添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
環境課題も山盛り!?
前回はDXということで、情報通信技術が注目されていることをご紹介したところです(前回の記事はコチラ)。本日は、対をなすようなトピックになりますネイチャーポジティブについて考えてみたいと思います。
国土交通省では、国土交通省グリーン社会実現推進本部にて環境行動計画の改定について議論されています(国交省のページはコチラ)。同計画の改定(案)では、技術士二次試験で頻出の「環境」「社会基盤」「GX」「循環経済」「気候変動適応」など、注目の内容が詰まっています。
本計画は、2050年カーボンニュートラルに向け、国土交通分野が担うべき脱炭素・自然共生・循環経済の方向性を体系的に示したものです。技術士としては、単なる施策の暗記ではなく、「なぜ必要か」「どのように実装するか」「どんな効果が期待されるか」を論理的に語れることが重要になります。
まず、計画の柱は7つあり、省エネ・クリーンエネルギー移行、自然共生、循環資源利用、地域経済づくり、気候変動適応、環境価値市場、そして体制整備と、まるで“環境版フルコース料理”のように多彩です。
特にGX分野では、住宅・建築物の省エネ強化、次世代自動車の普及、鉄道・船舶・航空の脱炭素化、インフラ空間を活用した再エネ導入など、技術士が語りやすい技術的テーマが豊富です。試験で「あなたならどう推進するか」と問われたら、技術的合理性と社会実装の視点をセットで語ると説得力が増します。
自然共生では、グリーンインフラの拡大が中心で、評価手法の確立、資金調達、官民連携、衛星画像などの新技術活用がポイントです。技術士としては、単なる緑化ではなく「多機能性」「定量評価」「地域価値向上」をキーワードに語ると、採点者をうならせることができると思います。
技術士試験では、このような施策を単に説明するだけでは不十分で、「課題→原因→対策→効果」の構造化が必須です。環境行動計画はそのまま論文の材料になるため、ぜひ“技術士的に整理”して使いこなしていただきたいと思います。
環境部門(自然環境保全)「自然再生」
そんな環境問題については、環境部門の論文を見れば一気に知識は高まります。当然、環境に特化してますからその知識は深いですが、対象としている事柄にある背景や目的は建設部門でも共通しています。先にも述べましたように、知識の再整理や構造化が技術士試験では有効です。多くの知見に触れ、思考を整理してみると良いでしょう。それでは、論文を見ていきましょう。
※問題は令和6年度環境部門自然環境保全Ⅱー1-4になります。
「生物多様性枠組」初稿
昆明・モントリオール生物多様性枠組の2030年グローバルターゲットのうち、数値目標が設定されているのは、自然再生、30by30、外来種対策、汚染防止・削減の4つである。このうち、自然再生の目標は、生物多様性と生態系の機能・サービスとその健全性及び連結性を向上させるために、2030年までに陸域、陸海水域①、沿岸域の劣化した生態系の30%を効果的に回復下に置くことである②。
① →「陸内水域」
② 一文が長いですし、「・・・ために、・・・までに・・・効果的に・・・回復下に」といった具合に「に」が連発していて読みづらいです(そもそもグローバルターゲットの原文が読みづらいのですが・・・)。例えば、次のように整理してはいかがでしょうか。
「このうち、自然再生の目標は、生物多様性と生態系の機能・サービスとその健全性及び連結性を向上させることである。具体的には、2030年までに陸域、陸内水域、沿岸域の劣化した生態系の30%を効果的な回復下に置く。」
目標達成に向けた取組④として、湿地や森林の修復・再生、荒廃地回復、生態系ネットワークの構築などがある。具体的には、湿地では放棄された水田やため池の修復、森林では在来種の植林や適切な森林管理、荒廃地の緑化、水辺空間の創出、沿岸域ではサンゴ礁やアマモ場の修復事業が挙げられる⑤。
