令和7年度 建設部門 必須科目Ⅰ 予想問題②
【 技術士 二次試験対策 】
老朽化がやばい
第2弾で早くも本命と思しき、テーマ「労働力不足×維持管理」のリアル予想問題を大公開します。なぜ、本命と考えたのかというと、やはり八潮の道路陥没事故が社会に与えたインパクトが大きいからです。以前にも、この時事問題について取り上げましたが、未だ被害者の救出に至っておらず、みなさんも技術者として忸怩たる思いで状況を見ていると思います(過去記事はコチラ)。
この事故が注目される訳は、大規模な損壊であったことに加え、これから誰にでも降りかかる可能性がある厄災だからと考えます。インフラ施設は、下水道管だけでなく多くが築造から50年を超えてきます。2040年時点で河川管理施設の約38%、港湾施設の約66%、道路橋の約75%が建設後50年以上を経過します。
これらの数値を見ただけでも、背筋が寒くなるほどの危機感を覚えます。途方もない財源と労働力が必要となることは、すぐに理解できます。状況にもよりますが、撤去新設ともなれば最初の築造よりも費用が必要となりますし、代替機能の確保なんかも考えなくてはなりません。
また、必要なメンテナンスが遅れれば、今回の事故のように甚大な被害を発生させる懸念もあります。この圧倒的な量的問題をいかに解決するのでしょうか。この解決策を技術士を目指すみなさんに問うことが大いに考えらえ、本命と言われるゆえんであります。
2024問題の振り返り
今回も複合的テーマを設定しております。維持管理と親和性の高いもう一つの問題点として、労働力不足を挙げています。2024年は、時間外労働の上限規制が始まった年です。今回の予想問題は、これを背景に建設業の労働力を確保しながら、しっかりとインフラを維持管理するという建付けとしています。
時間外労働の上限規制は、慢性化する長時間労働が是正されることが期待されます。もちろん、私も建設業の労働環境が良くなることは大歓迎です。しかし、労働者のニーズは、時間が欲しい人、お金が欲しい人、バランスを重視する人と様々です。本質的には、労働者がこれらを選択できることが重要なのではないでしょうか。
問題の根幹は、労働者を不当に酷使した結果、建設業離れが進んだのではないでしょうか。労働時間は、たっぷりだけど医者並みの給料が貰えてたら、同じような状況になっていましたかね?人は希望があれば、頑張れるものです。夢のある職業として、建設業を設計する必要があるのではないでしょうか。
さて、話を予想問題に戻します。2024年問題は一つの側面でしかなく、生産年齢人口が減少している状況において、建設業の労働者不足は慢性化しています。さらに、資材高騰、人件費高騰などが加わり、受注価格が爆上がりしています。それでも、受注してくれれば良い方で、数年先まで受注できないというゼネコンも少なくありません。
維持管理しなければいけない施設は増加し、維持管理に必要な手は少ないといった状況になっています。現状インフラ施設の維持は、危機的状況にあるといって間違いないでしょう。どんな魔法を使えば、この状況を打開できるのでしょうか。今回のテーマは、とても難しい問題を投げかけているものになります。
令和7年度予想問題 「労働力不足×維持管理」
令和7年度技術士第二次試験問題 [建設部門]
9 建設部門【必須科目Ⅰ】
Ⅰ 次の2問題(Ⅰ-1,Ⅰ-2)のうち1問題を選び回答せよ。(解答問題番号を明記し、答案用紙3枚を用いてまとめよ。)
Ⅰ-1 建設業においては、働き方改革関連法のひとつ時間外労働の上限規制の猶予期間が終了し2024年4月から規制が適用された。この規制により、常態化した長時間労働の是正は進むものの、少子高齢化と相まって労働力不足に拍車がかかり、適切な都市基盤の維持が難しくなっている。
他方、インフラ施設の耐用年数は一般的に約50年といわれており、老朽化が原因と考えられる事故が増加している。今後も社会資本の老朽化が進行していく中で、国民の安心・安全を確保するためには、少ない労働力で適切にインフラ施設を維持管理しなければならない。
こうした状況下で、労働力の確保と効率的なインフラ施設の維持管理を実現し、持続可能な社会を構築するための方策について、以下の問いに答えよ。
(1)インフラ施設を適切に維持管理するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。(※)
(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
解法のポイント
今回は、労働力不足と維持管理という2つの側面からアプローチしています。ただし、問いはシンプルに「インフラ施設の適切な維持管理」になっています。必須科目Ⅰは、建設業に関する多様な知見を示す必要がありますので、シンプルといえども多様な観点に留意する必要があります。
多様な観点の例をいくつか考えてみましょう。
<対象物の削減>
・集約再編により管理対象物を減らす
・集約型都市構造により管理対象物を減らす
<管理の合理化>
・群マネの導入を推進する
・予防保全、長寿命化対策を推進する
<協働・連携>
・官民連携により公共負担を減らす
・住民との協働により公共負担を減らす
<デジタル技術>
・センシング技術により生産性を向上させる
・UAVの活用により生産性を向上させる
・BIM/CIM、プラトーなどデータ共有により管理負担を軽減させる
<労働力確保>
・建設業の処遇を改善し労働者を確保する
・リスキリングを支援し生産性を向上させる
・柔軟な労働時間、場所など就労条件の多様化を図る
どうですか、イメージ膨らみましたかね。得意な分野をチョイスして、多角的な問題提起と効果的な解決策を示してやりましょう。そして、論文を書くだけでなく、普段の業務で実践できることがないか考え続けることも大切です。
また、前回も提案させていただきましたが、このテーマで選択科目Ⅲでも書いてみるという「クロス科目戦略」を実行してみましょう(前回の記事はコチラ)。選択科目Ⅲでは、特にご自身の選択科目に特化した課題、解決策を提起することが重要です。
この本命テーマを完璧に仕上げて、合格を力強く引き寄せましょう。