添削LIVE
【 技術士 二次試験対策 】
執筆活動が佳境
昨年から始めていた執筆活動が、いよいよ佳境を迎えています。最後の「あとがき」と校正作業を終えれば、完成となります。kindleにて発刊を予定していますが、kindleフォーマットに合わせるのがとても大変です。
kindleは、タブレット、スマートフォン、kindle端末での表示が可能なのですが、これらすべてのデバイスで読みやすく編集する必要があります。図表周囲の文字配列がズレたりとなかなかうまくいきません。また、表紙の作成も残されているので、もう少し時間がかかりそうです。
しかし、何かをつくり上げるという作業は、熱中できますので日々が充実します。一日中パソコンに向かっていても苦痛を感じません。やはり、楽しく取り組むということが重要であることを再認識しました。技術士試験の勉強も同じです。嫌々やるのではなく、新しいことを知る喜びと、自身の成長を実感しながら、楽しく取り組みましょう。
技術士の思考を考察
本書は、技術士が行動する際にどんな点に留意するのかを解説して、読者の能力を高めることを試みるものです。誰もが実践できるよう一般化していますので、読みやすいと思います。もちろん、技術士受験生にも役立つことは間違いありません。
みなさんが技術士取得を目指すモチベーションをアップさせてくれるでしょう。また、技術士の方々にも、なるほどと思っていただける内容になっています。社会活動を行うすべての人が、幸せに生きるヒントが満載です。
本サイト同様、みなさんを応援する書籍になっていると思います。もう少しでお届けできますので、発刊近くになりましたら、またお知らせしますね。
論文
本日お届けする論文は、風水害のチェックバックです。NbSを軸にした専門性が高い解決策に注目です。それでは、早速論文を見てみましょう。
課題
1.激甚化する風水害を防止するための課題
(1)マルチセクトラルアプローチ
気候変動により気象イベントが頻発し、日本各地で土砂災害や水害が激甚化している。①よって、体制面の観点から地域やセクターを超えたマルチセクトラルアプローチが課題である。
① 災害が激甚化している状況しか書いていないので、横断的な対応を必要とする背景を書きましょう。
(2)想定を上回る災害の予測と対策
日本の国土の7割以上が山岳地帯で急峻な地形に富んでいる。また河川も急勾配である。さらに人口は洪水が起きやすい下流部の低地に集中している。このため、これらの地域では予想を超える規模の自然災害が起きやすい②。したがって事前に大規模な自然災害の発生を予測し、対策を講じる必要がある③。
② 予想を超える規模の災害は、わが国だけでなく世界的な傾向です。すなわち、予想を超える自然災害の発生は、地形ではなく気候変動が要因ではありませんか。
③ 観点がありません。また、課題を問われているので、文末は「・・・課題である」としましょう。
(3)防災・減災技術の研究開発
流域上流部の大半は人口が少なく少子高齢化が進んでいる④。治山事業や山腹工事、河川土木等による山地災害対策や自然環境の状態のモニタリングを行う従事者が十分でない。生産性の観点(?)⑤からそれらの地域をカバーするには、リモートセンシングやAI等の技術を活用した災害リスクの分析やデジタル化などスマート防災技術の研究開発が課題である⑥。
④ 居住人口が少ないのは、課題と関係ないのではないでしょうか。
⑤ 少ない従事者で対応できるよう生産性を上げることを念頭に指摘させてもらいました。省力化が目的ではないのでしょうか。そうであるなら、何を目的として研究開発するのか明確にする必要があります。
⑥ 背景と課題が混在しています。→「それらの地域をカバーするには、リモートセンシングやAI等の技術を活用した災害リスクの分析やデジタル化など推進する必要がある。よって、生産性の観点から、スマート防災技術の研究開発が課題である」
解決策
2.解決策
上述の課題のうち最も重要と考える課題は「(2)想定を上回る災害の予測と対策」である。なぜなら、災害規模を事前に予測し対策を講じることで、住民の生命や財産を守り社会経済を維持することが可能になるから⑦である。また、BCP対策の観点からも重要⑧である。以下にその解決策を示す。
⑧ これは、すべての課題に当てはまります。「最も」の理由になっていません。
⑨ BCPはどこにも触れられておらず、唐突感があります。
(1)流域治水への転換
想定を上回る災害の激甚化・頻発化を踏まえ、集水域から河川流域のステークホルダーが協働で流域治水対策を行う。流域治水は、第2フェーズに入り、新たな対策⑩が挙げられている。
