-IoE-チェックバック②
【 技術士 二次試験対策】
本日は、電気電子部門の「IoE」をお届けします。IoE社会(エネルギーの需給情報がインターネットにより結合されエネルギー需給がコントロールされている社会)が実現すれば、スマートシティの普及が加速化させると考えらます。この新しい社会システムが広がれば、カーボンニュートラルが実現されるとともに、電力のレジリエンスも強化され、安心で便利な暮らしを支えることができます。
IoE社会がもたらす未来像も興味深いのですが、これを実現する技術が近未来的でワクワク感を刺激してくれます。国立研究開発法人科学技術振興機構では、「IoE共通基盤技術では、ユニバーサル性とスマート性に富み急激な負荷変動や電圧変動に対する最適制御を可能とするユニバーサルスマートパワーモジュール(USPM)を開発し、さらに、ワイヤレス電力伝送(WPT)システムへの応用を見据えた次世代電力伝送システムの開発を行います。」と述べられています。
つまり、「ユニバーサル性(どんな機器でも)、スマート性(簡単)に制御できる装置を作っちゃいますよ、ついでにワイヤレスで充電させちゃいましょう!」といった技術開発を行っているようです(その先にある技術解説はちんぷんかんぷんでした・・・)。給電や充電を意識しないで済む社会ができれば、EVやドローン配送などは飛躍的に普及するでしょうね。つまらん話、スマホも充電端子なくなるのでしょうね。
通信がワイヤレスされたのと同じように、エネルギー伝送もワイヤレスが当然になる時代は、目前ということです。これらの技術は、建設分野においても大きな影響を与えることになると考えられます。i-Constructionの拡大や、デジタルツインの活用拡大、物流や旅客輸送のイノベーション等これまでの考えにとらわれない、新しい発想が建設技術者に求められるのでしょう。
それでは、IoE論文をみてみましょう。
1.IoE社会の広域的な早期実現に向けた課題
1.1ワイヤレス電力伝送技術の確立(電力供給の観点)
IoE社会実現のため、様々な機器(EV、IoT端末等)への安定的な電力供給が必要である。しかし、現状では様々な機器への電力伝送技術が未確立である①。
以上より、効率的な電力供給の観点②から、既存インフラ活用の中でワイヤレス電力伝送技術を用いて、センターカップリングを実現することが課題である③。
① 科学技術振興機構のHPの記載では、「Society5.0時代のエネルギーシステムであるIoE(Internet of Energy)社会の実現のため、再生可能エネルギーが主力電源となる社会の次世代エネルギー変換・マネジメントシステムの設計について検討し、エネルギー利用最適化に資するスマートシステムの構築と、その要素技術であるエネルギー高速変換・伝送システムのイノベーションの達成に向けた研究開発を実施し、社会実装を図っていきます。」、「屋内センサーネットワークやモバイル機器へのWPT システムの開発、多様な用途を見据えたドローンへのWPTシステムを開発し、超スマートで強靭なIoE社会の姿を提示します。」とあります。知識がないので、引用した形で修正させていただくと「エネルギー高速変換・伝送システムのイノベーションの達成に向けた研究開発を実施し、社会実装する必要がある。特に、ワイヤレス伝送システムは、超スマートで強靭なIoE社会を構築に不可欠である。」となりますが、いかがでしょうか。
② 「効率的な電力供給の観点」→「技術面の観点」
③ タイトルと課題が異なっています。よって、シンプルに「ワイヤレス電力伝送技術の確立が課題である。」で良いと思います。
1.2需給バランスの維持(再エネの観点)
日本の再生可能エネルギー(再エネ)電力比率は約20%(2022年度)であり、IoE社会実現のためには、再エネの主力電源化が求められている。
一方、電力供給網には電力需要と供給量を一致させる同時同量制御が不可欠である。しかし、発電量が気象条件により時間変動する再エネのみで同時同量制御することは不可能である④。そのため、再エネの⑤観点から、電力需給のバランスを維持することが課題である。
④ 完全否定してしまっては、課題と矛盾しませんか。「難しい」くらいにトーンを落とした方が良いと思います。
⑤ 再エネの観点は、どのような立場なのか分かりづらいです。「仕組み面の」、「システム面の」などの表現はいかがでしょうか。
1.3互換性のあるIoT機器の開発(接続の観点)
IoE社会実現にあたっては、既存機器とIoEシステムが不具合無く接続する必要がある。しかし、全て新機種へ更新する場合、多額なコストを要する。
そのため、多種多様な既存機器が接続するために、互換性のあるIoTモジュール機器開発が課題である⑦。
