添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
合格者の思考プロセスを徹底解説
技術士二次試験の必須科目Ⅰは、与えられた社会課題を技術者としてどう分析し、どう解決するかを論理的に示す力が問われます。 今回取り上げる答案は、あなたが初回投稿で作成したにもかかわらず、構成・論理性・技術的妥当性のすべてが合格水準に達していた非常に完成度の高い論文でした。
本文には、次のような明確な問題意識が示されています。
「従来型の単一自治体・単年度発注や価格のみを評価する低価格競争を前提とした供給体制のままでは、施工品質の低下や現場負荷増大が懸念される。」(引用)
このように、現状の課題 → 技術的背景 → リスクが一気通貫で整理されている点が、合格レベルの大きな特徴です。
本記事では、この答案の優れた点を一般化し、誰でも再現できる「合格答案の書き方」として体系化します。 これから技術士試験に挑む受験生にとって、確実に役立つ内容です。
問題文の要求を“構造化”して受け止めている
問題文の要求を“構造化”して受け止めている
技術士試験では、問題文の要求を正確に分解し、漏れなく答えることが最重要です。 今回の答案では、問題文の構造を次のように整理していました。
- (1) 多面的観点から3つの技術課題を抽出
- (2) 最重要課題を1つ選び、複数の解決策を提示
- (3) 解決策に伴う新たなリスクと対策
- (4) 技術者倫理・社会的持続性の観点から必要な要件
このように、問題文の構造をそのまま論文の骨格にすることで、読み手(採点者)が迷わない文章になります。
▼ポイント
- 問題文の動詞(抽出せよ/示せ/述べよ)をそのまま章立てに反映する
- 「多面的」「最重要」「複数」「新たなリスク」などのキーワードを必ず拾う
- 章番号を問題番号に対応させる(1→1、2→2…)
論理の軸がブレない
答案では、3つの課題に対して的確な「観点」を付けています。
- 構造的観点:供給・発注プロセスの見直し
- 組織的観点:中長期的な担い手確保・育成
- 技術的観点:省人化・省力化技術の活用による生産性向上
これは非常に重要なポイントです。
技術士試験では、観点と課題はセットで問われます。 「どの視点から見た課題なのか」を的確かつ明確にすることで、技術者としての分析力を示すことができます。
▼ポイント
- 課題には必ず「観点」を付ける
- 観点は「構造的」「制度的」「組織的」「技術的」「社会的」などが使いやすい
- 観点を付けることで、後続の解決策も論理的に展開しやすくなる
課題の背景説明が“技術的に妥当”
答案では、課題の背景を次のように整理していました。
「建設後50年超のインフラの急増や災害の頻発・激甚化により、維持管理・更新量は今後さらに増大する一方で、生産年齢人口は着実に減少する。」(引用)
このように、 社会的背景(人口減少)+技術的背景(インフラ老朽化) をセットで説明することで、課題の必然性が強く伝わります。
▼ポイント
- 課題の背景は「社会」「技術」「制度」の3層で整理する
- 数値・傾向(増加/減少/高齢化/激甚化)を入れると説得力が増す
- 背景説明は“課題の正当性”を示すための重要パート
解決策が“多層的”で実務的
答案では、最重要課題(供給・発注プロセスの見直し)に対して、次のように多層的な解決策を提示していました。
- 制度面:債務負担行為、余裕期間制度、スライド条項
- 組織面:群マネジメント、広域化、地域協議会
- 技術面:ICT活用、情報共有、可視化
このように、単一の解決策ではなく、複数のレイヤーで対策を組み合わせることが、技術士答案の王道です。
▼ポイント
- 解決策は「制度」「組織」「技術」の3層で構成すると強い
- 具体的な制度名・技術名を入れると専門性が高まる
- 「なぜその解決策が有効か」を因果関係で説明する
解決策の副作用を冷静に分析している
答案では、広域化や包括発注の副作用として、
「地域技術力が相対的に空洞化すれば、事故・災害時に地域の実情を踏まえた迅速な対応が困難となるリスクが生じる。」(引用)
と指摘しています。
これは非常に重要で、 技術士は“解決策の副作用まで見通す力”が求められるため、合格答案に必須の視点です。
▼ポイント
- 解決策には必ず“副作用”があると考える
- 副作用は「地域性」「公平性」「安全性」「技術継承」などから抽出しやすい
- リスクには必ず“対策”をセットで書く
技術者倫理を“行動レベル”で書いている
答案では、倫理の章で次のように述べています。
- 公衆の安全の最優先
- 第三者機関による定期監査
- 手抜き防止、品質確保
- 特定企業への利益誘導の排除
- 透明性の高い官民連携
これは、単なる理念ではなく、具体的な行動レベルの倫理になっている点が高評価ポイントです。
▼ポイント
- 倫理は「理念」ではなく「行動」で書く
- 透明性・公平性・安全性をキーワードにする
- 持続性は「LCC最小化」「脱炭素」「地域企業の参画」などで具体化する
全体として“論理の流れが美しい”
今回の答案は、技術士試験で最も重要な論理の一貫性が非常に高いです。
- 課題は背景から導かれている
- 解決策は課題に対応している
- リスクは解決策の副作用から導かれている
- 倫理はリスクを踏まえた行動規範になっている
このように、全章が因果関係でつながっているため、読み手が迷いません。
▼ポイント
- 章と章の間に“因果関係”を持たせる
- 「〜ため」「〜結果」「〜一方で」などの接続語の仕様が適切
- 全体のストーリーが一本の線でつながるように構成する
合格答案は「構造 × 技術 × 倫理」の三位一体
今回の答案を一般化すると、合格答案のポイントは次の3つに集約されます。
◆① 構造
- 問題文の構造をそのまま章立てにする
