添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
添削から見える攻略ポイント2
前回同様(前回はコチラ)、投稿いただいた論文をベースに選択科目Ⅱー2の解法ポイントを説明したいと思います。今回の問題では、条件変更が構造安全性に与える影響を技術的に再検討する姿勢が求められます。論文では、変更の背景を明確にし、接合部や耐久性など安全性に直結する技術的要素を中心に構成することが重要です。業務手順は論理的に整理し、工夫点には合理性と具体性を持たせ、関係者調整も実務的視点で記述することで、解答の信頼性が高まります。
1. 設問の主旨を正確に捉える構成力
本設問では「条件変更に伴う構造安全性の再検討」が求められており、単なる施工計画の変更ではなく、変更が構造物の性能に与える影響を技術的に論じることが重要です。例えば、PCa化による施工性向上や工期短縮は背景として触れるに留め、主眼は接合部の応力伝達や耐久性、プレストレスの変化など、安全性に直結する技術的検討に置くべきです。論点が施工手順や作業安全に偏ると、設問の本質から逸脱してしまいます。
2. 調査・検討事項は構造安全性に直結させる
調査・検討事項では、構造物の安全性に関わる技術的要素を中心に据える必要があります。添削では、運搬・架設計画が「作業安全」に留まり、構造安全性の検討としては不十分と指摘されています。対して、接合部の応力評価やプレストレスロス、長期耐久性の検討は適切な論点です。構造系の変化に伴う性能低下リスクを技術的に分析し、それに対する対策を論理的に示すことが、評価につながります。
3. 業務手順は論理的に整理し、留意点・工夫点を明確に
業務手順は、施工条件の整理から始まり、構造解析、施工計画、品質管理へと流れるように構成することで、読み手にとって理解しやすくなります。添削では、手順と留意点・工夫点を混在させず、役割を明確に分けることが推奨されています。例えば、構造解析では接合部の剛性評価や応力伝達モデルの工夫、品質管理では非破壊検査技術の活用など、技術的な工夫を具体的に示すことで、論文の説得力が高まります。
4. 用語の精度と表現の整合性を保つ
技術論文では、用語の選定と表現の統一が信頼性に直結します。添削では「打設」という表現がプレキャスト桁に不適切である点や、「グラウト充填後の不可視部」という曖昧な表現が指摘されています。こうした点は、施工工程や構造形式に即した正確な言葉を選ぶことで改善できます。また、冗長な表現や重複を避け、簡潔かつ論理的な文章構成を心がけることで、読みやすさと技術的信頼性が向上します。
5. 関係者調整は具体的かつ実務的に記述する
関係者との調整方策では、単なる「協議」ではなく、実務的な対応策を具体的に記述することが求められます。添削では、PCa工場との調整において「モックアップ製作」や「標準化製品の活用」など、具体的な手法の提示が評価されています。また、住民対応では、騒音低減や工期短縮といった定量的効果を示すことで、合意形成の説得力が増します。技術士としての社会的責任と説明力が問われる場面です。
「施工計画の条件変更」チェックバック②
1.構造物の安全性確保のための調査・検討事項
対象構造物は都市住宅地に隣接する場所打ちPC桁橋である。条件変更点は住民及び発注者からの現場作業期間の短縮要請による①主桁のプレキャスト(PCa)化である。以下に調査・検討すべき事項を挙げる。
① →「伴う」
(1)PCa桁の運搬・架設計画の検討:PCa運搬は都市部の狭隘道路での接触事故防止のため、運搬経路、重量制限(25t制限等)、時間帯制限を調査し、計画立案する。架設機材計画は、アウトリガー反力と地盤支持力を調査しクレーン能力と設置スペースを検討する②。
② 構造物の安全性を確保するための調査・検討事項が問われています。この内容は、搬出入における安全性の確保、および作業の安全性を確保するための調査になっています。条件を満たしていません。
(2)PCa化による構造系変化の安全性検討:接合部はPCaの構造的弱点になり得るため、接合方式(ウェット・ドライ接合)、せん断キー配置・形状、接合面処理を検討する。耐荷力確保のため、接合部のプレストレスロスと二次プレストレス評価を検討する③。
③ 構造物の安全性なので、まさにこの内容が解答にふさわしいと思います。前項は、論点を外しているので、これらの検討に必要な調査事項(プレキャストの耐久性、長期的な劣化要因、接合部の応力、長期的な疲労特性、接合時の応力変化などの調査)を述べると良いでしょう。
2.業務を進める手順と留意点、工夫を要する点
(1)施工条件の整理:施工時応力把握のため、PCa化に伴う条件を整理し、設計時の前提条件と実際の施工条件の乖離に留意する④。
④ 手順の内容と留意点・工夫点は分けて書くべきでしょう。また、調査検討事項は、施工時における構造物の安全性を確保するためのものでしたが、手順は変更施工計画を策定する業務だと理解されます。よって、応力把握に限る必要はなく、条件を整理すべきだと思います。
(2)PCa化に伴う構造解析の実施:接合部を考慮した施工ステップで構造解析を行う⑤。留意点は構造性能確保のため、接合部の剛性評価と応力伝達機構の適切なモデル化を行う。モデル化の留意点は接合部を曲げモーメント最大となる支間中央部とならないよう、ブロック割を奇数配置にする。工夫点は荷重挙動の理解促進のため、3D-FEMによる局所応力解析の可視化を行う。
