添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
令和7年度 技術士 第二次試験の実施について
日本技術士学会のホームページで、「令和7年度 技術士 第二次試験の実施について」が公表されましたね。以前、緊急速報として令和7年度の試験方法をお伝えしたところです(過去記事はコチラ)。この時は、技術士分科会試験部会で示された資料としての情報でしたが、今回は正式に試験方法が公表されています。
技術士第二次試験実施大綱によれば、前回の予想通り「総合技術監理部門を除く技術部門の必須科目及び選択科目は、いずれも記述式により行う。」とありました。ようやくこれで、方法が確定したので本腰を入れて取り組むことができます。
今年度は、筆記試験の難易度は高く、筆記試験の合格率も低下しています。今後も、この難易度は常態化するつもり取り組むと良いでしょう。どのような問題でも、正しく理解し、的確に解答することが元前られます。
この時期は、この基礎能力を高める勉強が大切になります。小手先のテクニックは試験直前でも身に着けることができますが、国の施策に関する深い理解は一朝一夕にはいきません。また、理解した内容をきちんと言語化する能力も同様です。
これらの取り組み方法や作文技術は、直近の記事でも紹介しています(理解、言語化手法①、言語化手法②)。この三つの記事は非常に大切な内容になります。これらの内容を理解しないことには、真の実力を身に着けることはできないと考えています。
真の実力がないと、ちょっとでもひねった問題に遭遇すると混乱してしまい、合格への道は険しいものになります。しかし、真の実力があれば、ちょっとぐらいのひねりではビクともしない安定した解答が可能になります。また、この真の実力は、仕事の面でも大いに役立ちます。
技術士の資格取得は、通過点でしかありません。技術士として活躍するためには、真の実力を備えることが絶対条件です。せっかくですから、真の実力を身に着け、余裕をもって合格を勝ち取りたいものです。よって、この時期の勉強は、とても重要と言えます。
論文
本日の添削LIVEは、建設部門 電力土木 平成25年度「経済性評価手法」をチェックバック含めお届けします。前項にも書きましたが、合格論文を作成するためには、何より問題を正しく理解することが大切です。各内容を検討し、書き始める前に今一度問題を読み返す習慣を身につけることをお勧めします。問題の聞いていることと異なることを答えては、致命傷になります。ご注意あれ~!それでは早速論文を見ていきましょう。
経済評価手法①(平成25年選択科目Ⅱー1-1)
電源の経済性評価は、1つの発電所に対して評価する均等化発電原価(LCOE)で行われることが多い。
LCOE=(建設費+維持管理費+燃料費等)/発電量
しかし、対象発電所以外に生じる費用が含まれていない点や、電源が持つ付加価値が考慮されていない点等が、再エネの経済性評価には適してない①。以下に、再エネに適した経済性評価手法を述べる。
① 冒頭部分は、問われていること(手法、概要、留意点)の何について述べているのか分かりません。
最初の文は、問われていることのどれにも当てはまりません。従来手法であるLCOEは、読み手が知っている前提とするか、いずれかの手法の中で従来手法として端的に説明すべきでしょう。「しかし」以降は、再エネに適した手法を問われているにも関わらず、再エネに適していない手法をこんなにスペースを使って書く必要はないと思います。この手の問題は、以下の構成で良いと思います。
1.〇〇手法
(1)概要
(2)適用上の留意点
2.●●手法
(1)概要
(2)適用上の留意点
技術士論文で重要なことは、問われていることに対して的確に答えることです。問われていないこと(余分なこと)は、一切書かないが鉄則です。
(1) システムコスト
1)概要:電力システム全体で経済性を評価する指標である②。従来のLCOE③に対象発電所以外に生じる費用を考慮する④。この費用は、例えば、需要地から離れた場所に建設された再エネ電源を需要地に運ぶための送電線増強費用である。また、長距離送電による送電ロスや、再エネのピーク出力に対応する火力の設備利用率の低下も費用と考える⑤。
