添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
飛躍の防止
練習論文を書くとき、次から次に書きたいことが湧いてくる状態まで知識を高めることが、まずもって必要なことです。しかし、書きたいことが山ほどあると、今度はあれもこれも詰め込みたくなり、情報が断片的になりがちです。このような状態になると、「なんでこの話をいきなりしているの?」と読み手が置いてきぼりになることがしばしばあります。
これでは、相手に分かりやすく伝えようとする思考が働いていないと言わざるを得ません。以前にも言いましたが、思考とは考えを整理することです。自分の言いたいことを思いのまま書き連ねては、技術者の文章とは言えないと思います。読み手が理解することをもって、初めてその文章に価値が発生するのです。
技術士試験の論文おいては、評価者はその道のプロなのである程度は既知の事実として書くことは許されるでしょうが、文がぶつ切りになっていると説得力が低下することは言うまでもありません。このような飛躍した文章を回避するためには、どのようにすればよいのでしょうか。
文章のテーマや構成は、問題によってほぼ固まってしまいますので、分かりやす文章を作成するための注意点は一つです。前後の文のつながりを意識することです。課題パートの構成を例に具体的に見ていきましょう。
課題パートは、現況→問題点→必要性・重要性→結論(課題)の構成をお勧めしています。このように、パラグラフの構成は決まっていても、前後がつながっていないと、読者は疑問符が付きまくって、最後の結論に来ても納得できない状態になります。
現況から問題点を述べるにあたっては、現況がこうだからこれが問題といったように、現況を踏まえた問題点でないと「何言ってんの?」になってしまいます。問題点と必要性の関係も同じです。よって、それぞれがどのようにつながっているのかを明確にすることが読み手の理解を促すということになります。
模式的に言うと、「A→B→C」ではなく「AB→BC→CD」といったように文同士のつながりをはっきりさせましょう。この流れを作ることにより、読者はスムーズに理解することができ、分かりやすさや説得力が格段に向上するのです。
論文
本日の投稿論文は、建設部門 都市及び地方計画の復元論文ということで、本丸としてご紹介した必須科目Ⅰのチェックバックになります(以前の添削はコチラ)。文章の構成はとてもよくハイレベルな論文ですが、まだ推敲の余地はありそうです。この時期は、推敲を重ね良質な論文を作成していくことが重要です。それでは、早速論文を見ていきましょう。
1.多面的な観点と課題
(1)いかに施工情報①をアーカイブズ化するか
大規模災害により、公共施設等でも甚大な被害が発生している。財政状況が厳しい②自治体では、インフラ情報が紙媒体により管理され、被災により消失し復旧の妨げとなる場合がある。災害発生後の復旧を迅速に行うには、インフラ情報をデジタル化し、活用できる体制の構築が重要である。よって、リダンダンシーの観点からインフラ情報のアーカイブズ化が課題である。
① 文中の内容と合わせましょう。→「インフラ情報」
② 財税状況とアーカイブズとの因果関係はあまりないように感じます。→「一部の」
(2)いかに産官学の連携を推進するか
人口減少等の影響により地方自治体の技術系職員数は減少傾向にある。こうした中、災害発生時③の復旧を迅速化するには、産学が開発する生産性向上を図る新技術を取り入れることが重要である。新技術の開発・導入の促進には、関係者間の協力が不可欠である。④よって、体制面の観点から、産官学の連携が課題である。
③ →「後」
④ 産学である必要性が分からず唐突な印象を受けます。前後のつながりを意識した論述展開が望まれます。→「・・・業務の生産性を向上させる必要がある。生産性の向上には現場の課題に即した技術開発が不可欠であり、開発に当たっては現場従事者と技術開発者が一体となって進めることが重要である。」
(3)いかに入札制度の適正化を図るか
従来の入札制度は、ICT技術等が適切に評価されずDX普及拡大の障害となっている。被災後の効率的な復旧を図るためにはICT技術等を積極的に活用することが重要である。しかし、従来の入札制度は、ICT技術等が適切に評価されず、DX普及拡大の障害となっている⑤。これらを積極的に導入するため、設計・積算・入札の仕組みを見直す必要がある。よって、制度面の観点から、入札制度等の見直しが課題である。
⑤ 冒頭の文と同じですね。文脈からすると、最初の行は不要ですね。
2.最も重要な課題とその理由
情報の喪失は、普及⑥そのものを難しくするため、「施工情報⑦をアーカイブズ化するか」を最重要課題に選定し、以下に解決策を述べる。
⑥ →「復旧」
⑦ →「インフラ情報」
(1)計画・設計フェーズ
①3D都市モデル
被災からの復興計画を効率的・効果的に実施するため、PLATEAUの活用を推進する⑧。自治体が有する都市計画基礎情報から、地形や構造物の情報等を事前にインプットしておくことで、被災時でも⑨地形の変化等も迅速に把握することができる⑩。さらに、復興に向けた計画においては、最大深度⑪等の様々な災害条件でシミュレートを行うことで、復興計画の検討をスムーズに進める⑫。このように、都市情報を事前集積し見える化することで、防災インフラの整備等に要する地元との円滑化な合意形成⑬にも寄与できる。
⑧ なぜPLATEAUなのか文章を読んでもよく分かりません。これは、3D都市モデルの活用のメリットが浮き彫りになっていないからだと考えます。
⑨ →「による」
⑩ 被災の状況をデータ入力しないと変化を把握できないと思います。この状況において、迅速であることをPLATEAUのメリットととして述べることに違和感があります。迅速というより、状況を立体的に把握できるため、復興に向け多角的に検討ができるといったことが、PLATEAUのメリットなのではないでしょうか。このように、PLATEAUの特性に即した内容を示すことで、⑧のなぜPLATEAUなのかといった疑問が解消できると思います。
⑪ →「震度」?
