添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
都市緑地法改正!
2/13に、「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されましたね。まちづくりGXの目玉であった取り組みが、実現されることになりそうです。これで、まちづくりGXの注目がますます高まったと言えます。もう、みんさんは、論文作成しましたか?
では、この都市緑地法では、何が変わるのか見ていきましょう。これまで、緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画(通称:緑の基本計画)は、市町村が定めることができるとされています(4条)。しかし、今回の改正で、国が基本方針を県が広域計画を策定できるようになります。
また、これまで民間の緑地保全活動の位置づけは、市民緑地の認定や、みどり法人の指定などがありましたが、これらに加え緑地確保の取組や、脱炭素化に資する都市開発事業を認定する制度が設けられています。このうち、緑確保の取組みについては、2030までに300件を目指すとされています。これは、30by30を意識しての目標設定ですね(30by30についてはコチラ)。
報道資料にも「予算・税制措置と併せて「まちづくりGX」を推進」とありますので、出題を約束された問題といってよいでしょう。
特別緑地保全地区
本丸の緑の保全に関しては、緑地の機能の維持増進を図るために行う再生・整備を「機能維持増進事業」(仮称)として位置付けするようです。事業の中身は、具体的にはまだ良く分かりませんが、写真の例示では、択伐や樹林再生などが示されています。
さらに、特別緑地保全地区で行う機能維持増進事業については、その実施に係る手続を簡素化できる特例を創設するようです。しかも、事業実施に当たっては、都市計画税の充当が可能とされています。現状の都市計画税は、都市施設の整備であっても都市計画決定して、事業認可を受けてといった手続きを経ないと充当できないので、面倒ですし時間もかかります。その都市計画税が、充当できるというのですから、相当の力が入っています。
そもそも、特別緑地保全地区指定はこれまでも推奨された来たわけですが、特別緑地保全地区はものすごい制限をかける都市計画なので、地権者との合意形成が難しいです。このため、地区指定がなかなか進まないのが現状です。これに業を煮やし、ネイチャーポジティブの実現や30by30の目標達成のため、特別緑地保全地区の拡大を何が何でも進めていこうとする意気込みを感じます。
その意気込みにより、なんと都市緑化支援機構という外郭団体までつくってしまうという力の入れようです。特別緑地保全地区にしてしまうと市町村は、地権者の買い取り申し出に対し、買い取らなければならなくなります。このため、市町村においても地区指定には及び腰になってしまいます。そこで、登場するのがこの機構です。市町村に変わって、一時的に買い入れ、先に紹介した機能維持増進事業を行うなどしたうえで、市町村に譲渡できるようになります(まあ、市町村は借金させられて買う訳ですが・・・)。
この特別緑地保全地区の拡大にも目標設定がなされており、2030年までに1000ha増加させるという気合の入りようです。まだ、詳細はこれからだと思いますので、試験の解答にふさわしいかはさておき、このような方向性を理解しておくことは大切です。
論文
さて、今回の添削LIVEは、農業部門令和5年度選択科目Ⅲ「農業水利施設」になります。農業水利を継承するための課題と解決策になりますが、農業部門でもインフラメンテナンスや、ストック効果の活用といった建設部門と共通した課題を抱えているんですね。それでは、早速論文を見ていきましょう。
問題文
課題
(1)農業水利施設を適切に継承する上での課題
①予防保全型の老朽化対策
我が国の農業水利施設の多くは戦後の食料増産の時代や高度経済成長期に整備されており、耐用年数を超過して老朽化が進行しており①、突発的事故が増加している。また、農村地域では高齢化、人口減少による人手不足で施設の管理が粗放化しており②、施設機能低下が懸念されている。そのため、財政的制限を踏まえると③、戦略的に保全管理を行うストックマネジメントサイクルを確立し予防保全型の老朽化対策が課題である④。
① 問題文に記載されている内容であり不要。もっと予防保全型を必要とする背景を書きましょう。
② ①同様。
③ 脈絡なく財政的制限が出てきます、背景で触れましょう。
④ 観点がありません。
②一体型の管理体制の構築・強化
農業水利施設は、国、地方公共団体、土地改良区等の多様な主体によって管理されている。しかし、機能診断、補修・更新等の対策の実施者は施設管理者と異なることが多い⑤。そのため、関係者相互で連携し状況の共有を行う一体型の管理体制の構築・強化が課題⑥である。
⑤ これは実態であり、管理者と実施者が異なることによる弊害が書いていません。なぜ課題として一体化を取り上げているのか根拠が明らかでないです。
⑥ 観点がありません。
③営農変化に対応した農業水利施設の適正化⑦
農業の生産性向上による成長産業化を図る上で、将来的に担い手が大宗を担うことが重要である⑧。担い手の営農により以下のような変化が生じている。
a)担い手への農地集積による大規模化により、直播栽培や水稲の多品種栽培が進んでおり、担い手の経営判断で作期分散が行われ、用水需要が長期化している。
b)水田汎用化による飼料用米等の戦略作物の作付が増加して、用水需要量が増加している。