- 観点を明記して課題を整理する
- 因果関係で全体をつなぐ
◆② 技術
- 社会背景+技術背景で課題を説明
- 制度・組織・技術の3層で解決策を提示
- 新たなリスクと対策をセットで書く
◆③ 倫理
- 公衆の安全を最優先
- 透明性・公平性・持続性を具体的に示す
- 行動レベルの倫理を書く
この書き方はどのテーマにも応用できる
今回の答案は「担い手不足・サービス供給制約」というテーマでしたが、 ここで整理した“解法の型”は、どの必須科目Ⅰのテーマにもそのまま応用できます。
- 防災
- インフラ老朽化
- DX
- カーボンニュートラル
- 地域活性化
どのテーマでも、 構造 → 技術 → 倫理 の三位一体で書けば、合格水準に到達できます。
【完成】「維持管理と災害時の供給制約」
【問題】
我が国では、人口減少と少子高齢化が加速する中、建設業の担い手不足や自治体の行財政能力の低下が深刻化している。これにより、従来のような生活に必要な身近な公的サービスの維持・存続が危ぶまれ、「サービスの供給制約」が現実のものとなりつつある。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1) インフラの維持管理・更新や災害対応における「【完成】必須科目Ⅰ「維持管理と災害時の供給制約」」を克服し、必要な機能を維持するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 前問(1) で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2) で提示した解決策に関連して新たに浮かび上がる将来的な懸念事項と、それへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から述べよ。
1.サービスの供給制約の克服に向けた課題
(1) 供給・発注プロセスの見直し
時間外労働規制が適用される中、従来型の単一自治体・単年度発注や価格のみを評価する低価格競争を前提とした供給体制のままでは、施工品質の低下や現場負荷増大が懸念される。自治体の人員・予算制約下で、民間事業者の持続的な供給能力と経営安定性を確保する制度設計が必要である。よって、構造的観点から、供給・発注プロセスの見直しが課題である。
(2) 中長期的な担い手確保・育成
若年入職者の減少に加え、今後就業者の約3割を占める55歳以上の熟練技能者の大量退職が見込まれる。その結果、経験知に基づく判断力や異常検知能力が継承されず、維持管理の品質と安全性が低下するおそれがある。よって、組織的観点から、中長期的な担い手確保・育成が課題である。
(3) 省人化・省力化技術の活用による生産性向上
建設後50年超のインフラの急増や災害の頻発・激甚化により、維持管理・更新量は今後さらに増大する。一方で、生産年齢人口は着実に減少により従来の作業量を人手のみで維持することは困難となり、生産性向上が不可欠となる。よって、技術的観点から、省人化・省力化技術の活用による生産性向上が課題である。
2.最も重要と考える課題とその解決策
(1) 最も重要と考える課題とその理由
民間事業者が持続的な経営展望を描ける仕組みの構築が供給制約を克服する基盤となるため、「供給・発注プロセスの見直し」が最も重要な課題と考える。
(2) 上記課題に対する3つの解決策
①発注・契約制度の見直しによる事業者負担の軽減
債務負担行為の活用や余裕期間制度による柔軟な工期の設定により施工時期の平準化を図る。また、参加者確認型随意契約方式により入札・契約に係る負担を軽減する。物価高に伴う労務費へのしわ寄せを防ぐため、コストプラスフィー契約やスライド条項を適切に適用し、価格変動を確実に契約金額へ反映させる。
②「群マネ」を促進する発注プロセスの構築
自治体の人員・予算制約を克服するため、地域インフラ群再生戦略マネジメントを推進する。具体的には、複数自治体・多分野のインフラを一体的にマネジメントし、維持管理業務を広域で集約することで発注量を平準化し、効率的な発注プロセスを実現する。また、「地域協議会」を設置し、地域全体で持続可能な供給体制を形成する。
③活動領域拡大による地域建設業の持続的経営の促進
地域建設業の安定経営を促進するため、公共事業における民の活動領域を拡大する。具体的には、包括的民間委託やウォーターPPP 、公募設置管理制度などを適用し、維持管理分野への参入機会を広げて収益基盤を強化する。民間の創意工夫により自治体の維持管理費負担の軽減し、地域の供給体制を持続可能にする。
3.新たに生じうるリスクと対応策
(1) 新たに生じうるリスク
地域建設業においては一定の経営安定化が図られるものの、包括発注や広域化など発注規模の大型化により、地域技術力が相対的に空洞化すれば、事故・災害時に地域の実情を踏まえた迅速な対応が困難となるリスクが生じる。
(2) 新たなリスクへの対応策
発注要件で共同体制への地元企業の参画を必須化・加点評価し、地域企業の役割を確保する。そのうえで、全国企業と地元企業のマッチングを促すプラットフォームを設置し、利害調整を図る。さらに、共同体制内で情報技術により業務と責任範囲を可視化し、大規模案件でも地元企業への技術移転と継続的参画を可能とする体制を整備する。
4.倫理と持続性の観点から必要となる要件・留意点
技術者倫理の観点から、公衆の安全の最優先が要件となる。その確保のため、第三者機関による定期監査を行い、維持管理の手抜きや施工品質の低下を防止することに留意する。社会の持続性の観点から、経済性だけでなくLCCの最小化や脱炭素化に資する民間提案を評価基準に適切に反映させることが要件である。特定の事業者への利益誘導を排除し、透明性の高い公正な官民連携を行うことに留意する。 以上

