添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
上達のコツ
GWを終えて、そろそろご自身でも納得のできる論文が書けるようになりましたかね。ちょっと練習しただけでかなりのレベルに持っていける人、何度かいてもなかなか修正できない人、 技術士 論文の勉強においても個人差はあります。
しかし、コツさえつかめば、誰でも一定レベルの論文を書くことができます。このことをしっかり認識し、諦めずに取り組みましょう。では、コツとは一体なんですか?ということになります。コツは、これまでお伝えしてきたように、論文には「型」があります。
この型を身に付けることを意識して論文を書きます。この型は、以前にお伝えした「ひな型」、「解体新書シリーズ(課題編、解決策編、リスク・要点編)」をご覧いただくと良いでしょう。文章作成が苦手な人は、忠実にサンプルをなぞると良いでしょう。
解答作成に必要な参考資料を見つけたら、この型に当てはまるように資料の文章を再構築します。このときは、大事な要点をまとめるといった感覚で記述します。この要点をまとめるときは、前後の文の関係を良く見ます。前の文と後に書いた文につながり(関係性)がないと、わけが分からなくなります。
ただ、思いつくまま引用・編集するのではなく、文脈を大切にしましょう。通常は、起承転結・序破急といった構成を意識して書きます。しかし、 技術士 論文の作成においては、この小難しい構成を考えることなく、型に当てはめることで理解しやすい文章構成を自動的に作成する戦法をとることが合理的です。
技術力は具体策
型が身に付いた人が次につまずくのが、技術力をいかにアピールするかという点です。文章の構成が良くても、理解はできるけど薄っぺらいなこの論文となってしまっては合格に至りません。ここでいう、「薄っぺらい論文」とは、一般論を脱していない論文と言えます。
例えば、生産性を向上させるための解決策で「AIを活用します」とだけ書いても、技術者ではなくとも思いつく内容です。この一般論は、数多く書いても評価されません。良く見られるのが、「AIを活用します」、「DXを進めます」、「最新技術を導入します」といった具合に総花的に記述してしまうケースです。
技術力を示すためには、量より質です。では、質を高めるためには、何をすればよいのでしょうか。答えは、具体策を書くことです。上記の例でいうと、「AIを活用します」は間違った主張ではありません。むしろ、正解といって良いでしょう。ただし、問題点は、ここで終わりにしてしまうことです。
AIを活用して何をするのか、どんな場面で適用するのか、その結果どのような成果が得られるのかといった事柄をしっかり示すことが重要なのです。また、具体例などを示すことも良い方法です。そのためには、参考資料にある先進事例などにも目を通しておくと論文作成の役に立ちます。解決策には、具体的な説明や例示を示すことを心掛けましょう。
論文
本日の論文は、建設部門必須科目Ⅰの予想問題になります。テーマは、「再度災害防止及び初動対応の迅速化・適正化」になります。災害関連では、新しいアプローチですね。予想問題をつくることも、効果的な勉強方法の一つです。みなさんもオリジナル問題を作成して、投稿してみてくださいね。それでは、早速論文を見てみましょう。
問題
(1)防災減災において再度災害防止及び初動対応の迅速化・適正化を進めるにあたり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、分析せよ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
課題
1 多面的な観点と課題
(1)いかに再度災害防止及び初動対応の迅速化・適正化を図るか①
気候変動により自然災害が激甚化・頻発化しており、その被害も甚大化している②。繰返し発生する地震や大雨により同じ施設が何度も同じ形態で被災を受けている③。また昼夜・天候を問わない早期の被災状況の把握や施設点検に要する時間の短縮が求められている④。
よって技術面の観点からいかに再度災害防止及び初動対応の迅速化・適正化を図るか⑤が課題である。
① 見出しは、どんな内容が書いてあるのか一目でわかるようにすべきです。長すぎます。
② 激甚化していると述べており、重複しています。
③ 被災とは災害を受けることであり、「被災を受けている」は重複表現です。また、同じ形態という表現も何を言いたいのかピンときません。→「・・・何度も同じ被害を受けている」
④ 前文とのつながりがなく、なぜ求められているのかといった説明が必要だと考えます。
⑤ 初動対策の迅速化・適切化に関する背景がありません。また、課題は問われている内容そのものです。「料理をおいしく作るための課題は?」と聞かれて「おいしく作ることです」と答えているのと一緒です。課題を見直しましょう。
(2)いかに財政難の中で防災・減災対策を行うか
少子高齢化に加え、労働人口の減少による税収不足⑥と社会保障費の増大により財政難⑦が続く。そのため、防災・減災に対する予算が確保できず⑧、災害時に十分な対応が取れないことが懸念⑨される。
よってコスト面の観点からいかに財政難の中で防災・減災対策を行うかが課題⑩である。
⑥ 税収不足とは何を言いたいのでしょうか。歳出に対して、支出が足りないということですかね。そうであるなら、税収不足との表現は適切でないですね。また、税収は増加しています。⑦ 社会保障費のみが歳出増の原因であるように見えます。一要因に過ぎません。⑧ この表現ですと全く予算化できないように見えてしまいます。十分でないといった表現にしましょう。⑨ 防災の予算と災害発生時の予算を同じように説明していますが、異なるものですので正確ではありません。発災時に必要な予算は、補正予算等で可及的速やかに措置されるものと理解しています。⑩ 確かに防災減災対策の課題としては正しいのですが、問われていることは再度災害防止と初動の自足化・適切化です。題意に即した課題であるか疑義があります。