⑤ 接合部の考慮が必要なのは施工ステップではなく、構造解析ではありませんか。→「施工ステップごとに接合部を考慮した構造解析を行う」
(3)PCa部材の運搬・架設計画の立案:PCa部材の施工安全性のため、運搬・架設計画を立案する。留意点は、運搬衝撃による損傷リスクを回避するため、仮支持点を算出し衝撃安全率(2割)を加算する。工夫点は正確な構造とするため、架設時に3次元常時監視を行う。
(4)品質管理計画の策定:接合部の品質確保方法、主桁のプレストレス管理方法(緊張力±5%以内)、出来形管理基準を設定する。留意点は構造一体性確保のため、グラウト充填確認方法を確立する⑥。工夫点はコンクリート打設後⑦、不可視部分となるため、非破壊検査技術(広帯域超音波法)活用による接合部品質を確認する。
⑥ 施工計画の策定上の留意点なので、グラウト不良に留意すれば良いのではないでしょうか。その際、「X線透過法やインパクトエコー法を用いた充填状況を検査するなど」といった具合に確認方法も添えられればなおGOODです(ただし、スペースがないので留意点だけでもOK)。
⑦ コンクリート打設とは、何の工程なのでしょうか。プレキャストの桁ではないのですか。
3.関係者との調整方策
発注者・設計者・施工者の共通認識形成のため、計画変更の初期段階で3者会議を開催し、PCa化による構造安全性への影響や懸念点を共有する。その際、関係者の理解促進と迅速な意思決定を図るため、BIM/CIMモデルを活用した情報共有プラットフォームを構築し、変更内容や施工手順を可視化する。
PCa製作工場との調整は、製品品質の確保のため、製作精度方法や管理基準について事前協議を行う⑧。
住民には、定期的な情報提供により合意形成を図る計画とする。例えば、PCa化による騒音低減効果(騒音規制法基準から約10dB低減)や作業期間短縮効果(通勤時間の作業回避)といった定量数値を示す。以上
⑧ 一般論に見えます。例えば、試作・モックアップを作成して調整する、標準化された製品をベースに調整を図るなどもう少し、具体性が欲しいところです。
※修正点は残されているものの、とても良く修正されています。よく研究されており、見違えるような仕上がりです。
「施工計画の条件変更」完成
1.構造物の安全性確保のための調査・検討事項
対象構造物は都市住宅地に隣接する場所打ちPC桁橋である。条件変更点は住民及び発注者からの現場作業期間の短縮要請に伴う主桁のプレキャスト(PCa)化である。以下に調査・検討すべき事項を挙げる。
- 接合部安全性の検討:構造的弱点となる可能性があるため、プレストレスの伝達状況を調査し、接合方式(ウェット・ドライ接合)、接合面処理を検討する。耐力確保のため、プレストレスロスの影響を評価し、せん断キー位置や仕様(材質・防食対策)を検討する。
- PCaの長期耐久性検討:構造物の機能性を維持するため、環境条件に応じた耐久性を検討する。都市部の橋梁でも凍結防止剤散布の可能性が高いため、周辺の既設橋梁を調査し、配合、かぶり厚、鋼材防食、桁端塗装等、LCCを考慮した長期耐久性を検討する。
2.業務を進める手順と留意点、工夫を要する点
(1)施工条件の整理:当初条件と施工条件の乖離を確認し、PCa化に伴う変更点を整理する。交通規制や作業時間制限等、都市部特有の制約条件に留意する。
(2)PCa化に伴う構造解析の実施:施工ステップごとに接合部を考慮した構造解析を行う。留意点は構造性能確保のため、接合部の剛性評価と応力伝達機構の適切なモデル化を行う。モデル化は接合部を曲げモーメント最大となる支間中央部とならないよう、ブロック割の奇数配置に留意する。工夫点は荷重挙動の理解促進のため、3D-FEMによる局所応力解析の可視化を行う。
(3)PCa部材の運搬・架設計画の立案:PCa部材の施工安全性のため、運搬・架設計画を立案する。留意点は、運搬衝撃による損傷リスクを回避するため、仮支持点を算出し衝撃安全率(2割)を加算する。工夫点は正確な施工とするため、架設時に3次元常時監視を行う。
(4)品質管理計画の策定:接合部の品質確保方法、主桁のプレストレス管理方法(緊張力±5%以内)、出来形管理基準を設定する。構造一体性確保のため、グラウト不良に留意する。工夫点は、グラウト充填後はシース内部が不可視部となるため、広帯域超音波法などの非破壊検査技術を活用して充填状況を確認する。
3.関係者との調整方策
発注者・設計者・施工者の共通認識形成のため、計画変更の初期段階で3者会議を開催し、PCa化による構造安全性への影響や懸念点を共有する。その際、関係者の理解促進と迅速な意思決定を図るため、BIM/CIMモデルを活用した情報共有プラットフォームを構築し、変更内容や施工手順を可視化する。
PCa工場との調整は製品品質確保のため、試作としてモックアップ製作し、製作・管理方法を具体化する。
住民には、定期的な情報提供により合意形成を図る計画とする。例えば、PCa化による騒音低減効果(騒音規制法基準から約10dB低減)や作業期間短縮(通勤時間の作業回避)といった定量数値を示す。 以上