② まず、主語を書きましょう。小見出しはありますが、これでは何の説明か分かりません。次に、聞かれていることは、「手法」であり「指標」ではありません。この指標をどのように用いて評価するのかを書かないと的確な解答とは言えないと思います。例えば、「システムコストは、ディスパッチできない電源の導入拡大を受けて、発電される電力が時間的・地理的にどのような価値を持っているかを考慮するための評価手法である。」といった具合になります。
③ 冒頭をバッサリ削除するので、LCOEを端的に説明すべきでしょう。
④ 抽象的ですね。→「LCOEで反映されている費用項目に加えて、供給能力維持/供給過剰対策費用、需給調整費用、流通対策/系統対策費用を考慮する」
⑤ 供給能力維持/供給過剰対策費用、需給調整費用、流通対策/系統対策費用ごとに具体例を示すと良いと思います。
2)留意点:電力システム全体の経済性を評価するため、個々の発電所の評価には向いていない。電源構成や系統等のシステムの想定によって費用に差が生じる。⑥
⑥ 記述内容は、とても良いと思います。しかし、冒頭部分が不要なので、スペースが生まれます。「配電部門まで考慮した分析はまだ限られている」、「需要側の施策(DR等)の費用は計上されない」といった留意点も追加してはどうでしょうか。
(2)価値調整済みLCOE(VALCOE)
1)概要:従来のLCOEに、各電源の付加価値を考慮した指標である⑦。再エネの場合、例えば、温室効果ガスの削減効果が付加価値の1つとなる⑧。
2)留意点: VALCOEは、電力システム内における各電源の競争力を比較するための指標である。このため、電気事業者が実際に負担する費用とは異なる⑨。 以上
⑦ これも②と同じです。また、付加価値だけを考慮するのでしょうか。「価値が低い電源」を「相対的にコストが高い」電源と見做し、市場の平均価値から当該電源の価値を引くケースもあるのではないでしょか。→「価値調整済みLCOEとは、再生可能エネルギーの大量導入等に伴う電力市場の変化を経済性評価に取り入れる評価手法である」
⑧ ⑦の通り、マイナイ価値の例示もあると良いと思います。
⑨ 内容は良いともいますが、聞かれていることは留意点なので、文末を「・・異なることに留意する」とし明確化しましょう。
経済評価手法②(チェックバック)
(1) システムコスト ―「追加費用」を積み上げる手法
1)概要:システムコストは、発電量当たりのコストである均等化発電原価(LCOE)に、LCOEで考慮していない追加費用を積み上げて、電力システム全体で経済性を評価する手法である①。追加費用は、①系統費用、②供給力維持費用、③調整力提供費用である。①は再エネ電源の系統への接続費用や、系統の増強・延長費用である。②は再エネの出力増加に伴う火力発電所の設備利用率の低下や、蓄電池の費用である。③は再エネの出力変動を補う火力や揚水の出力調整費である。
① 1文が長く読みづらい印象を受けます。文を1度切ると良いでしょう。→「システムコストは、電力システム全体で経済性を評価する手法である。コストの算定にあたっては、均等化発電原価(LCOE)に追加費用を積み上げる。」
2)留意点:システムコストは、電力システム全体を評価対象とするため、個々の発電所の評価には向いていないことに留意する②。また、電源構成や系統等のシステムの想定によって費用に差が生じること③に留意する。
② 前回は良いとしましたが追加費用の内容を改めて見ると、追加するものは個々の発電所では検討のしようがないものばかりです。そもそも個々の発電所でこの手法を用いることは想定されないと思います。留意点と言えるか疑義があります。
③ 費用に差が生じるから、比較評価するのではないのですか。これは、適用上の留意点と言えるか疑義があります。
(2) 価値調整済みLCOE ―「価値」を差し引く手法
1)概要:価値調整済みLCOE(VALCOE)は、①時間ごとに異なる電力の価値、②調整力としての価値、③容量としての価値をLCOEから調整した費用により、各電源の経済性を評価する手法である。価値の調整は、市場の平均価値から当該電源の価値を差し引いた値を、LCOEに加算することで行う④。
2)留意点: VALCOEで求まる費用は、電力システム内における各電源の競争力を比較するために用いるものであり、電気事業者が実際に負担する費用とは異なる点に留意する。
④ →「に加算する」または「への加算により行う」