⑩ 抽象的です。具体的な対策を書きましょう。
(2)生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)
生態系が有する防災・減災機能を使ったEco-DRRを推進する。以下に主な3つの具体的な取り組みを示す。
①災害を未然に防ぐー自然の持つ効果によって災害の原因となる状況を改善する。例えば森林による水源かん養や土砂災害の防止、⑪湿地や水田、ため池による雨水貯留機能により⑫災害を未然に防ぐ。
⑪ 並列表記は誤りです。→「森林の水源涵養により土砂災害の防止や」
⑫ 「・・・による・・・により」→「ため池の雨水貯留機能により」
②住民や企業に被害の受けやすい住宅や工場を森林や湿地など自然的な土地利用に戻すことで災害暴露を遠ざけるよう促す⑬。災害リスクが高い地域に人が集まらないようにする⑭。
⑬ いくら行政に促されても、所有者が自分の資産を自然に戻すことは、現実的に考えられません。実効性のある具体的な施策を書きましょう。
⑭ ここは解決策を書くところなので、最後はやることで終わらせた方が良いでしょう。文章の構成は、理由→やること→具体例が基本パターンです。→「災害リスクの高いエリアに人を集積させないため、住民や企業に災害暴露を遠ざけるよう促す。具体的には、立地適正化計画及び防災指針を定め、安全なエリアへ居住機能や都市機能を誘導する。」
③災害の影響を軽減するー例として田んぼダムや緑地、公園の整備、雨庭等ビオトープの手法による雨水浸透や貯水機能の促進⑮、河川林などでリスク⑯を低減、霞堤などの伝統的防災技術を活用し、被害の拡大を防ぐ。
⑮ 対策が①と同じ視点です。多角的な視点での回答が求められます。
⑯ どのようなリスクか分かりません。
(3)グリーンインフラネットワーク(GIN)の構築⑰
グレーインフラによる防災・減災は起こり得る災害のレベルを予測し設計・建設される。予測不能な規模の災害に対しては生態系ネットワークを活用したアプローチを考える⑱。生態系ネットワークでは保全すべき自然環境や優れた自然条件を有している地域を核にし、その周辺に緩衝地帯を設け、コリドー(緑の回廊)でつなぐが、流域治水におけるGINは河川水系を軸に災害が起きやすい地域を核に、その周辺を緩衝地帯にし、上述①から③の防災・減災機能を有するGIをネットワークでつなぎ、その機能を十分に活用して防災・減災を図る。⑲
⑮ 対策が(1)、(2)と同じ視点です。多角的な視点での回答が求められます。
⑱ 課題は、予測と対策です。予測という言葉はありますが、予測手法がありません。例えば、3D都市モデルを活用して、被害状況シミュレーションするなど予測手法を書きましょう。
⑲ 一文が長すぎて、分かりづらいです。そのためか、主語述語の関係がおかしくなっています。文は短くし、接続詞で結びましょう。
新たなリスクと対応策
3.解決策を実行しても生じるリスクと対策
流域治水を実現するための生態系ネットワークを構成する1つ1つのグリーンインフラは植生の遷移とともに機能を発揮する⑳。そのためコンクリート構造物(グレーインフラ)と比べ効果が不確実で定量評価ができず完璧な災害予測や防護はできない。そこで、GISや衛星データなどを使った評価ツール㉑やより効果の高いグリーンインフラ技術の開発が解決策㉒と考えられる。さらに、グリーンインフラネットワークだけでは大規模災害に対処できないので、グレーインフラとのハイブリッドがより効果的である。 また、ガバナンスやビジネスモデルの構築と実施が有効㉓である。その際、流域のステークホルダーとコミュニケーションを取り、パートナーシップを形成する。
⑳ 新たなリスクではありません。GIにもともと内在するリスクです。
㉑ 予測の解決策として書いた方が良いのではありませんか。
㉒ 抽象的であり、未来の不確実な技術に委ねては解決策と言えません。
㉓ これも抽象的で、どのような行動なのか分かりません。
要件・留意点
4.業務遂行の際の要件・留意点
①技術者倫理の観点
災害から人々の生命や生活を守るには健全な国土と自然環境の保全が要件㉔である。現代世代だけでなく将来世代の公益確保にも留意する。
㉔ 倫理の観点ではないですね。
②持続可能性の観点
流域治水を長期にわたって維持し、激甚化する自然災害に対応することで、持続可能な社会を実現していくことに留意する㉕。
以上㉖
㉕ 持続可能性の留意点を問われているのに、持続可能な社会の実現では解答になっていません。
㉖ 論文は、指定の文字数に収めましょう。足りないのもダメですが、枠外は評価対象になりません。