添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
国土形成計画
国土形成計画は、令和5年7月28日に変更の閣議決定がなされました。過去記事でも、この計画の重要性はお伝えしたところです。必須科目Ⅰに出題されても良いくらい、建設部門においては重要な計画です。
しかし、過去問の傾向からいえば、都市及び地方計画の選択科目に出題される可能性が高いです。過去問では、基本計画の説明とスーパーメガ・リージョンの形成への期待を問う問題でした。当然、変更された国土形成計画は、出題の可能性が高いと言えます。
技術士 試験の選択科目Ⅱー1は予想が難しいので、国土形成計画は1丁目1番地として対策を講じることをお勧めします。この内容については、対策をしておかないと一般論に毛が生えたような知識では、太刀打ちできません。また、国の方向性を示す計画ですので、多くの人に役立つ情報が満載です。
自分は関係ないと思わず、建設部門の 技術士 を目指すものとして、是非一度読んでみることをお勧めします(計画を見たい人はコチラ)。
国土形成計画では何が出るのか?
今回投稿いただいた論文は、問題も投稿いただいており、これがまた非常に参考になる内容です。投稿者においても、国土形成計画の重要性を踏まえ、結構研究しているみたいです。その結果として、問題も2パターン用意されています。
一つは、過去問と同じパターンの基本構想の概要説明です。また、シームレスとはどのような考えなのかも触れて答えるというリアルな予想を立てています。さらに、機能分散と連結強化を図るための取組み2つ(全国的な回廊ネットワーク及び日本中央回廊の形成)も対する期待についても問われています。
もう一つは、国土づくりの基本的方向性を問う問題です。これは、昨今の出題傾向を踏まえたアレンジ問題となっています。基本的方向性は3つありますが、そのうちの一つを挙げて概要と、関連施策を述べるものとなっています。解答においては一つ挙げれば良いのですが、知識としては3つとも覚える必要があります。
一応、3つの基本的方向性を書いておきますね。
(1)デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり
(2)巨大災害、気候危機、緊迫化する国際情勢に対応する安全・安心な国土づくり
(3)世界に誇る美しい自然と多彩な文化を育む個性豊かな国土づくり
実は、この下には4つの戦略的視点という者も存在しています。この戦略が問われることも十分考えられますので、キーワード学習等で身に着けておきましょう。これも、念のため書いておきましょう。
(1)民の力を最大限発揮する官民連携
(2)デジタルの徹底活用
(3)生活者・利用者の利便の最適化
(4)縦割りの打破(分野の垣根を越えた横串の発想)
それでは、興味深い「国土形成計画」に関する論文を見てみましょう。
論文
国土形成計画パターンA
問題:パターンA
第三次国土形成計画(全国計画)が国土の基本構想として示す「シームレスな拠点連結型国土」について、「シームレス」の概念にふれて説明せよ。また、国土の基本構想の実現に、全国的な回廊ネットワーク及び日本中央回廊の形成が、どのように資することが期待されるかを述べよ。
(1)「シームレスな拠点連結型国土」の構築
全国計画におけるシームレスの概念は、デジタルとリアルの融合により行政界を越えて暮らしに則したサービス等を展開することである①。昨今、東京一極集中化により地方の人口減少やそれに伴う地域力の弱体化が深刻化している。持続的な生活圏の確保には、人口や諸機能を分散的に配置し、機能を集約していく必要がある②。このため、高規格道路等の交通ネットワークやデジタルインフラにより広域的にシームレスに繋がりあうことで、③場所や時間の制約を克服し、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を実現していく。
① 説明すべきは、シームレスな拠点連結型国土です。この説明の過程において、シームレスの概念に触れればよく、あくまで説明の主体はシームレスな拠点連結型国土です。この項目全体が、シームレスの説明になっているように見えます。
② 社会背景ではなく、シームレスな拠点連結型国土を説明しましょう。例えば、「東京一極集中の是正を図り、国土全体にわたって、広域レベルでは人口や諸機能が分散的に配置される国土構造を目指すものである」といった具合に内容を説明する形にすると良いでしょう。