c)高温障害による米の品質低下を防止するため、掛流しかんがいを行う等の営農指導が変化している。
このような営農変化⑨を踏まえて、農業水利施設の機能発揮によって将来的に担い手の生産性向上に寄与するため、営農変化に対応した農業水利施設の適正化が課題⑩である。
⑦ 一つの課題として、説明が長すぎます。内容云々より、構成に問題があります。力を入れて書くべきパートは、解決策です。課題一つに費やすスペースは、5~6行程度にしましょう。
⑧ 論点がズレているように感じます。課題設定の目的は、農業水利施設を継承することです。生産性を向上するためでも、成長産業化を図ることでもありません。
⑨ 記述の変化した事柄は、「用水需要の長期化・増大化、及び気候変動による営農指導」となっています。繰り返しになりますが、踏まえる背景は、上記の例のように端的に書きましょう。
⑩ 観点がありません。また、この課題設定は、題意そのものではありませんか。「農業水利施設を適切に継承するためには、農業水利施設の適正化が課題」では、「リンゴをおいしく食べるためには、おいしく食べることです」と答えているようなものです。
解決策
(2)最も重要と考える課題と複数の解決策
私は⑪、(1)①「予防保全型の老朽化対策」が最も重要な課題と考える。以下に解決策を列記する。⑫
⑪ 一人称は不要。
⑫ 選定理由があると良いです。
①個別施設計画の策定・更新の推進
農業水利施設の戦略的な機能保全対策を行うため、施設管理者等による個別施設計画の策定・更新の推進を行う。適期に⑬機能診断を行ってその結果より計画を策定する。策定後、補修、更新、機能診断を実施した結果を蓄積して継続的に更新を行う⑭。これにより、ライフサイクルコストの低減に資する⑮機能保全対策が可能となる。
⑬ 具体性があると良いです。これは、適正な時期を待って診断をし、その後計画を策定するのですか。ものすごい時間がかかるように感じます。「適時」なんですかね?そうであるならば、計画を策定するではなく、策定後に診断結果に合わせ見直しをするになります。
⑭ 「何を」の部分が省略されているので、不明確な文章です。これにより、更新も2回記載されており、「更新した結果を蓄積して更新する」となっています。→施設の更新、計画の更新と明確に記載しましょう。
⑮ 課題設定の観点がないので判然としませんが、論点(解決策の目的)がコストになっていることに違和感があります。ただし、課題設定の観点が費用面(コスト面)であるならば、問題はありません
②農業水利ストック情報データベースの活用
情報の共有化、可視化を図るため⑯、農業水利ストックの情報データベースの活用を行う⑰。機能保全結果⑱や対策工法を一元的に管理⑲する。これにより、機能診断の計画策定や機能保全対策の工法選定を効率的に行うことができる。
⑯ 可視化に関する記述がありません。
⑰ →「データベースを活用する」
⑱ 機能保全結果とは何ですか。診断結果とは異なる情報ですかね?
⑲ 対策工法を管理するとはどのような行動なのか分かりません。採用工法の情報ですかね?
③インフラメンテナンスの省力化⑳
インフラメンテナンスの省力化のために、ドローンによるUAV計測による機能診断、点検や水路トンネルや管水路における無人調査ロボットによる調査、点検を行う。これにより、少人数で効率的、安全にインフラメンテナンスが可能㉑となる。
⑳ ⑮と同様。
㉑ 最初に「省力化のために」と記載してあるので、この部分は重複しています。このパートの構成は、「省力化のために○○する。これにより省力化できる。」といった形になっています。
新たなリスク
(4)新たに生じるリスクとそれへの対策
①突発的事故への対応
リスク:突発的事故の発生を完全に防止することができないため、発生リスクがある㉒。
対策:関係者間で対応を計画しておく㉓。また、復旧費用の事前積み立て、緊急連絡体制の構築、復旧時に必要な資材の備蓄等を行って、早期の復旧を図り、事故による損害を低減する。
㉒ 事後保全だと合理性に欠くので予防保全しようということではありませんか。そもそも、予防保全は、突発的事故防止のために行うものではないと思います。また、発生リスクがあるとは何の発生リスクですか、事故を指しているのであれば、完全に防げないので当たり前です。リスクそのものに疑義がありますが、文章的には「突発的事故の発生を完全に防止することができないリスクがある」です。
㉓ 具体性に欠けており、対策になっていません。この対応を具体的に書く必要があります。
②施設管理者の技術、ノウハウ不足
リスク:人手不足や新技術の導入のため㉔、施設管理者の技術やノウハウが不足する㉕。
対策:国や民間会社が主催する研修会等で技術、ノウハウを得る㉖。ストックマネジメント推進事業を活用して、機能保全対策や機能診断計画を策定する㉗。また、ドローン等の新技術の導入により、データ管理の作業が増えるが、結果に対して、技術的な判断ができる熟練技術者の技術、ノウハウを継承することが必要である㉘。
㉔ 人手不足は問題点、新技術導入は課題です。性質が異なるものを並列で書かないようにしましょう。
㉕ これは解決策を講じて発生する新たなリスクではありません。最初から存在している別の問題点です。
㉖ 誰がノウハウを得るのですか。対応策は、国を含めた行政目線で書きましょう。
㉗ これは、すでに課題や解決策で取り組んでいる内容です。この結果新たに生じる問題に対する対策なのに、解決策と同じことをやっては解決するはずもありません。
㉘ 対策は必要性を記述するのではなく、やることを書きましょう。不要。また、継承するための手段まで書かないと対策にはなりません。