にマイナスです。ここら辺を問題点として、CO2の固定化量の大幅に増加させる技術開発を課題としてはいかがでしょうか。
(2) 低炭素型型施工技術の導入
現在、コンクリート工事ではコストを重視した技術選定が一般的であり、CO2排出量の少ない施工方法の採用が進んでいない。電動・水素建機の導入率は0.5%未満(日本建設機械工業会2023)で、再生可能エネルギーの使用率も5%以下にとどまる②。そのため、施工段階での省エネ化や再エネ活用により、CO2排出量の削減が必要である。よって、施工面の観点から、低炭素型施工技術の導入が課題である③。
② 施工方法の選定において、CO2排出量の評価プロセスがないことが問題点で、その結果として、導入率が低いという現状を生み出しているのではないでしょうか。つまり、現状→問題点→必要性→結論という構成にする場合、前後が逆になっているように感じます。→「現在、CO2を排出しない電動・水素建機の導入率は0.5%未満、再生可能エネルギーの使用率も5%以下にとどまっている。これは施工方法の選定にあたり、安全性や経済性といった項目については評価するものの、CO2排出量という環境評価を一般的に行っていないことが要因である。」
③ CO2削減の必要性は題意ですから、言わずもがなです。また、施工段階というより、前述の内容を踏まえると設計段階でCO2排出抑制をしっかりと加味することが主張ではないでしょうか。→「そのため、施工方法の選定においてCO2排出量の抑制を加味した設計が必要である。よって、設計面の観点から、CO2削減効果の客観的・定量的把握と指針・基準の整備が課題である。」
(3) 予防保全型維持管理の推進
コンクリート構造物の維持管理は、変状の発見後に対策を講じる事後保全が約65%(インフラ長寿命化計画2023)で主流となっている。そのため、構造物の早期劣化による供用期間の短縮が生じ、解体・新設に伴うCO2排出量が増えている。そのため、予防保全による長寿命化が不可欠である。よって、維持管理の観点から、予防保全型維持管理の推進が課題④である
④ 「そのため」という接続詞が繰り返し用いられています。また、接続詞だけでなく、予防保全が必要と説明して、さらに課題は予防保全では繰り返しの説明になってしまっています。さらに、維持管理の観点から、維持管理の推進も同じことを何度も述べているように見えます。結論が予防保全なら背景は、もっと大まかなものが良いでしょう(対象を結論に向けて絞り込んでいくイメージ)。→「そのため、構造物の劣化が進行し、大量のCO2排出が伴う更新が短いサイクルで発生する。このことから、損傷が軽微な段階で補修を行うことで施設を長寿命化させる必要がある。よって、維持管理の観点から、予防保全への転換が課題である。」
2. 重要な課題選定と解決策
「予防保全型維持管理の推進」はCO2削減とLCC低減の両立が可能であるため、最も重要な課題に選定し、以下に解決策を述べる。
(1) デジタルツイン技術による維持管理の構築
構造物の劣化を早期に発見するため、デジタルツイン技術を活用した維持管理システムを構築する。構造物の3次元モデルと構造物に貼付けたセンサーデータを連携させ、リアルタイムでの状態監視を実現する。例えば橋梁床版において、光ファイバーセンサーによるひずみ分布計測と3次元レーザースキャナーによる変位計測を組み合わせ、微細な変状を通信検知する。これにより、進行性の損傷を早期に発見し、予防保全の実効性を向上させる⑤。
⑤ 具体例にデジタルツインに関する記述がありません。
(2)高耐久性予防保全材料の適用
構造物の延命化を図るため⑥、長期耐久性に優れた表面保護材を適用する。ナノシリカとポリマーを複合化した浸透性保護材を用いて、コンクリート表層部の緻密化と微細ひび割れの封緘を行う。例えば、シラン系浸透性吸水防止材の適用により、塩害・中性化に対する抵抗性が従来材の2倍となり、予防保全の実施間隔を10年から20年に延長できる。これにより、予防保全の信頼性向上とLCCの低減を実現する。
⑥ 長寿命化は本来目的なので、内容からするに「補修頻度を低下させるため」ではないでしょうか。
(3)予防保全技術者の育成
予防保全診断は事後保全より高度な技術が必要である。技術者不足に対応するため⑦、デジタル技術を活用した育成システムを構築する。具体的には、橋梁床版の疲労損傷を例に、メタバース空間での仮想点検(ひび割れ密度測定、たわみ計測等)、AI診断支援による損傷度判定(D1~D4)、③⑧熟練技術者のノウハウDB(補修時期・工法選定)を統合する。これにより、技術習得期間を短縮⑨することができる。
⑦ 解決策に現状は不要なので、目的に溶け込ませちゃいましょう。また、少し冗長的ですので、端的に述べましょう。加えて、診断に限定する必要はないと思いますので、高度な技術の例示にしてしまいましょう。→「予防保全は診断をはじめとした高度な技術を必要とするため」
⑧ →不要?
⑨ 多くの人が一斉に学べることや、様々な経験ができることなども効果としていれると、よりよくなると思います。
3. 将来的な懸念事項とその対策
(1) システム全体の信頼性低下リスク
デジタルツイン、高耐久材料、AI診断の全てを統合する⑩ことで、一部のシステム不具合が全体の機能不全を引き起こし、予防保全の実効性が損なわれる懸念がある。対策として、各システムの独立性確保(バックアップ体制)する⑪。また、定期的な実構造物との整合性確認⑫(コア採取による強度試験、中性化深さ測定)を実施する。
⑩ なぜ統合するのですか。必要性が分かりません。耐久財量はそもそもシステムではないです。
⑪ 独立性確保とは何でしょうか。括弧書きはバックアップする旨が書いてありますが、同じ意味ですか。同じであるなら、バックアップシステムを導入するでよいのではありませんか。分かりづらいです。
⑫ これは、提起したリスクとの関係が分かりません。不具合を未然に防ぐためにシステムのキャリブレーションを行うということですかね。そうであるなら、不具合を防止するためといった具合に目的を書かないと読み手は理解できません。
(2) 新技術依存による判断力低下リスク
全ての解決策への過度な依存により、想定外の変状に対する技術者の判断力が低下し、重大な損傷の見逃す懸念がある。対策として、定期的な目視・打音点検の義務付け、実構造物での研修制度確立、熟練技術者による定期的な技術評価を実施する。 以上