(3)いかに少ない人数で防災・減災対策を行うか
少子高齢化により、今後の技術者不足は深刻さを増す。特に地方自治体では技術者の数に対し、社会資本ストックの数が多い。そのため人手不足で十分な防災・減災対策ができない状況にある。
よって人材面の観点からいかに少ない人数で防災・減災対策を行うかが課題⑪である。
⑪ ⑩と同様。
解決策
2 最も重要な課題
防災・減災対策は、防災施設の性能向上や早期復旧が重要であるため⑫、(1)の「いかに再度災害防止及び初動対応の迅速化・適正化を図るか」を最も重要な課題に選定し以下に解決策を述べる
⑫ これは題意です。課題設定とともに見直しましょう。
- 解決策も添削しますが、課題設定が適切でないことを認識したうえで、ご確認ください。
3 解決策
(1)再度災害の防止
①盛土災害の防止
静岡県熱海市で発生した災害のように危険な盛土の崩落を防止するため、全国一律の基準で包括的に規制する「宅地造成等規制法の一部を改正する法律」により調査や対策を実施する⑬。具体的には、都道府県等による基礎調査や区域指定等を行う⑭。また人家や公共施設等に被害を及ぼすおそれのある盛土⑮について、現地調査や対策工事⑯を行う。
⑬ 「効率に書いてあることをやります」では、技術力をアピールしているとは言えません。
⑭ どんな調査なのか、どのような区域を指定するのか、詳細な内容が分からず具体的とは言えません。
⑮ 技術士試験ですので、どのような盛土なのか技術的見地から説明しましょう。
⑯ これまでの内容もそうですが、「危ないところは調査して対策を施します」では一般論です。もっと、技術的な説明を加えましょう。
②多発する同種の被災形態の被害の防止・軽減⑰
河川増水による道路橋流失を防ぐため、河川洗堀を防止する根固め工を実施する⑱。また河川に隣接する道路構造物の流失を防ぐため、流出防止策としてブロック積工を施工し、粘り強い構造へ変化させ、道路インフラの機能確保を図る⑲。
⑰ 小見出しが内容を的確に表していません。この内容では、個別の内容になっておらず、①の内容も当てはまってしまいます。適切な見出しに修正すべきです。
⑱ 再度災害を防止する措置として、なぜ道路橋を焦点化したのですか。これでは、道路橋流出を防ぐための手段を書いているにすぎません。焦点化すべきは、再度災害を防止するための対策です。
⑲ ⑱と同様。
③同じ地域で繰り返し発生する被害の防止・軽減⑲
都市部における床上浸水などの内水被害を防ぐために、雨水貯留菅を整備する⑳。
⑲ ⑰と同様。
⑳ これも⑱と同様です。再度防止との関係性が分からないですし、なぜ雨水貯留層を整備するのかも分かりません。説明不足です。
(2)初動対応の迅速化・適正化
①被災状況の早期把握㉑
防災ヘリ点検時における災害に対応するため、隣接する自治体と連携を図り、ヘリの点検サイクルを見直し、代替ヘリを確保する㉒。また代替ヘリの補完㉓として、長時間連続飛行が可能となるドローンの活用を図る。㉔
㉑ 内容と見出しが不整合です。
㉒ 表現が分かりづらいです。効果と手段を分けて説明すると良いと思います。→「防災ヘリの機能を常時確保するため、近隣自治体と連携して点検サイクルを見直す。これにより、出動ができない点検時においても、近隣自治体との協力体制により被災状況を確認することができる。」
㉓ 重複表現です。→「代替機能として」または「ヘリの補完として」
㉔ 適正化についての記述はありますが、迅速化に関する記述がありません。
新たなリスク
3 新たに発生するリスク
これらの対策に伴い、住民の防災意識が低下し㉕、住民の安全・安心な避難行動が実施できないリスクが発生する。この対応策としては、日常的に地域で防災教育や避難訓練を実施し、災害時に住民が主体的に避難行動をとれるようにする。
㉕ なぜ対策を講じることで、住民の防災意識が低下するのですか。因果関係が理解できません。
要点・留意点
4 業務として遂行するに当たり必要となる要件
(1)技術者倫理の観点
業務にあたっては、解決策で述べた再度災害防止及び初動対応の迅速化・適正化に合わせて㉖、誠実かつ十分な知識を持って公衆の安全、健康および福利に努めることに留意する㉗。常に「公衆(国民)」の幸福を大前提に業務を行う必要がある㉘。
㉖ これは何を意図しているのでしょうか。「業務にあたっては」と同じ意味ですかね。そうであれば不要です。
㉗ どんな場面で留意するのかといった内容がなく、業務との関連性が不明で唐突感もあります。
㉘ 必要性ではなく、要点・留意点を書きましょう。国民の幸福とは、公衆の安全、健康および福利と同義ではありませんか。同じことを繰り返し述べているように見えます。
(2)社会の持続可能性の観点
業務にあたっては、常に社会全体における公益を確保し、将来にわたって安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける観点を持つ必要がある。また建設現場での活動は常にエネルギーを大量消費する。解決策で示す対策により効率性を向上させ㉙、広範な視点を持って可能な限りCO2発生の少ない建設分野の工法㉚を進めていく必要がある。 以上
㉙ 解決策は、効率性を図るものではなく、防災減災に関する記述ですよ?
㉚ 建設分野の工法とは何ですか。単純に、「工法」で良いと思います。