⑫ これもPLATEAUの特性を的確に表現できていないように感じます。まず、何を目的にしたシミュレーションなのかが分かりません。また、その目的がPLATEAUでなくては達成できないことも記述すべきです。記述にある最大震度の場合であれば、最大震度に応じた建物の倒壊状況とそれに伴う緊急輸送路の通行可否を把握し復興計画に反映といった具合になるのではないでしょうか。
⑬ →「円滑な合意形成」または「合意形成の円滑化」
②BIM/CIM
大きく破損したインフラ等を迅速に復旧するため、BIM/CIMを活用する。例えば高架橋では、破損の状態が確認しづらい場合がある。そこで、UAVを用いて点群データを取得しモデリングすることで修繕計画を検討する⑭。高低差や施工位置を同時に可視化し破損個所を把握することで迅速な工法の検討を実現するとともに、インフラ情報の3次元モデリングによって復旧後の維持管理も容易にする⑮。
⑭ 『「確認しづらい」→「そこで」』の文脈なので、文末が「検討する」はおかしいですね。この場合は「確認しづらいからUAVでモデリングする」という文脈ですよね。よって、文末は「モデリングする」で終わらせると良いでしょう。
⑮ 前項の修正を行った場合、「このモデリングにより、高低差や施工位置を同時に可視化し破損個所を把握することで迅速な工法の検討が可能となる。さらに、3次元の設計情報がデータとして保存されるため、復旧後の維持管理も容易となる。」としてはいかがでしょうか。文章全体の構成は良いのですが、これも④と同様に、文同士のつながり(前後のつながり)を意識すると流れるように読み進めることができ、分かりやすさと説得力が増すと思います(目下これが最大の改善すべき点ですね)。
(2)施工フェーズ
i-Constructionを導入し、復旧に要する作業時間を短縮する。例え施工計画の立案においては、地上型レーザーによりスキャニングを行い、復旧を要する路盤材の数量や舗装面積及び工事費用を自動算出する。施工管⑯においては、TSで施工機械を追尾することにより、3Dデータから出来形管理を行う。
⑯ →「施工管理」
(3)維持管理フェーズ。
取得された3次元データを活用し、国土交通データプラットフォームを構築する⑰。3次元化された都市データと地形等を連携させるにより⑱、専門家による遠隔診断等の維持管理の高度化を実現⑲する。さらに、得られたユースケースを産学の研究・開発に活用することで、新技術や新工法の普及を図る⑳。
⑰ プラットフォームは構築されているのではありませんか。また、データを活用してプラットフォーム構築するのではなく、構築されたプラットフォームにデータを登録するのではありませんか。→「取得した3次元データは、国土交通データプラットフォームに登録する」
⑱ おかしな表現です。また、連携というより組み合わせですかね。
⑲ 復旧復興が論点では?維持管理の高度化と復旧復興の関係性を述べないと、論点ズレのように見えます。
⑳ これも⑲と同様です。
3.新たなリスクと対応策
ICT技術に頼り仕組みを理解せずに現場が完成することで、若手技術者の技術力が低下するリスクがある。対応策として、熟練技術者とのOJT教育やECI方式により社外技術者と意見交換を行うことで、技術力の向上を図る。
4.必要な要件と留意点
業務にあたっては、常に社会全体における公益を確保する観点と、安全・安心な社会資本ストックを構築して維持し続ける観点を持つ必要がある。業務の各段階で常にこれらを意識するよう留意する。 以上