また、土地開発や森林の皆伐といった非持続的な林業、汚染、土地の地力を考慮しない農業など、生態系劣化の要因を取り除くことも不可欠である⑥。さらに、シカやイノシシによる獣害も生態系劣化の大きな要因の1つであり、適切な鳥獣保護管理計画の策定と実行が求められている。
緑地が少ない都市部では、屋上緑化やポケットビオトープの整備など、小規模な緑地をネットワーク化する方法が有効⑦である。また、オープンガーデンの推進や緑地認証制度⑧を導入し、私有地における自然再生の取り組みを奨励することも効果的である。⑨ 以上
④ 取り組みの内容を書いてはダメというわけではありませんが、問われていることは目標達成に向けた活動の考え方です。この問題でいう考え方とは、重視すべき点、活動を行う際に踏まえるべき事項など考え方を中心に書くべきです。
⑤ 修復事業を総花的に並べるのではなく、④のとおり修復事業に行うにあたっての考え方を示す必要があると思います。
⑥ これは、考え方を示しておりGOODです。このような記述が他の部分でもあると良いと思います。
⑦ これもGOODです。
⑧ 市民緑地認定制度、緑化施設整備計画認定制度、優良緑地確保計画認定制度など具体的な制度を書いた方が良いでしょう。
⑨ 考え方が述べられている項目、述べられていない項目を整理しておきます。
修復事業→NG(手段のみで考えなし)
生態系劣化要因の除去→GOOD
獣害→生態系劣化要因の除去例にすぎない
緑地のネットワーク化→GOOD
私有地→NG(手段のみで考えなし)
「生物多様性枠組」チェックバック
昆明・モントリオール生物多様性枠組の2030年グローバルターゲットのうち、数値目標が設定されているのは、自然再生、30by30、外来種対策、汚染防止・削減の4つである。本稿では、「ターゲット7. 汚染防止・削減」について述べる。
1.目標:数値目標として、「(a)より効率的な栄養素の循環・ 利用等により環境中に流出する過剰な栄養塩類を少なくとも半減すること」、「(b) 科学に基づき、食料安全保障や生活を考慮しつつ、 病害虫・雑草の総合防除などにより農薬及び有害性の高い化学物質による全体的なリスクを少なくとも半減すること」が掲げられている。
2.活動の考え方:この目標を達成するための活動を展開する際、①より効率的な栄養素の循環・ 利用等、②科学に基づき、全体的なリスクを考慮、③あらゆる汚染源からの汚染のリスクと悪影響について累積的効果を考慮する①。
① 活動をする際に考慮すべき事項が列記されていますが、聞かれているのは「活動の考え方」です。つまり、「どんな活動をすれば目標達成できるの?」ということを聞かれているのではないでしょうか。例えば、栄養塩類の流出や農薬の使用によるリスクを半減させるため、農業や工業活動の監視と規制を強化する。農薬及び有害性の高い化学物質によるリスクの半減であれば、肥料の適正利用や有機農業の拡大といった活動のアウトラインを述べてはいかがでしょうか。
3.具体例:具体的には農薬や化学肥料による農地の汚染やマイクロプラスチックによる海洋汚染がある②。前者について、世界的には有機農業取組面積の全耕地面積に占める割合が増加している③。また、後者については、プラスチックなどの汚染リスクの低減が掲げられた④。汚染は生物多様性損失の4番目の要因にあたる。対象物質を拡大し、 その対策を加速させることで、生物多様性の損失へ対処する⑤。 以上
② 「具体的には」とありますが、何の具体を示しているのか分かりません。
③ この記述は、前述の内容の何と関係しているのかよく分かりません。数値目標は2つ示されていますが、どちらの目標達成に向けた活動なのか。さらに、活動の考え方を述べるべきところ、現状の説明になっています。
④ 具体例としていますが、具体性に欠けています。また、誰が掲げたのか、掲げたことが活動の考え方なのか、といったことが判然としません。聞かれていることに的確に答えましょう。
⑤ これも、具体性に欠けますし、目標との関係性もさっぱり分かりません。
- 活動の考え方の説明に当たっては、どの目標に対する活動なのかを明記したうえで、①で指摘したアウトラインを示した後に、具体例で補強するといった構成が良いと思います。