⑦ 科学技術振興機構のHPの記載では、『「IoE共通基盤技術」では、ユニバーサル性とスマート性に富み急激な負荷変動や電圧変動に対する最適制御を可能とするユニバーサルスマートパワーモジュール(USPM)を開発し、さらに、ワイヤレス電力伝送(WPT)システムへの応用を見据えた次世代電力伝送システムの開発を行います。』とあります。ここで言っているのは、おそらく下線部を述べているものと推察されますので、「互換性のあるIoTモジュール」→「ユニバーサルスマートパワーモジュール」との表現が良いのではないでしょうか。
また、観点がないので、「普遍性の観点」、「互換性の観点」などを追記してはどうでしょうか。ただし、1.1ワイヤレス伝送と同様に技術面の観点となりますので、多角的な観点を有するのかという疑義が生じます。しかし、電気電子部門は建設部門とは異なり、技術面を複数の視点で述べることは許容されるのかもしれません。よって、この課題を変えるか、ワイヤレス伝送の観点を「技術面」から「エネルギー伝送の多様化に応える観点」、「柔軟な接続性の観点」などに変えるかどちらかの対応が必要と考えます。
2.最も重要と考える課題
「再エネ変動の最適制御」が、最も重要な課題と考える。なぜなら、再エネ変動を最適制御することで、IoEシステムの電力安定供給に寄与できるからである⑧。
⑧ 3つの中から選ぶので、相対評価であるべきと考えます。例えば、「最も効果的だ」とか、「他に比べすぐに対応できる課題だ」などが考えられます。
2.1 CO2フリー水素を用いた火力発電の導入⑨
気象条件により時間変動する再エネ発電量と電力需要のギャップを埋めるために、発電量を変動させやすい火力発電を導入する。
火力発電には化石燃料ではなく、CO2フリー水素を活用することで、CO2を排出しない発電を実施する。
以上より、電力需給調整の手段を確保することで再エネ導入を普及させ主力電源化することができる⑩。
⑨ 最適制御するための解決策ですか?
⑩ 再エネの主力電力化が目的ではなく、再エネの最適制御するための解決策を書きましょう。
2.2 VPP(バーチャルパワープラント)の導入
分散型電源(再エネ電源、蓄電池)の一つひとつは小規模である。しかし、IoTを活用したEMS技術によりこれらを束ね、一つの大きな発電所(VPP)のように遠隔統合制御することで電力需給バランスを調整する。
また、需要家が電力使用量を制御するディマンドリスポンス(DR)を実施し、電力の需給バランスを調整する⑪。需要家やアグリゲーターへのインセンティブの仕組みづくりを実施し、DRを促進していく必要がある。
⑪ 電源(供給)側の話に対し、需要側の話をしますよという視点を明確にするため、「また、需要家においても、電力使用量を制御するディマンドリスポンス(DR)により、電力需要パターンを変化させる。」としてはどうでしょうか。
⑫ やることを書くべきパートなので、順番を入れ替えましょう。また、アグリゲーターは調整側なので、インセンティブを享受する立場にあるのでしょうか(間違ってたら無視してください)。「DRを促進するため、需要家にインセンティブを与える仕組みづくりを進める。」でどうでしょうか。
2.3 エッジサーバの導入
再エネ変動の最適制御には、安定した通信環境が必要である。そのため、IoT端末の近くにサーバを分散配置するエッジサーバを導入する。例えば、工場の各センサーデータ(温度、圧力、振動等)をエッジサーバにてリアルタイムで収集分析し、稼働状況のみを中央サーバに送信する。
これにより、中央サーバへのデータ負荷や通信遅延を抑えることができ、安定した通信環境を構築できる。
3.解決策による波及効果及び懸念事項とその対応策
3.1波及効果
解決策により、電力の自給自足が可能となり、災害時のレジリエンス強化といった波及効果が生じる。
3.2.1懸念事項
VPPやIoT端末設置に伴う通信ネットワーク化により、サイバー攻撃を受けるリスクが高まる。これにより、①システムに連携する公共の安全に直結する重要設備(病院、防災設備)の停止、②各家庭の個人情報や企業情報の流出が懸念される。
3.2.2懸念事項への対応策
セキュリティ対策として、①ファイアーウォールによるウィルス侵入防止、②システム基幹部分におけるDMZ領域の保護、③サーバ冗長化を実施する。
4.業務遂行における必要な要件
4.1技術者としての倫理
公共の安全を最優先する。システム構築において、データが流出漏れしない様、管理徹底していく。
4.2社会の持続可能性
解決策に用いる機器は、3Rやライフサイクルコストなど、業務の各段階で常に環境に配慮した計画設計施工を実施していく。 以上