③ ここで、シームレスが出てくるので、概念を補記すると良いと思います。
(2)広域的な機能の分散と連携強化への期待
①全国的な回廊ネットワークの形成 シームレスな高規格道路ネットワークや自動運転等のデジタル技術を活用した交通等、国土全体のネットワークの強化により、広域にわたって巨大災害におけるリダンダンシーの確保を図る④。これにより、人口が集中する太平洋側のみならず日本海側のポテンシャルを発揮した粘り強い⑤国土構造の構築が期待できる。
④ ネットワークの形成が、災害対策であるように読めます。このネットワークは、「①中枢中核都市等の機能の維持・強化を図りつつ、広域圏内の生活圏とのネットワークを強化し、一体的な広域圏の自立的な経済循環システムの構築を図る、②質の高い交通やデジタルのネットワークといった国土基盤の充実・強化を通じて、日本海側と太平洋側の二面を効果的に活用しつつ、内陸部を含めた連結を図る、③広域にわたる巨大災害におけるリダンダンシーの確保を図る国土全体のネットワーク機能を強化する」といった役割があると思います。よって、この説明では、1側面の説明になっています。
⑤ 何に対して粘り強いのか記載しましょう。
②日本中央回廊の形成
三大都市圏を約1時間で結ぶリニア中央新幹線の整備により、経済集積圏域を形成する。併せて、主要国際空港や国際コンテナ戦略港湾の機能強化及び活用を図ることで、広域的な人流・物流の効率化や国際競争力の強化が期待できる。 以上
国土形成計画パターンB
問題:パターンB
第三次国土形成計画(全国計画)が国土づくりの目標として示す「新時代に地域力をつなぐ国土」について、基本的な方向性を一つ挙げ、その概要を述べるとともに、目標を達成するための具体的な施策を複数述べよ。
(1)基本的な方向性とその概要
国土づくりの基本的方向性の一つとして「デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり」がある。これは、我が国が直面する様々な危機に対して地方の持続性を確保するため、デジタル化の推進による効率性・生産性の向上を目的としている①。デジタルの特性を国土づくりに活かし、手段として徹底活用してリアルの地域空間の質的な向上を目指す。「デジタルとリアルの融合」により場所と時間の制約を超え、多様な暮らし方や働き方を自由に選択できる地域社会を形成し、個人と地域社会のWell-Beingの向上を図る。
① 方向性なので、文末の「目的としている」は少々違和感があります。→「図るものである」
「危機に対して持続性を確保する」との表現も違和感があります。どのような危機なのか分からないことから、危機と持続性が結び付きません。同様に、持続性と効率性・生産性の向上との関連も分かりません。後述の文章を読むと理解できる部分もあるので、この部分は修正のうえ、最後に持ってくると良いと思います。
(2)目標を達成するための具体的な施策②
①MaaS
旅行者一人ひとりのトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通等の移動サービスを最適に組合せて、検索から決済までを一括で行うサービス。観光や医療等の連携により、移動の利便性向上を図る③。
②PLATEAU
都市活動の基盤データとして3D都市モデルを整備し、オープンデータ化する。誰もが自由に都市のデータを引き出し活用できることを目的とする④。
③女性デジタル人材育成プラン⑤
女性の就業獲得や所得向上に向けて、就労に直結するデジタルスキルを身に付けた女性デジタル人材育成等の取り組みを推進する。 以上
② 各施策を否定するものではありませんが、確実に評価を得るためには、計画に記載のある施策であることが望まれます。例)リニア中央新幹線、重要な物資のサプライチェーンの強靱化、コンパクトプラスネットワーク、デジタル田園都市国家構想、自動運転・ドローン・自動配送ロボットなど
③ 利便性を図るとしていますが、前述では「効率性・生産性の向上を目的」とあります。視点が少しずれているように感じます。
④ これも③と同様です。文末を「・・・引き出し効率化を図る」とすると、前述と明確にむずび付くと思います。
⑤ このテーマも違和感があります。女性をデジタル分野で活躍させるというよりも、場所と時間の制約が取り払われることで、子育てをしながら働けるといった環境の実現が、前段で述べている多様な働き方なのではないでしょうか。